魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第5話「それは小さな願いなの(前編)」

夜。

 

スーパーの店内を、八神はやての車椅子がゆっくりと進んでいた。

 

後ろから押しているのはシャマルである。

 

「今日はお鍋やね」

 

買い物かごの中を見ながら、はやては楽しそうに笑う。

 

「ええ。すずかちゃんも来るんでしょう?」

 

「うん。久しぶりやから楽しみや」

 

シャマルも微笑んだ。

 

だが、その笑顔の奥には隠し切れない陰りがある。

 

最近、シグナムたちもヴィータもザフィーラも家にいる時間が減っていた。

 

はやてもそれには気付いている。

 

「みんな最近忙しいなぁ」

 

ぽつりと呟く。

 

シャマルの手が一瞬止まった。

 

「そうですね……」

 

少しだけ間を置き、

 

「でも、もう少しです」

 

「もう少し?」

 

「はい。もう少ししたら、またみんなで一緒にいられるようになります」

 

はやてはきょとんとする。

 

意味はよく分からない。

 

けれどシャマルが言うならそうなのだろう。

 

「そっか」

 

にこりと笑う。

 

「シャマルがそう言うなら安心やね」

 

その言葉が胸に痛かった。

 

シャマルは何も言えず、ただ微笑み返した。

 

店を出た二人の上には冬の夜空が広がっている。

 

冷たい風。

 

はやては見上げた空に向かって小さく呟いた。

 

「みんな、外で寒ないかな……」

 

---

 

その頃。

 

市街地上空。

 

管理局の結界内では激しい戦闘が続いていた。

 

なのはとヴィータ。

 

フェイトとシグナム。

 

それぞれが対峙している。

 

クロノとユーノは結界内部の捜索へ向かった。

 

目的は闇の書。

 

そして、その主。

 

「行くぞ!」

 

ヴィータが叫ぶ。

 

紫色の炎。

 

雲のマーレリングが輝く。

 

グラーフアイゼンへカートリッジロード。

 

炸裂音。

 

巨大な魔力。

 

ラケーテンハンマー。

 

「はああああっ!」

 

突撃。

 

だが。

 

「今度は負けない!」

 

なのはも叫んだ。

 

レイジングハート・エクセリオン。

 

カートリッジロード。

 

そして右手には、新しくさくらから渡された嵐のリング。

 

赤い炎が噴き上がる。

 

激突。

 

轟音。

 

しかし今回は押し負けない。

 

「なっ!?」

 

ヴィータが目を見開く。

 

なのはは真正面からその一撃を受け止めていた。

 

「アクセルシューター!」

 

無数の誘導弾。

 

ヴィータを取り囲む。

 

爆発。

 

連続攻撃。

 

「ちっ!」

 

ヴィータが回避に追われる。

 

---

 

一方。

 

フェイトとシグナム。

 

金色の雷光。

 

紅蓮の炎。

 

二人は超高速で空を駆けていた。

 

バルディッシュ・アサルト。

 

レヴァンティン。

 

激突。

 

火花。

 

衝撃波。

 

「強くなったな」

 

シグナムが言う。

 

「あなたも」

 

フェイトも応じる。

 

雷のマーレリングが緑色の電気を放つ。

 

プラズマランサー。

 

射出。

 

シグナムが回避。

 

レヴァンティンが鞭状連結刃シュランゲフォルムへ変形する。

 

だが。

 

フェイトは止まらない。

 

ハーケンフォーム。

 

接近。

 

斬撃。

 

「見事だ」

 

シグナムは素直に賞賛した。

 

「でも、負けない」

 

フェイトが答える。

 

二人は再び激突した。

 

---

 

戦闘の最中。

 

なのはが声を上げる。

 

「ヴィータちゃん!」

 

「なんだ!」

 

「そのリング!」

 

ヴィータの目がわずかに細くなる。

 

「雲のマーレリングだよね!」

 

「……」

 

返答はない。

 

なのはは続けた。

 

「お姉ちゃんからもらったの!?」

 

ヴィータは小さく舌打ちした。

 

「話すつもりはねぇ」

 

