時の庭園最深部。
激しい戦闘が続いていた。
なのはの砲撃。
フェイトの雷撃。
二匹の雷キツネが空中を駆け回り、プレシアの魔力弾を切り裂いていく。
だが。
プレシアは真正面から戦おうとはしなかった。
次々と防衛術式を展開し、空間を歪め、時間だけを稼いでいく。
クロノ達も別ルートから接近していた。
しかし。
その時にはもう、遅かった。
空間全体が激しく震える。
『次元震動、限界値突破!』
アースラから警告通信。
『時の庭園の崩壊が始まっています!』
巨大な亀裂が空間へ走る。
床が崩れ。
壁が砕け。
次元空間そのものが裂け始めていた。
なのはが叫ぶ。
「プレシアさん!」
プレシアは崩れていく空間の中央で、静かに笑った。
その腕には。
大量のジュエルシード。
フェイトが集めた分だけが握られている。
フェイトが目を見開いた。
「母さん!」
プレシアはフェイトを見る。
その表情は、どこか穏やかだった。
「……アリシア」
フェイトの身体が震える。
だが。
次の瞬間。
プレシアの背後の空間が、大きく崩落した。
暗黒。
光すら飲み込む虚無。
次元の狭間。
なのはが手を伸ばす。
「待って!!」
だが届かない。
プレシアは、そのまま後ろへ落ちていく。
ジュエルシードと共に。
「母さんッ!!」
フェイトが飛び出そうとする。
しかし。
崩落。
巨大な瓦礫が落下する。
なのはがフェイトを抱き寄せた。
「フェイトちゃん!!」
轟音。
次元震動。
さらに空間が崩壊する。
『全員撤退!』
『時の庭園崩壊まで残り二分!』
クロノの通信が響く。
ユーノが叫ぶ。
「なのは! もう限界だ!」
フェイトは震えていた。
伸ばした手。
届かなかった。
助けられなかった。
それでも。
なのははフェイトを強く抱き締める。
「帰ろう」
小さな声。
フェイトは唇を噛む。
そして。
ゆっくりと頷いた。
◇
アースラ。
転移光がブリッジへ広がる。
なのは。
フェイト。
ユーノ。
クロノ達が次々と帰還する。
その直後だった。
モニターに映る時の庭園が、完全崩壊を始める。
巨大な光。
空間崩落。
そして――
時の庭園は、静かに次元の狭間へ消えていった。
ブリッジが静まり返る。
誰も言葉を発せなかった。
リンディが静かに目を閉じる。
「……ジュエルシード事件」
そして。
ゆっくりと告げる。
「これにて終了です」
長かった戦い。
数々の出会い。
幾つもの戦い。
そして。
多くの想い。
その全てが、ようやく終わった。
なのはは隣を見る。
フェイトは俯いたままだった。
だが。
その肩へ、そっと手が置かれる。
さくらだった。
いつの間に来ていたのか。
フェイトは少し驚いたように顔を上げる。
さくらは何も言わない。
ただ。
静かに隣へ立っていた。
その温もりに。
フェイトは小さく目を閉じた。
こうして――
ジュエルシード事件は、終幕を迎えた。