ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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大抗争編は可能な限り纏めていきますが、少し長くなるかもしれません。お付き合いお願いします。

追記 誤字報告ありがとうございます。修正しました。


アストレア・レコード編
邪悪胎動 壱


〜7年前 ダイダロス通り 地下水路 AM2:00〜

 

「はぁっ、はあッ、はぁッ…!」

 

深夜、草木も眠る丑三つ時。フード付きのローブを身に纏った一人の男が地下水路を奔っていた。

 

「クソっ、クソったれ、なんで、なんでアイツが…!」

 

男の名は分からない。もしかしたら名前が無かったのかもしれないし、あったのかもしれない。だが、男にとっては今はそんな事どうでも良かった。

 

「っ!!」

 

不意に、脚を止める。行き止まりと言う訳ではない、魔石灯で照らされている男の足元以外は何もかもが黒く塗り潰された暗闇。その暗闇に、男の眼と身体は縫い付けられた。

 

「っ…く、来るなぁっ!」

 

「……」

 

コツン。誰かの靴底が水路の石床とぶつかる音。ソレが響いたと認識した瞬間、闇から小さい影が飛び出る。身長140C…いや、もう少し小さい。闇を歩くには余りにも不釣り合いな背丈のソレが、メイスを構える。

 

「く、クソっ…こんな…こんな所でぇぇぇ!」

 

「…!」

 

メイスが振り下ろされた。

 

 

〜ダイダロス通り 地下水路出口〜

 

地下水路を捕縛した闇派閥(イヴィルス)を引き摺りながら脱出する。其処にはガネーシャ・ファミリアの団員達が居た。

 

「後処理お願いします」

 

「……相変わらず凄いですね。まだ六歳でしょ?」

 

「まだまだですよ…Lv.3ですから」

 

「普通の冒険者は六歳でLv.3まで行きませんよ……はい、確かに預かりました。拠点の場所は情報通りですか?」

 

「はい。地図通りに行けば迷う事も無いと思います」

 

「了解です。報酬の方は何時もので?」

 

「はい。ファミリア宛てに八割で送っといて下さい」

 

現在午前2:30。今日は地下水路で魔石製品の大規模取引をしていた闇派閥を一網打尽にした。裏のブローカーも多数捕まえたし、コレで暫くは派手に動かないだろう。

 

「それでは、此方残り二割です」

 

「ありがとうございます」

 

中くらいの麻袋を受け取る。…重いな。でも道具の手入れだの貯金だのでほぼ飛んで行くだろう。冒険者とは色々かかる職業なのである。

 

「今日はもうお休みですか?」

 

「ええ。……本音を言えばダンジョンに行きたいんですが、団長に怒られるので」

 

「ははは…その方が良いでしょうね。それでは、我々は残りの連行がありますので…」

 

「よろしくお願いします」

 

ガネーシャ・ファミリアが大勢で水路内に入っていく。一応広間で取引に当たっていた闇派閥とブローカーは全員拘束しておいた。問題無いだろうし、帰ろう。

 

「……眠っ」

 

目を擦りながら宿を目指した。

 

 

〜宿屋・星空の灯〜

 

「……」

 

「いらっしゃい…ってお前さんかい。客かと思ったよ」

 

「こんな時間まで起きて…大丈夫なんですか?おばさん」

 

「年寄り舐めるんじゃないよ。昼間は娘が番してくれるし、大丈夫さ。ほら、さっさと眠った」

 

「へいへい」

 

宿屋の女将に急かされながら階段を昇る。此処は星空の灯。名前で察せると思うが、アストレア・ファミリアが結成当初お世話になっていた宿らしい。今は星屑の庭があるので利用していないが…アストレア様が直々に斡旋してくれた、各部屋シャワールーム付きの良い宿である。

 

「………ふぅっ」

 

軽装の鎧を脱ぎ捨て、シャワールームに直行する。明日からは珍しく日勤帯だ…最近今日みたいな仕事も増えてるし、何か嫌な予感がしてならない。

 

