ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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姉弟喧嘩は次になりそう。ごめんちゃい。



嫌な感じ

 

〜異端児視点〜

 

迷宮街の路地を駆け抜けるモンスターの一団。リドとグロスは妖精部隊の追跡を振り切った後、順調に逃げ遂せていた。

 

「よっし!例の地点までもう直ぐだ!」

 

「……」

 

「おいどうしたんだよグロス?後ちょっとで逃げるだけだぜ?」

 

「グロス…?」

 

『グロス君?』

 

「ん、ああすまん。何か…嫌な予感がしてな」

 

灰色の背中に悪寒が走る。先程からグロスは、妙な悪寒に襲われていた。

 

『縁起でもない事言わないでくれよ…もう既にウィーネ君達も避難を始めてる、後はアリーゼ君達が開けてくれてるであろう南東の扉に飛び込むだけさ。グロス君達も…鍵が届けられ次第、地下水路を使って逃げれば良い』

 

「分かっては居る、分かっては居るが…」

 

先程から石の背中に走る、妙な悪寒。何か致命的なモノが迫っているかのような、背筋が凍り付く物。

 

『何はともあれこれで終わりだ!其処の角を曲がったら…!』

 

「行くぞグロス!」

 

「あ、あぁ…」

 

疼く本能を抑えながら、石竜達は歩を進めた。

 

 

 

〜アイズ視点〜

 

………。

 

「…こっち?」

 

早く…。

 

 

 

 

〜ダイダロス通り 東〜

 

ダイダロス通り東。南東の扉を目指し、モンスター達の一団が狭い小路を走っていた。

 

「レイっ、リド達大丈夫かな?」

 

「大丈夫ですよ。ロイが助けてくれましたし、例の場所に着けばヘルメス・ファミリアの皆様が別ルートで帰してくれます」

 

「う、うん…」

 

「どうしたんですかウィーネ?さっきから落ち着かないようですが…」

 

「な、何かね?寒いの、何か…良くない物が…」

 

碧色の身体を震わせ、ウィーネが寒気を訴える。だが、今は夏。生まれたてとは言え竜女(ヴィーヴル)が…本来中層域に生息する筈のモンスターが身体を震わせる理由など万に一つもありはしない。レイは黄金の翼を羽ばたかせながら辺りを見渡し、指示を飛ばした。

 

「……兎に角、行きましょう。この先の路地を曲がれば、ロイと合流できますから」

 

「う、うん…」

 

不安そうに返事を返し、竜の少女は先へ進む。薄霧に包まれた路地は、不気味な静けさが漂っていた。

 

 

 

〜アイズ視点〜

 

…何処?

 

「っ!ヘ…っ…?」

 

「静かにしてて」

 

……何、この玉?いや、どうでもいいや…。

 

 

 

〜ダイダロス通り 東 ロイ視点〜

 

やな予感。俺の心に、嫌な予感。でも、この予感の正体はだいたい想像がつく。

 

「……」

 

「ロイさん…?」

 

「……ベル、何時でも戦えるようにしておいてくれ」

 

「…はい」

 

ベルも何かを察したのか、顔の筋肉を強張らせた。……っと。

 

「ベル、ロイ〜っ!!」

 

「ウィーネ!」

 

「ん、久しぶりぃ」

 

「うんっ!」

 

角からウィーネとレイ、その他避難していた異端児達が現れる。かわええのぉ。

 

「ロイっ…!」

 

「レイはさっきぶりでしょ」

 

「……テヘッ?」

 

…可愛いから許す。さて。

 

「じゃ、逃げますか」

 

「はい。早めに…ですよね?」

 

「あんまり時間無いからね、それに…」

 

ウィーネを見る……震えてるな。やっぱり、アイツが来てるんだ。近くに。

 

「…急ごう。要らない負担はかけたくない」

 

「…はい」

 

再び歩き出した。

 

 

 

〜アイズ視点〜

 

「っ!が…!?」

 

「……さっきから…。」

 

別のファミリアの人かな?私を見た途端に玉を取り出して…。

 

 

 

 

 

〜南西の扉 ヴェルフ視点〜

 

