ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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最強の弟

 

〜ロイ視点〜 

 

炎雷が風の結界に巻き込まれ、火柱が上がる。しかし、風は消えなかった。それどころか、炎を霧散させて行く。

 

「……これ、でも…!」

 

「…一次的でも、良かったんだがな」

 

だが、それでも奴を止めるには至らなかった。現状、俺達が周りを巻き込まずに出せる最大火力。

 

「……分かった」

 

「何?」

 

「気持ち、良く分かったよ。此処を、通して欲しいんだね」

 

「気色悪いから早く本題を話せ」

 

「……でも、通さない」

 

「あぁ、だろうな」

 

「私は、認める訳にはいかない。私から家族(ロイ)を奪ったから」

 

「キッショ。ベルの爪の垢でも煎じて飲めよ」

 

一々キショいねん。何や奪ったって。元々奪う以前の関係だっただろうが。

 

「どんなに助けられたからって、怪物は怪物だよ。人々から、笑顔を奪う!」

 

「少なくとも今俺の笑顔を一番奪ってるのはお前だよ」

 

「…ベルも、本気なの?怪物なんだよ?」

 

「あの娘を、ウィーネを助けたいんです!」

 

「本当に、本気で言っているの?人じゃない、怪物なんだよ?」

 

「普通のモンスターとは違う!話せるんです、笑い合えるんです!手を取り合える――僕達と同じ感情を持っています!」

 

「違う、同じなんかじゃない。人類(みんな)は、そんな事できない!」

 

できない……か。

 

「本当にそうか?」

 

「……何を」

 

「本当にできないかって、言ってる」

 

「…できないよ。皆、モンスターの事を沢山憎んでる」

 

「ソレを塗りつぶすだけの、功績を挙げてもか?」

 

「……それ、は…」

 

ソレを塗りつぶすだけの、功績。つまりは…

 

「……黒竜、討伐ですね」

 

「あぁ。そうだ」

 

レイの言葉に同調する。黒竜。三大冒険者依頼最後の一つである、隻眼の黒竜の事だ。元々リド、レイ、グロスには話してある。一番現実的な案として。

 

「俺だって殺したいよ。お袋と親父の仇だ。それに参加してもらおうと思ってる」

 

「ダメだよ…そんなのダメ。あの竜は、黒竜は、私達の手で殺さなきゃいけない」

 

「出来ると思ってるのか?」

 

「出来るよ…してみせる。私が、もっと強くなって…」

 

「理想の話はしていない。現実的な話だ。お前もあの場に居たなら分かるだろ?あの魔女の圧倒的な強さを」

 

7年前、大抗争の最終決戦にて。俺達は魔女…静寂のアルフィアと対峙した。不可視かつ高威力長射程のサタナス・ヴェーリオン。あらゆる魔法を無効化する静寂の園(シレンティウム・エデン)。その圧倒的な力を、この世の冒険者の頂点を俺達は味わった。何とか持久戦に持ち込んで勝てたが…。

 

「で、お前で勝てると思うか?黒竜に。アレでも勝てなかった相手に」

 

「……」

 

現実的に考えて、無理だ。神時代最強と謳われたツートップの派閥でさえ勝てなかったのに、今のオラリオでは…戦力で考えたら、圧倒的に下。

 

「三度目は無い。今度しくじったら、全て終わる。だから、冒険者だけでない、別の方向からもアプローチをかけなければダメだ。その為の、異端児達の参戦だ」

 

「黒竜討伐の為に、見逃せって事…?」

 

「まあ、そうだな。そうなるよ」

 

その為にはやらなきゃいけない事がまだまだ沢山あるが…それは後程だな。

 

「…モンスターを殺す為に、モンスターと協力するの?」

 

「…あ〜…うん、其処は俺も最初はどうかと思ったが…異端児達自体がダンジョンの中でも迫害されてる奴らだからな。本人達が良いって言ってるから良いかなって」

 

「他の皆には、どう説明するの?」

 

「其処はアストレア様とガネーシャ神のご高名をお借りして、あとは…まあ、ベルに出世してもらって何とか説得だな」

 

「僕ですか!?」

 

当たり前。俺が出世しても色々やらかし過ぎてて無理だろう。まだやらかしが少ないベルの方が良い。

 

「……でも、でもっ…!」

 

「理想だけでも、現実だけでも黒竜は殺せない。両方あって初めて、スタートラインに立てる。そう言う奴だろ」

 

