魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

1 / 36
タイトルを募集しています。良いのがあればジャンジャン投稿してください。


魔法少女リリカルなのは
第一話 始まりは、静かな夕暮れ


夕焼け色に染まった街を、自転車が静かに走っていく。

 

春の終わり。

 

海鳴市の空は穏やかで、吹き抜ける風もどこか暖かかった。

 

「うぅ~……疲れたぁ……」

 

自転車の前を走っていた少女――高町なのはが、大きく伸びをする。

 

その後ろを、もう一台の自転車がゆっくり追い掛けていた。

 

「なのは、前見て走りなよ」

 

落ち着いた声。

 

長い茶髪をポニーテールにした少女、高町さくらだった。

 

顔立ちはなのはとよく似ている。

 

けれど、なのはが元気に感情を表へ出すタイプなら、さくらはどこか静かで落ち着いていた。

 

「だってー、今日いっぱい走ったんだもん」

 

「体力ないだけでしょ」

 

「むぅ」

 

なのはが頬を膨らませる。

 

そんな妹を見て、さくらは小さく笑った。

 

高町家の次女。

 

どこにでもいるような、少し物静かな女子小学生。

 

けれど、さくらは昔からどこか一歩引いたように周囲を見ていた。

 

まるで、自分だけがこの世界から少し浮いているように。

 

「お姉ちゃん?」

 

「ん?」

 

「聞いてる?」

 

「聞いてるよ」

 

さくらは軽く笑いながら答える。

 

なのはは少し疑わしそうな顔をした後、また前を向いた。

 

その時だった。

 

『……助けて……』

 

不意に。

 

頭の奥へ、か細い声が響いた。

 

「え……?」

 

なのはが急に自転車を止める。

 

さくらもブレーキを掛けた。

 

「どうしたの?」

 

「今……誰か……」

 

なのはが辺りを見回す。

 

夕焼けに染まった街。

 

周囲に人影はない。

 

だが。

 

『助けて……』

 

また声が響く。

 

なのはが不安そうに胸元を押さえた。

 

その瞬間。

 

さくらの表情が僅かに変わる。

 

来た。

 

物語の始まり。

 

ジュエルシード事件。

 

本来なら、ここからなのははユーノと出会い、魔法少女になる。

 

さくらは静かに目を伏せた。

 

――干渉しない。

 

そのつもりだった。

 

なのはが選ぶ物語だから。

 

「お姉ちゃん、今の聞こえた?」

 

「……いや」

 

小さく嘘を吐く。

 

本当は、聞こえていた。

 

だが、さくらは知らない振りをした。

 

なのはが自分で歩き出すべき物語だから。

 

「でも、気になるなら行ってみる?」

 

なのはは少し迷った後、こくりと頷く。

 

二人は声のした方向へ走り出した。

 

夕暮れの公園。

 

奥の林。

 

そして。

 

そこで、二人は一匹の傷付いたフェレットを見付ける。

 

「きゃっ!?」

 

なのはが慌てて駆け寄った。

 

白い毛並みは汚れ、身体中に傷がある。

 

苦しそうに息をしていた。

 

「大丈夫!?」

 

なのはが心配そうに抱き上げる。

 

フェレットは弱々しく目を開いた。

 

その瞳を見た瞬間。

 

さくらは小さく目を細めた。

 

「病院連れてかなきゃ!」

 

なのはが慌てた声を上げる。

 

さくらは小さく頷いた。

 

「……そうだね」

 

そのまま二人は、近くの動物病院へ向かう事になった。

 

夜。

 

動物病院から戻った高町家は、いつも通りの静かな時間が流れていた。

 

夕食を終え、それぞれが自分の時間を過ごしている。

 

なのはも部屋へ戻っていたが、どこか落ち着かなかった。

 

動物病院へ預けてきたフェレットの事が気になって仕方ない。

 

「大丈夫かな……」

 

ベッドへ寝転びながら、小さく呟く。

 

その隣では、さくらが静かに本を読んでいた。

 

「先生、大丈夫って言ってたでしょ」

 

「うん……でも……」

 

なのはが不安そうに抱き枕を抱える。

 

そんな妹を見て、さくらは小さく笑った。

 

「明日には元気になってるよ」

 

「……だといいなぁ」

 

やがて部屋の灯りが消え、夜が深まっていく。

 

静かな時間。

 

窓の外では、夜風が木々を揺らしていた。

 

その時だった。

 

『……助けて……』

 

「っ!?」

 

なのはが勢いよく目を開く。

 

頭の奥へ直接響く、あの声。

 

『助けて……!』

 

今度は昼間よりもはっきりしていた。

 

なのはが慌てて身体を起こす。

 

隣のベッドを見る。

 

さくらは静かに眠っていた。

 

起こさないようにそっとベッドを降りると、なのはは静かに部屋を抜け出した。

 

夜の海鳴市を、小さな足音が駆けていく。

 

向かう先は、動物病院。

 

なのはは息を切らしながら走った。

 

『助けて……!』

 

声が近付いてくる。

 

そして。

 

動物病院へ辿り着いたなのはは、そこで異様な光景を目にした。

 

「え……?」

 

夜の道路。

 

そこにいたのは、昼間のフェレットだった。

 

そして、その後ろから追い掛けている巨大な化け物。

 

黒い泥のような身体。

 

赤く光る瞳。

 

異形。

 

化け物は唸り声を上げながら、フェレットへ迫っていた。

 

「危ないっ!!」

 

なのはは咄嗟に飛び出した。

 

フェレットを抱き抱える。

 

その直後。

 

化け物の腕が地面を叩き砕いた。

 

轟音。

 

アスファルトが割れる。

 

なのはの顔が青ざめた。

 

「な、なにこれぇぇっ!?」

 

震える声。

 

だが、その腕の中でフェレットが光り始める。

 

そして。

 

淡い赤い光の中から、一つの杖が現れた。

 

宝玉の埋め込まれた、美しい杖。

 

『Stand by ready.』

 

機械的な声が夜へ響く。

 

なのはが目を見開く。

 

「しゃ、喋ったぁっ!?」

 

フェレット――ユーノが苦しそうに声を上げた。

 

「それを使って! 君なら使える!」

 

「つ、使えるってぇ!?」

 

化け物が再び迫る。

 

逃げ場はない。

 

なのはは震える手で杖を握った。

 

すると。

 

頭の中へ、不思議な言葉が流れ込んでくる。

 

呪文。

 

魔法。

 

自然と理解出来た。

 

なのはは杖を胸の前へ抱く。

 

「レイジングハート……セットアップ!」

 

瞬間。

 

桜色の光が夜空へ弾けた。

 

光がなのはの身体を包み込む。

 

リボン。

 

バリアジャケット。

 

桜色の魔力。

 

そして。

 

夜空へ浮かぶ、一人の魔法少女。

 

高町なのはの、始まりだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。