ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
〜ダイダロス通り ロキ・ファミリア視点〜
ロキ・ファミリアはダイダロス通りの中央、古城跡を思わせる大型の建物の上に本陣を敷いていた。今夜は生憎の雨と霧であり、この高台からでも眼下の街の全ては見渡せないが…それでも、高所を取れば大まかな動きは分かりやすいと踏んでの事である。
そして、地面を挟んだ直下にはクノッソス。ダイダロスの遺産を防衛するかのように、団員達が配置されている。
「団長、【ヘスティア・ファミリア】が動き出しました。また、ダイダロス通り南東にロイ・ヴァレンシュタイン、ベル・クラネルが出没!」
「各団員に通達。遠くない内に『事』が起こる、部隊を作戦通りに展開させろ」
「はい!」
フィンの補佐はアナキティ。ロキ・ファミリアの
「……さて、何処から来る?」
〜ダイダロス通り ヘスティア・ファミリア視点〜
「あーっ、あっ、あ〜っ……マイテスマイテス…聞こえるかーい?」
『こちらフェルズと異端児護衛班。問題無い』
『こちら妨害班です。問題ありません』
『こちらロイ・ヴァレンシュタイン。通信良好』
『ベル・クラネルです。問題ありません、神さま』
「よし!」
ダイダロス通りに乱立する高層住宅の屋上、その一つに連合部隊は本陣を敷いていた。
「それじゃ、作戦の最終確認だ……と、言ってもコレは作戦なのかい?」
『いやぁ〜ぶっちゃけ戦力差が離れ過ぎてて作戦もクソも無いんですよねぇ…囮になるべく引き付けてもらって、ひたすらアスフィさん達に妨害してもらって、その間に扉に向けて突撃するしか…』
『そうですね。第一級冒険者四人が相手ですから、結局それしかないでしょう。しかし、アイテムを全て使用しても止めきれるかどうか……』
『足りない分はヴェルフ様様様の魔剣に頼るしかないッスね』
『第一級冒険者が相手だ、四の五の言ってられない。椿と協力してありったけ打ってきた』
『ほぼゴリ押しになるがな!わっはっは!』
椿の言う通り、実力差が有りすぎて連合側は最終的にはどストレートにゴリ押すしか無い。囮と
「既にベル君達は動き出しているんだろ?どうなんだい?」
『今の所はティオナさんと、リヴェリアさん達…
『俺対策だろうなぁ…下手に数ぶつけても逆効果って分かってるから、ロキ・ファミリアの精鋭だけで監視してるんだ』
ロキ・ファミリアはロイの古巣。在籍した期間こそ短いものの、5年前まで主神のロキと定期的に情報交換していた事、最初のダイダロス通りでの戦闘もあってロイのステイタスはほぼあちら側に割れている。
「まあ良いじゃないか!ベル君、『鍵』と『手記』は持ったんだろ?」
『はい!でも、良いんですか?二つとも偽物とはいえ…』
『ま、鍵の方はこっちは一つあれば良いからな。ダミー二つに本物二つ。最悪一つだけなら渡っても問題無い。気がかりは…』
『二つの内のもう一つを持った異端児…アステリオスが行方不明だと言う事だな。新入りも気になるが…』
ロイの言葉にフェルズが被せる。異端児達は事前にリバース・ヴェールやハデス・ヘッドなどの隠密系魔道具、及び地下水路を利用して一箇所に集められている。リド達本隊と逸れたのがレットやフィア等の小柄な異端児達だったのもいい方向に働いた。ちなみに、アルルとヘルガだけは別の場所で待機している。
「アステリオス君と新入り君はできる限り探ってみたけど…やっぱりロクに情報は無かった。ダイダロス通りは複雑だからね…」
『俺も全て把握している訳ではないですからね』
ダイダロス通りの全容は未だに、ギルドも把握できていない。そして把握できていない構造物には当然地下にあるものが多く、そこの何処かにアステリオス達は潜んでいると思われる。
『取り敢えず、ギリギリまで待つしかないだろう』