正直、もう最強派閥達だけが出向いてもどうにかなる存在じゃ無いと思われる。黒竜のせいで、どれだけの人間が不幸になったか。もう失敗は許されない以上、少しでも確率が高い方に賭けるべきだ。

 

「…………やっぱり、出来ない。私は、私はっ…!」

 

「………OK、ベル、レイ達を連れて行ってくれ。二人だけでやりたい」

 

「で、でも…」

 

「死にはしないさ。色々言いたい事も有るしな」

 

「…行かせると思う?」

 

「行かせても良いだろ?お前なら俺を倒してからでも追いつける筈だ」

 

正直もう限界だ。俺の我慢も。

 

「……行って。後で、絶対追いつく…!」

 

「…皆、こっちに!」

 

ベルの指示でレイ達が通り過ぎていく。それを守るようにベルも行った。

 

「…コレで二人だけ」

 

「…うん」

 

「……なぁ、何で俺が、お前の元を離れたと思う?」

 

話は変わるが。コッチも何れは話さなきゃいけなかったことだ。後で時間作るつもりだったが…もう此処で済ませてしまおう。

 

「……分からない」

 

「……ま、仕方ないか。ロクに話し合いもせずに別れちゃったもんな」

 

「…何で、なの?」

 

「……アレだ。えーっと…虐められてた…って言うかな」

 

「………………………は?

 

「…事実だぜ?最も、虐めてた奴等は大抗争でファミリアごと消えたがな」

 

「…………!!!」

 

当時の俺は…姉の付き人兼サポーターみたいな感じだった。そしてコイツは、スキルの影響で冒険者になって僅か3ヶ月でLv.2に。暗黒期でどんな冒険者も常に背後を警戒して、冒険を避けていた時に、破竹の進撃。希望を見る者も居れば、嫉妬するものも居る。

 

「……なん……ぇ?」

 

「当時は皆余裕が無かったからな…俺もLv.1だし。フィンさん達も、お師匠も、忙しそうにしてたから俺も何も言えなかった。ただ耐えてれば、いつか終わる筈だってな」

 

「………そんな」

 

「姉と比べて明らかに冒険者としての才能が無く、お荷物も良い所の世間知らずの餓鬼……連中にとって見れば、憂さ晴らしするには丁度いい存在だったろうな」

 

日を追うごとに増えていく闇派閥の人員、それに伴う襲撃への対処で、ガネーシャ・ファミリアや上級冒険者達は手一杯だった。今思えば、正直に打ち明けてれば、それでもこんなに話が拗れる事は無かったんだろう。ロキはお前は悪く無いと言ってくれたが…俺はそうは思えなかった。

 

「私は…!」

 

「お前も毎日ダンジョンだったし」

 

「っ…!」

 

当時のコイツなんて言わずもがな、お師匠達が止めなければ毎日懲りずにダンジョン漬け。座学の日以外はほぼ連れ回されてた。そんな姉に必死について行く為に俺も一人で潜ってたんだが…それが良くなかった。

 

「耐えて耐えて耐えて…限界が来た。いつからだったっけか……お前に嫉妬するようになったのは」

 

「嫉妬……?」

 

「ああ。何でお前だけなんだってな」

 

「私、だけ……って、もしかして…」

 

エアリアル(それ)だよ」

 

俺に無くて姉だけにあったもの。それはただ一つ、その風……エアリアルだ。…いや、スキルも何だが、それは置いておいて。

 

「羨ましかったよ。何でお前だけなんだってな」

 

「それ、は……」

 

エアリアル。姉だけに許された、世界最強の付与魔法。その風は万物を阻み、使用者に全てを貫く速さと鋭さを与える。

 

「正直、今も疑ってるよ。ホントに血繋がってるのか?」

 

繋がってるっ!!!

 

うっせ。叫ぶなよ。

 

「それはっ、それだけは言っちゃダメっ!ロイは、私の弟なのっ!!」

 

「……まあ良い。兎に角、俺は羨ましかった。俺に必要だった物、全て持ってたお前が」

 

あの風さえあれば、俺は……もっと、多くの人を救えた。悲しまずに済んだ。結果論だけどな。

 

「……私だって」

 

「…あ?」

 

「私だって羨ましかった。本当は、もっと、もっと一緒に居たかったのに…!私がお姉ちゃんなのに!其処に、あの女達が収まって……寂しかった!」

 

「…団長達は関係ない。俺が選んだ道だ」

 

「でも、ロイはそのせいで死んだ」

 

