ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
経も仏も そっちのけ
墨染めの彼奴が 伸し歩く
〜ロイ視点〜
あれから数分。時間感覚も覚束なくなってきた。それにしても速い。速すぎる。Lv.4の時ですらギリギリだったんだ、反応はできるが……っ!?
「ゲフッ!?」
「もっともっと♡」
っ…!?二刀流…!?
「っち!!」
「こうでしょっ!?お揃いだねっ♡」
「クソったれ…!」
もう学習しやがった。そりゃ俺のは我流だから拙いが、それでも実戦で鍛えてきた経験値がある。それをこうも簡単に…!
「フッ!」
「はっ!」
「やあっ!!」
「づっ!!」
いっ……掠った。頰から血が流れる。
「もっと♡」
「があっ!?」
腕の肉が削ぎ落とされる。深くないのが幸いか…!
「くっそ…っ!!」
「きゃっ!?」
腕に刺さったナイフを抜き、閃光弾と共に投げ返す。何とか距離を取った。
「っ…!」
結界が再展開可能になった。削ぎ落とされた傷口に密着するように展開し、止血する。
「フーッ…!」
深呼吸。ポーションを取り出し、飲んだ。アイツは目が眩んでいる。
「う〜っ……よしっ!もうっ、酷いよダーリン!」
「酷いのはどっちだクソアマ…人の腕ケバブみたいに削ぎ落としやがって…!」
はーっ……はあ、ま、殺し愛だしな。こういう奴には言ってもしょうがない。
「じゃあ、まだまだ行くよっ♡」
「くたばれっ!」
黒刃が迫った。
〜フレイヤ・ファミリア視点〜
迷宮街の一角。一人の
「アレン様!」
「あぁ?」
其処に飛び込む銀の影。フレイヤ・ファミリアの侍従頭、
「はぁっ…はぁっ………フレイヤ様から、命令です……!」
「何だと?あのガキはどうする気だ?」
「他の
「何があった?」
「緊急事態です、ロイが、ロイが…!」
「……ロイがどうした?」
想定外の名に仏頂面を更に顰めるアレン。フレイヤ・ファミリア幹部にはこの騒動が起きる前から、既にフレイヤの口から生存が伝えられていた。フレイヤ・ファミリア幹部の中でも二番目程にロイとの繋がりが有ったのがアレンである。
「強大な異端児と交戦、劣勢です…!」
「……っち。あの馬鹿ガキが…5年前あんだけシバいてやったのにまだシバかれ足りねぇか…!」
「ヘイズは…!」
「広場だ。先に行ってるぞ」
「お願いします…!」
苛立ちを抱え駆け出す黒猫。獣人の優れた感覚を頼りに現場に向かった。
〜ロイ視点〜
「ゴボッ…!」
「あ〜…限界かぁ…」
ゲホッ………内臓逝ったか…口から血が止まらん。結界張ってても衝撃が突き抜けてきた…。
「ガハッ……んぐっ…!」
「わっ……血ごと飲んでる…」
「勿体ないだろ…?」
最後のポーションを血と一緒に飲み込む。マシになった。
「……まだやれるぞ…!」
「そうこなくっちゃ♡」
再び剣を構え直す。メイスはもう限界だろう。投げよう。
「……フンッ!」
「わっと!」
後でどうせ拾うんだ、もうどうでも良い。兎に角時間を稼がなければ。
「まだまだっ!」
「素敵っ♡」
痛みを飲み込み、剣を振った。
〜アリーゼ視点〜
「はっ、はっ、はっ…!」
「ふっ…!」
早く、速く、疾く。もっと疾く脚を動かせ。こうしている間にもロイは死にかけてる。
「はっ、はっ、はっ…!」
「ふっ、ふっ…!」
輝夜も無言で腕を振っている。目元は歪み、眉間に皺が寄っている。思い出しているのだ、あの日を。
「っ……お願いっ…!」
この世に運命があるのなら、彼を死なせないで。
〜フレイヤ・ファミリア視点〜
広場を囲む民家の屋根上に、黄金が杖を携えて佇んでいた。
