ジュエルシード事件が終わってから数日。
海鳴の街には、ようやく静かな時間が戻ってきていた。
学校へ通い。
家へ帰り。
いつもの日常を過ごす。
あれほど激しい戦いがあったとは思えないほど、街は平和だった。
なのはは、窓から見える夕焼けを眺めながら、小さく息を吐く。
「終わったんだなぁ……」
その隣。
机に座ったさくらは、麦茶を飲みながら静かに本を読んでいた。
「実感ない?」
「ちょっとだけ」
なのはは苦笑する。
本当に色々あった。
ユーノとの出会い。
ジュエルシード。
フェイトとの戦い。
アースラ。
そして。
死ぬ気の炎。
あまりにも濃すぎる日々だった。
◇
一方。
フェイトについては、完全に無罪という訳にはいかなかった。
ジュエルシード回収に伴う違法行為。
時空管理局への捜索妨害。
公務執行妨害。
本来なら、かなり重い処分になってもおかしくはない。
だが。
リンディ・ハラオウンが各所へ働きかけたことで、フェイトへの処分は大幅に軽減された。
そして。
フェイトは、リンディの預かりとなった。
今後は、プレシアの故郷や関係地を巡りながら、少しずつ自分自身を見つめ直していくらしい。
出発の日。
海鳴港。
アースラへ繋がる転送ゲートの前で、なのは達は集まっていた。
「それじゃあ……行ってくる」
フェイトが少しだけ照れたように笑う。
以前の彼女からは想像も出来ないほど、柔らかな表情だった。
なのはは、少し寂しそうに笑う。
「うん……」
「また会えるよね?」
フェイトは、しっかり頷いた。
「絶対」
その言葉に、なのはも笑顔になる。
アルフは腕を組みながら、どこか嬉しそうだった。
ユーノも静かに笑っている。
そして。
さくらはというと。
いつも通り無表情だった。
だが。
フェイトの右手を見て、小さく口を開く。
「無くすなよ」
フェイトは、自分の中指を見る。
そこには。
緑色の宝石を宿した、雷のマーレリング。
フェイトは少し驚いた後、小さく笑った。
「うん」
そして。
フェイトは逆に、さくらの手を見る。
中指には、羽の装飾が施された藍色のリング。
霧のマーレリング。
なのはは、その二人を交互に見て――
頬を膨らませた。
「ずるい」
「なんで二人だけマーレリングなの!?」
フェイトが困ったように苦笑する。
さくらは平然としていた。
「別に」
「別にじゃないよ!」
なのはが抗議する。
すると。
さくらは少し考えた後、ポケットへ手を入れた。
取り出したのは。
赤い宝石が付いたリング。
嵐のマーレリング。
なのはの目が輝く。
「えっ!? いいの!?」
「試すだけ」
さくらはリングを渡す。
なのはは嬉しそうに受け取り、中指へ嵌めた。
そして。
ぐっと集中する。
「~~~~っ!!」
沈黙。
何も起きない。
なのはがもう一度力む。
だが。
反応無し。
炎どころか、リングは微動だにしなかった。
なのはが固まる。
「……あれ?」
ユーノが苦笑した。
「マーレリングは特別なんでしょ?」
さくらも静かに頷く。
「持ち主を選ぶから」
「適性があっても使えない」
なのははリングを見つめる。
「えぇぇぇ……」
その反応に。
フェイトが思わず吹き出した。
アルフも笑う。
ユーノも肩を震わせていた。
なのはは顔を真っ赤にする。
「笑わなくてもいいじゃん!」
賑やかな声。
暖かな空気。
もう戦いは無い。
けれど。
繋がった絆は、これからも続いていく。
転送ゲートが輝く。
フェイトとアルフは、ゆっくりとその光の中へ歩き出した。
最後に。
フェイトが振り返る。
「なのは」
「さくら」
「またね」
なのはは、大きく手を振った。
「うん!!」
さくらも、小さく手を上げる。
そして。
光が弾ける。
フェイト達の姿は消えた。
静かになった港。
なのはは、空を見上げる。
夕焼けの空は、どこまでも綺麗だった。
A's絶賛作成中!
次回更新は明日の24時になります。
各話、24時更新に切り替わります。ご了承ください。