機動六課―――。
正式稼働を始めたその日から、フォワード陣を待っていたのは、想像を絶する訓練の日々だった。
「甘い!」
紫色の炎が弾ける。
訓練場を高速で駆けるスバルの目前に、突如として無数の障害物が出現した。
「うわぁっ!?」
反射的に跳躍するスバル。
だが、その着地点にはさらに別の障害物。
「フェイントに全部引っかかってる」
冷静な声。
高台に立つさくらが、腕を組みながら訓練の様子を見下ろしていた。
その足元では、紫色の炎を纏ったハリネズミたちが次々と増殖している。
雲属性匣兵器―――雲ハリネズミ。
増殖した個体たちが訓練場全体へ展開され、幻術と組み合わせることで、実戦さながらの複雑な戦場を作り上げていた。
「ティア。後ろ」
「っ!?」
ティアナが振り向いた瞬間。
横から飛来した模擬弾が肩をかすめる。
「視野が狭い。狙撃手は“今見えてる敵”だけを見るんじゃない」
「くっ……!」
汗を流しながら歯を食いしばるティアナ。
エリオはキャロを庇いながら前衛として動き、キャロもまたフリードと共に支援を行う。
基礎。
連携。
反応。
判断。
ただひたすら、それらを身体へ叩き込む毎日。
だが、その積み重ねは確実に四人を変えていた。
なのはは訓練場の端で、その様子を穏やかに見守っている。
「みんな、強くなってきたね」
「まあ、筋は悪くない」
さくらは素っ気なく答える。
「特にスバル。あれは伸びる」
「えへへ……」
少し離れた場所で聞いていたスバルが、嬉しそうに笑った。
「でも突っ込み癖は危険」
「うっ」
即座に撃沈する。
そんなやり取りを見ながらも、ティアナだけは時折、さくらへ複雑な視線を向けていた。
第一級次元犯罪者。
単独で武装隊を壊滅させた危険人物。
それが今、自分たちの教官として普通に訓練をしている。
しかも誰も捕まえようとしない。
「……本当に大丈夫なの?」
ぽつりと漏らしたティアナへ、なのはが苦笑した。
「お姉ちゃん、今は霧の幻術で別人に見えるようにしてるから」
「いや、そういう問題じゃないんですけど!?」
ティアナのツッコミが飛ぶ。
「防犯カメラとかにも映らないんだよ」
「余計怖いです!!」
高度すぎる霧属性幻術。
視覚認識だけでなく、電子機器すら欺く異常な技術。
それを軽く使いこなすさくらに、ティアナはますます胃が痛くなるのだった。
そんなある日。
「うわっ!?」
訓練中、スバルのリボルバーナックルから火花が散った。
続いてティアナのクロスミラージュも動作不良を起こす。
「限界だね」
シャリオが端末を確認しながら呟く。
連日の高負荷訓練。
自作デバイスである二人の武装は、ついに限界を迎えていた。
「というわけでー!」
リーンフォースⅡが元気よく飛び上がる。
「お待たせしました、新デバイスです!」
整備室。
そこには新たな武装が並べられていた。
機動六課製。
シャリオ、マリエル、リーン、そしてなのはたちが調整を重ねた最新デバイス。
スバルは新しいリボルバーナックル―――マッハキャリバーを受け取る。
ティアナにはクロスミラージュ改。
エリオにはストラーダ。
キャロにはケリュケイオン。
それぞれの特性と戦闘スタイルに合わせ、最適化された“魂の武装”。
「すごい……」
スバルは目を輝かせる。
リーンは小さく胸を張った。
「大切に使ってくださいです!」
そして、少し真面目な顔になる。
「でも、“壊れないように”じゃなくて―――」
小さな拳を握る。
「性能限界まで、思い切り使ってほしいです!」
その言葉に、フォワード陣は力強く頷いた。
―――その時だった。
突然。
艦内アラートが鳴り響く。
『警報。レリック反応を確認』
空気が一変する。
『山岳地帯にてガジェット反応多数』
『戦闘レベルB+』
はやてが即座に立ち上がった。
「場所は!?」
エイミィが高速でコンソールを操作する。
「ミッドチルダ北部山岳地帯です!」
なのはとフェイトの表情が引き締まる。
「……初任務だね」
なのはが静かにフォワード陣を見る。
緊張した面持ちの四人。
だが、その瞳には恐怖だけではない光があった。
「フォワード部隊、出撃準備!」
はやての号令が響く。
「機動六課―――初出動や!」