光に包まれる感覚。
身体がふわりと浮き上がり――
次の瞬間。
なのはたちは、まるで別世界のような場所へ立っていた。
「……わぁ」
なのはが思わず声を漏らす。
白を基調とした通路。
滑らかに光る床。
見たこともない機械類。
窓の外には、暗い宇宙空間のような景色まで広がっていた。
次元航行艦。
『アースラ』
時空管理局所属の艦船。
クロノはそんななのはたちを振り返る。
「艦長がお前たちとの話し合いを希望している」
「付いて来い」
なのはは慌てて頷いた。
「は、はい!」
そのまま一行は歩き出す。
途中。
ユーノが小さく息を吐いた。
「管理局と正式に接触するの、久しぶりだな……」
するとクロノが振り返る。
「その姿のままで話すつもりか?」
「え?」
なのはがきょとんとする。
クロノは呆れたように言った。
「変身を解け」
その瞬間。
淡い光がユーノを包み込む。
なのはが目を丸くした。
「えっ――!?」
光が消える。
そこにいたのは。
茶色の髪。
緑色の瞳。
なのはたちと同年代くらいの少年だった。
「ふぅ……」
ユーノが軽く肩を回す。
なのはは完全に固まっていた。
「えええええぇぇぇぇっ!?!?」
ユーノがびくっとする。
「な、なのは!?」
「ユーノくんって人だったの!?!?」
「いや、人だけど!?」
「フェレットじゃなかったの!?」
「そっちが仮の姿だよ!?」
なのはは大混乱だった。
一方。
その隣で、さくらは静かに歩いている。
なのはが振り向いた。
「お、お姉ちゃん知ってたの!?」
「最初から」
「なんで教えてくれなかったの!?」
「聞かれなかったから」
「うぅぅぅ……!」
なのはが頭を抱える。
ユーノは苦笑いしていた。
クロノは呆れ顔だった。
「お前たち、本当に何も知らずにやってたのか……」
「えへへ……」
なのはが乾いた笑いを漏らす。
そして。
しばらく歩いた先。
自動ドアが静かに開いた。
「……わぁ」
なのはが再び声を漏らす。
そこに広がっていたのは――
庭園だった。
人工艦とは思えないほど広い。
緑の芝生。
色とりどりの花。
小川まで流れている。
そして中央には、白いテーブルセット。
その場所で、一人の女性がお茶を淹れていた。
美しいエメラルド色の髪。
柔らかな微笑み。
優しげな雰囲気。
クロノと少し似ている。
女性は振り向くと、優雅に微笑んだ。
「ようこそ、アースラへ」
「私はリンディ・ハラオウン」
「この艦の艦長をしています」
なのはたちは挨拶を返す。
だが。
なのはとユーノは、何とも言えない顔をしていた。
テーブルの上。
湯飲み。
茶筅。
和菓子。
そして。
どう見ても、無理して“和”を再現している空間だった。
多分。
自分たちへ気を遣ったのだろう。
だが。
微妙にズレている。
芝生のど真ん中で抹茶。
宇宙船の中で和庭園。
違和感が凄い。
なのはは何とか笑顔を保った。
「す、すごいですね……!」
ユーノも必死に頷く。
「え、ええ……」
さくらだけは無表情だった。
誰も突っ込まない。
優しさだった。
リンディは満足そうに微笑む。
「それでは、まずお話を聞かせてもらえるかしら?」
全員が席へ着く。
クロノも静かに腕を組んだ。
そして。
ユーノが真剣な顔になる。
「……今回の件について説明します」
空気が変わった。
先ほどまでの和やかさが消える。
ユーノは静かに語り始めた。
「始まりは、発掘されたロストロギア――ジュエルシードです」
「僕はそれを回収、管理する任務に就いていました」
「ですが輸送中、事故が起きた」
ユーノの表情が曇る。
「ジュエルシードは次元震と共に散逸」
「そして、この海鳴市へ落下したんです」
クロノが険しい顔になる。
リンディも静かに話を聞いていた。
ユーノは続ける。
「ジュエルシードは危険です」
「持ち主の願望を暴走増幅させる」
「結果として、周囲の環境すら歪める場合がある」
なのはは、これまで見てきた暴走を思い出す。
雷。
怪物化。
暴走する魔力。
どれも普通ではなかった。
「だから僕は回収していた」
「なのはに協力してもらいながら」
そこまで言って。
ユーノは少し迷う。
そして。
視線を、さくらへ向けた。
「……あと、さくらにも」
クロノの視線も動く。
リンディも興味深そうに見ていた。
特に。
砕けた紫色のリング。
あの未知の力。
管理局側も、完全に無視できる存在ではなかった。