魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

20 / 38
第二十話 なのはの答え

歪んだ世界。

 

円柱状に曲がった空間。

 

無数の鏡。

 

赤い火柱。

 

現実と幻覚の境界すら消えた戦場。

 

その中心で。

 

クロノは荒く息を吐いていた。

 

「はぁ……っ……!」

 

バリアジャケットは既に損傷だらけ。

 

肩。

 

腕。

 

脚。

 

火傷と裂傷。

 

決して致命傷ではない。

 

だが、確実に追い詰められていた。

 

周囲には無数の“さくら”。

 

どれも実体。

 

どれも本物にしか見えない。

 

そして。

 

その中央。

 

本物のさくらだけが、静かに立っていた。

 

藍色の炎を纏いながら。

 

指令室。

 

なのははモニターを見つめていた。

 

その表情は、不安と迷いが混ざっている。

 

リンディもクロノも、もう理解していた。

 

この戦い。

 

さくらが本気なら、既に終わっている。

 

だが。

 

その時だった。

 

モニターの中。

 

さくらが静かに視線を上げる。

 

そして。

 

指令室のなのはへ向けて、言った。

 

「なのは」

 

なのはがびくっとする。

 

「……え?」

 

「なのはは、どうしたい?」

 

その言葉に。

 

指令室の空気が静まった。

 

ユーノも。

 

リンディも。

 

クロノすら。

 

言葉を止める。

 

なのはは少しだけ目を伏せた。

 

ユーノとの出会い。

 

突然始まった魔法の世界。

 

ジュエルシード。

 

フェイト。

 

危険な戦い。

 

怖かった。

 

痛かった。

 

何度も負けそうになった。

 

でも。

 

それでも。

 

なのはは思い出す。

 

助けたいと思った気持ち。

 

話したいと思った気持ち。

 

フェイトの、あの寂しそうな目。

 

そして。

 

自分は――

 

どうしたいのか。

 

なのははゆっくり顔を上げた。

 

迷いは消えていた。

 

「……続けたい」

 

真っ直ぐな声。

 

「わたし、ジュエルシードの回収を続けたい」

 

「フェイトちゃんとも、ちゃんと話したい」

 

静かな決意。

 

その言葉を聞いて。

 

さくらは数秒、なのはを見る。

 

そして。

 

小さく呟いた。

 

「……そう」

 

それだけだった。

 

次の瞬間。

 

さくらが三叉槍の石突きを床へ軽く当てる。

 

コン――

 

静かな音。

 

だが。

 

その瞬間。

 

パァンッ――!!

 

まるで風船が割れたように。

 

世界が砕け散った。

 

鏡。

 

歪み。

 

赤い火柱。

 

全てが消える。

 

無機質な戦闘空間へ戻っていく。

 

クロノが目を見開く。

 

「っ……!」

 

気付けば。

 

自分は膝をついていた。

 

肩で息をする。

 

バリアジャケットはボロボロ。

 

各所が焼け焦げ、裂けている。

 

完全に敗北だった。

 

指令室も静まり返る。

 

リンディが小さく息を吐いた。

 

「解除された……」

 

ユーノも呆然としている。

 

「あれだけの幻術を、一瞬で……」

 

さくらは静かに三叉槍を消した。

 

藍色の炎が霧のように消えていく。

 

『霧フクロウ(グーフォ・デッラ・ネッビア)』も、静かに匣へ戻った。

 

そして。

 

さくらはリンディを見る。

 

その瞳は相変わらず静かだった。

 

「手伝ってあげる」

 

リンディが少し目を丸くする。

 

なのはも驚いた。

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

さくらはなのはを見た。

 

「なのはが続けるなら」

 

「見てるだけは無理」

 

その言葉に。

 

なのはの顔へ、ぱっと笑顔が広がった。

 

「お姉ちゃん……!」

 

クロノはゆっくり立ち上がる。

 

悔しさはある。

 

だが、それ以上に理解した。

 

この少女は。

 

管理局の常識では測れない。

 

リンディは小さく微笑む。

 

「ありがとう、さくらさん」

 

「歓迎するわ」

 

こうして。

 

高町なのは。

 

ユーノ・スクライア。

 

そして、高町さくら。

 

三人は正式に――

 

時空管理局と協力関係を結ぶことになった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。