ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。   作:一般通過社会人

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誤字報告ありがとうございます。


恋人(笑)

 

〜ヘスティア視点 ギルド最奥 祈祷の間〜

 

「久しぶりだな、ヘスティア」

 

「やぁ、ウラノス…そっか、前に会ってからもう千年は経っているのか」

 

篝火の炎が揺れる。ベル君達を見送った後、ボクは黒衣の人物に連れられ、謎の通路からこの広間に連れてこられた。目の前にはギルドの『真の主』、ウラノス。この都市を創ったとされる男神だ。

 

「私の役目は終わりだな、ウラノス」

 

「ごくろう、フェルズ」

 

フェルズと呼ばれた黒衣の人物は移動を始めた。

 

「では、退席させてもらうよ。早く向かわなければ間に合わない」

 

フェルズは元来た通路に戻って行く。

 

「ごゆるりとしていってくれ、神ヘスティア」

 

去り際に言葉を残し、フェルズは闇に溶け込むように消えた。視線をウラノスの方に戻す。

 

「色々聞きたい事がある。先に答えてくれないか、ウラノス?」

 

「良いだろう」

 

あのミッションの指令書を見た時から、【神聖文字(ヒエログリフ)】で書かれた暗号を見た時から、ボクはウラノスが今回の一件に関わっているであろう事を悟っていた。そしてそれと同時に…過程こそ見通せなかったものの、こうして対峙する事になるであろう事も。

 

「ミッションを下したのは君の独断かい?」

 

「そうだ。ギルドの職員は関与すらしていない」

 

「ベル君達は無事なんだろうな?」

 

「彼等が行ったのはダンジョンだ。保証しかねる…が、『彼』が居るのだ。心配は要らないだろう」

 

思わず瞳を細める。が、肩の力を抜き、冷静さを保つ。

 

「随分な自信だな。余程彼を信頼しているらしい」

 

「彼の事を知らないからそう言えるのだろう。だが、私は事実を言ったまでだ」

 

…確かに、ボクは彼の事をあまり知らない。これ以上の追求は無駄だ。

 

「こんな手が込んだ…回りくどい真似をした理由は?」

 

「この密会を誰にも勘付かれる事なく、迅速に行う必要があった。ヘスティアとその眷属達に警戒される事も、覚悟していた」

 

この祈祷の間にボクが召喚されたという事実を身内含めて知られたくなかった、という事か。強引な手段になるのも織り込み済みか。

 

「しかし、彼は恐らく我々のこの密会を知っているだろう」

 

「何だって?でも、どうやって彼は…ロイ君はこの密会を知ったんだい?」

 

何故ロイ君が…ウラノスが教えるなら暗号で伝える理由が無くなる。彼経由でボクに伝えれば良いからだ。と、なると…。

 

「彼は出自が特殊でな。神聖文字がある程度読めるのだ。彼とミッションの打ち合わせをする時、ベル・クラネルに渡した方の指令書を見せるであろう事も分かっていた。情報漏洩のリスクはあるが…彼の口の固さに期待する事にした」

 

「神聖文字が読めるって…」

 

それに何処まで見通しているんだこの神は…。まあ良い、本題だ。

 

「ボクがここに呼び寄せられたのは…竜の娘、ウィーネ君の事でいいのか」

 

「彼女は何なんだ。ダンジョンで今、何が起きている。君は一体、何を隠してる」

 

全て聞き出す。此処で。異端児達の事を、ウィーネ君の事を。

 

「君の……神意は何だ」

 

ウラノスが目を伏せ、ゆっくりと口を開く。

 

「全てを話そう。ヘスティア」

 

 

〜ロイ視点 未開拓領域〜

 

「また会えたな!ベルっち、ロイっち!」

 

「リドさんも元気そうで良かった!」

 

「こんな早くに再会するとは予定に無かったけどな…」

 

いや、マジでそうだ。流石に想定外。個人的にちょくちょく顔を出すつもりだったが…。

 

「変わり無いようで何よりだな、ロイ」

 

「グロス…相変わらずの仏頂面だな」

 

