なのはたちがアースラを後にした頃。
艦内では、別の意味で騒ぎになっていた。
巨大モニター。
そこに映し出されるのは、三人の情報。
高町なのは。
フェイト・テスタロッサ。
そして――
高町さくら。
会議室には複数の局員が集まっていた。
「……信じられない」
「本当に非魔導師なのか?」
「魔力値が異常に低すぎる……」
モニターには数値が表示されている。
なのは。
フェイト。
どちらも高ランク魔導士相当。
特になのはは、まだ未熟ながら圧倒的な砲撃魔力を持っていた。
だが。
さくらだけがおかしい。
測定結果は、一般人に毛が生えた程度。
アースラ所属の魔導士達より遥かに低い。
それなのに。
「AAA+クラスのクロノ執務官を、一方的に圧倒……」
「あり得ません」
局員達がざわめく。
クロノ本人は無言だった。
悔しさはある。
だが、実際に体験したからこそ分かる。
あれは危険だ。
リンディも静かにモニターを見る。
そこには、藍色の炎。
霧フクロウ。
歪む空間。
そして。
“死ぬ気の炎”
「未知のエネルギー体系……」
「魔力とは完全に別物ね」
エイミィが解析画面を操作する。
「しかも、まだ隠してますよね絶対」
「あれ、本気じゃないですよ」
クロノが静かに口を開く。
「……ああ」
「まだ何かある」
リング。
匣兵器。
炎の属性。
有幻覚。
だが。
それでも、全容が見えない。
さくらという少女は、秘密が多すぎた。
◇
一方。
海鳴市。
高町家。
「えぇぇぇぇっ!?」
なのはの驚いた声が部屋へ響いた。
さくらの部屋。
なのはとユーノは、机の前で固まっていた。
なのはが慌てた様子で言う。
「で、でも、お姉ちゃんのリング壊れちゃったよ!?」
今日の戦い。
雲のリングは、暴走ジュエルシードの波動に耐えきれず砕けた。
なのははずっと気にしていた。
だが。
さくらは平然としていた。
「別に」
「Cランクのリングだから」
そう言いながら。
机の引き出しを開ける。
そして。
新しい紫色のリングを取り出した。
なのはとユーノが固まる。
「……え?」
「予備」
さくらは当然のように言った。
なのはがぱちぱち瞬きする。
「よ、予備って……」
ユーノも恐る恐る尋ねた。
「あの……」
「もしかして、他にもあるの?」
さくらは少しだけ考える。
そして。
机の一番下の引き出しを開けた。
ゴト……
取り出されたのは、少し大きめの箱。
かなり重そうだった。
なのはとユーノが顔を見合わせる。
さくらは無言で箱を開けた。
カチッ――
その瞬間。
「…………」
なのはたちが固まった。
中には。
リング。
大量のリング。
赤。
紫。
藍。
そして。
黄色。
青。
緑。
六種類の宝石が付いたリングが、何段にも分けて整然と並んでいた。
数十個。
いや、それ以上。
ユーノの顔が引きつる。
「……多っ」
なのはも唖然としていた。
「こ、こんなにあるの!?!?」
さくらは静かに答える。
「消耗品だから」
「壊れる」
あまりにも当然のように言う。
なのはは完全に理解が追いつかなかった。
ユーノが恐る恐る箱を見る。
「これ全部……死ぬ気の炎用?」
「うん」
「……」
ユーノは黙った。
改めて思う。
この少女。
やっぱり色々おかしい。