『一応見つからずに待機できるポイントは把握してるが…』
それでも、早めに出てきてくれないとこちらが危うくなる。連合側に必要なのはスピード。なるべくロキ・ファミリアを掻き乱し、態勢を立て直される前に迷宮内に避難する。
『…ま、なるようにするしか無いさ。ベルはなるべく今居るフェアリー・フォースとティオナさんを扉の方向から離れさせてくれ。そして隙を見て…』
『戦闘、ですよね。頑張ります』
『ああ。なるべく抵抗しろよ?怪しまれないようにな』
今回、ベル・クラネルは囮…陽動であると同時に、『毒』でもある。かなり危険な賭けになるのは違いない。
「っと、そろそろ時間だ。フェルズ君、始めてくれ!」
『了解した。リド』
『おうっ!』
迷宮街に怪物の声が響いた。
〜ロキ・ファミリア ティオナ・妖精部隊視点〜
「リヴェリア!」
「分かっている!」
上級冒険者の聴覚が各地の怪物達の声を捉える。
「うーん…どうしよ、私達も行った方が良い?」
「いや…ベル・クラネルは兎も角、ロイの監視を外すのは不味い。Lv.4以下の人員が狩られかねん」
「そっか、倒せば倒す程強くなるんだっけ?」
「ああ。かと言ってこのまま何もしないのも…」
「うーん…リヴェリア、此処任せて良い?」
「問題無いだ……!?」
その時。眼下の二人が同方向に走り出した。
「リヴェリア様!」
「追うぞ!」
アリシア達フェアリー・フォースが慌てて追う。二人は暗い路地に入って行く。
「も〜っ!人が話してる時にっ!」
「くっ…!」
ダイダロス通りの複雑さがロキ・ファミリアの精鋭達の進路を妨害する。複雑な路道を上手く使い、ロイとベル・クラネルは一定の距離を保っていた。
「待ちなさい!ベル・クラネル〜!!!」
「レフィーヤ前に出過ぎっ!」
……一部私情で追従してくる者もいるが。
「……リヴェリア、この方向って」
「…先程声が聞こえた方向だな」
リヴェリアの頭の中にダイダロス通りの大まかな地図が展開される。先程の怪物達の声が聞こえた方向と、現在追っている二人の進む方向が一致していた。
「それに、ちょっと大胆すぎるよね?私達の姿見えてる筈なのに…」
「ああ。誘われているな」
だが、追わざるを得ない。二人とも要監視対象である上に、片方は対多数に特化したスキルでもう片方は今話題のスーパールーキー。何をしでかすか分からない組み合わせだ。コレを放置するのは博打が過ぎる。
「このまま追うぞ!」
「「はいっ!」」
「いっくよ〜っ!!」
霧雨が辺りを包んだ。
〜ダイダロス通り〜
ダイダロス通りの暗闇に一匹の兎が駆け出す。凄まじい速度で飛び出すアルミラージを、冒険者達はすぐに発見した。
「キューッ!!」
「で、出たぞぉ!?」
「モンスターだっ、路地裏だぁ!?」
高額の賞金首に目の色を変えて襲いかかる冒険者達。アルミラージは耳を大きく揺らして必死に走る。とはいえ、追手である冒険者も負けてはいない。アルミラージが元々素早い種族とは言え、冒険者の中にも上級冒険者は混じっている。故に、捕まりそうになる度…。
「キュっ…!!」
「何処行きやがった!?」
路地に逃げ込み、魔道具の一つ、リバース・ヴェールを被る。冒険者の中には獣人も居たが、そこは消臭系のアイテムで匂いを消して対応した。ちなみに、このアルミラージ…。
「キュッキュッキュキューッ!!!(おのれロイ〜!!!)」
本物である。
〜原作との相違点〜
異端児達→最初からヘルメス・ファミリアの協力で一部を除き合流済み。とは言え魔道具の数がそんなに無いので合流だけで精一杯。
陽動及びその監視役→ベルの方はアイズが居ないので無難にティオナ。ロイの方はリヴェリア含めた妖精部隊が駆り出される。
アルル(アルミラージの異端児)→原作ではリリが化けていたがこの世界では本物。リリと違って脚は速いのでアイテムで補えば普通に行けると判断した。
リリ→何処に居るんでしょうかねぇ…?