ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
誤字報告ありがとうございます。
〜ロイ視点〜
「ほう」
「……は?」
思わず立ち止まる。冷や汗が全身を濡らす。動悸が止まらない。
「………お前、は」
「何やら荷物を背負っているようだな」
………全身を覆っていた結界をアーディの周りに移す。アーディ狙いか?
「安心しろ。別にその小娘を狙って来た訳では無い」
「……じゃあ、何でっ…!?」
ふと、足元に広がる血の池に目が移る。その元を辿れば、冒険者らしき遺骸が全身をひしゃげた状態で横たわっていた。
「本来、お前はロキ・ファミリアの後に始末する予定だったが…」
「っ…!」
メイスを構える。ヤバい、アレが来る。結界…いや、ダメだ。アレの威力を考えたらアーディ一人守るので精一杯。二人守れる程の広範囲に広げたら薄くなるし、
「ほう、荷物を守るか…後悔するなよ?」
「!」
鐘の音。瞬間、
「【
衝撃。音速の攻撃。マトモに防御などできる筈もない……筈だったが。
「づっ!!」
「……
「ゲボッ…!」
身体の中が焼けるように痛い。そして、口から血が溢れる。内臓をやられた。そして全身にも裂傷、打撲傷多数。アミュレットのお陰か…シルさんマジでありがと。
「だがもう動けまい。消えろ」
「ゔ…!」
ヤバい、それよりも立ち上がらなくては。
「【
「大丈夫か!!……………は?」
…………だれ、だ?誰が救援に来てくれた?Lv.4以上じゃないとお話にならないぞ?
「リヴェリア!何が………ロイじゃと!?」
「……っ!?……ぉ師匠、ガレスざん……ゲホッ!?」
ラッキー。ガレスさんにお師匠だ。ゔ……。ヤバい、吐血が止まらない。気管に血が入り、苦しい。でも…。
「……何を、している?」
「忌むべき雑音を掃除している」
「――――」
……あ、ヤバい。お師匠が下を向いて黙るのは…。
「――――貴様の所業は、人のそれではない」
ガチ切れしてる時だ。お師匠の眉が逆立つ。
「――――貴様の周りに広がるモノ、ソレは何だ?」
女の周りには、幾つも折り重なり、破壊しつくされた冒険者達が居た。
「
その無感動の表情を目にした瞬間、お師匠の中の何かが切れるのが分かった。
「そうか」
込められる膨大な
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風(うず)を巻け。閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け三度の厳冬――!我が名はアールヴ】っ!!」
お師匠は怒りのままに詠う。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
放たれる三条の吹雪。全てを凍てつかせる…筈だった、身を凍らせる猛烈な氷波に目の前の女は片腕を振り上げ、
「【
たったそれだけで、必殺の吹雪は霧散した。
「「………は!?」」
「何を呆けている?」
お師匠の、ハイエルフの魔法だぞ?それが、あんな短文詠唱で?
「相殺っ――いや、『無効化』!?」
お師匠の唇から動揺が漏れ出ると同時。魔力の起こり。
「っ!――――!?ガレスさん!?」
「おおおおおおおおおおおおお!!」
そして、ソレを察知したであろうガレスさんの、汎ゆる物を粉砕する大戦斧の一撃が女の頭上から振り下ろされた。しかし、再び女は動じること無く、
「【
「づっう!?」
「があああああああああああああ!?」
「ガレス、ロイ!?」
全身に響く重低音を認識する間もなく、ガレスさんと一緒に壁の方にふっ飛ばされる。
「ぅッ…!!うぇっ…!!」
建物の柱に背中から激突する。
「ゔぇ…!!」
再び血を吐き出す。左腕もあらぬ方向に折れ曲がっていた。
「っ………っ。無事か…!」
結界で覆われていたアーディは魔法の威力が俺の身体で削がれたのもあって、無傷で済んでいた。ヒビは柱に衝突した時にできたであろうものが数個。
「相変わらず喧しい連中だ。
八……八年前…?何だ、何の話をしている?一気に血を流しすぎた。思考が、纏まらない。
「この魔法の
「その唯一の異能……!貴様は!?」
ガレスさんとお師匠の声が重なる。次に発せられる言葉が、妙に耳にへばりついて離れなかった。
目の前の魔女はまさに静寂を持って、その名を肯定した。
「神時代以降、眷属の中で最も『才能』に愛された女…!『才能の権化』にして、『才禍の怪物』!!」
「生きていたのか、
ヘラ・ファミリア…8年前に消滅した、史上最強のファミリアか…?本で読んだのがせいぜいだが、生き残りが居たとは。
「何故お前が、【ヘラ・ファミリア】が!闇派閥に味方する!?」
「かつてこの英雄の都に、世界に!最強として君臨し、都市を絶えず護ってきたお前達が、何故だ!?」
目の前の存在はため息混じりに言葉を吐き出した。
「失望」
「「……は?」」
「失望だ。二度言わせるな、ロキ・ファミリア」
失、望…?
