ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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5年の差

 

〜ロイ視点〜

 

通りに響く金属音。後ろにレイ達が居る。この道は一本道だ。コイツを何処かに誘導しないと避難もできない。別ルートも…冒険者と遭遇する可能性を考えると論外。

 

「っ……!はあっ!!」

 

「ぐっお…!!」

 

結界にヒビが…!ったく、剣の腹とは言え、容赦ねぇな…!!

 

「何でッ!!何で何で何でッ!!!」

 

「っ…うっせぇよボケッ!!!」

 

喚く頭部目掛けてフルスイング。しかし当たらない。

 

「はッッ!!」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】ッ!!!」

 

「っ!?」

 

「っち…!!」

 

後ろからナイフの双撃を叩き込もうとしたベルを風が阻む。馬鹿げた出力だ。やっぱりスキルが効いている。だが、デバフありきでコレだ。

 

「はぁっ!!!」

 

「っと!!」

 

横一文字に振られたデスペレードを紙一重で避け、態勢を立て直す。ふうっ…。

 

「ロイさん、このままじゃ…」

 

「そうなんだが……どうしようもないんだよコレは。スキル含めてアビリティに差があり過ぎる」

 

恐らく、ステイタスにするとLv.6…全ステータスBくらいか?

 

「何とか耐えて、アイズさんの精神力切れを待つしか無いんですか…?」

 

「いや、あのスキルが発動してる以上、アイツに持久負けと言う概念は無くなる。テンペストの反動も、体力の消耗も、全部帳消しにしてLv.6のパワーをぶつけて来るのが今のアイツだ」

 

・体力及び精神力(マインド)自動回復(オートヒール)

 

・風魔法の効果向上。

 

スキル、【風の宝(アリア・テゾーロ)】の効果だ。階位昇華(レベルブースト)こそ封じられているが、これでも本来のスペックには到底及ばない。それに加えてデバフも喰らってる筈だし、あっちは俺達を殺してしまわないように全力なんて間違いなく出せない筈だ。

 

「っ…ロイっ…!!」

 

「……っち。未練がましく呼んでんじゃねぇっ!!」

 

「……!」

 

マジで喋んな。殺すぞボケ。

 

「ロイさん落ち着いて!」

 

「……フーッ…!……すまん」

 

あ〜ダメだな。キレすぎだ。冷静になれ。お師匠も言ってたろ?

 

「……はぁ。おい、やめたくなれば何時でも剣を置け。俺達はソレを望んでる。お前が異端児達を諦めてくれれば、取り敢えずこの場は文句無い」

 

「……ダメ、だよ。モンスターは殺すの…!!」

 

「やる気のあり過ぎるアホか。救えねえ奴だな」

 

「ロイさん抑えて!」

 

おっと本音が。でももう良いだろ。取り繕う必要もない。さっさと死ね。

 

「ベル、合わせろ!」

 

「はいっ…!」

 

先ずは俺が肉薄。

 

「ゼィァッッッ!!」

 

「っ!!」

 

俺の【撲殺蛮族(バルバロイ)】の効果はとうに切れている。この一撃は唯の力任せ。当然…。

 

「っ……軽いよッッ!!」

 

「っ!?」

 

弾かれる。クソっしっかり上に弾きやがって。防御姿勢が取れない。

 

「ハアッ!!」

 

「ぐっ…!?」

 

ガラ空きの胴に細剣の一閃。結界でも威力を殺しきれず、衝撃が内部にまで伝わってくる。っ……骨にヒビ行ったな。あと1回喰らったら完全に折れる。

 

「だがっ!!」

 

「っ!?」

 

奴は腕を振り切った。間髪入れずにブーツのつま先に仕込んで置いた暗器を蹴り上げるように振る。

 

「ッッ!!」

 

「っらあっ!!」

 

避けようと体勢が崩れた奴の身体。こちらの体勢を素早く立て直し、其処にすかさずメイスを振る。

 

「フッ!」

 

