魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第二十三話 大空

「お姉ちゃん! 見て見て!」

 

なのはは嬉しそうに、中指に灯る小さな赤い炎を見せていた。

 

まだ弱々しい。

 

それでも確かに存在している。

 

なのははまるで宝物でも見つけたように笑っていた。

 

「ほんとに出た……!」

 

「なんか、あったかい……!」

 

ユーノも感心したように頷く。

 

「初めてでここまで出せるのは凄いと思うよ」

 

なのははさらに嬉しそうに笑った。

 

そんな中。

 

ユーノは、ふと机の箱へ視線を向ける。

 

大量のリング。

 

赤。

 

青。

 

黄。

 

緑。

 

紫。

 

藍。

 

だが――

 

一つだけ無い。

 

ユーノが首を傾げた。

 

「あれ?」

 

「そういえば……」

 

なのはが炎を消しながら振り向く。

 

「どうしたの?」

 

ユーノは箱を指差した。

 

「大空のリングが無い」

 

その言葉になのはも気付く。

 

「あっ、本当だ」

 

七属性。

 

大空。

 

嵐。

 

雨。

 

雲。

 

晴。

 

雷。

 

霧。

 

だが、箱の中には六種類しか存在していなかった。

 

すると。

 

さくらは静かに麦茶を置いた。

 

「大空は特殊だから」

 

「特殊?」

 

ユーノが聞き返す。

 

さくらは静かに答える。

 

「大空の素質持ちはかなり少ない」

 

「他属性と違って、適性者がほとんどいないの」

 

なのはが少し驚く。

 

「そんなに珍しいんだ……」

 

「それに、大空のリングは高等級しか存在しない」

 

「低ランク品が作れないから」

 

ユーノが目を細める。

 

「……それだけ特別ってこと?」

 

「うん」

 

さくらはそう言うと、机の別の引き出しを開けた。

 

取り出されたのは、薄い箱。

 

先ほどの大箱とは違う。

 

かなり丁寧に保管されている。

 

なのはとユーノが自然と身を乗り出す。

 

カチッ――

 

箱が開く。

 

その瞬間。

 

「……わ」

 

なのはが声を漏らした。

 

中には。

 

七種類全てのリング。

 

橙。

 

赤。

 

青。

 

黄。

 

緑。

 

紫。

 

藍。

 

だが。

 

数が少ない。

 

全部合わせても十数個程度しかない。

 

そして、明らかに作りが違った。

 

宝石の輝き。

 

リング本体の質感。

 

箱の中で静かに存在感を放っている。

 

ユーノが驚く。

 

「これって……」

 

「上がAランク」

 

「下がBランク」

 

さくらが静かに説明する。

 

上段。

 

Aランク。

 

各属性一〜二個。

 

下段。

 

Bランク。

 

三〜四個ずつ。

 

なのはが目を輝かせる。

 

「すごい……!」

 

ユーノもリングを見ながら呟いた。

 

「さっきのリングと、雰囲気が全然違う……」

 

さくらは静かに頷く。

 

「高等級リングは炎の伝導率が高い」

 

「壊れにくいし、出力も安定する」

 

なのはが薄い箱の中央を見る。

 

そこには。

 

橙色の宝石が付いたリング。

 

大空のリング。

 

他のリングより、どこか特別に見えた。

 

なのはが小さく呟く。

 

「これが……大空」

 

すると、なのはがふと思い出したように言った。

 

「でも、お姉ちゃんが全部使えたら、もう何でもありだよね」

 

その言葉に、さくらは小さく首を横に振る。

 

「そんな単純じゃないよ」

 

「死ぬ気の炎は、適正が複数あっても扱えるけど、その分、ひとつひとつの波動は弱くなる」

 

ユーノが納得したように頷く。

 

「なるほど……器用貧乏になりやすいんだ」

 

「そういうこと」

 

さくらは淡々と答えた。

 

そこでユーノが別の疑問を口にする。

 

「でも、それならどうしてAランクのリングを普段使わないの?」

 

「高等級の方が安全なんじゃ……」

 

さくらは静かに答えた。

 

「壊れにくいだけで、絶対じゃない」

 

「高出力同士がぶつかれば、Aランクでも普通に壊れる」

 

なのはが「あっ」と思い出す。

 

「じゃあ、クロノくんと戦った時のマーレリング使えばいいんじゃない?」

 

その言葉に、さくらは静かに首を横に振った。

 

「マーレリングは別」

 

「適正があっても、基本的に使えない」

 

ユーノが目を細める。

 

「え?」

 

「持ち主を選ぶ特殊なリングだから」

 

さくらは静かに続ける。

 

「普通のリングは適正があれば使える」

 

「でも、マーレリングは違う」

 

「リング自身に認められないと反応しない」

 

なのはが少し驚く。

 

「じゃあ、お姉ちゃんしか使えないの?」

 

「少なくとも、今は」

 

さくらはそう答えた。

 

「霧のマーレリングも、最初から使えたわけじゃない」

 

「かなり時間がかかった」

 

ユーノが箱を見ながら呟く。

 

「本当に別格なんだね……」

 

そんな話をしているうちに、なのはの中指の嵐の炎が少しずつ安定していく。

 

最初は小さく揺れていた炎が、今では一定の形を保っていた。

 

さくらはそれを見て、小さく頷く。

 

「次の段階にいけそう」

 

「次?」

 

なのはが顔を上げる。

 

「本来は武器に炎を纏わせる」

 

ユーノが興味深そうに反応する。

 

「強化型か」

 

「うん」

 

さくらはそこで少し考え込む。

 

だが。

 

数秒後、微妙そうな顔をした。

 

「……なのは、砲撃型だった」

 

「あっ」

 

なのはも同時に気付いた。

 

レイジングハートを使うなのはの戦闘スタイルは、中遠距離砲撃型。

 

近接武器へ炎を纏わせるさくら式とは相性が違う。

 

ユーノも考え込む。

 

「魔力砲に嵐の炎を乗せられれば理想だけど……」

 

「それが出来れば一番いい」

 

さくらも頷く。

 

「でも、流石に私でも分からない」

 

なのはが少し残念そうにする。

 

「そっかぁ……」

 

すると。

 

さくらは少し考えた後、机の横へ手を伸ばした。

 

取り出したのは、小さな匣。

 

嵐属性の匣兵器。

 

それを、なのはへ差し出す。

 

「これ使って」

 

「え?」

 

なのはが目を丸くする。

 

ユーノも驚いた。

 

「それって……嵐トラ!?」

 

さくらは普通に頷く。

 

「なのはの戦い方なら、補助火力があった方がいい」

 

なのはは慌てる。

 

「え、でも大事なものじゃ……」

 

「別に」

 

さくらはあっさり言う。

 

「匣兵器は使ってこそ意味があるから」

 

なのはは恐る恐る匣を受け取った。

 

小さな金属製の匣。

 

だが、その中にはあの嵐トラが入っている。

 

なのはは少し緊張しながらも、嬉しそうに笑った。

 

「……ありがとう、お姉ちゃん!」

 

その笑顔を見て、さくらはほんの少しだけ目を細めた。

 

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