「ヘイズっ!」
「あれ?ヘルンじゃないですか。どうしたんですか〜?」
間延びした少女の声。フレイヤ・ファミリアの
「ロイが!」
「すぐ行きます。場所は?」
「ダイダロス通り南東…!」
「了解」
阿吽の呼吸。まさにその言葉が似合うほどの、必要最低限の情報共有。驚く事も無く、薄紅色の髪を翻して走り出した。
「ま〜たどんな無茶してるんでしょうかねぇ…?」
〜ロイ視点〜
「ぐっあ…!?」
「素敵だよダーリン♡」
身体中から血が溢れる。裂傷多数、頭も痛くなってきた。血を流しすぎたか。
「でも、そろそろでしょ?段々動きが鈍ってる」
「……随分と、残念そうだな?」
「ちょっと残念。でも、生まれ変わってもまた探すよ。ダーリンは、生まれ変わってもダーリンだから」
「バカ言え…そんな事ある訳ないだろ…死んだら皆骨だけだ…!」
死は死でしかない。死んだら何も残らない。俺は…特殊だが。
「冷たいダーリンも素敵♡じゃ、行くね?」
「ハハッ…!」
此処までか…?マトモに身体が動かん。いや、まだだ、こんな所で終われな…!?
「じゃあ…ねっ!」
「っ!」
身を捩る……あ、ダメだ心臓に当たる。終わっ…。
迫っていた剣がジャガーノートの身体ごと弾かれ、宙を舞う。うぉ…。
「え…!?」
「コイツが例の……随分な大物だな」
「アレンさん…ありがとうございます」
危ね。いや〜マジで感謝だわ。当たってたら終わりだった。こちらフレイヤ・ファミリア幹部のアレンさん。5年前に散々痛めつけ……シバかれ……鍛えてもらった、恩人である。恩人である(大事なことなので2回言いました)
「ありがとうございますじゃねぇ。俺と猪野郎があんだけシバいてやったのに何だこのザマは。芸人根性もいい加減にしやがれ」
「酷っ!?酷くないですか!?別にやりたくて死にかけてる訳じゃないんですが!?」
「うるせぇ死ね」
「酷っ」
厳しさは5年経っても変わってなかった。嬉しいような悲しいような…。やっぱ悲しいわ。死にかけてる人にかける言葉かこれが?
「で?何なんだあのアマは?」
「5年前の俺の死因です」
「そうじゃねぇ頭湧いてんのか。どういう戦り方すんだって話だボケ」
「魔法跳ね返します。貴方と同じくらい速くてそれでぶった斬ってきます。剣は俺がフルスイングしても折れませんし、たぶん無限に出せます」
「……何で生きてんだお前」
「酷っ」
罵倒の嵐。精神的に殴られてる。あ〜もうやる気無くした〜!
「も〜っ。私のダーリンイジメないでよ!ダーリンをイジメて良いのは私だけ!」
「お前もお前で頭湧いてんな。頭湧いてる同士お似合いじゃねぇか宜しくやってろバカな番共が」
「ひどっ」
良いぞもっと言ってやって……いや遠回しに俺も罵倒されてる。やっぱりやめてくれ。
「えっと…え、始めて良い?」
「何時でも来い。テメェなんざ片手で十分だ」
「言ったな〜?最初っから本気で行くよッ!」
「さっさと来い」
そして喧嘩っ早い。雑に戦闘が始まった。
〜原作キャラとの関係〜
アレン→頼れる兄貴分。大抗争で暴れ回っている所をアレンが目に付けフレイヤに報告、大抗争後の一般団員の戦力強化の意味も兼ねて
ヘイズ→超強化が入ったヒーラー。現状ロイ君に矢印を向けている女性の中では一番歳が近い。
ヘルン→バカな主神のせいで二股かける羽目になった可哀想な人。顔を合わせた事はあるが、喋った事は無い。(ロイ君から見た場合)ロイ君が生きてたと分かった時はちょっとウルッと来て、それと同時にベルへの感情があったので申し訳ない気持ちになった。
フレイヤ→ロイ君に対しては割と過保護でチキン。陰ながら応援している。