皆様、ヴェルフ・クロッゾです。俺は今、ダイダロス通り南西の扉にて重傑(エルガルム)の相手をさせられております。ですが…。

 

「ぬぅぅぅうおおっ!!」

 

「ふざけろっ!!」

 

「ワハハハっ!!」

 

正直もう限界です。助けてくれ。

 

「ほれほれほれっ!!エルガルムは此処だぞーっ!!」

 

「「「「かかれーっ!!」」」」

 

「ぬぅぅぅん!!椿貴様ぁ!少しは年寄りを労らんか!!」

 

舞う吹雪、轟く砂塵、響く怒号。もう何が何だか分かりません。腐れ最上級鍛冶師(マスター・スミス)は嬉々として闇派閥をけしかけつつ魔剣を放ってるし、重傑(エルガルム)はそれを力ずくで全て突破してるし…何が起こってるんだ?

 

「ヴェルフ殿、これはもう何が何だか…」

 

「ああ…俺もだぜ。と言うか何本打ってきたんだ椿の奴…?」

 

ドン引きする程の愉快犯っぷりを見せつける椿が、荷車に乗せられた夥しい数の氷の魔剣を振っては砕き、振っては砕きを繰り返している。俺の氷の魔剣は取っておけって事だったが…要るのかこれ?

 

「ふんっ!じゃが…温いわ!」

 

「おっと!そんなの百も承知よ!ヴェル吉!」

 

「!」

 

なるほどそう言う事か…!エルガルムが氷を砕き、椿に突撃してくる。………今!

 

「氷鷹!!」

 

「ぐぅおっ!?」

 

氷鷹の氷が重傑を再び氷の牢獄へと誘う。

 

「っぐ…ふむ、リヴェリアの魔法と同程度の氷か」

 

「!?」

 

「オイオイ嘘だろ!?」

 

受けたそばから氷にヒビが入って行く。マズい、このままだと突破される!

 

「させるかぁ!そのまま氷漬けにしてやるわ!」

 

「ぬぅぉぉっ!?椿っ!」

 

「ははははっ!!大盤振る舞いじゃあ!」

 

ヒビを埋めるように椿が魔剣を振るい、氷を追加した。よし、これで…!

 

「ぬぅっ…うおおおおおおっ!!」

 

「終いじゃ!ヴェル吉!」

 

「おうっ!氷鷹!!」

 

トドメの一振りに乗せられた吹雪が、エルガルムに直撃する。そして…。

 

「………!」

 

「いよっし!!」

 

「目的達成じゃ!ずらかるぞ!」

 

「おうっ!」

 

氷漬けになったエルガルムを背に、撤退した。

 

 

〜アイズ視点〜

 

……ぁ。

 

「…こっちだ…!」

 

間違いない。

 

 

 

 

〜ロイ視点〜

 

予め選定しておいた小路を使い、南東の扉を目指す。暗闇に響くのは足音だけ。

 

「………」

 

「…ロイ?」

 

「どうかしたんですか?」

 

「……いいや?」

 

嘘である。もう近くまで来てる。俺の勘がそう言ってる。でも、オクルスからの情報提供は…。

 

「ヘスティア神、アイツの目撃情報は…」

 

『無いよ。各地に居るヘルメスの子達も、全然見つけられていない』

 

「そうですか…」

 

『なぁ、本当に来てるのかい?ヴァレン某君は。此処まで監視して、一切引っかからないなんて…』

 

「……グロス達は?」

 

『例の地点で待機しているよ。ヘルガ君達も鍵をアステリオス君からもらったみたいだし、後は届けられるのを待つだけさ』

 

……おかしい、読みが外れたか?この勘も気の所為か?そう思った瞬間、ウィーネが突如しゃがみ込んだ。

 

「……っ…!」

 

「ウィーネ!?」

 

『どうしたんだい!?』

 

「怖い、怖いよぉ…!!」

 

いや違う、気の所為じゃない。この場で俺以外に反応してるのが、竜の一種であるウィーネだけ。そしてアイツのスキルは竜種に対しての攻撃力超域強化。恐らく、コレにウィーネは反応してる。

 