「……ま、何とかするしかないか」

 

水栓の蛇口を捻り、シャワーを出す。熱い湯が身体に沁みる。明日は忙しくなりそうだ。早めに休もう。

 

 

 

〜翌日〜

 

「ふぁ…」

 

ベッドから起き上がる。……ってまだ5時か?日に日にショートスリーパー?って奴になって行ってるな。目が覚めちゃったし、散歩でもしようか。宿の階段を降りる。

 

「……」

 

「あら?お早いですねロイさん。お出かけですか?」

 

「目が覚めちゃったものですから。散歩行ってきます」

 

此方は女将の娘さん。朝や昼間は何時もカウンターに立っている。

 

「睡眠不足だと背が伸びませんよ〜?」

 

「どうせチビですよ…」

 

一応六歳では高い方らしい。でも、嫌な予感がする。まさかコレから本当に伸びないとか無いよな…?

 

「いってきます」

 

「いってらっしゃい、ロイさん」

 

宿屋を出た。

 

 

〜西のメインストリート〜

 

「ん〜…!」

 

あ〜空気が美味い。朝の空気ってなんでこんなに清々しいのか。ちなみに此処は西のメインストリート。星空の灯はこの西のメインストリートからちょっと入った路地にある。散歩するには此処は最高の通りなんだが、個人的に苦手な所が一つある。それは……。

 

「ロイさ〜ん♡」

 

「……シルさん」

 

豊穣の女主人の前を確実に通る羽目になる事。だって宿に続く路地が30Mも離れてないんだ、避けようが無い。

 

「今日も可愛いですねぇロイさん。思わず食べたくなっちゃう♡」

 

「其処はカッコいいって言って欲しいんですけど…」

 

「ん〜…あともうちょっと背が伸びたらですかね?」

 

僕も男なんですが。可愛いよりカッコいいが良いんですが。

 

「それより、今日は夜警は無しなんですか?随分とお早いみたいですけど…」

 

「今日は無しです……何ですかその目は」

 

「今日、ロイさんに是非食べに来てほしいな〜って…!」

 

シルさんの薄鈍色の瞳がじっと見つめて来る。何でこう誘ってくるかな……あ、やべぇ財布ポケットに入れっぱなしだった。夜に収入があったからパンパンだ。目ざといな…。

 

「……分かりました、夜に来ますね」

 

「やったあ!約束ですよ?じゃ、コレ、サービスです!」

 

「…コレは?」

 

アミュレット…いや、この感じ、魔道具…冒険者用装身具(アクセサリー)か?

 

「冒険者用装身具(アクセサリー)ですか?」

 

「正解です♡やっぱりロイさんは凄いですね!」

 

「いや凄いですねじゃなくて…こんな高いの貰えませんよ」

 

使われている材料の質も高い。緑色の宝石が使われた、綺麗なアミュレットだ。付与されている効果は分からないが…。

 

「駄目です、貰ってください!お客さんから頂いた物なんですけど…ちょっと持て余しちゃって。テヘッ?」

 

「テヘッ?じゃないですよシルさん…他の男の人から貰ったものを別の男に渡さないでください…」

 

「まあまあ、兎に角、貰っちゃって下さい!」

 

グイグイ押し付けてくるシルさん。これ貰わないと終わらないやつだ…ダルっ。

 

「ぜーったいに、肌身放さず着けてくださいね!」

 

「へいへい…」

 

ペンダントを首から下げる。…後で解析はしておくか。

 

「それじゃ、私戻りますね。今日も頑張ってくださ〜い♡」

 

「……行っちゃった」

 

ったく…相変わらず強引なんだから。まあ良いか。先に進んだ。

 

〜星の灯 自室〜

 

「ん〜…」

 

あれから特に何も無かったので宿に戻ってきてしまった。今は貰ったペンダントを視ている最中。

 

「……身代わりか?」

 