「……っち」

 

痛い所突きやがって。

 

「ロイが自分であの女達を選んだ、それは分かってるよ。でも、そのせいで君は傷ついて、死んじゃった…。私はそれも許せない」

 

「…あの場ではあれが最善だった。あの人達を生かす事が、この世界の未来に最善だった」

 

「そんな事聞いてない。この世界よりも、私はロイの方が大事だよ」

 

「俺よりも復讐を選んだのにか?」

 

「ちがっ……」

 

「事実だろ。今こうして異端児達を追いかけてる時点で、お前は俺の事なんてどうでもい……ガッ!?」

 

瞬間。結界が割れ、俺の首に鈍い衝撃が走った。目の前には姉の顔。

 

「その先は、言わないで」

 

「っはっ…!事実を言って、何が悪いっ…!お前はっ…!」

 

「言うな」

 

「っ…げほっ……クソっ、離せっ!!」

 

「…………」

 

「カハッ…!」

 

手が離される。くっそ本気でやりやがったな…!?

 

「っち…何なんだよお前…!」

 

「絶対、それだけは言わせない。誰が何と言おうと、私はロイのお姉ちゃんで、ロイは私の弟」

 

「その、お前が言う…『アイズ・ヴァレンシュタインの弟』という称号が、俺を苦しめた」

 

「………ごめん。何にも、気づかなかった。何にも、分かってなかった…!」  

 

「もう遅えよ…何もかもな」

 

だってそうだろ?虐めた奴等は天に還ったし、俺がコイツの弟だと知っている奴なんて一握り。解決はしてないが、時が経ちすぎている。既に終わった事だ。

 

「……ねえ、私達、やり直せない…?」

 

「………無理だな。お前が異端児達を追い続ける限り」

 

再び剣を向けてくる。来るなぁ…。

 

「……っ!

 

「当たんねぇよ」

 

下手くそ。剣先がブレブレだぞ。速度も遅い。

 

「もうやだっ…!」

 

「だったら剣を置け」

 

「出来ないよ…」

 

「だったら続ければ良いさ」

 

幾らでも付き合ってやるよ。そう言い終わる前に、再び剣が迫った。

 

 

〜アーディ視点〜

 

「よし…これで全部だね!」

 

「はっ。現在確認されている闇派閥は全て捕縛しました」

 

よーし……っとと。読者の皆さまこんにちは!品行方正で人懐こくてシャクティお姉ちゃんの妹で、Lv.5のアーディ・ヴァルマです。現在私は部隊を率いて、南西の扉付近でロキ・ファミリアを襲った闇派閥の処理をしています!

 

「……うーん」

 

「どうしました?」

 

「嫌な感じがする…」

 

「は、はぁ…?」

 

嫌な感じ。本当に嫌な感じ。こんな気持ちに襲われたのは、あの白黒エルフ姉妹に襲われた時以来。何となくだけど、ロイの所に行かなきゃいけない感じがする。

 

「ごめん、此処任せて良い?ちょっと言ってくる!」

 

「大丈夫ですが……旦那さ……黒衣の蛮族(ブラック・バルバロイ)の所ですか?突然何故…?」

 

「分かんない、けど、嫌な感じなの」

 

「……分かりました。事後処理はこちらでやっておきます」

 

「ありがと、任せる!」

 

冷気が這う石畳を蹴り、駆け出す。ロイは……作戦が順調に行ってるなら、南東の何処かに居る筈。

 

「急がなきゃ…!」

 

もう、死なせない。私の英雄を。

 

 





〜原作キャラとの関係+本編だとたぶん書くことが無い裏話〜

隻眼の黒竜→親の仇。姉程憎んでは居ないが、世界の現状を観ていつか殺さなきゃいけないと思っている。

アリア、アルバート→実親(たぶん)。主人公の中では顔だけ覚えている程度。特に親っぽい事をされた覚えも無く、正直血の繋がりも疑い始めているが、義理は果たそうとしている。

アルフィア→大抗争でのラスボス。英雄の作法をたっぷり教え込まれた。主人公からしたら完全に上位互換であり、一種の強さの基準になっている。ド田舎で隠居中(まだアラサーなのにね)

アポロン&ヒュアキントス→オラリオ追放後に謎の襲撃を受けて長期入院中。いったい何フィアが教会壊された腹いせに襲撃したんだ…?

白黒エルフ姉妹→クレイジーサイコシスターズ。現在は罪人都市ベルゲンに投獄中………ん?

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