ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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暗殺☆(殺してはいない)

 

〜ダイダロス通り 南東 ロキ・ファミリア視点〜

 

銀髪の二人が迷宮街の小路を駆けていく。リヴェリア達は後を追う。

 

「せま〜い!」

 

「小路ばかりを使っているな…」

 

屋根伝いで追いかけようにも夜の闇と生憎の雨と濃霧で見失う危険性があった。相手は素早い。リヴェリアの魔法による探知も咄嗟には出せない都合上、直接後を追うしかない。

 

「…リヴェリア様、この先は」

 

「…広場か」

 

「はい」

 

アリシアが金髪を揺らしながら進言した。この先はダイダロス通りの広場だ。広場と言っても他の地区の広場のような華やかさは無い。古いベンチが数個置いてあるだけの、周りを建造物に囲まれた殺風景な物だ。

 

「う〜ん…来るよね?」

 

「あぁ。レフィーヤ、近づいたら詠唱を始めろ。」

 

「っ…はい!」

 

時は近づく。

 

 

〜ロキ・ファミリア本陣〜

 

開戦を告げるモンスターの遠吠えが響いた後、もたらされる情報にフィンは呟いた。

 

「動いたか」

 

「南にアルミラージの目撃情報が!他派閥の冒険者達が追跡中!」

 

「ベル・クラネルとロイ・ヴァレンシュタインも南東にて動き出しました!リヴェリアさん達が追跡中!」

 

「伝えている通り、二人は陽動だ。リヴェリア達に任せて放置しろ。南と南東はまだ動かなくていい。それよりも西が臭う。エルフィ、北西に居るティオネ達に九十八番街まで移動して網を張るように伝達しろ」

 

二人の大胆すぎる行動に内心驚きつつ、それをおくびに出さずにフィンは素早く指示を出す。泰然とした団長の姿を見て他団員も取り乱す事なく『はい!』と勢い良く駆け出していった。

 

(うーん…リヴェリア達は恐らく誘導されているな。だが監視を外せ無い以上、任せるしかない)

 

得物の長槍を肩で遊ばせながら、小人族(パルゥム)の首領は思考する。

 

(敵は大所帯の筈。見張りの目や放っている斥候に引っかからないし、罠にもかからないのは…ダイダロス通りの地形に詳しい者(ロイ・ヴァレンシュタイン)が居るのと、魔道具(マジック・アイテム)の類か。相手には万能者(ペルセウス)が居る。何が起きても不思議ではないな…)

 

ロキ・ファミリアが開戦前に入手できた情報は、ヘスティア・ファミリア、アストレア・ファミリア、ヘルメス・ファミリア、ヘファイストス・ファミリアが連合を結成したと言う事、後はベル・クラネルとロイ・ヴァレンシュタインのここ数日の動向のみだった。

 

(情報封鎖が厳重過ぎて全く抜けなかった。あっちには斥候と情報のプロ、ヘルメス・ファミリアとライラが居るからな。こうなるのは予測できたが…それにしても厳重が過ぎる。敵の大まかな配置も全く分からなかったし、戦いの中で入手していくしかないな)

 

現状、単純な武力ではロキ・ファミリアは圧勝しているものの、情報戦では大敗している。理由は単純。敵の参謀陣と斥候達が優秀過ぎる事。

 

(相手の鍵は二つ以上は無い筈だ。折角扉に辿り着けても、開けられないのでは意味が無い。故にモンスター達の大部分は一つに固まっている。先程の咆哮は未だ合流できていない者…漆黒のミノタウロスに合図を送る為だろう)

 

イケロスからの情報で鍵の大まかな数は分かった。だが、逆に言えばそれだけ。手記や鍵が何処にあるのか、誰が持っているのかはイケロスでも知らなかった。

 

(それに…西だ。臭うとは言ったが…)

 

フィンは己の右親指を見おろした。彼の見つめる親指は、依然として疼きを隠さない。

 

「……黒いミノタウロスの情報は」

 

「まだ入っていません」

 

「そうか…陣形は、維持だ。少し様子を見る」

 

小人族(パルゥム)の首領は静かに戦況を見守るのだった。

 

 

〜ロキ・ファミリア西陣〜

 

「うわぁ…流石団長。本当に戦闘が起こったッス…」

 

ラウル・ノールドは冴えない第2級冒険者である。ロキ・ファミリア所属、Lv.4。にもかかわらず他派閥の同業者達にぱっとしない印象を持たれているのは、彼の生来の性分にあった。

フィンを始めとした先達の陰で、彼等のおこぼれの経験値(エクセリア)をコソコソともらって成長してきたというのが彼の自己評価。そしてそれが彼の自信のなさに現れており、結果として他者の『冴えない』という評価にも繋がっているのだ。

黒い髪に黒い目、中肉中背で顔も突出して整っている訳でもなく、特段器用でもなければ不器用でもない。そう言った平凡を突き詰めたような容姿である事も影響しているのだろう。神々から賜った二つ名も【超凡夫(ハイ・ノービス)】。とことん平凡を行く男だ。