片目のキズミで細部を細かく見ながら、神秘の発展アビリティで視ていく。このアビリティ、結構応用が効くのだ。

 

「装着者の危機に砕け散って1回だけダメージを肩代わりする……知らずにプレゼントしたのか、知っててプレゼントしたのか…」

 

どうでも良いと言えばそうなのだが、この暗黒期のオラリオだ。どうしても勘繰ってしまう。それに…

 

「この跡は…」

 

金属部分に彫られていたであろう、何かの徽章。削られ、念入りに消されているが、跡から何か書かれていたのは明白だ。

 

「……まあ良い、材料さえ調達できれば複製できそうだ。一つ、二つくらいは複製しておくか」

 

念の為、だ。オラリオは物騒だからな。

 

 

〜北区 工業地帯〜

 

「やっべぇ遅れた…」

 

熱中しすぎたな。今日は団長達とパトロールだったのに。

 

「あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜っ!」

 

…早速か。

 

 

 

〜リオン視点〜 

 

昨日襲撃があった魔石工場がある北区をパトロールしていたリオンとアリーゼ。二人は自分たちが確かに助けた物を噛み締めながら、パトロールを続けていた。

 

「オラリオに平和をもたらす為に、今は少しでも…!」

 

「あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜っ!」

 

その時だった。驚愕するリュー達の視線から、情けない男の悲鳴が聞こえて来たのは。

 

「ははっ!いただきだぁ!」

 

「俺の全財産444ヴァリスがぁ!誰か取り返してぇぇぇぇぇぇん!」

 

荒々しい胴間声は財布を奪った暴漢のモノ。そして今も連なる情けない声は、財布を奪われた『神』のものだ。

 

「アレって男神様?神からサイフをぶんどるなんて世も末ね!というか所持金が微妙にショボいわ!神様なのに!」

 

「言っている場合ですか!早く捕まえ…!」

 

その時。頭上から黒い塊が墜ちてくる。

 

「はいはい。其処まで」

 

「ぐえっ!?」

 

暴漢はその黒い塊にあっという間に捻じ伏せられ、地面を舐める事になった。黒い塊の正体は…。

 

「…ロイ」

 

「…あ、何だ居たの?」

 

「何だ居たの?ではありません!遅刻ですよ!」

 

「其処はごめん。ちょっと熱中し過ぎた」

 

「……!」

 

遅刻したと言うのにこの態度。そして指摘すればアッサリ謝る。行き場の無くなった怒りを胸に、リオンは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の悪童を除かなければならぬと決意した。

 

「其処までよ二人とも!私のこの完璧フェイスを見て落ち着きなさい!」

 

「俺は落ち着いてますよ…でも相変わらず美少女ですね」

 

「ふ、ふっふーん!そうでしょ!?やっぱり私は完璧美少女ね!」

 

「……」

 

リオンは見逃さなかった。アリーゼの耳が若干赤くなっている事を。でも言わない事にした。幾らポンコツとは言えどそこら辺の……乙女としての尊厳と、この場の空気は読めるのである。

 

「ち、ちくしょう離しやがれ!その真っ黒なカッコウは…テメェ【黒衣の蛮族(ブラック・バルバロイ)】だな!?」

 

「知ってるなら話は早い。大人しくしてもらおう」

 

「そーだよ。ダメだよ悪い事しちゃ。お金は働いて、自分の手で貰わないと」

 

「…アーディか」

 

「ふっふーん。久しぶりだねロイ?」

 

や(・)は(・)り(・)、その少女は可憐だった。

アリーゼが溌剌とした太陽のような明るさを持つなら、彼女が纏うのは春風のような穏やかさ。その鈴の音のような声色一つとっても、生来の優しさが滲み出ている。

 

「アーディ!」

 

昨夜襲撃された魔石工場で会った知己の一人に、リオンは目を剥く。そして此処に意図せずして、暗黒期のオラリオを照らす【三光(トリプルルーキー)】が揃ったのだった。

 

