ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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うわぁぁぁぁぁ!?

 

〜リオンの部屋〜

 

「………ん?」

 

……あ、戻ってきたんだったな。いつも暗い岩の天井だったから朝日と綺麗な石造りの天井がすげぇ違和感。これを生まれてからずっと繰り返してるリド達は凄いな…そして。

 

「はぁ…。」

 

「……。」

 

……俺の右腕を占領しているエルフが一人。我らがリオンさんである。うわぁ腹立つほど綺麗な寝顔。クールビューティなのは間違い無いんだけど、性格がなぁ…ポンコツじゃなければなぁ…。

 

「おーい。おい起きろ!動けないって!」

 

「ん…んんっ…!」

 

あれ。というか俺、腕の感覚無くね!?ヤバい締まってる!早く抜かなきゃ!

 

「リオンさーん。おーい!締まってるって。感覚無いんだけど!!」

 

「ん…え…?ぁ…お、おはようございます…。」

 

「腕離して?」

 

「え…あ、すみません!」

 

リオンが勢い良く飛び退く。あ〜ビリビリする。レベル4だもんなぁ。寝ぼけていても一般人とは違うわ。

 

「だ、大丈夫ですか…?マリューを呼んだほうが…!」

 

「いやほっとけば治るよ。」

 

「そ、そうですよね…。」

 

ちょっと過保護気味だ…しょうがないんだろうけど。

 

「……あ。」

 

「どした?」

 

「いえ…少し。」

 

……そう目を逸らされると怪しいしか出てこないんだが。

 

「いえ…あの、皆に何も言わずに部屋に連れ込んでしまいました…。」

 

「…あ。」

 

やべどうしよ。どう説明すべきか…。

 

「よし。脱出しよう。そして、数時間たったらまた入ってきて何事も無かったかのように説明すれば良い。」

 

「……ロイ、それは正義とは程遠い。私達はアストレアファミリア。正義を掲げているファミリアです。嘘はいけません。」

 

「ならリオン、今から皆にごめんなさいしに行こうか。その場合君は久しぶりに帰還した、異性で歳下の仲間を他への説明も無しに連れ込んだろくでなしになるけど。」

 

「脱出しましょう。」

 

「えぇ…。」

 

手のひらクルっクルかよ。そんなんだからポンコツエルフって言われるんだぞ。

 

「この時間ならギリギリ誰も居ない筈です。ほら早…。」

 

 

バンッ!!

 

 

「遅いぞポンコツエルフ!…………は?

 

和装の美人が罵声と共に勢い良く扉を蹴破った。あーあ。

 

 

 

〜星屑の庭 リビング〜

 

「…………ッス。」

 

「…………。」

 

柔らかな感触のカーペットの上に、二人の罪人…もとい、男女が正座している。一人はロイ。5年前にダンジョンで戦死した筈の男である。もう一人はリュー・リオン。正義のファミリア、アストレアファミリアに所属する冒険者。そしてそれを取り囲むは…。

 

「………っ。」

 

その深く美しい藍色の瞳に涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな我らが主神、正義の女神、アストレア様。胡桃色の長髪を揺らし、必死に涙を堪えている。

 

「ううっ…!」

 

アストレア様とは対象的に既に涙が止まらない様子の我らが団長、アリーゼ・ローヴェル。この人がこんなに泣いてるの初めて見たかもしれない。

 

「ほら泣き止めよ団長、感動の再会だろ…?」

 

団長の背中を擦り慰めながらも、自らも若干ウルッときている参謀、ライラさん。こんな時でも頼りになる人だ…。

 

「………。」

 

目を細めて扇で口を隠しているのは極東から来た剣士、ゴジョウノ・輝夜さん。貴方の無言は怖いっす。

 

「うあっ…!」

 

「生きてるなら言えよ…。」

 

「っ…ぅ…!」

 

「…良かった。」

 

「……。」

 

「ああっ…!」

 

「良かった…!」

 

上から、ノイン、ネーゼ、アスタ、リャーナ、セルティ、イスカ、マリューさん達。ご心配おかけして申し訳ねぇ。

 

「……それで。」

 

「!」

 

輝夜さんがゆっくり口を開き、リオンが身体を跳ねさせる。あっ。

 

「何故そこの清廉潔白(笑)のエルフさんは…どさくさに紛れて添い寝などしていたのでしょうかねぇ?

 

空気が凍りつく。

 

「…は?

 

「おいリオン?」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

団長が二つ名とは程遠いような極寒の声を出し、ライラさんがリオンの方を目にも留まらぬ速さで首を向け、見る。他の七人も固まる。

 

「……えっ。え…え?」

 

アストレア様もコレは予想外だったのか秒で涙を引っ込めてリオンを直視する。ほらリオン、主神様が困惑していらっしゃるぞ。説明してさしあげろ。(他責思考)

 

「えっと…その…ぇっと…ぁの……///」

 

あっダメだこのポンコツエルフ。思い出して顔真っ赤にしてる。

 

「……お話になりませんわぁ。ロイ、説明しなさい。」

 

「……俺っすか?」

 

「早く。」

 

「うす。説明させていただきます。」

 

輝夜さんには逆らえない。腹括ろう。

 

〜説明中〜

 

「……ほう。つまり、そこのポンコツは…。」

 

「はは…。」

 

話す事は話した。もう苦笑いで誤魔化すしかねぇ。

 

 

色ボケポンコツ歳下趣味のロクデナシに進化した…という事でよろしいですかぁ?」

 

 

あーあ。

 

「「「「「「「異議ナーシ。」」」」」」」

 

「………。」

 

「ちょ、団長怖いって…。」

 

「アリーゼ…?」

 

七人が一斉に声を上げ、団長がアンフィス・バエナも逃げ出すような威圧をリオンに向け、それを見てライラさんとアストレア様が困惑する。

 