 

「今の所何も起きてないし…今回は出番無いッスかね…?」

 

ラウルは件の…ベル・クラネルはあまり知らないが、ロイ・ヴァレンシュタインについてはそこそこ知っていた。彼がファミリアを出てからは交流は断たれていたが…所属していた時はそれなりに話した事もある。

 

「まさか生きてたなんて…何があるか分かったもんじゃないッスねぇ…」

 

アイズの弟として『ファミリア内では』優遇されていたロイと、特段優遇されていた訳でもないラウル。一件共通点が無いような二人だったが、フィンに将来を期待されていたという点では繋がりがある。二人とも形は違うものの、それなりに何でもできる器用さがあった。

 

「…………?」

 

ラウルが辺りを見回す。思考に耽っている間に随分と静かになった。団員達は変わらずに警戒しているが…

 

「……全員、一塊に」

 

「?ラウルさん…?」

 

「円陣!」

 

「「「は、はいっ!」」」

 

ラウルは何か嫌なものを感じ取ったのか、西陣に居る他の団員達と円陣を組んだ。そして、何者かが階段をゆっくり上がってくる。

 

「アンタは…!」

 

 

〜ロイ視点〜

 

ふ〜やっと着いた。長かった長かった…お。

 

「アンタは…!」

 

「お久しぶりです。ラウルさん」

 

「貴方は…!?」

 

「ロイ・ヴァレンシュタイン!?」

 

ラウルさんとロキ・ファミリアの他の団員達が驚愕の顔で見てくる。そりゃそうだ。

 

「何で此処に居るっスか!?南東に居る筈じゃ…!?」

 

「そっちは偽物ですよ。丁度いい魔法を持った奴が居たもので」

 

「っく…!皆、戦闘準び…」

 

させん。スキルで上がったステイタスでラウルさんの横の団員目掛けてメイスを振り抜く。

 

「っが…!?」

 

「アラム!」

 

「くっ…はぁぁっ!!」

 

「ごめんなさいねっ!」

 

向かってきたもう一人を沈める。ふぅ。

 

「この強さ…下は…」

 

「はい。壊滅ですよ」

 

「そんな…!」

 

流石に魔道具使っても全く気付かれずに突破は不可能。背後取って一人一人潰してきた。お陰でスキルは発動できたので、結果オーライである。

 

「さ〜て…最低でも眠っててもらいますよ?」

 

「最低でもって…!」

 

「抵抗するなら、事故が起きるかもって意味ですよ」

 

「くっ……ラウルさん、私達だけじゃ…!」

 

「分かってるッス!どうにか時間を…っ!?」

 

とは言え、相手はLv.4。このままやっても長引くだけだろう。腰の魔剣を抜く。属性は…。

 

「っがあっ…!?」

 

「ゲホッ……雷っ…!?」

 

雷属性。拘束なら氷なのだが、気絶させるなら雷が良い。ん〜…良い威力。一人もっていけた。クロッゾの魔剣、すげぇな。まさかヴェルフがその一族だとは思わんかったけど。

 

「っ……!」

 

「…まあ、耐えますよね。でも動けないでしょ。さよならです。」

 

「っご…!?」

 

頭にメイスを振り下ろし、ラウルさんを昏倒させる。

 

「さてと…」

 

まだやる事はあるので、さっさと撤退しよう。今のでバレただろうし。

 

 

〜ロキ・ファミリア本陣 ロキ・ファミリア視点〜

 

本陣に団員の一人が血相を変えて飛び込んでくる。

 

「伝令っ!!」

 

「どうした?」

 

「西陣司令部が襲撃を受けました!ラウルさんが気絶、戦闘不能です!」

 

「……マズいな」

 

今まで平静を保ってきたフィンの顔が始めて歪む。貴重な第2軍、Lv.4の指揮官枠が一人戦闘不能になったのだ。無理もない。彼の不幸を耳にしたアナキティが叫ぶ。

 

「なっ…警備はどうしたの!?」

 

「他派閥の冒険者含めて壊滅です…。抵抗した跡が無かったので、全て不意討ちのようで…」

 

「……おかしい。そんな事ができるのは、相手側では…」

 

ロイ・ヴァレンシュタインだけ。しかし、ロイ・ヴァレンシュタインは南東でリヴェリア達が追跡中だ。居る筈がない。

 

「……まさか、南東のロイは偽物か?」

 

「魔道具、でしょうか…?」

 

「……いや」

 

フィンの脳裏にアポロン・ファミリアとヘスティア・ファミリアの戦争遊戯が過ぎる。城内にヘスティア・ファミリアの引き入れた小人族(パルゥム)――調略の類で無かったとしたら――そして戦争終盤まで姿を現さなかった同族の少女…。

 

「…そう言う事か」

 

「団長?」

 

「リヴェリア達に通達!南東のロイは偽物だ!至急確保しろ!」

 

「は、はいっ!」

 

