バジリスク伊賀転生帖~天膳殿は異世界でもまた死んでおるぞ!~   作:onakatarumi

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想定よりはやく書き上がりました


第3話「鬼哭収拾」(最終話)

「やあ、ここはノイエ卍谷(まんじだに)の街だよ。勇者である鵜殿丈助(うどのじょうすけ)さまが住まわれているんだ」

 

「ノイエ卍谷(まんじだに)!?」

鵜殿丈助(うどのじょうすけ)が勇者じゃと!?」

 

 蓑念鬼(みのねんき)雨夜陣五郎(あまよじんごろう)の叫びがノイエ卍谷に響く!

 

 なおこの世界においての勇者とは広く民のために貢献したSランクを超える冒険者に与えられる称号である! 別に本物の魔王を倒さずとも良い!

 

「ふん。不戦の約定が解かれて早々に死によったからな丈助は。どうやらこの世界で虚名を上げる時間はあったと見える」

 

 今度は街に入ることが出来た薬師寺天膳(やくしじてんぜん)(うそぶ)く!

 

「しかし天膳よ。霞刑部(かすみぎょうぶ)に続き、鵜殿丈助まで確たる地位を築いていようとは。これは中々に厄介だぞ?」

「その通りじゃ天膳! 騒ぎを起こせば冒険者『らいせんす』が――」

 

 狼狽える念鬼と陣五郎を天膳が一喝する!

 

「ええい! 貴様らはなにかにつけて冒険者、冒険者と! 伊賀鍔隠れ十人衆としての誇りより! 甲賀一党を根絶やしにすることより! 大事なことがあろうか!?」

 

 問われて念鬼と陣五郎は黙り込む!

 だがややあって陣五郎が反駁した!

 

「だがのう天膳。丈助はワシが一度殺した相手。慎重にことを運べば二度目も叶おう。しかし冒険者『らいせんす』の再取得にはそれはそれは手間がかかるのじゃ」

「そうじゃぞ天膳! ワシなぞせっかく『べーらんく』に……」

 

 二人の言葉を最後まで聞くことなく天膳が刀を抜き放つ!

 

「そこまで冒険者『らいせんす』とやらに執着するのであれば、ワシが執着せずに済むよう計らってやろう!」

 

 抜いた刀でもって通行人へと斬りかかろうとする天膳!

 あわや天膳の一党として三人まとめて犯罪者に成り下がるかと思われたその時!

 街を巡回していた聖騎士が天膳を目にして手をかざす!

 

「ターン・アンデッド!」

「おぼろぉ!?」

 

 神聖魔法ターン・アンデッドの光に包まれる天膳!

 断末魔の叫びを上げるとそのまま灰となって消え散った!

 

「て、天膳……」

「な、なんということを……」

 

 呆然とする二人の前で、天膳であった灰が一陣の風に吹き散らされる!

 

「危ないところでしたねお二人共! 弱いアンデッドだったようですが、上手く人間に擬態していました! それではノイエ卍谷での観光をお楽しみ下さい!」

 

 聖騎士は去った!

 

「まさか天膳がこうも容易く消滅してしまうとは……」

「う、うむ。これからどうするべきか」

 

 悩む念鬼と陣五郎!

 

「どこかで見た貧相な顔と思えば。伊賀鍔隠れの蓑念鬼と雨夜陣五郎ではないか」

 

 そこに現れたのは両手に美女を侍らせ豪奢な意匠に身を包んだ鵜殿丈助!

 

「お主! 鵜殿丈助!」

「なんじゃ、その有り様は!」

 

 天膳の消滅した衝撃が冷めやらぬ中での丈助の登場に動揺する念鬼と陣五郎!

 

「控えなさい一般冒険者! 様をつけなさい丈助様と!」

「そうよ! 物理攻撃無効のユニークスキル持ちの大英雄! 勇者鵜殿丈助を相手に失礼だわ!」

 

 侍らせた女たちが念鬼らをなじる!

朱絹(あけぎぬ)に心底嫌そうに対応されていた男とは思えぬ有り様に驚嘆する伊賀鍔隠れの二人!

 

 「いやはや! 物理攻撃無効だなんだとおだてられ、気づけば勇者などと呼ばれて嫁子にも困らなくなってのう! 大器晚成とはよく言うたものじゃ! 晩成ところか終生してから器なるとは流石に思わなんだが!」

 

 人生がうまく行っているがゆえか、はたまた序盤に死んで骨肉の争いの詳細を知らぬが故か! 自身を殺した陣五郎を含む伊賀の二名が入るにも関わらず大して隔意のない様子の鵜殿丈助!

 

「まあ、良いわ。お主らに話しておくことがある。あの爺さま——小豆蠟斎(あずきろうさい)についてじゃ」

「蠟斎とな!」

「あの爺さま、生きてよったか!」

 

 同じく伊賀鍔隠れ十人衆の一人である老爺(ろうや)の名前に色めき立つ二人!

 

 だが丈助は首を振った!

