魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第十二話 月夜の会話

その日の夜。

 

高町家は静かな眠りに包まれていた。

 

模擬戦で完全に体力を使い切ったなのはは、夕食とお風呂を終えた直後、そのままベッドへ倒れ込むように眠ってしまった。

 

「すぅ……すぅ……」

 

気持ちよさそうな寝息。

 

布団へ顔を半分埋めながら、幸せそうに眠っている。

 

そんななのはを見て、さくらは小さく息を吐いた。

 

「……お疲れ様」

 

部屋の明かりは控えめ。

 

窓の外からは月明かりが差し込んでいる。

 

さくらは机の椅子へ腰掛け、手に持ったグラスの麦茶を一口飲んだ。

 

氷が小さく鳴る。

 

静かな夜だった。

 

その時。

 

ベッドの横から、小さな足音が聞こえる。

 

ユーノだった。

 

フェレット姿のまま、机の近くまでやって来る。

 

「……起きてたんですね」

 

「なのはなら寝た」

 

「みたいですね」

 

ユーノは苦笑した。

 

あれだけ動けば当然だ。

 

しばらく沈黙。

 

窓の外では、夜風に木々が揺れている。

 

やがて、ユーノが真剣な顔になった。

 

「さくらさん」

 

「なに?」

 

「昼間の話です」

 

さくらが静かに視線を向ける。

 

ユーノは続けた。

 

「死ぬ気の炎」

 

「雲属性や霧属性……あんな力、僕は聞いた事がありません」

 

「魔法とも違う」

 

「だけど、確かに現実へ干渉している」

 

ユーノは困惑していた。

 

魔法体系。

 

ミッドチルダ式。

 

ベルカ式。

 

そういった既存理論へ、まるで当てはまらない。

 

なのに、力として成立している。

 

「一体、何なんですか?」

 

月明かりが差し込む。

 

その中で、さくらは静かに麦茶を飲んだ。

 

そして、小さく言った。

 

「秘密」

 

「えっ」

 

あまりにも即答だった。

 

ユーノが呆気に取られる。

 

だが、さくらは少し考えたあと、静かに続けた。

 

「……でも、死ぬ気の炎についてなら説明できる」

 

そう言って、机の引き出しを開く。

 

中から取り出されたのは、いくつものリング。

 

橙色。

 

赤色。

 

青色。

 

紫色。

 

黄色。

 

緑色。

 

藍色。

 

月明かりに照らされ、それぞれ異なる色の宝石が静かに輝いていた。

 

ユーノが息を呑む。

 

「こんなに……」

 

さくらはリングを机へ並べながら話し始める。

 

「人間の体には、血液とは別に、目に見えない生命エネルギーが流れてる」

 

「生命エネルギー……?」

 

「波動みたいなもの」

 

「それが全身を巡ってる」

 

ユーノは真剣な顔で聞いていた。

 

さくらは続ける。

 

「波動は七種類ある」

 

そう言って、リングを一つずつ軽く指で触れる。

 

「大空――橙」

 

「嵐――赤」

 

「雨――青」

 

「雲――紫」

 

「晴――黄」

 

「雷――緑」

 

「霧――藍」

 

「リングは、自分の素質と合った波動が通ると反応する」

 

「そして、高密度エネルギーへ変換、生成する」

 

ユーノが目を見開く。

 

「変換装置……?」

 

「多分」

 

さくらは静かに頷く。

 

「私は、その高密度エネルギーを“死ぬ気の炎”って呼んでる」

 

そして。

 

さくらは三つのリングを手に取った。

 

赤。

 

紫。

 

藍。

 

それぞれを、人差し指、中指、薬指へ嵌める。

 

次の瞬間。

 

ボッ――

 

赤い炎。

 

紫色の炎。

 

藍色の炎。

 

三色だけが静かに灯った。

 

ユーノが目を見開く。

 

「三種類……?」

 

「私はこれしか使えない」

 

そう言って、机へ置かれた他のリングを見る。

 

橙。

 

青。

 

黄。

 

緑。

 

それらは静かなまま、反応しない。

 

「素質が合わないと、炎は出ない」

 

藍色の炎がゆらりと揺れる。

 

「霧は構築」

 

「イメージしたものを形にする」

 

紫色の炎が揺らぐ。

 

「雲は増殖」

 

「増やす性質」

 

赤い炎が強く燃え上がる。

 

「嵐は分解」

 

「壊して崩す」

 

ユーノは真剣な顔で聞いていた。

 

さらに、さくらは机へ置かれた他のリングを見る。

 

「大空は調和」

 

「推進力が強くて、他の属性とも合わせやすい」

 

「全部の匣兵器を使えるらしい」

 

青いリングへ視線を移す。

 

「雨は鎮静」

 

「弱体化とか抑制」

 

「動きを鈍らせたり、痛みを和らげたりできる」

 

黄色。

 

「晴は活性」

 

「強化と治癒」

 

「成長を促す性質もある」

 

最後に緑。

 

「雷は硬化」

 

「防御と貫通が強い」

 

「痺れさせたりもできる」

 

ユーノは完全に驚いていた。

 

「全部、能力の方向性が違う……」

 

「まるで属性というより、“現象”だ」

 

月明かりの中。

 

三色の炎が静かに揺れていた。

 

その時。

 

「んぅ……お姉ちゃぁん……」

 

なのはが寝言を漏らす。

 

二人がそちらを見る。

 

なのはは幸せそうに眠ったままだった。

 

ユーノが少しだけ笑う。

 

「本当に仲いいですね」

 

「昔から」

 

さくらは短く答える。

 

静かな部屋。

 

月の光。

 

そして――

 

誰にも知られていない、七つの炎。

 

その秘密だけが、静かに揺れていた。

 

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