「都市を襲う理由が、『失望』だと……!?!?!?」
静寂の魔女が放った言葉にお師匠が愕然とする。
「その通りだ。『失望』こそが我々を再び英雄の都へと誘い、争乱を呼んだ」
灰色の長髪が揺れる。目の前の女が酷く醜悪に思えた。
視線の先でたたずむアルフィアは片手で胸もとを払い、もう用をなさなくなったローブを地に落とした。
アイツが身に纏うのは、戦場にはとても似合わない漆黒のロングドレス。だが、そのドレスが過剰なほどの魔力耐性を持つ『魔法衣』であることは、魔導士であれば、或いは魔法に対して特別な感知能力を持つものであれば一目でわかった。
「何を言っている!何に失望しているというのだ、貴様は!」
蹂躙のための衣を纏う女を前に、困惑を怒声に変えるのはガレスさんだ。
アルフィアはそれに、あっさりと答えた。
「全てに対して。そしてその中には迷宮都市も含まれる。それだけのことだ」
頭に血が上ったのは、エルフもドワーフも、そして一人のヒューマンも同様だった。
眦を吊り上げるリヴェリアの口から憤激の言葉が放たれる。
「ふざけるな……貴様がいくら強大であろうと、落胆一つで都市を破壊する道理などあるものか!」
「さえずるなよ、エルフ。世界は雑音が多過ぎる。ならば間引くしかあるまい」
普段平静を主にしているリヴェリア達の感情をかき乱すほど、目の前の敵は不条理の女王だった。
欠片の痛痒も感じていない声音は、しかしただ一つ、嘆きを宿していた。
「神時代はもう終わる。私達が終わらせてやる」
三人の前で、魔女が告げる。
「故に果てろ、冒険者」
「「「――――っっっ!!?」」」
その意志に、殺意に。三人が、戦慄の渦へと叩き落とされる。
「全てを静寂に還してやる。途絶えろ」
即座に揺らめくのは「魔力」。突き出されるアルフィアの右腕と呼応し、「魔法」が啼く。
まるで巨人が天の鐘をかき鳴らしたかのように世界が震えた直後――光轟が生まれた。奴の攻撃で千切れかけていたアーディを固定している縄を無理矢理ちぎり、走る。
「っ!お師匠っっ!」
「なっ…ロイ!?ダメだ、来るなっ!!」
ヤバい、ガレスさんでさえアレだったんだ。第一級とはいえ耐久に秀でた訳でもないお師匠が喰らったら死にかねない。
「
「ぐぁづっ!?」
勘で身を捻ったものの、完全には避けきれずに被弾。左脚にヒビが入ったような気がした。とは言え、お師匠の被弾は避けられた。
「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
「遅い。【
「ぐぁ!?」
ガレスさんが下から掬い上げるように戦斧を振るう。俺の目には必殺必中に見えたその攻撃も、当たらずに空を斬り反撃に沈んだ。
「づっ…!!ハッ!!」
「温い」
瓦礫を投擲するも、あっさり避けられる。ボウガンはとうにスクラップになったし、援護しようにも飛び道具が少なすぎる。やはり近接か…!
「ゔっ…!」
「存外しぶとい。だが、その貧相な刃で何が出来る?」
「お前を刺せる…!」
「やってみろ」
右のホルダーからダガーを抜く。メイスは捨て置いた。少しでも軽量化を図り、スピードを確保したい。
「はぁぁあっ!!」
「止まって見える」
「ぐぅっ……フッ!!」
「何だ今のは?駆け引きか?児戯の間違いだ」
「シッッッッ!!」
「見ていられん。貸せ」
「!?」
ダガーが、奪われ…!?
「刃とは、この様に振るう」
「ゔぁつ!?」
クソったれ!ダガーは刺突武器だぞ!?振ってなんでそんなに重い攻撃が出来んだよ!?
「返そう」
「ぅ…!」
目の前に振って来たダガーを掴み、立ち上がろうとする。が…。
「……!?」
「…限界か。血を流しすぎたな。消えろ……」
身体に力が入らない。立ち上がろうとした瞬間、手が滑り地面を這いつくばった。ヤバい、死ぬ。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」
お師匠が再び魔法で応戦するも、
「【
「ぐぁあっ!?」
例の無効化魔法の餌食になり、そのまま音の砲弾に全身を貫かれる。くそ、動け、動けっ…!!
