初出動を終えた機動六課。
レリックの回収成功。
ガジェットとの初実戦。
それぞれが課題と達成感を抱えながら、フォワード陣は再び訓練の日々へと戻っていた。
「スバル、踏み込みが大きすぎる!」
ヴィータの鉄槌が飛ぶ。
「うわぁっ!?」
ギリギリで回避するスバル。
だが、その直後。
「前しか見えてない」
横から現れたさくらの蹴りで吹き飛ばされた。
「ぶべっ!?」
地面を転がるスバル。
訓練場に笑いが起きる。
「近接型は突っ込むだけじゃ駄目。敵の視線、味方の位置、地形、全部見なさい」
さくらは淡々と言う。
「あと、拳を振るう時に感情が先走ってる」
「うぅ……」
ヴィータが肩をすくめた。
「まあでも、根性はあるな」
ティアナの方では、フェイトが射撃訓練を見ていた。
「狙撃は“当てる”だけじゃない」
フェイトの声は静かだ。
「相手を動かす。味方を守る。状況を作る。それも射撃の役目」
ティアナは真剣に頷く。
クロスミラージュを構え直し、再び照準を合わせた。
エリオはなのはと高速機動訓練。
キャロはリーンと共に召喚制御訓練。
それぞれが、それぞれの長所を伸ばす。
個性を活かすための訓練。
それが今の機動六課だった。
そんな中。
休憩時間、ティアナは以前から抱いていた疑問を口にした。
「……どうして、さくらさんは次元犯罪者になったんですか?」
空気が少し静まる。
なのはとフェイトは顔を見合わせた。
そして、フェイトが静かに語り始める。
「十年前……闇の書事件が終わった後の話だよ」
当時。
さくらが制作したリング―――死ぬ気の炎を扱う特殊装備。
さらにマーレリング。
そして匣兵器。
それらは管理局によって、“管理が必要な危険兵器”と認定された。
あまりにも未知で。
あまりにも強力すぎたから。
「局の上層部は、全部を接収して管理下に置こうとしたんだ」
ティアナが息を呑む。
「でも、それって……」
「もちろん、お姉ちゃんは拒否したよ」
なのはが苦笑する。
「絶対に譲らなかった」
フェイトが続けた。
「ハラオウン家が間に入って、六年間は強制執行を止めてた」
リンディやクロノ。
そしてハラオウン家の影響力によって、表向きは“交渉継続中”という形になっていた。
だが。
六年経っても、さくらは一切折れなかった。
そして、管理局側も痺れを切らした。
「最終的に……管理局は武装隊を投入した」
ティアナの顔が引きつる。
「まさか……」
「リングと匣兵器の強制押収」
静かな声。
だが、その空気は重かった。
さくらは壁にもたれたまま、興味なさそうに口を開く。
「話し合いに来たって言いながら、最初から武装してた」
「……」
「だから、返り討ちにしただけ」
「返り討ちって……」
なのはが困ったように補足する。
「武装隊、一個部隊壊滅」
「軽く言わないでください!!」
ティアナが頭を抱える。
フェイトは小さく息を吐いた。
「その後、お姉ちゃんは姿を消した」
管理局から広域指名手配。
正式に―――第一級次元犯罪者。
以降、長い間その行方は不明となった。
ティアナは呆然とさくらを見る。
だが。
目の前にいるさくらは、フォワードたちへ丁寧に訓練をつけている。
少なくとも、“無差別に暴れる危険人物”には見えなかった。
「……本当に、何が正しいんだろ」
ティアナが小さく呟く。
さくらはそんな彼女を横目で見て、短く言った。
「正義なんて立場で変わる」
その言葉は、不思議と重かった。
一方その頃。
はやては陸士108部隊を訪れていた。
迎えたのは、筋骨隆々の男。
ゲンヤ・ナカジマ三佐。
「久しぶりやな、はやて」
「ご無沙汰してます、ゲンヤさん」
かつての研修時代。
はやてが師として多くを学んだ人物だった。
応接室。
はやてはレリック事件について説明する。
「密輸ルートを洗いたいんです」
ゲンヤは腕を組みながら頷いた。
「なるほどな……」
レリック。
ガジェット。
違法研究。
裏で大きな組織が動いている可能性は高い。
「108にも調査協力させる」
「助かります」
さらに。
「ギンガも貸し出したる」
「ええんですか?」
「実地経験積ませたいしな」
スバルの姉―――ギンガ・ナカジマ。
優秀な陸戦魔導師でもある彼女の協力は、六課にとって大きな力だった。
その頃。
機動六課ラボ。
フェイトとシャリオは、先日の戦闘で回収されたガジェット残骸を解析していた。
「動力部に異常があります」
シャリオが端末を操作する。
内部構造。
通常とは違う魔力反応。
そして―――。
「これは……!」
フェイトの表情が変わる。
取り出されたのは、小さな宝石。
淡く輝く危険なロストロギア。
ジュエルシード。
「どうしてこんなものが……」
さらに。
残骸内部には、まるで見せつけるようにデータ署名が残されていた。
画面に表示される名前。
フェイトの瞳が鋭くなる。
「ジェイル・スカリエッティ……!」
違法研究。
非合法人体実験。
数々の次元犯罪。
長年、管理局が追い続ける危険人物。
フェイト自身も執務官として追跡してきた、最悪級の犯罪者だった。
静かなラボに、重苦しい沈黙が落ちる。
そしてフェイトは、ゆっくりと呟いた。
「……ついに動き出したんだ」