 

〜ロイ視点〜

 

「そうだよ!品行方正で人懐こくてシャクティお姉ちゃんの妹で、リオン達と同じLv.3のアーディ・ヴァルマだよ! じゃじゃーん!」

 

「「いったい誰に説明してるん(だよ)(ですか…)」」

 

リオンとハモった。何か嫌だな。

 

「…ロイ、被せないでください」

 

「わざとじゃねぇよ」

 

「はいはい二人とも、喧嘩しない!折角のイケメンと美人が台無しだよ!ほら、にーっ!」

 

とても笑う気にはなれないが、取り敢えず笑っておこう。

 

「にーっ…」

 

「……相変わらずガチガチだけど、良いや!それにしても今日も綺麗だねリオン!いい匂いもするし…抱き着いてもいーい?」

 

「話を聞いて下さい」

 

「フフーン!私は昨日しっかりリオンを抱き枕にして寝たわ!リオンったら照れちゃって可愛かったんだから!」

 

「私の周りには話を聞かない人が多すぎる!!」

 

「大変だなリオン」

 

「次はロイね!」

 

「」

 

は???何でコッチ?

 

「あはは。冗談は一旦置いてといて…盗んだ物は返してねおじさん」

 

「ぐううぅ…!」

 

抑えている暴漢が唸る。必死に立ち上がろうとしているが、神の恩恵(ファルナ)持ちの膂力の前にはピクリとも動けない。

 

「……あー、クソっ!もう詰んだ!俺の人生!好きにしやがれ!!」

 

「凄い!清々しいくらいに開き直ったわ!」

 

抵抗を諦め、両手両足を地面に投げ出す暴漢。抑えるのを止め、上からどく。横では「ややこしくなるので貴女(アリーゼ)は黙っていて下さい」とリオンがアリーゼを抑止していた。

 

「おめえ等みたいな強い連中には分かんねえだろうな!こんな惨めな真似して、食い扶持稼ぐ浮浪者(おれたち)の事なんてよ!仕事場を奪われれば店も開けねえ!どこもかしこも事件事件で、余裕がねえ!」

 

その言葉を示すように、男はくたびれた服を着ていた。

冒険者でも無いのに鎧を身に纏っているが、それもこの暗黒期を生き抜く知恵なのだろう。無精髭を生やしたおおよそ中年のヒューマンは、己の主張をまくし立てた。

 

「職に溢れた奴なんて、ごまんと居るんだ!それもこれも、お前等冒険者がさっさと悪党を追い出さないからだ!」

 

隣のリオンは目を伏せる。どうせ一理あるとか考えているのだろう。だが、所詮犯罪は犯罪である。

 

「そうさ!俺みたいな奴が居るのは、全部お前等のせいだ!俺達は、被害者だ!!」

 

アーディが一歩前に出て、男の前に立つ。

 

「それが、貴方の言い分?」

 

「えっ…」

 

「でも、悪い事は悪い事だよね?貴方が奪われた分だけ何かを奪えば、貴方と同じ思いをする人が出てきちゃうよ?」

 

アーディの声は、咎めても、責めてもいなかった。ただ単純に、質問を投げかけているだけ。

 

「今の貴方が、今の貴方みたいな人を作り出しちゃうかもしれない。私達が手を尽くす前に」

 

「そ、それは…」

 

詰め寄られた訳でもないのに、暴漢は言葉を詰まらせる。その様子をみたアーディはにっこり笑った。

 

「だからさ、誓って?」

 

「は?」

 

「もう悪事に手を染めないって。それができたら、牢屋には入れない。仕事も斡旋してあげる」

 

呆けた表情を浮かべる暴漢と同じく、リューは驚愕を顔に張り付ける。

 

「なっ……!アーディ、それは駄目だ!」

 

「どうして?」

 

「然るべき報いを受けさせなければ、周囲に示しがつかない!その時々の状況で裁き方を変えては、秩序が乱れます!」

 

