ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。 作:一般通過社会人
〜翌日 星屑の庭 〜
「ふぁ…。」
大きなあくびをしながらリビングまで降りてくる。考え事してたら日を跨いでた。
「おはよ、ロイ。」
「ノインさん…あれ、昨日は夜警ですか?」
「うん。聞いたよ、ダンジョンに潜るんだって?」
「明後日の3時っスね。」
「早いね。」
ノインさん。アストレアファミリアでは珍しくない、ヒューマンの女性だ。茶髪が綺麗。
「気を付けてね。特に…30階層には近づいちゃダメだよ。」
「20階層までなんで大丈夫ですね。ノインさんこそ、無理はダメですよ?」
「うん。……その、前は、ごめんね。」
「前…あぁ、クソ骨ですか。お気になさらず。庇いたくて庇っただけですので。」
真っ先に狙われたもんなこの人。位置が悪かった。
「うん…分かってる。ありがとう。君が居なかったら、私は…。」
「ファミリアは助け合い…でしょ?」
「…うん。そうだね。ありがとう。」
やっぱり気に病んでるな。ま、彼処で庇わなきゃ全滅だった。全員生かせた事を考えればおつりも来るだろう。
「今日はどうするの?」
「装備調達ですかね。色は…まあ、最悪黒じゃなくても良いです。」
「良いの?スキルの発動条件に関わるんでしょ?」
「外套羽織れば…。」
腕の可動域が狭くなり動き辛いのが難点だが、今回はパーティー組んで行くのだ。俺は防御に徹する形になるだろう。
「そっか。外から見て黒ければ良いんだっけ。」
「ええ。ま、無理はしませんよ。ジョギング程度です。」
「うん。絶対無理しちゃダメだよ。」
一人でやってた頃は自由に動けていたが、その分やる事が多くて大変だった。やはりパーティは楽で良い。役割分担は最高だ。
「朝ご飯どうするの?」
「外で何か食いますよ。」
「そう…団長に伝えておくね。」
「お願いします。それでは。」
「いってらっしゃい。」
〜北西メインストリート〜
呉服屋で白い外套を買った。黒いのだと俺のスキルを知ってる他ファミリアの団員に気づかれる可能性がある。特にアー…いや、名前を呼ぶのは危ない。謎に感知してくるからな。俺限定だが。
「ん〜…。」
バベルに向かって歩を進めながら考える。先に装備調達するか、それとも情報収集か…でも情報収集するにしても一つ問題がある。
「ヘルメスファミリアの本拠の場所が分からん…。」
故にガネーシャファミリアに行かなくてはならないのだが、正直個人的な事情で行きたくない。
「あいつに捕まると長くなるだろうし…まずは装備調達か。」
〜バベルの塔 6階 武具屋〜
「うーん…。」
バベルの塔に入っている武具屋で掘り出し物を探す。目当てはメイスと軽装の鎧。鎧は無くても良いが一応。
「無いなぁ…。」
メイスがマジで無い。いや、ウチのファミリアにもメイス使いは居るのだが、ヒーラーなのでほぼ自衛用なのだ。故に買い換える事がほぼない。俺は前線で殴りに行くタイプなのでよく買い換えていたが、そもそもダンジョンで打撃武器があまり使われないのでショップには並ばない事が多い。
「予備含めて2本欲しいんだが…あっちの樽見てみるか。」
隅に置いてある樽の中を探す。えーっと…お。
「あった。」
柄にガード付きとは珍しい。一瞬サーベルかと思った。だが使う分には問題ないだろう。もう1本は…。
「これで良いか。」
これは普通のフランジメイスだ。片手で持てる長さのやつ。前は円盾を持ったりもしてたから、俺が使うメイスは全部片手のやつだ。手数が欲しい時は二刀…いや、ニ槌流もよくやった。
「あとは…。」
軽装の鎧。最低限の防御力の確保だ。スキルがあるから前みたいに
「……無い。」
所詮掘り出し物だからな。次を当たってみるか。
〜通路〜
あの後防具屋で軽装鎧のセットを買って着けた。久しぶりの感覚だ。死んだ時に防具武器の類は全部オシャカになったからな。買った鎧は無塗装な上に中層で使うには心許ない強度だが、スキルがあるから一撃防げれば問題無い。
「あとはベルトとかポーチかな…。」
ポーションを入れる、ベルトに付けるタイプの小さいポーチだ。バックパックも一応買うが、あまりいい思い出がない上に専門のサポーターに比べたら持ち運べる物資の量も少ない。手持ちの金も心許ないので、現時点ではあまり意味が無いだろう。
「…ん?」
なんか騒がしいな……あ、あの人…いや、神はヤバイ。急いで隠れなければ。
「…。」
外套のフードを深めに被って通路の端に寄る。さっさと通り過ぎよう。それならバレない……。
「…ん!?ちょっと待ちなさい貴方。こっち来て。」
腕を掴まれて引き摺られる。防具屋の隣にある休憩スペースまで連れ込まれた。
「……やっぱり。貴方ロイよね?」
「……はぁ。お久しぶりです、ヘファイストス様。」
紅い短髪に右目の眼帯。ヘファイストス・ファミリアの主神。ヘファイストス様である。やっぱり神の前に変装は意味ないのか…。
「生きてたの?いや、死んだ筈でしょ貴方。」
「えーっと…まあ、生き返ったんですよ。はい。」
「はぁ!?」
嘘はつけない。バレるから意味無いのだ。
「生き返ったって貴方……アストレアとファミリアの娘達にはちゃんと顔出したんでしょうね?」
「もちろん。顔出すどころか強制移住する羽目になりましたけど。」
「当たり前でしょ。貴方が居なくなってから酷かったんだからあの娘達。」
やっぱり?
