炎に包まれる海鳴市。
赤く染まった夜空の下。
静かに浮かぶ闇の書の意志と、それに対峙する高町なのは。
周囲では建物が燃え、結界の空間そのものが悲鳴を上げているかのようだった。
しかし闇の書の意志は悲しそうな表情のまま、なのはを見つめていた。
「すべては、安らかな眠りのうちに」
静かな声。
「終わらない夢の中で、永遠に幸せでいられる」
だが、なのはは首を横に振った。
「違うよ」
レイジングハートを握り締める。
「夢は夢だよ」
「悲しいことも苦しいこともあるけど、それでもみんな生きてる」
「だから――私はあなたを止める」
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その頃。
闇の書内部。
フェイト・テスタロッサは静かに目を覚ました。
そこは懐かしい時の庭園だった。
窓から差し込む優しい朝日。
柔らかなベッド。
隣には幼い少女。
アリシア・テスタロッサ。
「おはよう、フェイト」
優しく微笑む姉。
フェイトは言葉を失った。
さらに扉が開く。
現れたのはリニス。
そして――プレシア。
優しい母親としてのプレシアだった。
「朝食よ」
穏やかな笑顔。
フェイトが一番欲しかったもの。
決して手に入らなかった家族の時間。
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一方。
闇の書中枢。
八神はやては深い眠りへ誘われていた。
闇の書の意志は優しく語りかける。
「あなたの願いは叶います」
「健康な体」
「家族との暮らし」
「幸せな未来」
「すべてを差し上げます」
だが。
はやては目を閉じたまま呟いた。
「ほんまに、それがうちの望みなんやろか……」
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現実世界。
なのはは激戦を続けていた。
闇の書の意志の右手。
そこには五つのマーレリング。
晴。
嵐。
大空。
雨。
雲。
五つの炎が混ざり合い、異様な光を放っていた。
雨の炎による拘束。
雲の炎による増殖。
嵐の炎による侵食。
晴の炎による強化。
そして――
大空の炎による石化。
闇の書の意志が手をかざす。
巨大な石化の波が押し寄せる。
なのはは飛び退いた。
一瞬遅れた建物が灰色へ変わる。
石像のように固まっていく。
「これ……!」
背筋が凍る。
まともに受ければ終わりだった。
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レイジングハートが告げる。
「Exelion Mode」
なのはは目を見開いた。
「でも、それは……!」
危険なフルドライブ。
レイジングハート自身を壊しかねない切り札。
しかしデバイスは静かに答えた。
「My Master」
「Please」
なのはは微笑む。
「うん」
「行こう、レイジングハート」
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その時だった。
空間が揺らぐ。
紫色の炎。
そこから現れたのは――
高町さくら。
「間に合ったみたいね」
右手を掲げる。
右中指。
霧のマーレリング。
そして右手には嵐のリングと雲のリング。
三つの炎が同時に燃え上がる。
「なのは」
「援護するわ」
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霧の炎。
幻を構築する力。
巨大な鎖が空間に現れる。
それは実体を持つ幻想。
闇の書の意志へ向かって伸びる。
さらに雲の炎。
鎖が無限に増殖する。
一本。
二本。
十本。
百本。
闇の書の意志を包囲する。
「捕まえたわ」
しかし。
嵐の炎が吹き荒れる。
闇の書の意志の攻撃が鎖を削る。
ならば。
さくらも嵐の炎を解放した。
紫と緑の炎が交差する。
外殻を分解しながら拘束を維持する。
「今よ!」
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その頃。
フェイトは草原にいた。
アリシアと二人。
夢の世界。
優しい時間。
だがフェイトは知っていた。
これは夢だ。
現実ではない。
「ごめん」
フェイトは微笑む。
「私は帰らなきゃ」
アリシアは寂しそうに笑った。
そして差し出す。
バルディッシュ。
「行ってらっしゃい」
フェイトは涙を流した。
「ありがとう、お姉ちゃん」
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中枢では。
はやても答えを見つけていた。
「せやけど」
「それは夢や」
「うちは現実を生きたい」
闇の書の意志が震える。
「私はあなたを傷つけます」
「暴走します」
「食らい尽くします」
はやては笑った。
「それでもや」
「主はうちやろ?」
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外では。
なのはが飛ぶ。
エクセリオンモード。
レイジングハートが槍へ変形する。
「全力全開!」
「エクセリオンバスター!」
突撃。
激突。
闇の書の意志のシールドへ突き刺さる。
一発。
二発。
三発。
カートリッジロード。
さらに前へ。
そして――
零距離砲撃。
轟音。
閃光。
世界が白く染まった。
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同時に。
フェイトが脱出する。
ザンバーモード。
黄金の閃光。
夢の世界を斬り裂く。
現実へ帰還。
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そして。
はやては告げた。
「新しい名前をあげる」
「闇の書やない」
「呪いの魔導書でもない」
「うちの家族や」
涙を流しながら言う。
「リインフォース」
祝福の風。
支える翼。
新しい名前。
新しい未来。
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管理者権限が発動する。
闇の書の意志が涙を流した。
「ありがとう」
その瞬間。
防御プログラムが完全分離する。
巨大な異形。
暴走の核。
真の敵。
夜空を埋め尽くす怪物が誕生した。
なのは。
フェイト。
さくら。
そしてはやて。
全員が見上げる。
まだ終わっていない。
本当の戦いはこれからだった。
遥か上空。
アースラ艦橋。
リンディは静かにアルカンシェル発射キーを握り締める。
「みんな……」
祈るように呟いた。
聖夜の戦いは、最後の局面へと向かっていた。