「うーん、私は情状酌量の余地があると思ったけど。嘘はついてないみたいだし。勿論、ひったくりは悪い事だけど…」

 

身を乗り出してまで訴えるリオンを前にしても、アーディは調子を全く崩さない。

 

「それにほら、私達が取り押さえたから、被害は出てない。誰も不幸になってないよ」

 

「それでも、罪を犯した事に変わりありません!アーディ、貴女は都市の憲兵(ガネーシャ・ファミリア)では無いのですか!?」

 

悲鳴にも近しいモノがあるリオンの訴えに、アーディは笑みを消し、そして一度目を瞑った。

 

「確か……『飴と鞭』だっけ?そんな言葉があったよね?」

 

「……?それがどうしたのですか?」

 

「他の…お姉ちゃん達が『鞭』なら、私ぐらいは『飴』になってあげたいな。……鞭ばっかりじゃ、皆疲れちゃうよ」

 

「!」

 

瞼が開き、髪と同じ色の瞳がリオンの空色の瞳を見つめる。

その言い分は思いもよらない方向から、リオンの精神を揺さぶった。

 

「そ、それは…」

 

リオンは考えてこなかったらしい。故に、答える事が出来ない。ただ秩序からはみ出した者達を取り締まるだけだった正義の使者は、答えに窮するしか出来ない。暗黒期と言う環境がその余裕を奪っていたと言えば話は早い。が、それでも一方的な正義という誹りを受けることは避けられないだろう。リオンは目を伏せた。

 

「ロイもそう思うでしょ?罪人の社会復帰…最初に提案してくれたもんね!」

 

「……あ、此処で俺に振る?」

 

「!」

 

リオンが首を勢い良く振り、此方を驚愕の表情で見つめてくる。いや、そんな顔されても。

 

「な、何故ですかロイ!?貴方は闇派閥を最も憎んでいた筈…!」

 

「勘違いするなリオン。俺が恨んでいる闇派閥は、あのディース姉妹(クレイジーサイコシスターズ)と欲望に飲み込まれたクズ共だけ。その他…末端に関しては対象外だ」

 

「…だとしても!その時々で裁き方を変えては…!」

 

「じゃあ聞くがお前、裁く裁くと言うがどうするつもりだ?」

 

「…はい?」

 

「とっ捕まえて、牢屋にぶち込んで終わりか?」

 

「……それの何がいけないのですか!?牢屋の中できちんと己の罪と…!」

 

「向き合わせるって?その間の飯は誰の金から出すんだ?市民や俺等冒険者の血税だ。この暗黒期、タダの飯なんて無いんだぞ?」

 

「そ、それは…」

 

「それにな、お前牢屋にぶち込むだけじゃこの暗黒期は絶対に終わらないぞ。食うに困って犯罪やる奴は、その原因を取り除かなきゃ絶対またやる。そうだろ、オッサン?」

 

「………」

 

男は目を逸らす。其処には無言の肯定も付いてきていた。

 

「折角反省しても、飯が無きゃ人は生きていけない。なら、始めから俺達の目の届く所で1から始めてもらった方が安く済む。オッサンは食うに困らなくなって、俺達は余計な金を使わず、楽できる。お互いに利のある事だ」

 

「……それでも!何処で働くのですか!?」

 

「孤児院だろうな」

 

「「なっ…!?」」

 

オッサンとリオンの声がハモる。

 

「お、おい正気かお前!?自分で言うのもアレだが、俺盗みやるような奴だぞ!?それを子供だらけの所に…!?」

 

「そうですロイ!貴方はどうかしている!彼処には守るべき者しか居ないのです!!」

 

「だからだろ」

 

「「は?」」

 

またもやハモる。仲いいなお前等。

 

「自分よりも弱い者しか居ない所で崩れるような奴なら、今後社会に出ても駄目だ。もう、ベルゲン送り(処分)にするしかない。だが、彼処で続けられるような奴なら…」

 

