魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第Ⅱ話 機動六課

魔導師ランク昇格試験終了後――。

 

空港上空を吹き抜ける風の中、スバルとティアナは、試験官を務めていた白い魔導師と向き合っていた。

 

「ふたりとも、お疲れさま」

 

柔らかな笑顔でそう告げるなのはに、スバルは興奮を隠しきれなかった。

 

「あ、あのっ! 本当に高町なのは一等空尉ですよね!? エース・オブ・エースの!」

 

「もう、その呼び方は恥ずかしいんだけどなぁ……」

 

困ったように笑うなのは。

 

だが、スバルの瞳は憧れそのものだった。

 

幼い頃。

炎と煙に包まれた空港火災の中、自分を救ってくれた白い魔導師。

 

右中指のリングから灯った、揺らめく大空の炎と嵐の炎。

 

そして――。

 

ライオンとトラの混合種。

大空と嵐の混合匣兵器。

天空嵐ライガー『ペター』。

 

あの日からずっと、スバルにとってなのはは憧れだった。

 

その本人が、今こうして目の前にいる。

 

興奮しない方が無理だった。

 

一方、ティアナは少し警戒したような視線を向ける。

 

「……それで、わざわざ私たちを呼び止めた理由は?」

 

なのはは微笑んだまま頷く。

 

「うん。実は、ふたりに会ってほしい人がいるんだ」

 

その瞬間――。

 

上空で待機していた管理局ヘリのハッチが開いた。

 

「ほな、こっち来てもらおかー!」

 

元気な声と共に現れたのは、小柄な少女。

 

栗色の髪を揺らし、にこやかに手を振っている。

 

時空管理局本局陸上部隊二佐――

八神はやて。

 

さらにその隣には、金髪の女性が立っていた。

 

鋭さと優しさを併せ持つ紅い瞳。

黒衣を纏った執務官。

 

フェイト・T・ハラオウン。

 

「えっ……!」

 

ティアナが息を呑む。

 

フェイト・T・ハラオウン。

 

若手執務官の中でもトップクラスの実績を誇る、本局期待のエースだった。

 

ヘリ内部へ案内された二人に、はやては楽しそうに笑った。

 

「単刀直入に言うで。ウチの新部隊に来ぇへん?」

 

「……新部隊?」

 

ティアナが眉をひそめる。

 

はやては端末を操作し、空中モニターを展開した。

 

そこに表示されたのは、新設部隊の概要。

 

――古代遺物管理部・機動六課。

 

「ロストロギア関連事件専門の独立機動部隊や」

 

説明を引き継ぐフェイト。

 

「次元世界全域で発生する古代遺物事件に対応するための部隊。少数精鋭の高速対応部隊になる予定よ」

 

「当然、危険も多い」

 

なのはも静かに続ける。

 

「でも、その分だけ得られるものも大きいよ」

 

スバルは思わず身を乗り出した。

 

「それって……なのはさんから直接訓練してもらえるってことですか!?」

 

「うん。わたしは前線フォワード担当の教導を受け持つ予定」

 

「やったぁぁぁっ!!」

 

勢いよく立ち上がるスバル。

 

ヘリが揺れるほどの歓声に、なのはは苦笑し、フェイトとはやても笑う。

 

一方でティアナは静かに資料を見つめていた。

 

「……執務官育成カリキュラム?」

 

フェイトが頷く。

 

「あなた、執務官志望なんでしょう?」

 

ティアナは驚いたように顔を上げる。

 

「資料を見たわ。優秀な成績だった」

 

フェイトは静かに微笑んだ。

 

「よかったら、私が教える」

 

その言葉に、ティアナの瞳が揺れる。

 

執務官。

 

それは兄が目指し、そして果たせなかった夢。

 

自分が継ぐと決めた夢。

 

そのための最短距離が、今目の前に差し出されていた。

 

だが――。

 

「……機動六課って、かなり危険な部隊なんですよね」

 

ティアナの問いに、はやては真っ直ぐ頷いた。

 

「せやな。かなりハードや」

 

軽い口調のまま、しかし瞳は真剣だった。

 

「古代遺物絡みの事件は、下手したら世界一つ沈む。せやから、集める人材も自然と一級品になる」

 

「つまり、エリート部隊ってことですか」

 

「超、が付くくらいにはな」

 

沈黙。

 

スバルは不安そうにティアナを見る。

 

だがティアナはしばらく考えた後、小さく息を吐いた。

 

「……スバル」

 

「え?」

 

「ここで逃げたら、きっと後悔する」

 

ティアナは静かに言った。

 

「私は執務官になる。そのために必要なら、どんな環境でも飛び込む」

 

そして小さく笑う。

 

「アンタだって、なのはさんに教わりたいんでしょ?」

 

「もちろん!」

 

即答だった。

 

その返事に、ティアナは呆れたように笑う。

 

「……じゃあ、決まりね」

 

その瞬間、はやてがぱっと顔を輝かせた。

 

「よっしゃ! 交渉成立や!」

 

「歓迎するよ」

 

なのはも優しく笑う。

 

こうして、新部隊『機動六課』へ、新たな二人が加わることになった。

 

――その頃。

 

別次元世界から、ひとつの輸送船がミッドチルダへ向かっていた。

 

船内の座席で、小柄な少年が緊張した様子で窓の外を見ている。

 

銀色の髪。

真面目そうな青い瞳。

 

エリオ・モンディアル。

 

その少し後方では、桃色の髪の少女が大きな荷物を抱えておろおろしていた。

 

キャロ・ル・ルシエ。

 

どちらもまだ十歳。

 

高い魔力資質を持ちながらも、世間にはあまり慣れていない子供たちだった。

 

そして――。

 

輸送船が大きく揺れた瞬間。

 

「あっ――!」

 

キャロの荷物が宙を舞う。

 

飛び散る大量の資料と荷物。

 

慌てるキャロ。

 

そこへ、とっさに飛び込んだのがエリオだった。

 

「危ない!」

 

抱き留められる荷物。

 

だが勢い余って、今度はエリオ自身がバランスを崩す。

 

「あっ」

 

「きゃっ!?」

 

結局、二人そろって床へ転倒。

 

散乱する荷物。

 

沈黙。

 

そして――。

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

「い、いや! 僕こそ!」

 

同時に頭を下げる二人。

 

周囲の乗客たちが思わず笑い出す。

 

そんな少し騒がしくて、少し不器用な出会い。

 

それが、後に機動六課の未来を支えることになる、二人の最初の出会いだった。

 

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