魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

16 / 36
第十六話 アースラ

光に包まれる感覚。

 

身体がふわりと浮き上がり――

 

次の瞬間。

 

なのはたちは、まるで別世界のような場所へ立っていた。

 

「……わぁ」

 

なのはが思わず声を漏らす。

 

白を基調とした通路。

 

滑らかに光る床。

 

見たこともない機械類。

 

窓の外には、暗い宇宙空間のような景色まで広がっていた。

 

次元航行艦。

 

『アースラ』

 

時空管理局所属の艦船。

 

クロノはそんななのはたちを振り返る。

 

「艦長がお前たちとの話し合いを希望している」

 

「付いて来い」

 

なのはは慌てて頷いた。

 

「は、はい!」

 

そのまま一行は歩き出す。

 

途中。

 

ユーノが小さく息を吐いた。

 

「管理局と正式に接触するの、久しぶりだな……」

 

するとクロノが振り返る。

 

「その姿のままで話すつもりか?」

 

「え?」

 

なのはがきょとんとする。

 

クロノは呆れたように言った。

 

「変身を解け」

 

その瞬間。

 

淡い光がユーノを包み込む。

 

なのはが目を丸くした。

 

「えっ――!?」

 

光が消える。

 

そこにいたのは。

 

茶色の髪。

 

緑色の瞳。

 

なのはたちと同年代くらいの少年だった。

 

「ふぅ……」

 

ユーノが軽く肩を回す。

 

なのはは完全に固まっていた。

 

「えええええぇぇぇぇっ!?!?」

 

ユーノがびくっとする。

 

「な、なのは!?」

 

「ユーノくんって人だったの!?!?」

 

「いや、人だけど!?」

 

「フェレットじゃなかったの!?」

 

「そっちが仮の姿だよ!?」

 

なのはは大混乱だった。

 

一方。

 

その隣で、さくらは静かに歩いている。

 

なのはが振り向いた。

 

「お、お姉ちゃん知ってたの!?」

 

「最初から」

 

「なんで教えてくれなかったの!?」

 

「聞かれなかったから」

 

「うぅぅぅ……!」

 

なのはが頭を抱える。

 

ユーノは苦笑いしていた。

 

クロノは呆れ顔だった。

 

「お前たち、本当に何も知らずにやってたのか……」

 

「えへへ……」

 

なのはが乾いた笑いを漏らす。

 

そして。

 

しばらく歩いた先。

 

自動ドアが静かに開いた。

 

「……わぁ」

 

なのはが再び声を漏らす。

 

そこに広がっていたのは――

 

庭園だった。

 

人工艦とは思えないほど広い。

 

緑の芝生。

 

色とりどりの花。

 

小川まで流れている。

 

そして中央には、白いテーブルセット。

 

その場所で、一人の女性がお茶を淹れていた。

 

美しいエメラルド色の髪。

 

柔らかな微笑み。

 

優しげな雰囲気。

 

クロノと少し似ている。

 

女性は振り向くと、優雅に微笑んだ。

 

「ようこそ、アースラへ」

 

「私はリンディ・ハラオウン」

 

「この艦の艦長をしています」

 

なのはたちは挨拶を返す。

 

だが。

 

なのはとユーノは、何とも言えない顔をしていた。

 

テーブルの上。

 

湯飲み。

 

茶筅。

 

和菓子。

 

そして。

 

どう見ても、無理して“和”を再現している空間だった。

 

多分。

 

自分たちへ気を遣ったのだろう。

 

だが。

 

微妙にズレている。

 

芝生のど真ん中で抹茶。

 

宇宙船の中で和庭園。

 

違和感が凄い。

 

なのはは何とか笑顔を保った。

 

「す、すごいですね……!」

 

ユーノも必死に頷く。

 

「え、ええ……」

 

さくらだけは無表情だった。

 

誰も突っ込まない。

 

優しさだった。

 

リンディは満足そうに微笑む。

 

「それでは、まずお話を聞かせてもらえるかしら?」

 

全員が席へ着く。

 

クロノも静かに腕を組んだ。

 

そして。

 

ユーノが真剣な顔になる。

 

「……今回の件について説明します」

 

空気が変わった。

 

先ほどまでの和やかさが消える。

 

ユーノは静かに語り始めた。

 

「始まりは、発掘されたロストロギア――ジュエルシードです」

 

「僕はそれを回収、管理する任務に就いていました」

 

「ですが輸送中、事故が起きた」

 

ユーノの表情が曇る。

 

「ジュエルシードは次元震と共に散逸」

 

「そして、この海鳴市へ落下したんです」

 

クロノが険しい顔になる。

 

リンディも静かに話を聞いていた。

 

ユーノは続ける。

 

「ジュエルシードは危険です」

 

「持ち主の願望を暴走増幅させる」

 

「結果として、周囲の環境すら歪める場合がある」

 

なのはは、これまで見てきた暴走を思い出す。

 

雷。

 

怪物化。

 

暴走する魔力。

 

どれも普通ではなかった。

 

「だから僕は回収していた」

 

「なのはに協力してもらいながら」

 

そこまで言って。

 

ユーノは少し迷う。

 

そして。

 

視線を、さくらへ向けた。

 

「……あと、さくらにも」

 

クロノの視線も動く。

 

リンディも興味深そうに見ていた。

 

特に。

 

砕けた紫色のリング。

 

あの未知の力。

 

管理局側も、完全に無視できる存在ではなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。