夜明け前の海。
群青色の空の下、二つの光が激しく交差していた。
桜色。
そして黄金。
高町なのはとフェイト・テスタロッサ。
互いの全てをぶつけ合う、本気の戦い。
フォトンランサーが幾重にも空を裂き、ディバインシューターが迎撃する。
砲撃。
高速機動。
防御。
斬撃。
どちらも一歩も引かない。
その戦いを、アースラのブリッジではクロノとエイミィたちが見守っていた。
「転送座標、まだ割り出せないの!?」
「もう少しです!」
エイミィの指が高速でコンソールを叩く。
プレシアが使用した次元魔法。
その残滓を追跡し、“時の庭園”の位置を特定しようとしていた。
一方、海上。
フェイトは大きく後退し、バルディッシュを構える。
『Photon Lancer.』
黄金の魔力が幾重にも展開される。
無数の光槍。
空を埋め尽くすほどの砲列。
『Phalanx Shift.』
フェイト最大級の殲滅魔法。
その光景に、なのはは息を呑む。
だが、逃げない。
レイジングハートを握り締める。
「受けて立つよ……!」
黄金の閃光が放たれた。
豪雨のような光槍。
なのはは飛ぶ。
避ける。
撃ち落とす。
防ぐ。
しかし数が多すぎる。
何発もバリアジャケットを掠め、衝撃が全身を打つ。
「くっ……!」
それでも前へ。
フェイトの想いを、真正面から受け止めるために。
最後の光槍を撃ち抜いた瞬間。
なのはは加速した。
「レイジングハート!」
『All right.』
桜色の魔力が収束する。
『Divine Buster.』
極大の砲撃。
一直線に放たれた桜色の奔流が、フェイトを呑み込む。
だが、なのはは止まらない。
さらに空へ。
さらに高く。
大気中に散った魔力光が集まっていく。
夜明けの空に、星屑のような光が舞う。
フェイトが目を見開いた。
「これは……」
『Starlight Breaker.』
世界が白く染まった。
桜色の超巨大砲撃。
集束された魔力が、夜明けの空を貫く。
直撃。
フェイトの防御を突破し、黄金の光が弾け飛んだ。
静寂。
バルディッシュが砕けた音だけが、かすかに響く。
フェイトの意識が途切れる。
力を失った身体が、海へ落下した。
「フェイトちゃん!!」
なのはは急降下する。
海面すれすれでフェイトを抱き留めた。
その瞬間。
空が裂けた。
紫電。
凶悪な雷撃が空間を貫く。
「っ!!」
プレシアの次元魔法。
直撃を受けたフェイトが苦痛の声を漏らす。
バルディッシュが悲鳴のような電子音を響かせ、致命的に破損する。
さらに、フェイトが持っていた九個のジュエルシードが強制転送される。
奪われた。
「母……さん……」
フェイトの声は震えていた。
アースラではエイミィが叫ぶ。
「座標特定できた! 時の庭園です!!」
モニターに浮かび上がる転送先。
クロノが即座に振り返る。
「武装隊、出動準備!」
一方――。
時の庭園。
玉座のような椅子に腰掛けるプレシアは、激しく咳き込んでいた。
白い床に血が落ちる。
だが、その瞳は狂気に満ちている。
手元には集められたジュエルシード。
「ふふ……ふふふ……」
モニター越しに映るフェイトを見つめる。
「そろそろ、潮時かもね……」
そして、ついに語られる真実。
フェイト・テスタロッサ。
それは本当の娘ではなかった。
事故で失った実の娘――アリシア。
その記憶を元に作られた、クローン素体。
プレシアは、失った娘を取り戻すためだけにフェイトを作った。
愛していたのではない。
代用品として求めていただけ。
その事実を聞かされた瞬間。
フェイトの瞳から光が消えた。
「……あ……」
声にならない。
身体から力が抜ける。
なのはは咄嗟にフェイトを抱き締めた。
「フェイトちゃん!」
震えていた。
小さな身体が。
壊れてしまいそうなくらい。
「私は……」
フェイトの唇が震える。
「母さんの……娘じゃ……」
なのはは強く抱き締める。
「違わない!!」
叫ぶ。
「そんなの、絶対違う!!」
フェイトの瞳から涙が零れた。
一方、モニターの向こうではプレシアが高笑いしていた。
「アルハザード……!」
ジュエルシードが共鳴を始める。
次元震。
空間が歪む。
「待っていて、アリシア……!」
クロノは立ち上がった。
「プレシア・テスタロッサを止める!」
武装隊が動き出す。
アースラが加速する。
そしてなのはは。
涙を流すフェイトを、ただ強く抱き締め続けていた。