「うおおおおおおおおおおお!!!」
「芸が無い……【
「それはお前じゃあ!!ふんっ!!」
「!?」
えっちょ!?ガレスさんが突撃して来て、アルフィアの魔法を円盾で弾くと素早く俺を掴み上げた。
「リヴェリアぁ!!受け止めろ!」
「えっ待って投げ!?」
「っぐ…な、ガレス貴様投げる……なっ!?」
「うぉぁっ!!」
ま、マジで投げたぞこの人!?ごめんなさいお師匠!受け止めて!俺地面のシミになりたくない!!
「くっ…はっ!!」
「ふぇっ!?」
思わず女みたいな声出しちゃったが、何とかお師匠の両手に収まる。
「っ…こんなにボロボロになってっ、バカ者が!」
「すみませ…ゲホッ!」
お師匠に叱責されながらも目線をガレスさんの方に向ける。
「ぬぅん!!」
「遅いと言った。【
「フンッ!っち…!」
攻撃を受け止めひしゃげた盾を投げ、再度ガレスさんが喰らいつく。この都市の中でも最高峰であろう接近戦の攻防が幕を開けていた。
「ロイ、お前は此処で退け。あの青髪の少女……【
「でも、アイツは…!?」
「……正直、実力は向こうの方が圧倒的だ。だが、私達がやられてしまったらいよいよお前も撤退する手段が無くなる」
「っ………」
確かにそうだ。逃げるなら今の内。お師匠達がやられたら、負傷して、なおかつアーディも背負った俺じゃ本格的に逃げ切れなくなる。
「分かり、ました。お願いします」
「良し。……大丈夫だ、死なんさ。また会おう」
「……はい」
お師匠にポーションを分けてもらい、傷を治療して何とか立ち上がる。だが折れ曲がった左腕はどうしようも無かった。
「行け!【終末の前触れよ、白き雪よ……!」
「っ!!」
左腕左脚の激痛を堪えながら、アーディの元に駆け出す。反対側に置いてきたのもあり、アーディ自身は追加の負傷は無いように思えた。
「うおおおっ!!ロイ、行けぇ!!」
「お先に失礼します!!」
「させると思うか?【
「此方のセリフじゃあ!!フンッ!!」
「っち」
ガレスさんが喰らいついている音を背後に、アーディを再び背負った。くそっ、縄ちぎるんじゃなかった。もう使えないじゃないか。
「任せます!!」
「おうっ!」
背を向け、走り出す。重低音が響く中、路地に飛び込んだ。
〜とある路地〜
「っっ!?!?!」
都市南西の方角から発生する凄まじい震動と魔力の衝撃。オッタルが驚愕の眼差しを向ける一方、ザルドは大兜を被り直す。
「アルフィアが始めた。俺達も戦るぞ。女に先を越されたまま、男など名乗れまい」
「アルフィア……。【ヘラ・ファミリア】まで……!」
発せられた女の名に、オッタルの相貌はとうとう焦燥に塗り潰される。
【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】。
この迷宮都市で時を重ねてきた者の中で、彼の二大派閥がどれほど偉大で、無茶苦茶で、圧倒的だったか、知らない者はいない。それ程の、英雄の巣窟。
「お前もつくづく運がないな、フレイヤの糞ガキ。こうしてまた俺に倒される」
その中でも、オッタルはまさしく、ゼウスとヘラの力を肌で知る者の一人だった。
彼は負け続けてきた。
英雄と呼ばれる相応しい男神の、最強の戦士達に。
何物よりも理不尽な女神の最凶の女傑達に。
そして目の前に立ち塞がる、『暴喰の化身』そのものに。
このオラリオでオッタルが味わい続けてきたものは――敗北と屈辱の『泥』のみ。
「っ…!」
オッタルの岩のような拳が握り締められる。
錆色の瞳が敗北の記憶という名の悪夢を幻視し、揺れる。かつて、一度も越えることのできなかった高みに、心が打ち震える。
「猛ろ。来い。――――俺に喰われたくなければ」
男が要求するものはソレのみ。
飽くなき戦意に飢える漆黒の鎧が、黒塊の大剣を構える。
奥歯を割れんばかりに噛みしめていたオッタルは、自らも武器を振りかざし、全身から怖気を追い払うかの如く、吠えるしかなかった。
「――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
猪突の雄叫び。
大剣を引き抜き、構え、黒鎧のもとへ驀進する。
