ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
勝つのは堕天か天才か、鬼神か神童か。
あ、勿論堕天はロイ君です。天才では無いので。
〜ロイ視点〜
あれからウィーネをおぶり、避難を続けた俺達。南東の扉まであと2か100
「――――」
夜空を薄く覆っていたうろこ雲が流れ、月光が夜闇を優しく拭い取る。照らし出されるのは砂金や黄金の塊すら凌駕するような、美しい金の長髪。一番俺が顔を合わせたくなかった奴。
「見つけた。やっと……見つけた…!!」
「……レイ、何も言わず、全速力で扉に向かって走れ」
「……しかし」
「行け」
「……ウィーネ、行きましょう」
「う、うん……!?」
アイズから禍々しい程の殺気が立ち昇る。その場に居る全員が圧力に縫い止められた。
「ひっ…!」
「ダメ。全員、動いたら斬るよ」
「脅しか?剣姫様も墜ちたもんだな」
「…………」
っち。言い返せよ何か。
「…まあ良い。で、此処に来たと言う事は異端児達を殺しに来たと言う事で良いな?」
「………そう、だよ」
「…………変わらないなお前は。昔から。仏頂面で、何考えてるか分からない。薄気味悪い奴だ」
昔からそうだった。笑顔が抜け落ちたような顔で、いつも顔はモンスターを睨みつける顔か真顔だけ。笑顔を見たのは……いや、コレは多分、見たわけじゃない。ノーカンだな。兎に角、可愛げの欠片もない女だ。
「……ねぇ」
「……何だよ」
「…私の事……嫌いにっ、なったのっ…!?」
………今さら泣いても遅いんだよ。何もかも。
「……あぁ、嫌いだ。モンスターを斬りつける時の、お前の顔が。返り血浴びても何も感じずに真顔でこっち見てくるお前の顔が。」
「っ……何でっ……昔は、あんなに…!!」
「……昔は昔だ」
それに昔って言うけどお前ももう昔みたいには笑えないじゃん。俺もだけど。
「…なぁ、まだ続けてるのか?」
「……何、を…?」
「復讐」
「……当たり前だよ。モンスターは…!」
「…くっだらねぇ」
「――――」
くっだらね〜。本当にくだらねぇよ。
「……今、なんて…??」
「くっだらねぇって言った」
「………??????」
「与えられた物を受け入れて生きていくってのも……案外悪くない」
「やめて」
「第一、そんな事して何になるよ?お前の周りにも美味い飯もあるし、友達だって居るんだろ?」
「やめてっ…!」
「周りに心配かけてまで、やる意味あるのか?」
「やめてっ!!!!」
うっせ。まあ俺も人の事言えんけどな。でも、流石にコイツは頑固すぎる。俺以上に恵まれてる癖に。
「モンスターはっ!殺さなきゃいけないのっ!!誰かが悲しむ、誰かを傷つける!!」
「そうやって目の前の明らかな
「例外なんて無いっ!!モンスターは、皆そうだよ!牙で、爪で、人を傷つける!!」
「俺はお前がそう思ってる奴らと5年間一緒に過ごして生還したがな」
「………!!!」
…はぁ。
「なぁ」
「………何…?」
「どうしてもダメか?」
「………」
「俺は、まあ、色々あったけど…それでも、レイ達の事、ウィーネの事、…異端児達の事、友達だって思ってるよ」
「ロイっ…!」
「ロイ…!」
ウィーネとレイが嬉しそうに目を潤ませる。
「っ……!」
「頼む。見逃してくれ…ください。認めろなんて、偉そうな事は言えないけど…それでも、諦めたくない。異端児達との出会いを、友情を、無かった事にはしたくない。だから、お願いします」
「僕、からも…お願いします!!」
ベルと一緒に頭を下げる。………コレで行けると良いけどなぁ。
「どんなに、頭を下げられても……!!」
「……アイズさんっ」
…やっぱり。
「私のっ、答えはっ…!!」
「………はぁ」
ベルの言葉も、俺の言葉も届かなかった。
「変わらないっ…!!」
奴の答えは一つ。
「
剣姫の答えにその場が凍り付く。しかし、分かっていたこと。5年前、始めて異端児達に会ったその時から…いつか既にこうなる事は分かっていた。