「……まだ、望みはあるってか?」

 

「良く分かってるじゃん」

 

それに孤児院は弱者が集まる性質上、良くも悪くも都市の注目を集めやすい。もし彼処で暴れたら……人間(子ども達)大好きな神が黙ってないだろう。そうなれば終わりだ。

 

「……うん、決めた。私も二人の意見に賛成するわ!」

 

「アリーゼ!?貴女まで…!」

 

良し。団長もコッチに着いてくれた。こりゃ決まったな。

 

「ただし、二度目は無いわよ?それだけは肝に銘じておいてね!」

 

「い、良いのかよ…?」

 

「うん、何かあったら、私とロイがたっぷり怒られるから良いよ。あと…これ」

 

ジャガ丸くんだ。……なんだプレーンか。折角渡すなら小豆クリームが良いのに…。

 

「お金は渡せないけど、私のジャガ丸くんあげる。あ、まだ口はつけてないから安心して?」

 

綺麗な笑顔と共に、男の目の前に差し出す。後ろにはガネーシャ・ファミリアの他の団員が到着していた。

 

「あったかくて、ホクホクだよ?」

 

男は呆然と立ち尽くす。両脇を団員達に固められながら、それでもしっかり受け取った。

 

「……慈善家気取りかよ…」

 

ポツリと溢れる言葉。

 

「……ありがとな」

 

「……うん!」

 

男は連行されていった。

 

「……うーん感動しちゃったわ!!さっすがアーディとロイね!!あんな簡単に改心させちゃうなんて!」

 

「冗談。これからですよ団長」

 

「いいえ、もう大丈夫よ!あの人は悪事に手を染めないわ!」

 

何を根拠に?まあ気持ちは分からんでもないけど…。

 

「……しかし、やはり、これでは秩序が…。」

 

「……リオン。君の言っていることはさ、君が『強い人』だからこそ言える言葉だと思う」

 

「えっ?」

 

「おじさんがさっき言ってた事も間違いじゃない。私達が『正論』を言えるのは、私達が力を持っているから」

 

「――!!」

 

リオンの顔に衝撃が走り抜ける。

 

「だから、さ。赦す事は…、『正義』にならないかな?」

 

「わ、私は…!」

 

リオンが答えられずにまごついている。すると…。

 

「いやぁ〜、お見事お見事!」

 

乾いた拍手の音が鳴り響く。その場に居る全員がその音を追った。

 

「貴方は…」

 

「さっきの神様…?」

 

「だな」

 

団長やリオンと共に目を向けた先には、先程サイフを奪われ情けない声を挙げていた一人の男神が居た。

 

 

 




〜補足&なぐり書き〜

ロイ・ヴァレンシュタイン→まだ完全に光堕ちする前のロイ君。何処か言動も棘々しく、リオンに対してはだいぶ雑な態度。シルに男からのプレゼントを他の男に渡すなとか言っているが、コイツも後で似たような事をする。だいぶクソガキで度し難いヤツ。

リュー・リオン→女だらけのアストレア・ファミリアにだいぶ歳下とは言え男が入ってきたので、未だに警戒している。その他に特に原作との相違点は無い。ツンツンツンデレぐらい。

アリーゼ・ローヴェル→平常運転。流石我らが団長である。ロイに対しての感情は、まだ恋心は無いが、顔がイケメンなのでクラッと来る事がある程度。リオンと絡ませると面白いと思っている。

アーディ・ヴァルマ→平常運転。相変わらず皆のアイドルだし、死ぬ程優しくて優秀な女。ロイ君からの信頼をアストレア・ファミリア以外では一番に勝ち取った。

シル→ロイ君ハァハァ♡ロイ君の大人びた言動で濁されているが、早朝に六歳に声をかけて発言の最後に♡を付けながらアミュレットをプレゼントすると言うだいぶ危ない領域に居る。ミア母ちゃん含め同僚達はドン引き。クロエは理解している。自重しな駄女神!byミア

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