夜のビル街。
桃色と金色の光が、夜空を激しく駆け巡っていた。
ガギィンッ!!
空中で激突する、レイジングハートとバルディッシュ。
衝撃波がビルの窓を震わせる。
「はぁぁっ!!」
なのはが魔力を解放。
桃色の砲撃が一直線に走る。
フェイトは高速機動で回避。
金色の雷光がビル壁を蹴り、一瞬でなのはの死角へ潜り込む。
「っ!?」
振り向くより早く、斬撃。
ガギン!!
なのはが咄嗟に防御。
押し込まれる。
だが、以前のように一方的ではない。
なのはは食らいついていた。
フェイトもそれを理解している。
「……強い」
小さな呟き。
なのははレイジングハートを握る。
「わたしだって……負けたくない!」
桃色の魔力が膨れ上がる。
一方。
地上では、アルフとさくらの戦いが続いていた。
「くっそ……!」
アルフが地面を蹴る。
獣のような速度。
だが、その目前へ赤い炎の虎が飛び込む。
『嵐トラ(ティグレ・デッラ・テンペスタ)』
ガァァァッ!!
鋭い爪撃。
アルフが回避した直後、背後の街灯が崩れ落ちた。
「分解しやがるのかい!」
アルフが舌打ちする。
さくらは静かにアルフを見据える。
赤い炎が揺らめく。
その時だった。
「そこまでだ」
突然。
少年の声が響いた。
全員の動きが止まる。
ビル上空。
そこに、一人の少年が浮かんでいた。
黒いバリアジャケット。
整った顔立ち。
冷静な瞳。
手にはデバイス。
ユーノが目を見開く。
「時空管理局……!?」
クロノ・ハラオウン。
管理局執務官。
クロノは周囲を見渡しながら、鋭い声で告げた。
「ロストロギアの不法使用を確認した」
「全員、武装解除――」
その瞬間。
フェイトの表情が変わった。
「っ……!」
即座に距離を取る。
アルフも戦闘を中断し、フェイトの元へ跳ぶ。
「フェイト!」
管理局。
それはフェイトたちにとって、最悪クラスの遭遇だった。
だが。
次の瞬間。
ゴロォォォォォッ!!!!
空気が爆発した。
「っ!?」
全員が空を見る。
暴走。
ジュエルシードだ。
抑え込まれていた魔力が、一気に膨れ上がる。
金色の雷が暴走し、ビル街全体へ広がり始めた。
道路が砕ける。
街灯が爆ぜる。
クロノが舌打ちした。
「まずい……!」
ユーノも青ざめる。
「完全暴走だ!」
なのはが息を呑む。
「そんな……!」
その時。
さくらが静かにポケットへ手を入れた。
取り出したのは、紫色の宝石が付いたリング。
中指へ嵌める。
ボッ――
紫色の炎。
続いて、匣を取り出す。
炎を穴へ押し当てる。
ガコンッ!!
開匣。
飛び出したのは――
小さなハリネズミ。
『雲ハリネズミ(リッチョ・デッレ・ヌーヴォレ)』
ハリネズミが地面へ着地した瞬間。
紫色の炎が一気に増殖。
ドーム状の壁が広がっていく。
「隔離する気か……!」
クロノが驚く。
だが。
ジュエルシードの暴走は、想像以上だった。
雷が荒れ狂う。
空間そのものが軋む。
紫炎の壁が激しく震え始めた。
「っ……!」
さくらが炎の出力を上げる。
紫色の炎がさらに増殖。
ドームが広がる。
しかし。
ピシッ――
嫌な音が響いた。
ユーノが目を見開く。
「リングが……!」
さくらの中指。
紫色の宝石へ、亀裂が走っていた。
暴走するジュエルシードの波動。
その負荷に、リングが耐え切れていない。
それでも、さくらは炎を止めない。
紫炎はさらに膨れ上がる。
だが次の瞬間――
バキィンッ!!
紫色のリングが砕け散った。
「っ――!」
炎が大きく揺らぐ。
ドームが崩壊しかける。
なのはが叫んだ。
「お姉ちゃん!」
だが、その時だった。
「バルディッシュ!」
フェイトが前へ出た。
金色の魔力が膨れ上がる。
「封じるよ……!」
フェイトが暴走の中心へ突っ込む。
「フェイト!?」
アルフが叫ぶ。
だがフェイトは止まらない。
両手を広げ、無理矢理ジュエルシードへ魔力を叩き込む。
金色の雷と雷が衝突。
空気が悲鳴を上げる。
フェイトの表情が苦痛に歪む。
それでも。
「……止まれぇぇっ!!」
金色の光が爆発した。
そして――
暴走が止まる。
静寂。
雷鳴が消えた。
崩壊しかけていたビル街も、辛うじて持ち堪えている。
なのはが息を呑む。
「止めた……」
クロノも驚いていた。
だが。
フェイトは大きく息を乱している。
消耗が激しい。
その隙を、アルフは見逃さなかった。
「撤退するよ!」
アルフがフェイトを抱き寄せる。
「っ――!」
転移魔法陣。
金色の光。
フェイトが最後になのはを見る。
何か言いたげだった。
だが。
そのまま、二人の姿は消えた。
静寂が戻る。
なのはは追おうとした。
だが。
「っ……」
膝が崩れる。
限界だった。
連戦。
高出力戦闘。
体力も魔力も、ほぼ空。
ユーノが慌てる。
「なのは!」
クロノはそんななのはを見ると、小さく息を吐いた。
そして、砕けた紫色のリングへ視線を向ける。
「……君たち」
「少し事情を聞かせてもらう必要がある」
その後ろ。
空間へ巨大な魔法陣が展開される。
次元航行艦。
『アースラ』
管理局の船だった。
クロノは静かに告げる。
「来てもらう」
こうして。
なのはたちは――
時空管理局と接触することになった。