魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

11 / 38
第十一話 死ぬ気の炎

模擬戦が終わった頃には、空はすっかり夕暮れ色へ染まっていた。

 

結界の中。

 

なのはは芝生の上へ大の字になって倒れている。

 

「はぁ……はぁ……むりぃ……」

 

全身ぼろぼろ。

 

ユーノが苦笑する。

 

「お疲れ様、なのは」

 

「お姉ちゃん強すぎるよぉ……」

 

なのはは半泣きだった。

 

結局。

 

模擬戦の間、一度もさくらへ有効打を与えられなかった。

 

近付けばトンファー。

 

離れれば鎖。

 

空へ逃げても追ってくる。

 

しかも途中からは、トンファー側面から鉤や棘まで展開され始めた。

 

「模擬戦で使う武器じゃないよぉ……」

 

「実戦仕様だから」

 

涼しい顔で返される。

 

なのははぐったりした。

 

やがて、ユーノが結界を解除する。

 

夕方の公園へ静けさが戻った。

 

その時だった。

 

なのはがふと首を傾げる。

 

「……そういえば」

 

「ん?」

 

「鎖」

 

さくらが視線を向ける。

 

なのはは思い出すように言った。

 

「途中から、どんどん長くなってなかった?」

 

ユーノもハッとした。

 

「あ……!」

 

確かにそうだった。

 

最初は普通の長さだったはずだ。

 

だが戦闘中、鎖は明らかに伸びていた。

 

しかも異常なほど。

 

トンファー内部へ収納できる量ではない。

 

ユーノが真剣な顔になる。

 

「空間圧縮系の技術……?」

 

「でも、あの武器には魔導機構が……」

 

そこまで言って止まる。

 

そもそも、さくらの力は普通の魔法ではない。

 

なのはも不思議そうに言った。

 

「どうなってるの?」

 

すると。

 

珍しく、さくらが少し考えるような顔をした。

 

そして静かにポケットへ手を入れる。

 

取り出したのは、二つのリング。

 

赤い宝石の付いたリング。

 

藍色の宝石の付いたリング。

 

すでに薬指には、紫色の宝石が付いたリングが嵌められている。

 

さくらは赤いリングを人差し指へ。

 

藍色のリングを中指へ嵌めた。

 

次の瞬間。

 

三つのリングへ、それぞれ異なる色の炎が灯る。

 

人差し指――赤。

 

中指――藍。

 

薬指――紫。

 

揺らめく三色の炎。

 

ユーノが息を呑む。

 

「炎の色が……違う……」

 

なのはも目を丸くする。

 

「綺麗……」

 

さくらは静かに自分の手を見つめながら言った。

 

「この炎には、それぞれ特性がある」

 

紫色の炎がゆらりと揺れる。

 

「紫……雲属性の炎の特性は、増殖」

 

ユーノが思わず聞き返す。

 

「雲属性……?」

 

聞いた事のない分類だった。

 

魔法体系とも違う。

 

さくらは気にした様子もなく続ける。

 

「鎖を増やしたのはこれ」

 

なのはが「へぇぇ……」と感心する。

 

続いて、中指の藍色の炎が揺らめく。

 

「藍は霧属性」

 

「霧……」

 

なのはが呟く。

 

「特性は、構築」

 

その瞬間。

 

藍色の炎が霧のように広がり、小さな紅い宝石を形作った。

 

待機状態のレイジングハート。

 

ユーノが目を見開く。

 

「また……!」

 

だが次の瞬間、それは霧となって崩れた。

 

「イメージしたものを構築する」

 

「だから、武器も作れる」

 

なのはは森で見た戦いを思い出していた。

 

桃色の魔法陣。

 

レイジングハート。

 

全部、本物みたいだった。

 

最後に、人差し指の赤い炎が揺れる。

 

「赤は嵐属性」

 

炎が少し激しく燃え上がった。

 

「特性は分解」

 

短い説明。

 

だが危険さだけは伝わる。

 

ユーノは完全に混乱していた。

 

「属性ごとに能力が違う……?」

 

「そんな体系、聞いた事ない……」

 

さくらは静かに炎を見つめながら言った。

 

「この炎の事を、私は“死ぬ気の炎”って呼んでる」

 

「死ぬ気の炎……」

 

なのはが小さく復唱する。

 

夕暮れの中。

 

三色の炎が静かに揺れていた。

 

だが数秒後。

 

「うぅ……でも疲れたぁ……」

 

なのはがそのまま芝生へ倒れ込む。

 

一気に空気が緩んだ。

 

さくらは小さく溜め息を吐く。

 

そしてリングの炎を消し、ポケットへ戻した。

 

「ほら」

 

しゃがみ込む。

 

なのはが顔を上げる。

 

「……おんぶ?」

 

「帰るんでしょ」

 

なのはは嬉しそうに笑った。

 

「えへへ……」

 

そのまま背中へ飛びつく。

 

さくらは軽く持ち上げ、そのまま歩き出した。

 

ユーノは肩へ乗りながら、その後ろ姿を見る。

 

夕焼け。

 

帰り道。

 

姉に背負われたなのはは、すでに半分眠そうだった。

 

「お姉ちゃん……」

 

「なに?」

 

「次は勝つからね……」

 

さくらは少しだけ口元を緩める。

 

「頑張りなさい」

 

海鳴市の夕焼けの中。

 

三人はゆっくりと帰路を歩いていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。