魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第十七話 力ある者

ユーノの説明が終わる頃には。

 

庭園には静かな空気が流れていた。

 

リンディはティーカップを静かに置く。

 

「……なるほど」

 

「事情は理解しました」

 

その表情は穏やかだが、瞳は真剣だった。

 

クロノも腕を組みながら考え込んでいる。

 

そして。

 

リンディは静かに告げた。

 

「ジュエルシードの回収任務は、時空管理局が正式に引き継ぎます」

 

なのはが少し驚いた顔をする。

 

「えっ……?」

 

「本来、ロストロギア案件は管理局の管轄です」

 

「危険性を考えても、民間協力者へ任せ続ける訳にはいきません」

 

優しい口調だった。

 

だが、それは実質的な撤退勧告でもあった。

 

なのはは少し困った顔になる。

 

ユーノも複雑そうだった。

 

そんな中。

 

さくらが静かに立ち上がる。

 

「なら、帰るよ」

 

あまりにも自然な口調だった。

 

なのはがきょとんとする。

 

「え?」

 

さくらはなのはへ視線を向ける。

 

「帰る」

 

そこで、なのははようやく理解した。

 

自分も含まれている。

 

「えぇっ!?」

 

なのはが慌てて立ち上がる。

 

「ちょ、ちょっと待ってお姉ちゃん!?」

 

クロノも僅かに眉を寄せた。

 

リンディは苦笑しながら口を開こうとする。

 

「あのね、さくらさん――」

 

だが。

 

その前に。

 

さくらが言った。

 

「なのはに、手伝って欲しいって言わせるつもり」

 

場の空気が止まる。

 

リンディが一瞬だけ目を丸くした。

 

さくらは淡々と続ける。

 

「戦力確認」

 

「ジュエルシード回収の経験あり」

 

「戦闘能力も確認済み」

 

「管理局は、あれだけ戦える人間を手放すほど馬鹿じゃない」

 

クロノが目を細める。

 

リンディは小さく苦笑した。

 

図星だった。

 

なのはの性格なら。

 

困っていると言われれば、協力すると言う。

 

リンディはそこまで計算していた。

 

「……鋭いわね」

 

「別に」

 

さくらは無表情のままだった。

 

そして。

 

そのまま踵を返す。

 

「なのは、行くよ」

 

「う、うぅ……」

 

なのはが困ったようにリンディたちを見る。

 

だが。

 

リンディは静かに問いかけた。

 

「本当にいいの?」

 

「このままだと、またあの子たちと戦う事になるわ」

 

フェイト。

 

アルフ。

 

危険な戦い。

 

なのはは少しだけ迷った顔をした。

 

だが。

 

さくらは足を止めない。

 

「なのはが決める事」

 

「私は関係ない」

 

その言葉に。

 

異議を唱えたのは、クロノだった。

 

「待て」

 

低い声。

 

さくらが足を止める。

 

クロノは真っ直ぐさくらを見る。

 

「お前には力がある」

 

「なら、責任もあるはずだ」

 

空気が張り詰める。

 

なのはが不安そうに二人を見る。

 

クロノは続けた。

 

「力ある者には義務がある」

 

「危険を放置せず、人を守る責任だ」

 

「現に、お前は戦える」

 

「なら、逃げるべきじゃない」

 

真っ直ぐな言葉だった。

 

管理局執務官としての考え。

 

だが。

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

さくらは――

 

鼻で笑った。

 

「……は」

 

クロノの眉が動く。

 

さくらはゆっくり振り返った。

 

その瞳は冷たい。

 

「知らない」

 

「私が戦う理由を、他人に決められるつもりはない」

 

「義務?」

 

「責任?」

 

「そんなものの為に戦うほど、暇じゃない」

 

クロノの表情が険しくなる。

 

「なら、お前は見捨てるのか?」

 

「必要なら助ける」

 

「でも、それは私が決める」

 

「管理局の命令じゃない」

 

空気が重くなる。

 

クロノとさくら。

 

互いに一歩も引かない。

 

リンディが小さく息を吐いた。

 

「……価値観の違い、ね」

 

完全な平行線だった。

 

クロノは職務と責任を重視する。

 

さくらは、自分の意思以外で動かない。

 

根本的に噛み合わない。

 

数秒の沈黙。

 

そして。

 

クロノが口を開く。

 

「なら、実力で示せ」

 

なのはが目を見開く。

 

「えっ!?」

 

クロノは静かにデバイスを構えた。

 

「お前の考えが正しいなら」

 

「僕を納得させてみろ」

 

さくらは数秒、クロノを見つめる。

 

そして。

 

ポケットへ手を入れた。

 

取り出したのは。

 

藍色の宝石が付いたリング。

 

中指へ嵌める。

 

ボッ――

 

藍色の炎が灯る。

 

クロノも静かに魔力を展開した。

 

庭園の空気が張り詰める。

 

なのはが慌てる。

 

「ちょ、ちょっと待って!?」

 

だが。

 

止まらない。

 

管理局執務官。

 

そして。

 

死ぬ気の炎を操る少女。

 

互いの視線が、真っ直ぐぶつかっていた。

 

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