それだけだった。

 

---

 

フェイトもシグナムへ問いかける。

 

「あなたも!」

 

「その嵐のマーレリング!」

 

シグナムは一瞬だけ視線を向ける。

 

赤い炎が揺らめく。

 

「知っているのか」

 

「うん」

 

「ならば分かるだろう」

 

レヴァンティンを構える。

 

「今は語れん」

 

それ以上は話さなかった。

 

---

 

結界の外。

 

シャマルは闇の書を抱えていた。

 

通信先はザフィーラ。

 

『状況が悪い』

 

低い声。

 

『引くべきだ』

 

シャマルもそう思っていた。

 

だが結界が邪魔をする。

 

突破できない。

 

迷う。

 

その瞬間。

 

背後に転移魔法陣。

 

「動くな」

 

クロノだった。

 

デュランダルを向ける。

 

シャマルが振り返る。

 

緊張。

 

だが次の瞬間。

 

別の魔力反応。

 

仮面の戦士。

 

突然の襲撃。

 

クロノが吹き飛ばされた。

 

「誰だ!」

 

クロノが叫ぶ。

 

仮面の男は答えない。

 

ただシャマルへ向かって言う。

 

「闇の書を使え」

 

シャマルが息を呑む。

 

「しかし……!」

 

「仲間がやられてからでは遅い」

 

その言葉にシャマルは迷う。

 

減るページ。

 

遠のく完成。

 

だが。

 

仲間を失うわけにはいかない。

 

ついに決断した。

 

闇の書が開く。

 

黒い魔力が集束する。

 

そして――

 

巨大砲撃。

 

結界を貫く。

 

轟音。

 

管理局結界は崩壊した。

 

---

 

撤退。

 

シグナムたちは即座に行動する。

 

「フェイト・T・ハラオウン」

 

シグナムが言う。

 

「次こそ決着をつけよう」

 

「うん」

 

フェイトも頷く。

 

なのはの前ではヴィータが帽子を被り直していた。

 

「次は負けねぇぞ」

 

「私もだよ」

 

二人は笑った。

 

敵同士なのに。

 

少しだけ。

 

---

 

その頃。

 

月村家。

 

はやては猫たちに囲まれていた。

 

「わぁ……」

 

満面の笑み。

 

すずかも笑う。

 

だが約束の時間を過ぎても誰も来ない。

 

しばらくして。

 

シャマルから電話。

 

遅くなるという連絡。

 

「気にせんでええよ」

 

はやては笑った。

 

「お鍋、すぐ食べられるようにしてあるから」

 

電話が切れる。

 

シャマルは俯いた。

 

主との約束を守れなかった。

 

その事実が胸に刺さる。

 

---

 

八神家。

 

帰宅した守護騎士たち。

 

今回減ったページ。

 

現れた仮面の戦士。

 

新たな敵。

 

問題は増える一方だった。

 

それでも。

 

シグナムは決意する。

 

「急がねばならん」

 

シャマルも頷く。

 

「はやてちゃんのために」

 

蒐集を続けるしかない。

 

---

 

一方。

 

管理局駐屯所。

 

ミーティング。

 

クロノとリンディが事件を整理していた。

 

なのはとフェイトはエイミィの説明を受ける。

 

レイジングハートとバルディッシュ。

 

二基は自ら望んでカートリッジシステムを搭載した。

 

危険性を承知の上で。

 

主を守るために。

 

なのははレイジングハートを見つめた。

 

「ありがとう」

 

フェイトも微笑む。

 

「これからもよろしくね」

 

二基の宝玉が静かに輝いた。

 

そして。

 

クロノは最後に口を開く。

 

「闇の書だけではない」

 

「マーレリングまで関わっている」

 

全員が静かになる。

 

「そして守護騎士たちの行動にも矛盾がある」

 

闇の書。

 

守護騎士。

 

マーレリング。

 

仮面の戦士。

 

それぞれが複雑に絡み合い始めていた。

 

事件はさらに深い闇へと沈んでいく。

 

誰もまだ、本当の真実には辿り着いていなかった。

 

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