夜。
スーパーの店内を、八神はやての車椅子がゆっくりと進んでいた。
後ろから押しているのはシャマルである。
「今日はお鍋やね」
買い物かごの中を見ながら、はやては楽しそうに笑う。
「ええ。すずかちゃんも来るんでしょう?」
「うん。久しぶりやから楽しみや」
シャマルも微笑んだ。
だが、その笑顔の奥には隠し切れない陰りがある。
最近、シグナムたちもヴィータもザフィーラも家にいる時間が減っていた。
はやてもそれには気付いている。
「みんな最近忙しいなぁ」
ぽつりと呟く。
シャマルの手が一瞬止まった。
「そうですね……」
少しだけ間を置き、
「でも、もう少しです」
「もう少し?」
「はい。もう少ししたら、またみんなで一緒にいられるようになります」
はやてはきょとんとする。
意味はよく分からない。
けれどシャマルが言うならそうなのだろう。
「そっか」
にこりと笑う。
「シャマルがそう言うなら安心やね」
その言葉が胸に痛かった。
シャマルは何も言えず、ただ微笑み返した。
店を出た二人の上には冬の夜空が広がっている。
冷たい風。
はやては見上げた空に向かって小さく呟いた。
「みんな、外で寒ないかな……」
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その頃。
市街地上空。
管理局の結界内では激しい戦闘が続いていた。
なのはとヴィータ。
フェイトとシグナム。
それぞれが対峙している。
クロノとユーノは結界内部の捜索へ向かった。
目的は闇の書。
そして、その主。
「行くぞ!」
ヴィータが叫ぶ。
紫色の炎。
雲のマーレリングが輝く。
グラーフアイゼンへカートリッジロード。
炸裂音。
巨大な魔力。
ラケーテンハンマー。
「はああああっ!」
突撃。
だが。
「今度は負けない!」
なのはも叫んだ。
レイジングハート・エクセリオン。
カートリッジロード。
そして右手には、新しくさくらから渡された嵐のリング。
赤い炎が噴き上がる。
激突。
轟音。
しかし今回は押し負けない。
「なっ!?」
ヴィータが目を見開く。
なのはは真正面からその一撃を受け止めていた。
「アクセルシューター!」
無数の誘導弾。
ヴィータを取り囲む。
爆発。
連続攻撃。
「ちっ!」
ヴィータが回避に追われる。
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一方。
フェイトとシグナム。
金色の雷光。
紅蓮の炎。
二人は超高速で空を駆けていた。
バルディッシュ・アサルト。
レヴァンティン。
激突。
火花。
衝撃波。
「強くなったな」
シグナムが言う。
「あなたも」
フェイトも応じる。
雷のマーレリングが緑色の電気を放つ。
プラズマランサー。
射出。
シグナムが回避。
レヴァンティンが鞭状連結刃シュランゲフォルムへ変形する。
だが。
フェイトは止まらない。
ハーケンフォーム。
接近。
斬撃。
「見事だ」
シグナムは素直に賞賛した。
「でも、負けない」
フェイトが答える。
二人は再び激突した。
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戦闘の最中。
なのはが声を上げる。
「ヴィータちゃん!」
「なんだ!」
「そのリング!」
ヴィータの目がわずかに細くなる。
「雲のマーレリングだよね!」
「……」
返答はない。
なのはは続けた。
「お姉ちゃんからもらったの!?」
ヴィータは小さく舌打ちした。
「話すつもりはねぇ」
それだけだった。
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フェイトもシグナムへ問いかける。
「あなたも!」
「その嵐のマーレリング!」
シグナムは一瞬だけ視線を向ける。
赤い炎が揺らめく。
「知っているのか」
「うん」
「ならば分かるだろう」
レヴァンティンを構える。
「今は語れん」
それ以上は話さなかった。
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結界の外。
シャマルは闇の書を抱えていた。
通信先はザフィーラ。
『状況が悪い』
低い声。
『引くべきだ』
シャマルもそう思っていた。
だが結界が邪魔をする。
突破できない。
迷う。
その瞬間。
背後に転移魔法陣。
「動くな」
クロノだった。
デュランダルを向ける。
シャマルが振り返る。
緊張。
だが次の瞬間。
別の魔力反応。
仮面の戦士。
突然の襲撃。
クロノが吹き飛ばされた。
「誰だ!」
クロノが叫ぶ。
仮面の男は答えない。
ただシャマルへ向かって言う。
「闇の書を使え」
シャマルが息を呑む。
「しかし……!」
「仲間がやられてからでは遅い」
その言葉にシャマルは迷う。
減るページ。
遠のく完成。
だが。
仲間を失うわけにはいかない。
ついに決断した。
闇の書が開く。
黒い魔力が集束する。
そして――
巨大砲撃。
結界を貫く。
轟音。
管理局結界は崩壊した。
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撤退。
シグナムたちは即座に行動する。
「フェイト・T・ハラオウン」
シグナムが言う。
「次こそ決着をつけよう」
「うん」
フェイトも頷く。
なのはの前ではヴィータが帽子を被り直していた。
「次は負けねぇぞ」
「私もだよ」
二人は笑った。
敵同士なのに。
少しだけ。
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その頃。
月村家。
はやては猫たちに囲まれていた。
「わぁ……」
満面の笑み。
すずかも笑う。
だが約束の時間を過ぎても誰も来ない。
しばらくして。
シャマルから電話。
遅くなるという連絡。
「気にせんでええよ」
はやては笑った。
「お鍋、すぐ食べられるようにしてあるから」
電話が切れる。
シャマルは俯いた。
主との約束を守れなかった。
その事実が胸に刺さる。
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八神家。
帰宅した守護騎士たち。
今回減ったページ。
現れた仮面の戦士。
新たな敵。
問題は増える一方だった。
それでも。
シグナムは決意する。
「急がねばならん」
シャマルも頷く。
「はやてちゃんのために」
蒐集を続けるしかない。
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一方。
管理局駐屯所。
ミーティング。
クロノとリンディが事件を整理していた。
なのはとフェイトはエイミィの説明を受ける。
レイジングハートとバルディッシュ。
二基は自ら望んでカートリッジシステムを搭載した。
危険性を承知の上で。
主を守るために。
なのははレイジングハートを見つめた。
「ありがとう」
フェイトも微笑む。
「これからもよろしくね」
二基の宝玉が静かに輝いた。
そして。
クロノは最後に口を開く。
「闇の書だけではない」
「マーレリングまで関わっている」
全員が静かになる。
「そして守護騎士たちの行動にも矛盾がある」
闇の書。
守護騎士。
マーレリング。
仮面の戦士。
それぞれが複雑に絡み合い始めていた。
事件はさらに深い闇へと沈んでいく。
誰もまだ、本当の真実には辿り着いていなかった。