時の庭園内部。
崩壊しかけた通路を、なのはは飛んでいた。
「アクセルシューター!」
桃色の光弾が警備ロボットを撃ち抜く。
爆発。
だが。
次の瞬間には別の機体が現れる。
「まだ……!」
ユーノの結界が背後から飛来した砲撃を防ぐ。
「なのは、右!」
「うんっ!」
レイジングハートを振るう。
砲撃。
機械兵器が吹き飛ぶ。
それでも前へ進めない。
時の庭園そのものが、侵入者を拒絶していた。
崩れた天井。
閉鎖される隔壁。
無数の防衛兵器。
クロノ達も別ルートで進んでいるが、プレシアの元にはまだ辿り着けていない。
なのはは歯を食いしばる。
「プレシアさん……!」
その時だった。
通路の奥。
緑色の雷光が走る。
バチバチバチッ!!
空気を裂くような放電音。
次の瞬間。
前方にいたロボット群が切り裂かれた。
なのはが目を見開く。
「え……?」
煙の向こう。
そこに立っていたのは。
黒いバリアジャケット。
金色の髪。
赤い瞳。
フェイトだった。
「フェイトちゃん!」
フェイトは静かに顔を上げる。
その右手。
中指には、緑色の宝石を宿したリング。
雷のマーレリング。
リングの宝石からは、電気そのもののような緑色の炎が噴き上がっていた。
バチバチと雷光が弾け、周囲の空気を焦がしている。
そして。
左手には、見慣れない銀色の匣。
なのはが驚いた表情になる。
「そのリング……!」
フェイトは小さく頷く。
「さくらにもらった」
その瞬間。
フェイトの周囲へ雷が走る。
以前とは違う。
鋭く。
荒々しい雷。
だが不思議と、フェイトには馴染んでいた。
ユーノも驚いていた。
「もう使いこなしてるの……!?」
フェイトは小さく首を横に振る。
「まだ分からないことだらけ」
「でも――」
フェイトは真っ直ぐ前を見る。
「止めたいから」
その言葉に。
なのはは笑った。
「うん!」
その時。
通路奥の隔壁が開く。
大量の警備ロボットが現れた。
ユーノが顔を青ざめる。
「まだこんな数が……!」
だが。
フェイトは一歩前へ出る。
次の瞬間。
リングの宝石から、雷の死ぬ気の炎が激しく噴き上がった。
空気が震える。
まるで本物の雷がその場に発生したようだった。
フェイトは匣を握る。
そして――
リングの宝石から噴き上がる雷の炎を、匣へ流し込む。
バチバチバチッ!!
電撃が匣全体を駆け巡る。
「開匣」
次の瞬間。
銀色の匣が勢いよく開いた。
そこから飛び出したのは――
二匹の狐。
雷を纏った、小さな双子の狐。
『雷キツネ(ヴォルペ・デル・フルミネ)』
現れた瞬間。
二匹は左右へ分かれる。
まるで雷そのもの。
壁を蹴り。
天井を駆け。
ロボット群の中央へ飛び込む。
次の瞬間。
轟音。
激しい雷撃が通路を埋め尽くした。
バチィィィィッ!!
放電。
閃光。
複数の機体が一瞬で停止する。
さらに。
二匹の狐は連携するように高速移動し、敵機を次々と切り裂いていく。
電撃の軌跡だけが、通路へ残った。
なのはが目を輝かせる。
「すごい……!」
フェイト自身も驚いていた。
「これが……」
二匹の雷キツネは攻撃を終えると、フェイトの左右へ戻る。
まるで護衛するように。
静かに寄り添った。
フェイトは静かに拳を握る。
バチバチと雷の炎が弾ける。
その姿を見たなのはは、嬉しそうに笑った。
「行こう、フェイトちゃん!」
フェイトも頷く。
「うん!」
二人は同時に飛び出した。
桃色の光。
金色の雷。
二つの光が、時の庭園を駆け抜けていく。
その先には――
プレシア・テスタロッサが待っていた。