魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第11話「聖夜の贈り物」

炎に包まれる海鳴市。

 

赤く染まった夜空の下。

 

静かに浮かぶ闇の書の意志と、それに対峙する高町なのは。

 

周囲では建物が燃え、結界の空間そのものが悲鳴を上げているかのようだった。

 

しかし闇の書の意志は悲しそうな表情のまま、なのはを見つめていた。

 

「すべては、安らかな眠りのうちに」

 

静かな声。

 

「終わらない夢の中で、永遠に幸せでいられる」

 

だが、なのはは首を横に振った。

 

「違うよ」

 

レイジングハートを握り締める。

 

「夢は夢だよ」

 

「悲しいことも苦しいこともあるけど、それでもみんな生きてる」

 

「だから――私はあなたを止める」

 

---

 

その頃。

 

闇の書内部。

 

フェイト・テスタロッサは静かに目を覚ました。

 

そこは懐かしい時の庭園だった。

 

窓から差し込む優しい朝日。

 

柔らかなベッド。

 

隣には幼い少女。

 

アリシア・テスタロッサ。

 

「おはよう、フェイト」

 

優しく微笑む姉。

 

フェイトは言葉を失った。

 

さらに扉が開く。

 

現れたのはリニス。

 

そして――プレシア。

 

優しい母親としてのプレシアだった。

 

「朝食よ」

 

穏やかな笑顔。

 

フェイトが一番欲しかったもの。

 

決して手に入らなかった家族の時間。

 

---

 

一方。

 

闇の書中枢。

 

八神はやては深い眠りへ誘われていた。

 

闇の書の意志は優しく語りかける。

 

「あなたの願いは叶います」

 

「健康な体」

 

「家族との暮らし」

 

「幸せな未来」

 

「すべてを差し上げます」

 

だが。

 

はやては目を閉じたまま呟いた。

 

「ほんまに、それがうちの望みなんやろか……」

 

---

 

現実世界。

 

なのはは激戦を続けていた。

 

闇の書の意志の右手。

 

そこには五つのマーレリング。

 

晴。

 

嵐。

 

大空。

 

雨。

 

雲。

 

五つの炎が混ざり合い、異様な光を放っていた。

 

雨の炎による拘束。

 

雲の炎による増殖。

 

嵐の炎による侵食。

 

晴の炎による強化。

 

そして――

 

大空の炎による石化。

 

闇の書の意志が手をかざす。

 

巨大な石化の波が押し寄せる。

 

なのはは飛び退いた。

 

一瞬遅れた建物が灰色へ変わる。

 

石像のように固まっていく。

 

「これ……!」

 

背筋が凍る。

 

まともに受ければ終わりだった。

 

---

 

レイジングハートが告げる。

 

「Exelion Mode」

 

なのはは目を見開いた。

 

「でも、それは……!」

 

危険なフルドライブ。

 

レイジングハート自身を壊しかねない切り札。

 

しかしデバイスは静かに答えた。

 

「My Master」

 

「Please」

 

なのはは微笑む。

 

「うん」

 

「行こう、レイジングハート」

 

---

 

その時だった。

 

空間が揺らぐ。

 

紫色の炎。

 

そこから現れたのは――

 

高町さくら。

 

「間に合ったみたいね」

 

右手を掲げる。

 

右中指。

 

霧のマーレリング。

 

そして右手には嵐のリングと雲のリング。

 

三つの炎が同時に燃え上がる。

 

「なのは」

 

「援護するわ」

 

---

 

霧の炎。

 

幻を構築する力。

 

巨大な鎖が空間に現れる。

 

それは実体を持つ幻想。

 

闇の書の意志へ向かって伸びる。

 

さらに雲の炎。

 

鎖が無限に増殖する。

 

一本。

 

二本。

 

十本。

 

百本。

 

闇の書の意志を包囲する。

 

「捕まえたわ」

 

しかし。

 

嵐の炎が吹き荒れる。

 

闇の書の意志の攻撃が鎖を削る。

 

ならば。

 

さくらも嵐の炎を解放した。

 

紫と緑の炎が交差する。

 

外殻を分解しながら拘束を維持する。

 

「今よ!」

 

---

 

その頃。

 

フェイトは草原にいた。

 

アリシアと二人。

 

夢の世界。

 

優しい時間。

 

だがフェイトは知っていた。

 

これは夢だ。

 

現実ではない。

 

「ごめん」

 

フェイトは微笑む。

 

「私は帰らなきゃ」

 

アリシアは寂しそうに笑った。

 

そして差し出す。

 

バルディッシュ。

 

「行ってらっしゃい」

 

フェイトは涙を流した。

 

「ありがとう、お姉ちゃん」

 

---

 

中枢では。

 

はやても答えを見つけていた。

 

「せやけど」

 

「それは夢や」

 

「うちは現実を生きたい」

 

闇の書の意志が震える。

 

「私はあなたを傷つけます」

 

「暴走します」

 

「食らい尽くします」

 

はやては笑った。

 

「それでもや」

 

「主はうちやろ?」

 

---

 

外では。

 

なのはが飛ぶ。

 

エクセリオンモード。

 

レイジングハートが槍へ変形する。

 

「全力全開!」

 

「エクセリオンバスター!」

 

突撃。

 

激突。

 

闇の書の意志のシールドへ突き刺さる。

 

一発。

 

二発。

 

三発。

 

カートリッジロード。

 

さらに前へ。

 

そして――

 

零距離砲撃。

 

轟音。

 

閃光。

 

世界が白く染まった。

 

---

 

同時に。

 

フェイトが脱出する。

 

ザンバーモード。

 

黄金の閃光。

 

夢の世界を斬り裂く。

 

現実へ帰還。

 

---

 

そして。

 

はやては告げた。

 

「新しい名前をあげる」

 

「闇の書やない」

 

「呪いの魔導書でもない」

 

「うちの家族や」

 

涙を流しながら言う。

 

「リインフォース」

 

祝福の風。

 

支える翼。

 

新しい名前。

 

新しい未来。

 

---

 

管理者権限が発動する。

 

闇の書の意志が涙を流した。

 

「ありがとう」

 

その瞬間。

 

防御プログラムが完全分離する。

 

巨大な異形。

 

暴走の核。

 

真の敵。

 

夜空を埋め尽くす怪物が誕生した。

 

なのは。

 

フェイト。

 

さくら。

 

そしてはやて。

 

全員が見上げる。

 

まだ終わっていない。

 

本当の戦いはこれからだった。

 

遥か上空。

 

アースラ艦橋。

 

リンディは静かにアルカンシェル発射キーを握り締める。

 

「みんな……」

 

祈るように呟いた。

 

聖夜の戦いは、最後の局面へと向かっていた。

 

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