魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第二十五話 譲れない想い

アースラのブリッジ。

 

緊張感が空気を支配していた。

 

モニターには、激しく荒れる海域が映し出されている。

 

雷鳴。

 

高波。

 

そして――

 

暴走する膨大な魔力反応。

 

オペレーターが叫ぶ。

 

「海底ジュエルシード群、連続活性化を確認!」

 

「出力上昇しています!」

 

リンディが険しい表情でモニターを見る。

 

「……フェイトさん達ね」

 

ここまで。

 

アースラの索敵能力により、大半のジュエルシードは回収済みだった。

 

残るのは、海底へ沈んだ分。

 

そしてフェイト達は、それを一気に回収しようとしていた。

 

強制活性化。

 

危険な手段だ。

 

当然、反動も大きい。

 

ユーノが焦った声を上げる。

 

「こんなの無茶だ!」

 

「暴走したら海域ごと吹き飛ぶかもしれない!」

 

クロノも険しい顔をしていた。

 

「フェイトは魔力で無理やり抑え込むつもりか……」

 

だが。

 

リンディは静かだった。

 

むしろ、冷静すぎるほどに。

 

「……このまま監視を続行します」

 

その言葉に、なのはが振り返る。

 

「え……?」

 

リンディは静かに続ける。

 

「この規模の暴走を一人で抑え続ければ、いずれ限界が来ます」

 

「フェイトさんは自滅するでしょう」

 

「同時に、ジュエルシードも回収できる」

 

「時空管理局としては、最善の選択です」

 

静まり返るブリッジ。

 

なのはは目を見開いていた。

 

「そんな……!」

 

今にも飛び出しそうになる。

 

だが。

 

クロノが前へ出た。

 

「待つんだ、なのは」

 

「今行けば君まで巻き込まれる」

 

「でもっ!」

 

なのはは唇を噛む。

 

モニターの向こう。

 

フェイトは一人で戦っている。

 

限界を超えながら。

 

それでも。

 

誰も助けようとしていない。

 

その時だった。

 

「なのは」

 

静かな声。

 

さくらだった。

 

なのはが振り返る。

 

さくらは壁際に寄り掛かったまま、静かに言った。

 

「行ってきなさい」

 

「お姉ちゃん……」

 

「周りの言葉なんて無視して行きなさい」

 

静かな声だった。

 

だが。

 

その一言には、強い意志があった。

 

リンディが目を細める。

 

「さくらさん」

 

「これは管理局としての判断です」

 

「今動くべきでは――」

 

だが。

 

さくらは遮った。

 

「最善の選択?」

 

その声に。

 

ブリッジの空気が変わる。

 

さくらはゆっくりと前へ出た。

 

薬指には紫のリング。

 

中指には藍色のリング。

 

人差し指には赤色のリング。

 

三色の炎が静かに灯る。

 

誰も動けない。

 

それだけで、圧力だった。

 

「確かに、管理局から見れば最善かもしれない」

 

「でもね」

 

さくらは、なのはを見た。

 

「なのはは選択したの」

 

「あの子――フェイトちゃんを助けるって」

 

なのはが目を見開く。

 

さくらは続ける。

 

「だから、なのはの道は誰にも塞がせない」

 

次の瞬間。

 

ゴォッ――

 

三色の炎が強く燃え上がった。

 

ブリッジ中の空気が震える。

 

クロノが息を呑む。

 

魔力ではない。

 

だが。

 

AAA+魔導士であるクロノですら、本能的に理解してしまった。

 

危険だと。

 

さくらは静かに告げる。

 

「文句があるなら――」

 

その瞬間。

 

背後の空間が歪む。

 

霧。

 

雲。

 

嵐。

 

三種の炎が空間を侵食する。

 

「私の屍を超えていきなさい」

 

誰も動けなかった。

 

クロノも。

 

ユーノも。

 

リンディですら。

 

理解していた。

 

このアースラで。

 

高町さくらを突破できる者は、誰一人として存在しない。

 

重苦しい沈黙。

 

その中で。

 

なのはがゆっくり前へ出る。

 

「……ありがとう、お姉ちゃん」

 

そして。

 

レイジングハートを握る。

 

桃色の魔法陣が展開。

 

なのはは振り返らなかった。

 

真っ直ぐ前を見る。

 

助けたい人がいる。

 

だから行く。

 

それだけだった。

 

次の瞬間。

 

なのはは、桃色の光となってブリッジから飛び出した。

 

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