「ったく…で、此処に居るって事はまたダンジョンに潜るの?恐怖心って物は無いの貴方は?」
「恐怖してたらアイツを超えられないですから。」
「相変わらずね…でも目標とはいえ、貴方の言う『アイツ』にも挨拶くらいはしておきなさいよ。あの娘も貴方が死んだと聞いて酷かったんだから。」
「努力します。」
「はぁ…もう良いわ。好きにしなさい。」
呆れた表情でため息をつくヘファイストス様。ため息やめろよ!なんでため息つくの!?ため息つかれた人の気持ち(ry
「で?これからどうするのよ。」
「明日にダンジョンに潜るんで、装備調達と情報収集ですね。既に武器と防具は揃ったんで…。」
「あ、やっぱり私が作った防具全損した?」
「はい。全滅ですね。」
ヘファイストス様には高い金払って戦闘衣の下に着ていた防具とヘルメットを作ってもらっていた。なお纏めて8000万ヴァリスとちょっとである。うっあぁ…。
「あーあ…まあ良いわ。借金は完済してるんだし、お金の工面ができたらまた作ってあげるわよ。何時でも言いなさい。」
「ありがとうございます。それでは…。」
「またね。」
神だから当然なのだが、あの時と全く変わっていなかった。周りが色々と変わってしまったので、ちょっと嬉しい。
〜北西メインストリート〜
「オッケー。」
道具屋でベルトとポーチ、バックパックを買った。安物だがダンジョン探索用なので頑丈だ。バックパックは部屋に置いて行くが、何れ必要になる筈。あとは…。
「情報収集か。」
ヘルメスファミリアの本拠は場所が分からない。故に主神であるヘルメスを探すしかない。だがあの神は自由奔放だ…眷属を探そう。
「酒場を手当たり次第だな。」
この冒険者通りには酒場が多くある。さっさと探すか。
〜酒場〜
「シードル。」
「…。」
とりあえず注文。さて…。
「……主神含めたヘルメスファミリアの動向が知りたい。」
「知らねぇな。」
ここもダメか…5軒目なんだが。
「ロイ?」
「…ん。これは偶然。」
ラッキー。まさか会えるとは。
「お久しぶりです。アスフィさん。」
「帰って来たのでしたね。我々を探していたようですが…。」
「聞きたい事があります。」
この人なら異端児の存在含めて知ってる筈だ。
「成る程…場所を移しましょう。」
〜路地裏〜
「異端児達を売り飛ばしている冒険者…ですか。」
「知りません?」
リド達の所に居た時からちょくちょく耳に入っていた。ゼノスを売り飛ばす奴が居ることを。仕掛けてくるとしたらソイツらだろう。そして、捕らえたゼノス達を…。
「売り飛ばした先は知っています。貴族や金持ちの屋敷です。しかし…。」
「肝心の出荷元が分からない?」
「はい。しかし、イケロスファミリアが怪しい事は掴めました。」
「イケロスファミリア…か。」
ディックスペルディクス…あのドSが居る所か。推定レベルは4…いや、5にいっている事も視野に入れるべきだな。
「拠点は分からない?」
「はい。と言うか、それが一番の謎です。主神のイケロス含めてオラリオ中を監視して居ますが、まるで分からない。」
「ん〜…。」
拠点が分からないんじゃどうしようもない。待つしかないか。ベル達には悪いが、どうせ竜女の異端児なんて狙われる。武装したモンスターの貼り紙もギルドにあったしな。金目当てなら間違いなく先日のモンスター騒ぎと関連付けてくるだろう。
「…よし、ありがとうございます。」
「我々も探っている途中です。アストレアファミリアにも協力を仰げたら良かったのですが…事も事なので。」
「ですよね…ま、最悪になっても何とかしますよ。」
「はい。ヘルメス様もその為にこのタイミングで貴方を地上に帰還させたのですから。」
うわあの神…利用する気満々だな。ヘルメスも要注意…と。ま、これ以上は探れないだろうし、今日は帰るか。明日に備えよう。