石壁を、木を、魔道具の残骸でさえも。あらゆるものを粉砕する 【猛者】の突撃は、目の前の漆黒の戦士だけを砕くことができなかった。
「温い」
一振り。たったそれだけ。
「――――――」
速度と勢い、そして全体重を上乗せしたオッタル渾身の一撃が、黒塊の一振りによって、弾き飛ばされる。
精巧な「技」。
何より突き抜けた「膂力」。
突進の勢いを殺されるどころか、得物を弾かれ無様にも仰け反るオッタルは、見た。
停止する時の中、どんな時間よりも長く感じられる時の中で。既に翻り己のもとへ振り下ろされている剣塊を、見てしまった。
何もかも撃砕される直前。
刹那の狭間、今際の際で。
弱い、と。
「ッッッッッッ!?」
その落胆を目にした目が、あらゆる感情が灼熱となってオッタルを燃やし尽くすより先に、叩きつけられた黒塊の大関が、無慈悲に全てを終わらせた。
〜オラリオ視点〜
その時。
大地が哭いた。
「「「っっ!?!?!」」」
地面どころか都市そのものを震わせる途方もない衝撃に、戦闘を続けていたリューは、輝夜やシャクティと共に言葉を失った。
「地震!?!?」
「違え!これは……」
「でたらめな一撃っ!」
転びかけたリャーナが取り乱し、彼女の動揺をライラが否定する。そしてアリーゼは、驚愕の眼差しを衝撃が発生した方角へと向けた。
「覇者」の一撃が、炎上する迷宮都市に空白を刻む。
各戦況の支援を行っていたアスフィとファルガーが。
死兵相手に奮戦していた戦闘娼婦達が。
何振りもの『魔剣』を振るう単眼の鍛冶師が。
白き雷を放つ妖精が。
仲間を率いる狼人が。
目を覚ました小人族の少女が。
そして都市中央で指揮を執る 【ロキ・ファミリア】ことフィンが、呆然と動きを止めた。
「…………オッタル?」
地の底の鳴動のように、長く、低く轟き続けていた衝撃の連なりが収まる頃。
『バベル』の最上階でフレイヤは瞳を見開き、信じられないモノを観る目で、届くことのない呟きを零した。
女神の視線がそそがれる場所、豪斬の余波により炎の海が吹き飛んだ戦場に、立っている者は一人のみだった。
漆黒の鎧を纏う、真の武人だけであった。
「……………………があっ」
瀕死の呻吟。掠れて薄れる、視界の焦点。何枚もの壁をブチ破り、肉という肉、骨という骨、細胞の一片も残さず破壊しつくされた
意識が藻屑となって消え果てる間際、なけなしの力を集めて、眼球を動かす。
己を貫くのは「失望」の眼差し。
屈辱の「泥」を叩きつけられ、【猛者】オッタルは、敗北した。
「……オッタル?」
都市中央へひた走っていたアレンの足も、その時、停止した。
嘘のように静まり返った静寂に獣の耳を穿たれ、建物の屋根の上で振り返る。
既にかけ離れた遠方。
自分が後にした戦場は戦場でなくなり、一人の猪人が倒れ伏す墓場と化していた。
「………………………………………おい。ふざけるな。何のつもりだ。寝てるんじゃねえっ」
視線の先の光景を認め、動揺が増し、暴れ狂う嵐と化す。握り締める銀槍をガチガチと震わせるアレンは、あらん限りの声量で叫んでいた。
「オッタル!!!何してやがる!さっさと立ちやがれええええええええええええええ!!!」
女神のもとへ向かっていた足が命令を反故にし、衝動の言いなりとなって、猪人のもとへ引き返す。
「ふふふっ、はははははは……!やったぞ、【猛者】が倒れたぞおぉーーーーーっっ!!」
哄笑を上げるのは「悪」の眷族ども。
高台から一部始終を目撃したオリヴァスが歓喜を送らせた瞬間、闇派閥の兵士達が、一斉に歓声を上げた。
「かつての大神の眷族にして、今は闇派閥の使徒!ザルドが最強の冒険者を討ち取った!讃えるのだ、同志よ!そしてオラリオを、全てを!絶望に突き落とせえええええええええええええええええええええええええええ!」
「「「ザルド!!ザルド!ザルド!!!ザルド!」」」
両の腕を広げるオリヴァスを仰ぎながら、兵士達は熱狂の渦を生んだ。
拳を突き上げる者、武器を掲げる者、喉を狂った楽器に変える者。
勝者にして「覇者』の名が連呼され、叫びの暴力が重なり合う。
それは時を止める冒険者達をあざ笑う『勝ち鬨』だった。
