管理局駐屯地。
ミーティングルームには重い空気が流れていた。
クロノが語った守護騎士たちの正体。
それは人間でも使い魔でもない、魔法によって作られた疑似生命体だという事実だった。
「疑似生命体……」
フェイトが小さく呟く。
そして、少しだけ俯いた。
「それって……私と同じようなものなのかな」
室内が静かになる。
フェイトは続けた。
「私はアリシアを元に作られた人造生命だし……」
かつて母プレシアから「失敗作」と呼ばれた記憶。
忘れたわけではない。
今でも胸の奥に残っている。
だが。
「違う」
クロノが即座に否定した。
フェイトが顔を上げる。
リンディも優しく微笑んだ。
「フェイト、あなたは人間よ」
「生まれ方が少し違っただけ」
「検査結果でも、ちゃんとそう出ているわ」
クロノも頷く。
「守護騎士たちは魔法プログラムだ」
「だが君は違う」
「君は君自身だ」
フェイトはしばらく黙っていたが、やがて小さく微笑んだ。
「……ありがとう」
なのはも嬉しそうに笑う。
「うん。フェイトちゃんはフェイトちゃんだよ」
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ミーティングは続く。
守護騎士たちは本来、主の命令なしに行動しない存在。
しかし現状は違う。
主のために独自の判断で動いている。
そこに大きな矛盾があった。
「今の主との間で何かが起きているのかもしれない」
クロノはそう結論づけた。
そして。
闇の書の主を発見すること。
それが今後の最優先事項となった。
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会議終了後。
なのはは帰路につく。
肩にはフェレット姿のユーノ。
夕暮れの住宅街を歩いていると、携帯電話が鳴った。
「すずかちゃん?」
メールだった。
添付された写真。
そこには笑顔のすずかと、車椅子の少女が写っていた。
「この子……」
見覚えがある。
図書館で見かけた少女。
八神はやて。
なのはは少しだけ不思議な気持ちになった。
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翌朝。
月村家。
はやては一泊のお礼を言いながら玄関へ向かう。
「また遊びに来てね」
すずかが笑う。
「もちろんや」
はやても笑顔で返した。
ノエルの運転する車が発進する。
窓の外を眺めながら、はやては静かに微笑んでいた。
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一方。
八神家。
シグナムとシャマルは主の帰宅を待っていた。
その間にも思い出す。
半年前。
六月。
はやての誕生日。
闇の書が目覚めた日のことを。
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突然現れた四人の守護騎士。
主へ忠誠を誓う騎士たち。
だが。
肝心の主は。
「え?」
状況を理解する間もなく。
気絶した。
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病院。
目を覚ましたはやては事情を聞き、さらに驚く。
だが騎士たちが困っているのを見ると。
「外国の親戚です」
と石田医師へ説明した。
シグナムたちは思わず顔を見合わせた。
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それから始まった共同生活。
シャマルは家事全般を覚え。
ヴィータははやてに甘え。
ザフィーラは頼れる相棒になり。
シグナムは家族を見守る役目を担った。
少しずつ。
本当に家族になっていった。
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ある夏の夜。
シグナムははやてを抱き上げ、テラスへ出た。
星空が広がっている。
「主は闇の書を完成させたいとは思わないのですか」
静かな問い。
闇の書が完成すれば。
足も治せる。
絶大な力も手に入る。
だが。
はやては首を振った。
「嫌や」
即答だった。
「誰かを傷つけてまで治りたくない」
「それに」
はやては笑った。
「今の生活、好きやから」
家がある。
友達がいる。
そして。
家族がいる。
「みんながいてくれるだけで十分や」
その言葉に。
シグナムは騎士の誓いを立てた。
この主を守ると。
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だが。
秋。
その誓いは試される。
病院で告げられた真実。
原因不明の麻痺。
そして進行する症状。
いずれ命にまで及ぶ危険。
石田医師の説明を聞いたシグナムとシャマルは愕然とした。
原因は明白だった。
闇の書。
その膨大な魔力。
そして。
主を蝕む呪い。
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ヴィータは激怒した。
「ふざけんな!」
誰よりも泣いた。
誰よりも苦しんだ。
シャマルも必死に治療を試みた。
だが効果はない。
闇の書そのものが原因だったからだ。
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そして。
守護騎士たちは決断する。
主との約束を破る。
騎士の誓いを破る。
それでも。
はやてを救う。
そのためだけに。
蒐集を開始した。
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場面は変わる。
時空管理局本局。
クロノ、ユーノ、エイミィは応接室を訪れていた。
「やあやあ!」
元気な声。
リーゼアリア。
「久しぶりだね、クロノ君」
リーゼロッテ。
グレアム提督の使い魔であり、クロノの師匠でもある双子だった。
二人はユーノにも興味津々だ。
「君がスクライアの子かー」
「可愛いねぇ」
ユーノが少し困った顔になる。
エイミィが笑った。
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事情を説明すると、二人は快く協力を申し出た。
「闇の書かぁ」
「面倒そうだね」
「でもクロノ君の頼みなら断れない」
クロノは頭を下げる。
依頼内容は単純だった。
無限書庫。
その膨大な資料群から闇の書の情報を探し出すこと。
そのためのユーノの補佐だった。
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一方。
海鳴市。
高町家。
なのはの部屋。
窓際に立つさくらが夜空を見上げていた。
「お姉ちゃん?」
なのはが声をかける。
さくらは振り返らない。
「闇の書も動き始めた」
「マーレリングも全部揃い始めてる」
小さな独り言。
なのはには意味が分からない。
「何か言った?」
「ううん」
さくらは笑った。
「何でもない」
だが。
その瞳だけは静かに未来を見据えていた。
誰にも語らぬ目的。
誰にも話さぬ真実。
そして。
闇の書事件は次の局面へ進もうとしていた。