魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

19 / 34
第6話「それは小さな願いなの(後編)」

管理局駐屯地。

 

ミーティングルームには重い空気が流れていた。

 

クロノが語った守護騎士たちの正体。

 

それは人間でも使い魔でもない、魔法によって作られた疑似生命体だという事実だった。

 

「疑似生命体……」

 

フェイトが小さく呟く。

 

そして、少しだけ俯いた。

 

「それって……私と同じようなものなのかな」

 

室内が静かになる。

 

フェイトは続けた。

 

「私はアリシアを元に作られた人造生命だし……」

 

かつて母プレシアから「失敗作」と呼ばれた記憶。

 

忘れたわけではない。

 

今でも胸の奥に残っている。

 

だが。

 

「違う」

 

クロノが即座に否定した。

 

フェイトが顔を上げる。

 

リンディも優しく微笑んだ。

 

「フェイト、あなたは人間よ」

 

「生まれ方が少し違っただけ」

 

「検査結果でも、ちゃんとそう出ているわ」

 

クロノも頷く。

 

「守護騎士たちは魔法プログラムだ」

 

「だが君は違う」

 

「君は君自身だ」

 

フェイトはしばらく黙っていたが、やがて小さく微笑んだ。

 

「……ありがとう」

 

なのはも嬉しそうに笑う。

 

「うん。フェイトちゃんはフェイトちゃんだよ」

 

---

 

ミーティングは続く。

 

守護騎士たちは本来、主の命令なしに行動しない存在。

 

しかし現状は違う。

 

主のために独自の判断で動いている。

 

そこに大きな矛盾があった。

 

「今の主との間で何かが起きているのかもしれない」

 

クロノはそう結論づけた。

 

そして。

 

闇の書の主を発見すること。

 

それが今後の最優先事項となった。

 

---

 

会議終了後。

 

なのはは帰路につく。

 

肩にはフェレット姿のユーノ。

 

夕暮れの住宅街を歩いていると、携帯電話が鳴った。

 

「すずかちゃん?」

 

メールだった。

 

添付された写真。

 

そこには笑顔のすずかと、車椅子の少女が写っていた。

 

「この子……」

 

見覚えがある。

 

図書館で見かけた少女。

 

八神はやて。

 

なのはは少しだけ不思議な気持ちになった。

 

---

 

翌朝。

 

月村家。

 

はやては一泊のお礼を言いながら玄関へ向かう。

 

「また遊びに来てね」

 

すずかが笑う。

 

「もちろんや」

 

はやても笑顔で返した。

 

ノエルの運転する車が発進する。

 

窓の外を眺めながら、はやては静かに微笑んでいた。

 

---

 

一方。

 

八神家。

 

シグナムとシャマルは主の帰宅を待っていた。

 

その間にも思い出す。

 

半年前。

 

六月。

 

はやての誕生日。

 

闇の書が目覚めた日のことを。

 

---

 

突然現れた四人の守護騎士。

 

主へ忠誠を誓う騎士たち。

 

だが。

 

肝心の主は。

 

「え?」

 

状況を理解する間もなく。

 

気絶した。

 

---

 

病院。

 

目を覚ましたはやては事情を聞き、さらに驚く。

 

だが騎士たちが困っているのを見ると。

 

「外国の親戚です」

 

と石田医師へ説明した。

 

シグナムたちは思わず顔を見合わせた。

 

---

 

それから始まった共同生活。

 

シャマルは家事全般を覚え。

 

ヴィータははやてに甘え。

 

ザフィーラは頼れる相棒になり。

 

シグナムは家族を見守る役目を担った。

 

少しずつ。

 

本当に家族になっていった。

 

---

 

ある夏の夜。

 

シグナムははやてを抱き上げ、テラスへ出た。

 

星空が広がっている。

 

「主は闇の書を完成させたいとは思わないのですか」

 

静かな問い。

 

闇の書が完成すれば。

 

足も治せる。

 

絶大な力も手に入る。

 

だが。

 

はやては首を振った。

 

「嫌や」

 

即答だった。

 

「誰かを傷つけてまで治りたくない」

 

「それに」

 

はやては笑った。

 

「今の生活、好きやから」

 

家がある。

 

友達がいる。

 

そして。

 

家族がいる。

 

「みんながいてくれるだけで十分や」

 

その言葉に。

 

シグナムは騎士の誓いを立てた。

 

この主を守ると。

 

---

 

だが。

 

秋。

 

その誓いは試される。

 

病院で告げられた真実。

 

原因不明の麻痺。

 

そして進行する症状。

 

いずれ命にまで及ぶ危険。

 

石田医師の説明を聞いたシグナムとシャマルは愕然とした。

 

原因は明白だった。

 

闇の書。

 

その膨大な魔力。

 

そして。

 

主を蝕む呪い。

 

---

 

ヴィータは激怒した。

 

「ふざけんな!」

 

誰よりも泣いた。

 

誰よりも苦しんだ。

 

シャマルも必死に治療を試みた。

 

だが効果はない。

 

闇の書そのものが原因だったからだ。

 

---

 

そして。

 

守護騎士たちは決断する。

 

主との約束を破る。

 

騎士の誓いを破る。

 

それでも。

 

はやてを救う。

 

そのためだけに。

 

蒐集を開始した。

 

---

 

場面は変わる。

 

時空管理局本局。

 

クロノ、ユーノ、エイミィは応接室を訪れていた。

 

「やあやあ!」

 

元気な声。

 

リーゼアリア。

 

「久しぶりだね、クロノ君」

 

リーゼロッテ。

 

グレアム提督の使い魔であり、クロノの師匠でもある双子だった。

 

二人はユーノにも興味津々だ。

 

「君がスクライアの子かー」

 

「可愛いねぇ」

 

ユーノが少し困った顔になる。

 

エイミィが笑った。

 

---

 

事情を説明すると、二人は快く協力を申し出た。

 

「闇の書かぁ」

 

「面倒そうだね」

 

「でもクロノ君の頼みなら断れない」

 

クロノは頭を下げる。

 

依頼内容は単純だった。

 

無限書庫。

 

その膨大な資料群から闇の書の情報を探し出すこと。

 

そのためのユーノの補佐だった。

 

---

 

一方。

 

海鳴市。

 

高町家。

 

なのはの部屋。

 

窓際に立つさくらが夜空を見上げていた。

 

「お姉ちゃん?」

 

なのはが声をかける。

 

さくらは振り返らない。

 

「闇の書も動き始めた」

 

「マーレリングも全部揃い始めてる」

 

小さな独り言。

 

なのはには意味が分からない。

 

「何か言った?」

 

「ううん」

 

さくらは笑った。

 

「何でもない」

 

だが。

 

その瞳だけは静かに未来を見据えていた。

 

誰にも語らぬ目的。

 

誰にも話さぬ真実。

 

そして。

 

闇の書事件は次の局面へ進もうとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。