「待って…待ってくださいっ、アイズさん!?この娘は何も、誰にも危害を加えません!」
泣き叫ぶように叫ぶベル。怯えるウィーネを庇いながら、言葉を打つ。
「……じゃあっ!!」
「っ…!」
憧憬の、初めて聴くであろう感情的な声。思わず立ち竦むベルに、アイズは続けた。
「その
「――――」
コイツはアホだがバカじゃない。天然だが純粋じゃない。あるかもしれない可能性を抱え込んでまで肯定できるほど……愚かじゃない。だから嫌なんだよ。
「私は、できない。そんな事は、絶対に」
「そうだな。お前は愚者じゃないもんな」
「………!」
俺達は愚かだ。ウィーネの暴走だけじゃない。異端児達に知性や理性が有るからこその、敵対する可能性。俺達人間の側が信頼を裏切ってしまう可能性。それを分かっていてなお、自らの信念に従い、無条件に味方しようとしている。
「……分かっていても、それでも味方するんだね…」
「………はい」
「あぁ」
姫は震える手で剣を取り、二人の愚者は呼応するように各々の得物を構えた。時間が来たようだ。
「…………っ…!」
「ぅ、あ…!」
「……っち」
守ると誓った、仲間の為に。護ると誓った、信念の為に。今日も俺は愚者になる。
「ベルっ…!」
「ロイ…!」
ウィーネが、レイが。哀しそうに名前を呼んでくる。
『二人ともっ………!!』
ヘスティア神が、祈りと哀しみを打ち付けてくる。
「……なんで」
ベルの唇が揺れた。
「……ぅぁっ!!」
「何でっ!!」
悪夢を振り払うかのように、姫が走り出す。それを視界の中心にして、二人も走り出した。
「…ちくしょうっ!!」
「………!!」
細剣とナイフ、メイスが交差した。
〜星屑の庭 団欒室〜
アストレア・ファミリア本拠、星屑の庭。紅を基調とした華麗な一室に、正義の女神とその眷属…Lv.4の冒険者、リュー・リオンが其処に居た。
「……」
「…アストレア様?」
悲しそうに目を伏せる主神に、リオンが気づく。
「……ロイは、また愚者と呼ばれるのね」
「……はい。彼は、いつもそうだ。自分の名誉など、どうでもいいかのように扱う」
「実際、どうでもいいらしいわ。ロイは、自分の名誉を…いいえ、自分の全てを道具だと思っている。そればかりか…」
「憎たらしい物だと思っている」
アストレアの言葉にリオンが被せる。その目は何処か遠い所を観ていた。
「実際、彼は自分が嫌いなのでしょうね」
「えぇ。ロイにとって、己とは……弱さの象徴、忌むべき過去の記憶そのもの。それを忘れたくて、無かった事にしたくて…彼は姉と離れた。強くなる為に」
ロイの根底に在る物。それは、自己否定。過去の自分を否定する為、無かった事にする為。その為に彼は茨の道を歩む事を選んだ。
「……彼の生き方は、怖い。凄く、怖い物です。自己否定と嫌悪の先にあるのは、崩壊だ」
「えぇ。でも、私達が居る。そうならない為に、ロキも私達に託してくれた」
瞼を閉じ、昔を想起するアストレア。あの頃とは何もかも違っている。
「アストレア様…」
「なに、リュー?」
「彼が、過去の自分を肯定できる日は、来るのでしょうか?」
「それは…ロイ次第ね。でも…」
星乙女は小さく微笑む。
ロイ・ヴァレンシュタイン
(姉と比べたら)クソ雑魚。同Lv帯では最強。内心は舌打ちが止まらないが、皆が居るのでかなり我慢している。二人きりになったら爆発するだろう。
アイズ・ヴァレンシュタイン
(武力は)最強のお姉ちゃん。折角の再会で最愛の存在に罵倒されてメンタルボコボコ。此処から更に可哀想な目に遭う……が、彼女にも悪い所は在るので若干自業自得。
ベル・クラネル
我らが原作主人公。思ってたよりもずっと二人の仲が悪くてビックリ。この姉弟喧嘩については巻き込まれただけなので、さっさとウィーネ連れて逃げたほうが良い。
異端児の皆さん
巻き込まれた人達。さっさと逃げろ。