ガキン!!金属同士が擦れ合い、火花が散る。戦鎚は、剣にあっさり受け止められた。

 

「ちっ…!」

 

遠い。余りにも遠い。敵わないなんて頭じゃ理解していた。していたつもりだった。だが…。

 

「こんなにかよ…!」

 

遠すぎる。俺の今まで、全部ぶつけても届かない。残酷なまでの階位(レベル)の差。改めて直視する現実に、苛つきが加速した。

 

「何でッ…!!」

 

「……ハアっ!!」

 

「!」

 

目の前の目標に、憧憬に。メイスと共に殴りかかる。技も何もない、しかし今までの全てを一つ一つに載せた流れるような連撃。

 

「うおおおぉぉぉおおおおッッッ!!」

 

「くっ!フッ!くうっ…!?」

 

休ませるな。全部ぶつけろ。このまま押し切れ。

 

「っ!?」

 

「ふんッッ!!」

 

またもや体勢が崩れた。腰を捻り、体重を乗せたフルスイング。文字通りの全身全霊。コレで…!!

 

「………フッ!」

 

「っ!!」

 

しかし、あっさり弾かれる。5年間、俺が停滞している間、コイツはさらなる飛躍を遂げていた。小手先の技術だけではどうしようもない現実。

 

「終わりッッ!!」

 

「……だが」

 

やっぱり、付け入る隙はあった。昔からコイツは、一度自分から動き出すと周りが見えなくなる。あの頃から全く変わっていない。

 

「熱中しすぎだぜ。姉貴」

 

「っ!?」

 

暗闇に炎の明かりが灯り、鐘の音が響く。

 

 

 

ファイアボルトッッ!!!

 

 

炎雷が、空気を割いた。

 

 

 

〜アイズ視点〜

 

身体が重い。いつもの様に動かない。そして、最愛の肉親と…私は何をしているの?

 

「っ……!はあっ!!」

 

「ぐっお…!!」

 

メイスを避けて剣を振る。結界にヒビが入った。

 

「何でッ!!何で何で何でッ!!!」

 

「っ…うっせぇよボケッ!!!」

 

罵声が鼓膜を裂くように揺らす。痛い。痛すぎる。今までに負ったどんな傷よりも、深く、広く刻み込まれているような気がした。ロイの大振りの攻撃を避ける。直後、嫌な予感を感じ取り後ろに目だけをやるとベルが迫っていた。

 

「はッッ!!」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】ッ!!!」

 

「っ!?」

 

「っち…!!」

 

風を纏い、ベルを吹き飛ばす。

 

「はぁっ!!!」

 

「っと!!」

 

愛剣を一閃し、一旦距離を取る。あちらも追いかけて来ない。今のうちに息を整えなければ…。

 

「っは…っは…!」

 

こんなに呼吸がし辛いと思った事は無かった。こんなに胸が痛む事は無かった。思わず言葉が漏れる。

 

「っ…ロイっ…!!」

 

「……っち。未練がましく呼んでんじゃねぇっ!!」

 

「……!」

 

やめて。そんな目で見ないで。そんなに怒鳴らないで…。

 

「ロイさん落ち着いて!」

 

「……フーッ…!……すまん」

 

そんなに、私の事っ……!

 

「……はぁ。おい、やめたくなれば何時でも剣を置け。俺達はソレを望んでる。お前が異端児達を諦めてくれれば、取り敢えずこの場は文句無い」

 

「……ダメ、だよ。モンスターは殺すの…!!」

 

「やる気のあり過ぎるアホか。救えねえ奴だな」

 

「ロイさん抑えて!」

 

駄目だ。それだけは、できない。目の前の怪物達を、私からロイを奪った奴らを……殺さなきゃ。そうだ、そうすれば良い。どちらかじゃない、どっちも獲るんだ。

 

「ベル、合わせろ!」

 

「はいっ…!」

 

来る。ロイが来る。私の目的は、ロイを誑かした怪物達を殺す事と、ロイと一緒に本拠に帰ること。どっちも叶える!