 

「あの爺さまなら死んだよ——寿命じゃ」

 

◆ ◆ ◆

 

 ノイエ卍谷の一角にある墓地! そこに小豆蠟斎(あずきろうさい)と刻まれた墓石があった!

 

「わしが荼毘に付した。いやはや。骨なしの化け物と思って追ったが、焼いたらちゃんと骨があったわい」

「ぬう……」

「蠟斎よ……」

 

 仲間の墓石を前に、流石に悄然とする伊賀鍔隠れの二人!

 それに対して鵜殿丈助がポツリポツリと語る!

 

「最初のうちはのう。爺さまはワシを殺そうと襲いかかってきたのだ。ワシも同じじゃ。甲賀伊賀の忍法争いの続きと意気込んだ。だがお互いの体質故になかなか決着がつかん。日を挟んで何度も戦ったものじゃ……」

 

「しかし、あの爺さまも年が年じゃ。そのうち()けてきて、ワシのことも分からんようになってしまった。憎き伊賀の忍びとはいえ、 当時は同じ世から来た唯一の同郷。死に際くらいは看取ってやろうと世話をしておったのじゃ」

 

 

「すると爺さま、語りおる、語りおる。どうだったかのう。何を言っておったかのう」

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 ああ、朧さま、姫さま、嘆かわしや。

 

 よりにもよって甲賀の男に心奪われるとは。

 

 しかし、そうじゃな。

 

 ワシらは甲賀に対して恨み骨髄なれども、朧さまの世代には関係の無いことなのやも知れぬ。

 

 それよりも。

 

 勝手ながら孫のように思っていた朧さまが。

 

 白無垢を着て、好いた男と祝言を挙げる。

 

 その様を見ることのほうが。

 

 幸せそうな朧さまを見守ることのほうが。

 

 ワシらにとっても。

 

 皆にとっても――。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 念鬼は思い出す。

 陣五郎もまた思い返す。

 

 

 甲賀弦之介と朧との、初めての顔合わせの日。

 

 

 しゃっくりの止まらぬ朧のために苦心したこと。

 顔合わせが上手くいくようにと。

 

 

 苦々しくは思っていた。

 よりにもよって、甲賀との和睦など。

 

 

 だが果てして。

 渋々ながら、嫌々ながら受け入れようとしていた。

 

 

 あの、ついぞ来なかった未来は。

 

 

 

「どうじゃ。伊賀の二人よ。おヌシらはワシや他の甲賀の面々を討ちたいやもしれぬ。だが今日のところは蠟斎の爺さまの顔を立てて。引いてはくれぬものか」

 

 

 その言葉に、念鬼も陣五郎も、何を答えることもなく。

 丈助もまた、何も聞かずに、そのまま去った。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「どうしたものかのぅ、念鬼よ」

「お主はどうしたいのじゃ、陣五郎よ」

「ワシは思うのじゃがな、念鬼。蠟斎の爺さまは寿命で死んだ。天膳は『たーん・あんでっど』された」

「うむ」

「だが、だがな。——この世界では、伊賀と甲賀は互いに、まだ誰も殺しておらんのじゃ」

「——そうじゃな」

「そして、ここには大御所さまもおらぬのじゃ」

 

 

 選びたくないと思っていたはずの、選べなかった選択肢がこの異なる世界にはあるのではないか。 

 

 

「だが! 室賀豹馬(むろがひょうま)! ワシを殺しよったあの男だけは討ち取りたい!」

「聞いた話ではかの男は弦之介と同じ瞳術(どうじゅつ)を使うというではないか。勝ち目があるのか念鬼よ」

「あやつの瞳が開くは夜のみ! 朝を狙えば!」

「それがのう。さきほど街で聞いたのじゃが。夜の明けぬ魔王領に不思議な力を使う盲目の剣士がおるそうじゃ」

「夜の明けぬ……?」

 

 それの意味するところを考え、念鬼はフンと鼻を鳴らした。

 

「では、仕方がないのぅ。——本当に仕方がない。業腹ではあるが、しばらくは冒険者でも続けるとするかのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 憎しみあう者達がいた

 

 骸は野に朽ち 御魂は血に染み

 

 絆は 刃に分かたれた

 

 闇についえし真心が泣く

 

 愛する者よ 死に候え

 

 

 

 『バジリスク~甲賀忍法帖~』より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ここまで読んで下さった方がいたらありがとうございます。

 突発二次創作『バジリスク伊賀転生帖~天膳様は異世界でも死んでおるぞ!~』はこれにて完結です。
 出せなかったキャラ(特に地虫十兵衛と風待将監)も多分この世界のどっかに転生してますがテンポ悪くなるので登場させられませんでした。
 相手がいる連中はちゃんと幸せな転生なり成仏なりしているのかもしれません。


 こういう形で二次創作小説書くのは初めてで楽しかったです。





 あと、異世界ファンタジー暗黒森林テッカマンブレード忍法帖ハーレムラブコメって感じのを目指してハーメルン(とカクヨム)で月水金にオリジナル小説投稿中です。第一章の構成ミスってぐだぐだに始まりますがよろしければそちらもお願いいたいます。
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