「……い、異議ありっ!!」

 

「ほう?」

 

「は?」

 

わ、このポンコツエルフ勇気あるなぁ…。団長がさっきから『は?』しか言ってないんだけど…。

 

「私は…その…彼が逃げないようにしただけです!決して邪な思いがあった訳では無い!色ボケでも歳下趣味でもありません!!」

 

「異議あり。だったら密着する必要は無い筈。星屑の庭の個人ルームには鍵がついてる。」

 

「あっ…。」

 

団長の淡々とした指摘に撃沈するリオン。諦めろよ。

 

「そもそも逃げるつもりならダンジョンから出た後、別の所に行ってるだろ。流石にその言い訳はキツいぞ。」

 

「うっ…うう…。」

 

ライラさんから追撃が出る。良いぞもっと言ってやれ。

 

「弁護はありますか?アストレア様?」 

 

「…!」

 

お、何だ反論か?リオンが救いの目をアストレア様に向ける。

 

「うーん…ごめんねリオン、ちょっと厳しいかなぁ…。」

 

「…。」

 

無言で崩れ落ちるリオン。へっざまあみろ。

 

「団長…判決をお願いしますぅ。」

 

「有罪。リオンは色ボケポンコツ歳下趣味エルフと言う事で決定。」

 

「うあぁ…!」

 

リオンが『もういいんだ。』と言わんばかりのポーズで絶望する。コレが正義の女神の眷属の姿か…?

 

「…さて、裏切り者の粛清も済ませたところで…。」

 

「裏切り者!?」

 

ひっでぇ思わず反応してしまった。……おえ?何でそんなに近づいて…あ。

 

「ロイぃ…。」

 

「ふっ…ロイ。」

 

「ロイ!」

 

団長、輝夜さん、ライラさんが強く、けれど優しく抱きしめてくれる。とても暖かい。

 

「「「おかえり。」」」

 

「……ただいま戻りました。」

 

…やっと言えた。

 

 

〜女神の部屋〜

 

「……はい。これで大丈夫よ。」

 

「あざっす。」

 

アストレア様の神血が垂らされ、背中から全身に力が染み渡っていく。久しく感じていなかった力の鼓動も感じる。やっと復帰できるな。

 

「……。」

 

「…アストレア様?」

 

「っ、ごめんなさい。ちょっと…嬉しくて……!」

 

「あ〜…。」

 

背中にアストレア様の目から溢れた冷たい物が落ちてくる。いや…うん。滅多…いや、俺以外に体験した人居ないだろうし。一回生き返って再び神の恩恵を授かるなんて。

 

「……ねえ、ロイ?」

 

「……なんすか?」

 

「お願いがあるの。とっても大事な……。」

 

「…何でしょう。」

 

「ちゃんと、向き合ってあげてほしいの。あの娘達の気持ちと。」

 

「…はい。」

 

まあ向き合うと言っても何したら良いのか分からないけど…俺コミュ障なんです。

 

「と言っても、貴方は何も行動しなくて良いわ。あの娘達が自分から近づいてくる。それを受け止めてあげて?」

 

「そう…ですか。」

 

それはありがたいけど…。

 

「大丈夫。怖くないわ。覚えてる?八年前、貴方が初めて私の眷属になってくれた時、貴方は全てに怯えていた。誰も信用しきれず、何も理解出来ないまま。でも…それでも、貴方の中に、正義はあった。」

 

「そうですね…懐かしいです。」

 

「私は、それでもあの大抗争をきっかけに貴方が歩みよってくれて嬉しかったわ。このまま、こんな時間が続けば良いなって思ってた。でも…。」

 

だが、時間が足りなかった。いや、悠長にやり過ぎたのかもしれない。

 

「5年前、貴方がダンジョンで死んで、とても後悔したわ。未だに闇派閥の残党達の捕縛にも追われていたとは言え、貴方が歩みよって来てくれたのに私達は満足に時間を確保できなかった。貴方が死んで、皆悲しんで…。」

 

「あの時はアレが最適でした。」

 

「ええ。分かってる。だから、やり直すの。あの時の続きを。……ロイ、こっちに来て?」

 

?言われるがままに近づく。

 

「えいっ。」

 

「!?!?」

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。俺はアストレア様に近づいた途端、物凄い力で頭を押さえつけられ、気づいたらひざ枕されていた…!な…何を言ってるのか、わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…。魔法だとかステイタスだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ…。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。

 

「…5年振りなのに殆ど変わらないわね…貴方は。」

 

「そりゃダンジョンの食事じゃ栄養素偏りまくりですし…。」

 

肉の入手が難しいので身体は殆ど成長しなかった。悲しいなぁ…。

 

「ふふっ…そうじゃないわ。精神の話よ。貴方は、あの時のままね。でも…私達は変わってしまったわ。」

 

「……まあ、薄々は感じてましたよ。」

 

5年はデカかった。それだけの話だ。リオンはかなりグイグイ来るようになったし、団長はずっと静か。ライラさんはぱっと見は変わってないように見えたけど、何処か弱々しくなった。輝夜さんは…もうひと言じゃ現せない。

 

「私達にとって、貴方は大きかった。失ってから気付いたわ…。」

 

「俺もですよ。」

 

異端児達に匿ってもらっている間、俺はずっと帰りたかった。リド達には良くしてもらってたけど…いや、良くしてもらってからこそ、比べてしまって…此処に帰りたいと言う気持ちが大きくなっていった。

 

「でも、帰ってきてくれた。本当にありがとう。また、私の眷属になってくれて。」

 

「こちらこそ。これからもお願いしますよ。アストレア様。」

 

時間はたっぷりある。これからゆっくり、やっていけば良いさ。

 

 





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