時の庭園最深部。
巨大な空間の中央。
そこには、無数の魔法陣と機械装置が浮かんでいた。
紫色の魔力光。
崩壊寸前の次元エネルギー。
そして――
その中心に、一人の女性が立っていた。
プレシア・テスタロッサ。
長い金髪を揺らしながら、静かに装置を見上げている。
その周囲には、回収されたジュエルシード。
フェイトが集め続けた全て。
なのはとフェイトは、ゆっくりと降り立つ。
「プレシアさん……!」
なのはの声に。
プレシアが振り返った。
だが。
その視線は、なのはを素通りする。
真っ直ぐ。
フェイトへ向いた。
「フェイト」
冷たい声。
フェイトの肩が僅かに震える。
それでも。
フェイトは前へ出た。
「母さん」
「もうやめて」
「こんなこと続けても――」
だが。
プレシアは遮るように言い放つ。
「黙りなさい」
空気が凍った。
プレシアの瞳に宿るのは、怒りでも悲しみでもない。
ただ。
歪んだ執念。
「あと少しなのよ」
「あと少しで、アリシアに会える」
その言葉に。
フェイトが苦しそうに目を伏せる。
なのはは、静かに拳を握った。
そして。
一歩前へ出る。
「プレシアさん」
プレシアがようやく、なのはを見る。
なのはは真っ直ぐ彼女を見つめた。
「フェイトちゃんは、ずっと頑張ってました」
「認めてもらいたくて」
「褒めてもらいたくて」
「ずっと……ずっと」
フェイトが目を見開く。
なのはは続けた。
「だから、お願いです」
「フェイトちゃんを見てあげてください!」
その言葉に。
一瞬だけ。
プレシアの表情が揺らいだ。
だが。
次の瞬間には消える。
「見ているわ」
静かな声。
「だから分かるの」
プレシアの視線がフェイトへ向く。
「フェイトはアリシアじゃない」
その瞬間。
フェイトの身体が強張った。
「母さん……」
「あなたは失敗作よ」
冷酷な言葉。
なのはが息を呑む。
だが。
フェイトは俯かなかった。
震えながらも。
しっかりと立っていた。
「……それでも」
プレシアの目が細くなる。
フェイトは、ゆっくり顔を上げた。
「それでも、私は母さんを止める」
その瞬間。
プレシアの魔力が爆発した。
轟音。
巨大な魔法陣が空間全体へ展開される。
ジュエルシードが共鳴を始めた。
「邪魔をするなァッ!!」
暴走する魔力。
次元震動。
空間が軋む。
なのはがレイジングハートを構える。
フェイトもバルディッシュを握る。
さらに。
中指の雷のマーレリングが輝く。
宝石から、緑色の雷の炎が噴き上がった。
バチバチバチッ!!
電撃が空間を走る。
プレシアが目を細めた。
「……その力」
フェイトは答えない。
ただ。
静かに匣を握る。
そして。
リングの宝石から噴き上がる雷の炎を、匣へ流し込む。
激しい放電。
「開匣」
銀色の匣が開く。
飛び出したのは。
二匹の雷キツネ。
『雷キツネ(ヴォルペ・デル・フルミネ)』
二匹は空中を駆ける。
雷光を撒き散らしながら。
プレシアの魔力弾を次々と撃ち落としていく。
なのはがフェイトを見る。
フェイトも、なのはを見る。
そして。
同時に頷いた。
「行こう!」
「うん!」
桃色の魔力光。
金色の雷。
二人は同時に飛び出した。
母を止めるために。
そして――
少女達の最後の戦いが、始まった。