ミッドチルダ北部山岳地帯。
深い渓谷を縫うように走る山岳モノレールは、多数の乗客を乗せながら静かに走行していた。
―――その時。
警報音が車内に響き渡る。
窓の外を、黒い影が高速で通過した。
「ガジェットだ!」
無人戦闘機械―――ガジェットドローン。
赤い単眼を光らせながら、複数機がモノレールへ襲いかかる。
砲撃。
爆発。
車体が激しく揺れ、悲鳴が上がった。
だが次の瞬間。
「スターズ1、行きます!」
空から飛び込んできた赤い影。
スバルだった。
両足に装着された新型ローラーデバイス―――マッハキャリバーを噴かし、車体側面を滑走する。
「うおおおおっ!!」
拳を叩き込む。
炸裂するカートリッジ。
ガジェット一機が吹き飛んだ。
「すご……!」
スバル自身が驚く。
新デバイスの反応速度。
加速性能。
出力。
その全てが、以前とは比べ物にならない。
「これが……マッハキャリバー!」
上空からティアナの声が飛ぶ。
「感動してる場合じゃないわよ!」
双銃型デバイス―――クロスミラージュ。
高速射撃魔法が連続で炸裂し、別方向から迫るガジェットを撃ち落としていく。
「ちゃんと前見なさい、スバル!」
「はいっ!」
勢いよく返事をしながら、スバルはさらに加速した。
一方。
後方支援担当のライトニング隊。
エリオとキャロはモノレール後部へ向かっていた。
だが。
キャロの表情は硬い。
「……っ」
小さく震える手。
呼吸も浅い。
なのはが優しく声をかける。
「大丈夫?」
「は、はい……」
返事はする。
だが、その瞳には恐怖が浮かんでいた。
敵が怖いわけではない。
危険が怖いわけでもない。
キャロが恐れているのは―――自分自身の力だった。
竜召喚。
強力すぎる古代魔法。
制御を誤れば周囲を巻き込み、全てを壊してしまう危険な力。
その記憶が、今もキャロを縛っていた。
スバルが通信を飛ばす。
『大丈夫だって!』
ティアナも続く。
『私たちが前にいるんだから、後ろは任せなさい!』
「スバルさん……ティアナさん……」
そして。
エリオが静かに手を差し伸べた。
「一緒に行こう、キャロ」
まっすぐな瞳。
その優しさに、キャロは小さく頷いた。
「……うん」
再び前を向く。
だがその直後。
突如、新たなガジェットが現れた。
従来型とは違う。
大型。
高出力。
さらに魔力ジャミング機能まで搭載している。
「新型!?」
エリオが驚く。
ガジェットの砲撃が炸裂。
「きゃあっ!?」
キャロが吹き飛ばされる。
「キャロ!!」
エリオが庇い、車外へ弾き飛ばされた。
さらに。
キャロのデバイス―――ケリュケイオンが反応しない。
『Standby』
冷たい待機音声だけ。
「なんで……!」
焦るキャロ。
迫るガジェット。
恐怖。
その瞬間。
脳裏に、過去の記憶が蘇った。
幼い頃。
制御できなかった召喚魔法。
周囲から向けられた怯えと拒絶。
「危険な子」
「近づくな」
里を追われ。
居場所を失い。
どこへ行っても受け入れてもらえなかった。
そんな時。
差し伸べられた一つの手。
フェイトだった。
『キャロがどこへ行きたくて、何をしたいのかによるよ』
優しい笑顔。
温かな声。
『私は、キャロと一緒にいたい』
その言葉に救われた。
だから。
キャロはここにいる。
守りたい場所がある。
大切な人たちがいる。
「わたしは……!」
涙を拭う。
「みんなを守りたい!」
その瞬間。
ケリュケイオンが光を放った。
『Device awake』
緑色の魔力光。
魔法陣が展開される。
キャロの瞳に、強い意志が宿った。
「お願い、フリード!」
咆哮。
召喚魔法陣から、赤竜フリードリヒが姿を現す。
さらに。
キャロの足元に新たな魔法陣が展開された。
古代ベルカ式。
竜召喚師としての真の力。
「行こう、フリード!」
巨大な炎が吹き荒れる。
新型ガジェットを、竜の咆哮が飲み込んだ。