「オッタルが……やられた……?」
響き渡る。伝わってしまう。都市最強、その敗北が。
「うそだっ……信じないぞ!あいつは倒すのは、俺だっ、俺達なんだ!」
波紋が広がる。甚大なまでに影響を及ぼしてしまう。
「悪」の勝ち鬨に最も翻弄される強靭な勇士達の中で、ヘグニは動揺の声を上げ、
「――ヘグニ、避けろおお!!」
「っっ!?!?!!」
そして捕まってしまう。なり振り構わないヘディンの大喝虚しく、「妖魔」の姉妹の魔の手に。
「「ヘグニ、駄目よ!余所見は駄目!」」
「―――がっっっ!!」
「「ほら、体に穴が開いてしまった!」」
小人族の四兄弟も追い詰められる。
「あの猪がやられるかものか!」
「殺しても死ぬわけがない!」
「ふざけんな!」
「取り乱すな! ドヴァリン、ベーリング、グレール!」
身に纏う鎧をボロボロにしながら、アルフリッグは叫ぶ。
「
理性を失った『凶戦士達』の咆哮が、【猛者】の敗北を祝福する。
「オッタルが倒れたって……嘘だろう!?!?!」
「第一級冒険者が!?」
「……どうすりゃあ、いいんだよ…」
途切れない混沌の雄叫びは、たちまち秩序の戦意を引き裂いていった。
オラリオの各所で上がる闇派閥の祝勝歌に冒険者達は絶句し、青ざめ、手の名から武器を滑り落とした。
都市最強の冒険者が下されたという情報は荒波のようにうねり、崖っぷちで戦っていた彼等彼女等の士気を著しく低下させた。
「【猛者】が、倒れた……!?」
「馬鹿な……!しかも、【ゼウス・ファミリア】だと?」
リューや輝夜も同じだった。
自分を見失わないようにするのが精一杯で、激震するオラリオの中で立ちつくしてしまう。
天秤の傾きは止まらない。
悪報を畳みかけるように、甚だしい衝撃が咲き乱れた。
「「!?」」
弾かれたように振り向くリューと輝夜の視線の先で炸裂したのは、『魔法』の轟き。
場所は彼女達のもとから幾つもの区画を跨いだ通り。周囲の建物が横倒しにひしゃげている中で、エルフとドワーフが、同時に崩れ落ちる。
「――――ぐ、あ」
障壁を粉砕されたリヴェリアが先に倒れ、盾を失ったガレスも後を追うように、壊しつくされた石畳に吸い込まれる。
「他愛ない……」
その光景を前にするアルフィアは、無感動に、そして超然と囁いた。
「【九魔姬】、【重傑】まで………!?!?」
その光景を誰よりも早く観測してしまったのはアスフィ。
オッタルに続いて撃破された 【ロキ・ファミリア】幹部陣の姿に、戦況を見守ることしかできなかった彼女も、とうとう絶望に染まる。
「―――第一級冒険者が落ちた。都市の最強戦力が! こんなにもあっけなく!!!」
闇の笑い声は止まることはない。
周囲から鳴り響いてくる閤派閥の鯨波 「悪」の喝采にヴァレッタは狂喜に満ちた。
地面に向かって吠えたかと思えば顔を振り上げ、叫喚を打ち上げる。
「はははははははははっ!これで総力戦の前提は覆ったぞぉ、フィ〜ン!もうてめえ等はおしまいだ!」
迷宮都市を相手取る上での最大の障害、第一級を含めた上級冒険者達。
そんな強大な冒険者の数も、質も、全て粉砕してのける『
おおよそヴァレッタの見込み通りに。
そして『黒幕』が思い描く想定通りに。
「さぁ、惨劇の「本番」だぁ!」
ヴァレッタの宣言に、燃える都市を静かに歩む「神」は、頷いた。
―――ああ、『最高の
「「――――――――――――は?」」
だが。ヴァレッタは、邪神は、『
ロイ・ヴァレンシュタイン(ろくさい)
アルフィアにボコられて殺されかけたが、何とか逃げ延びた奴。たまたま
ヴァレッタ
この後発狂する羽目になる。かわいそう。
エレボス
せっかく良い気になってて黒幕として姿表そうとしたのに邪魔される。かわいそう。
アルフィア
アレ?自分、また何かやっちゃいました?
ザルド
何やってんだお前!?
闇派閥の兵士
止めてくれよ…!(懇願)
自爆兵の皆さん
うわぁぁぁあぁぁ!?悪魔が来るぅぅぅぅう!?
またしても何も知らないリュー・リオン
……えっ何やってるんですかロイ!?
またしても何も知らないアストレア・ファミリア
やめろぉ(建前)ナイスゥ(本音)。