「来る。アイツが来てる」

 

「「「っ!!」」」

 

その場に居る全員が、警戒を露わにする。暗闇を見つめ、先を急ぐ事にした。

 

 

 

〜ヘルメス・ファミリア視点〜

 

西陣から少し離れた路地。其処でヘルメス・ファミリアと二人の第一級冒険者が激闘を繰り広げていた。

 

「ふっ!」

 

「遅えッ!!」

 

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかずち)】」

 

「甘いわよっ!!」

 

大朴刀が、雷が、第一級の膂力で振るわれる得物と衝突する。

 

「まさか帰ってきて早々にロキ・ファミリアとやる事になるとはな…」

 

「文句言うんじゃないよ白巫女(マイナデス)。アンタがあの千の妖精(サウザンド・エルフ)にお熱なのは知ってるが、それとコレとは話が別さ。()()()()とは言えヘルメス・ファミリアなんだからキチンと働きな!」

 

「分かっている!」

 

「二人とも喧嘩しないで下さい…苦労するのは私ですから」

 

エルフとアマゾネスの口撃を仲裁しながら、魔道具で適切な援護をする。余りにも締まらない戦闘だが、三人ともキチンと手は動かしているので流石だ。

 

「随分と余裕じゃない!」

 

「お喋りすんならさっさとどきやがれアバズレ!!」

 

一方、襲撃を受けたベートとティオネも負けてはいない。強臭袋(モルブル)や手投げ弾の爆撃を掻い潜り、圧倒的なスペックの差を押し付けんと画策していた。

 

「……!」

 

そして物陰には金色(こんじき)の耳。現状、ヘルメス・ファミリア側の最高戦力は春姫のウチデノコヅチによるブーストを受けたLv.5のアイシャ。アスフィにかける事もできたが、直接戦闘は不得手との事なのでアイシャになった。

 

「ったく…人使いの荒い正義の味方様だよ。生きてたって聞いた時は驚いたが…コレで貸し一だ、終わったらたっぷり『料金』を徴収しようかねぇ」

 

「ブレませんねアイシャ…好きにしてください。返り討ちにされない程度に」

 

「…不潔だぞアマゾネス」

 

「純真無垢なエルフ様は黙ってな!」

 

剣戟と魔法の嵐。騒乱に包まれた宴は熱を増していた。

 

 

 

 

 

〜アイズ視点〜

 

 

「 み つ け た 」

 

 

 

 





〜原作キャラとの関係〜

アイシャ→六年前、どっかのヘルメスが発端になり巻き起こった派閥抗争にてロイ君と激闘を繰り広げて以来お熱。ダンジョンで見かけたら度々アタックする位には主人公の貞操を狙っていた。現在はベルにその矛先が向かいかけているが、比率としてはロイ君の方が高め。ちなみにファーストキスの相手でもある(核地雷)

フィルヴィス→27階層の悪夢がこの世界線では起きていないので、原作よりもディオニュソスを崇拝していない。普通に先代の団長達上位メンバーも健在で、死妖精呼ばわりもされずにエルフの中堅冒険者として名を馳せている。現在は某食人花の一件で人員が減ったヘルメス・ファミリアに貸し出されている。主人公とは特に接点なし。 

春姫→異端児編以前の面識は無い…と、思いきや実は1回すれ違っている。主人公がイシュタル・ファミリアとヤり合う羽目になったのはだいたいヘルメスのせいなので彼女は直接は関わっていないが、それでもお互いに奇妙な縁は感じている。ちなみにロイ君は春姫が元イシュタル・ファミリアだと言う事を知らない。知ったら腰を抜かして吹っ飛ぶ。

イシュタル・ファミリア→ロイ君と過去に激闘を繰り広げた。この時、ロイ君はイシュタル・ファミリア精鋭の戦闘娼婦(バーベラ)を全抜きすると言う前代未聞の事をやらかしており、そのせいで全員から貞操を狙われる羽目になる。今回の一件でロイ君の生存がバレたので、都市外に出たバーベラは一斉に都市への帰還を始めた。たぶんロイ君が童貞を卒業するのは時間の問題だろう。

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