 

「ゼィァッッッ!!」

 

「っ!!」

 

メイスが頭上に迫る。愛剣で防ぎ、受け止めた。

 

「っ……軽いよッッ!!」

 

「っ!?」

 

ロイはLv.3だと聞いた。何で弱体化したのかは分からないけど、この軽さは本当なんだろう。上に弾く。

 

「ハアッ!!」

 

「ぐっ…!?」

 

すかさず一閃。結界に更にヒビが入り、ロイが顔を歪めた。嫌な感触…もうしたくない。だが、しなければ。私の理想の為に。

 

「だがっ!!」

 

「っ!?」

 

瞬間、ロイの姿がブレる。ブーツの先に…!咄嗟に後ろに身体を逸らすも、余りにも無理な避け方だった。足がもつれて体勢が崩れる。

 

「ッッ!!」

 

「っらあっ!!」

 

鉄の塊が脇腹に迫る。でも、遅い。エアリアルを最大出力。風で背中を押し、体勢を立て直した。剣で受け止める。

 

「フッ!」

 

鋭い金属音。素早く弾き、次に備える。

 

「ちっ…!」

 

また舌打ち……もう嫌だ。聞きたくない。

 

「こんなにかよ…!」

 

…そう。こんなに、私は強くなった。強くなったんだよ?でも、なんで…!

 

「何でッ…!!」

 

「……ハアっ!!」

 

「!」

 

ロイが鬼気迫る表情で駆け出してくる。負けない…大切な、弟なんだ。取り返すんだ、私の、私だけの家族を…!

 

「うおおおぉぉぉおおおおッッッ!!」

 

「くっ!フッ!くうっ…!?」

 

駄目だ、此処で倒れるな。絶対勝つ。凌げ。そう自分に言い聞かせながら、猛攻を受け流す。

 

「っ!?」

 

「ふんッッ!!」

 

くっ…凄い。まさか崩されるなんて。こんなに、強くなったんだね…。

 

「………フッ!」

 

「っ!!」

 

…でも、それはロイだけじゃない。私だってこの5年間必死に強くなったんだ。Lv.5に、Lv.6に。剣を弾き、トドメを差しに走り出す。

 

「終わりッッ!!」

 

「……だが」

 

……違和感。致命的な事を見逃しているような、違和感。……そうだ、ベルは!?

 

「熱中しすぎだぜ。姉貴」

 

「っ!?」

 

暗い路地に炉の明かりが灯り、鐘の音が響く。後ろを見ると、白炎を腕にまとわせたベルが居た。駄目だ、間に合わない。

 

 

 

ファイアボルトッッ!!!

 

 

炎雷が、空気を割いた。

 

 

 






〜補足〜

デバフ時のアイズのオリスキルについて、分かりやすくここに書いておきます。

〈通常時〉

【風の宝(アリア・テゾーロ)】

血縁者からの親愛を受けている間、以下の効果の自動付与。

・早熟する。

・スキル保持者の親愛が続く限り効果持続。

・スキル保持者の親愛の丈により効果向上。


血縁者が近くに居る場合、以下の効果の自動付与。

・一段階の階位昇華(レベルブースト)。

・全能力値アビリティに超高補正。

・体力及び精神力マインドの自動回復(オートヒール)。

・風魔法の効果向上。
 

〈デバフ時〉

【風の宝(アリア・テゾーロ)】 

血縁者が近くに居る場合、以下の効果の自動付与。

・全能力値アビリティに高補正。

・体力及び精神力マインドの自動回復(オートヒール)。

・風魔法の効果向上。


レベルブーストは完全に無くなります。が、デバフ内容の精神力と体力の低下はスキルのオートヒールが発動しているのであって無いような物です(気怠さや身体の重さを感じる程度)。つまりお姉ちゃんモード(仮称)のアイズは、絶対に壊れない武器と絶対に壊れない身体で唯ですら高いスペックを跳ね上げて無限に殴ってくる人間のようなナニかです。誰だこんな化物作ったの(お前)。

 
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