「放っておけ」

 

初めて会った時はビビったもんだ。声も顔も怖いし。

 

「貴様がベル・クラネルか。リドから聞いている。妙な真似はするなよ?」

 

「あはは…」

 

ほらベルもビビってる。顔が引きつっているぞ。そして春姫さん達は…

 

「よろしくお願いします、地上のお方!」

 

「ひっ…あ、よろしくお願いします…。」

 

フィアが春姫さんに話しかけにいった。フィアは割とマシな方だ。見た目的に。あっちなんて…

 

「よろしくお願いします!」

 

「よ、よろしくお願い致します!」

 

命さんが顔色を激しく変えながらレットと握手している。

 

「キューッ!」

 

「えっと…すみません、何と言っているのか…」

 

リリがアルルに挨拶されて困っている。うん、それはそう。俺も完全な意思疎通は一年半くらいかかった。

 

「ま、とりあえず飯にしようぜ!詳しい事は食いながら…な!」

 

あれ?レイは?

 

 

〜隠れ里〜

 

「飯だ!酒だぁ!どんどん出せーっ!!」

 

次々と飯と酒が運ばれてくる。ギルドから定期的に食糧は供給されているものの、基本的にはダンジョンで採れる物が多い。

 

「新しい同胞と、新たな人間の客がやって来た今日を祝って!」

 

「「「「「おおーっ!!」」」」」

 

樽型のジョッキがぶつかり合い、心地よい音が響く。

 

「……未だに信じられねぇな」

 

「頬を抓って差し上げましょうかぁ〜?」

 

リリが自らの頬を抓りながら困惑気味に言う。まあ無理もない。

 

「「……」」

 

命さんも春姫さんもジョッキを手に持ったまま困惑気味だ。

 

「それでねっ!その時ベルが助けてくれたんだよ!」

 

「わぁ…流石です、地上のお方!」

 

「ありがとうございます…ウィーネ、恥ずかしいから…」

 

ベルはフィアに褒められる。さてと、俺も酒を…。

 

「だーれだ」  

 

「…」

 

目の前が金色に染まる。はぁ…。

 

「レイに決まってんだろ…」

 

「正解です、流石ですね」

 

セイレーンの異端児、レイ。でもぶっちゃけ俺の知ってるセイレーンとは違いすぎてて、初見じゃ種族が分からなかった。

 

「こんなに早くお会いできるなんて…嬉しいです」

 

「まあ、間隔短すぎて感動も無いがな」

 

「あら、私は感動で思わず抱きしめてしまいますよ?」

 

「抱きしめてから言わないでくれませんかね?」

 

黄金の美しい羽が身体を包み込む。羽毛だからなのかあったかい。

 

「んん…抱き返してくれないのですか?」

 

「公衆の面前でやろうとするなよ…」

 

ホントにハグ魔だなレイは。ダンジョンに住み着いてた時はよく餌食になってた。

 

「なーにーイチャついてるんですかぁっ!?」

 

「相変わらずお熱いなぁロイっちとレイは」

 

ほらリリが睨みつけてリドがからかって来る。でも…

 

「ふふっ。そうですよ?私達は『恋人』ですので」

 

「「「「ええーーっ!?!?!?」」」」

 

ベルとリリ、命さんと春姫さんが驚愕の表情で叫ぶ。

 

「告白した覚えもされた覚えも無い」

 

「恋人とはデートを重ねて自然になっている物だと聞きました」

 

「誰に言われたんだよ…」

 

「ヘルメス様です。」

 

あ〜…あの神なら納得してしまう。

 

「遠距離恋愛もツラいものですね…」

 

「言うほど離れてないだろ」

 

「物理的な距離じゃありませんよ?」

 

「精神的にも離れてないだろ」

 

「ロイ…!」

 

ったく…、初めて会った頃は一部片言だったのに、今じゃ流暢になってしまったもんなぁ。あの頃の方が可愛げがあったぜ。…いや、今も可愛いか。

 

「うわぁ何ですかあの空間。ゲロ甘になってますよ…」

 