団員の一人が通達しようと信号装置に手を伸ばす。が。

 

「伝令!南東のロイ・ヴァレンシュタインが消えたとの事!」

 

「遅かったか…!」

 

後手に周る。だが、嘆いていても仕方ない。

 

「……妖精部隊に通達。ラウルに代わって西陣の守備に……いや、駄目か。遅いな」

 

壊滅した部隊の代わりを補填しようと口を開きかけたフィンだったが、首を横に降る。遅きに失したと断ずる彼を肯定するかのように、モンスター発見の警報…鐘の音が響き渡った。瞬く間にフィンの周囲は喧騒に包まれる。

 

「だ、団長!?モンスターが西に出現!ラウルさん達が居なくなった穴を突いてダイダロス通りの中央帯に!」

 

「わかっている、落ち着け。気づいていると思うがティオネとベートを呼び戻せ。部隊は……他の防衛戦から予備含めてかき集めろ。残存戦力と前後から挟撃する」

 

首領の姿勢は揺らがなかった。それを見て他の団員達も落ち着きを取り戻し、各々の武器を持って行動を開始する。

 

「敵の進路は?クノッソスの何処を目指している?」

 

「えっと……直進!現れた西の地点から真っ直ぐ東進しています!」

 

「――直進?進路もクノッソスの西?」

 

困惑する団員を他所に、フィンは再び思考の海に沈む。

 

(西に現れた以上、北西か南西に進路を転ずると思っていたが…)

 

ロキ・ファミリアが発見した扉は四つ。北西、北東、南西、南東だ。地下通路内でオリハルコン製の扉を発見したフィン達は、これらを死守すべく部隊を配置していた。

 

(懸念点としてはあったが…まさか、ロイ達は僕達の知らない扉を知っている?)

 

この数日間、クノッソスに繋がる扉の捜索は徹底させた。だが、もしも自分達の見落とした扉があり、それをあちら側がその所在を把握していたとしたら?

フィンの脳裏に、神イケロスとの対話の記憶が蘇る。

 

(クノッソスの設計図…彼等はそれを持っている?)

 

連行する際、『自分は』持っていないとイケロスは言っていた。そう、自分は。彼等がクノッソスの中でイケロスの眷属と戦い、それを入手していたとしたら?

 

「マズいな」

 

尽く後手に回っている。未だ黒いミノタウロス(本命)の姿すら見えていないというのに。忸怩たる思いを抱き、内省し、切り替える。外界との時間が隔絶する程に頭を回す。そこに、間延びした主神の声が響いた。

 

「おーい。フィン〜」

 

「何処に行ってたんだい、ロキ?」

 

「んー、まあな、色々や」

 

慌ただしい本陣に現れた主神に、一瞥も送らずに尋ねた。朱髪の主神は後ろから歩み寄る。

 

「考え中か?フィン」

 

「あぁ。少し、油断していたようだ。今は放っておいてもらえると助かるんだけど」

 

目を合わせないフィンの横顔を、ロキは見つめる。そして口元を小さく吊り上げながら、耳元で囁いた。

 

「フィン――見極めろ」

 

「――」

 

…それは、ベル・クラネル?それとも、異端児?視線だけずらして横を見ると、ロキはうっすら目を開き、笑っていた。

 

「誰のもんでもない、自分の目でな」

 

「……」

 

「ウチからは以上や。もう口出しせえへん……っと、もう一つ言わんと。」

 

「…まだ何かあるのかい?」

 

「…アイズたんがどっか行きおった」

 

「……探そう。ロキ、頼めるかい?」

 

「ああ。今のアイズたんがロイたんに会ったら、間違いなくヤバい。止めようにもウチかリヴェリアじゃないと聞かないやろうし…」

 

「頼むよ。此処で…アイズと、ロイの仲を引き裂きたくない。行ってくれ」

 

「此処は任せるで」

 

朱髪を揺らしてロキが去っていく。気付けば雨は止んでいた。

 

 





〜ロイ君の実力(10点満点での評価)〜

アイズ             ロイ

対怪物 10           対怪物 6

対人  8            対人 10

魔法技術 7           魔法技術 8  

武器術  10          武器術  7

打開力  10          打開力  5

安定性  5           安定性  7


魔法技術→魔法に関する知識、及び技術。並行詠唱など。
武器術→各々得意な武器に対しての理解度と技術。剣術など。
打開力→魔法やスキルの効果含めた、己が不利な状況に陥った時にその場を切り抜ける力。
安定性→精神的な安定性。どんな状況でもある程度のパフォーマンスを維持、発揮する力。

現状、ロイ君は対人戦の技術と安定性こそ高いものの、不利になると周りの助け無しだとあっさり負ける程度の実力しかありません。今までの勝利もなるべく事前に手を打って自分に不利になる状況を作らないよう、上手く立ち回っているだけです。スキル構成も外的な要因(敵の撃破)等で初めて発動するスキルが多く、いざという時の打開力に欠けます。はっきり言って姉には遠く及びません。

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