「酒が甘すぎて飲めねぇよ…」

 

「レイ様とロイ様がこここここ…恋人…!?!?」

 

「落ち着いて下さい春姫様!」

 

リリとヴェルフがドン引きして春姫さんが顔を真っ赤にしている。初心なんだな…。

 

「あの、リドさん前から気になってたんですけど…その装備ってやっぱり冒険者から…?」

 

「あ〜、まあな。酒樽とかの雑貨は貰いもんだけど、武器に関してはそうだ。この剣とかは、何も知らないで俺っちを襲ってきた冒険者の獲物だ」

 

ボトルを床に置いて、リドは置いてあるロングソードやシミターを見やる。

 

「でも、返り討ちにしたら放り出して逃げちまったから……じゃあ使ってやるかって。冒険者達もモンスターを殺ったら爪や牙を持って帰るだろ?」

 

「それは…そうですね…」

 

価値観の相違。それは埋め難いものだ。ベルの場合は…恐らくだが、理解できてしまう自分に対する困惑もあるのだろう。

 

「死体になっちまっても人間達には大切な物らしいから、見つけたら返してやりてぇけど…俺っち達が運んでると冒険者達は怒るからさ、難しいんだ」

 

思わず黙ってしまうベル。リドの言う、大切な物『らしい』と言うのは、リド達モンスターは死んだら魔石だから死体を大切にする文化が無いからだ。自らが当たり前に思っていた事が当たり前で無いと言う気づき…そういう物にもベル達は苛まれている。

 

「でもよ、酒もそうだけど武器とかもすげぇよな。そこら辺に生えてる天然武器なんかよりもよっぽど切れるし頑丈だ。俺っち達には作れねぇよ」

 

何処か面白そうに語るリド。人間の文化に対する敬意や尊敬が見て取れる。他のメンバーも…全員では無いが、バトルクロスや武器を身に着けて生活している。模倣…いや、憧れ、憧憬か。

 

「リド、こんな下らない事は辞めさせろ」

 

「まだそんな事言ってんのかグロス」

 

「所詮、その者たちは人間だ。信じるに値しない」

 

「じゃあロイっちはどうなるんだよ?」

 

「ロイはただのお人好しの馬鹿だ。裏切る知能が無いだけだ」

 

「ひっでぇ」

 

コイツそんな事思ってたんか…否定はしないけど。…おっと。レイがキレた。

 

「グロス、彼に対する侮辱は許しません。取り消しなさい」

 

「……事実を言ったまでだ」

 

「取り消せ」

 

「…すまない」

 

レイがドスの効いた声でグロスを脅すとあっさり謝罪した。それで良いんかお前。

 

「…兎も角、お前も見ただろ?ベルっち達がウィーネを守ってる所。元々お前等が信用できないって言うから監視までしたんだぞ?」

 

「…ふん」

 

異端児達も常に一枚岩と言うわけでは無い。リド達は歓迎ムードだが、グロス、ラーニェ、ユーノなどは非友好的だ。

 

「悪いな。俺っち達も色々あってさ。此処に人間達が来るって聞いて皆神経質になってるんだ」

 

「…無理もない、と思います」

 

「でもベルっち達が他の冒険者達とは違うって事は、観察してた同胞達の話を聞いて分かってたんだぜ?」

 

「それってやっぱり、ダンジョンで僕達を見ていた…?」

 

「お、気付いてたんだな。そうさ、同胞達がベルっち達を見てたんだ」

 

ベル達がウィーネを見捨てないかを見極めると同時に、もしもの事があれば救出するために尾行していた…と。

 

「あの、それってダンジョンの中だけですか?地上とかは…」

 

「いや?レット達が見てたのはこの上、19階層からだ」

 

……じゃあ、あの視線はやはり…グロスには伝えておくか。

 

「ごめんレイ、ちょっと離して」

 

「…?はい」

 

レイに離してもらい、グロスの方に近づく。ベル達はリドにギルドの事を質問していて気付いていない。他も同様だ。

 

「グロス、こっち」

 

「…何だ?」

 

念の為…な。

 

 

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