高級ホテル―――ホテル・アグスタ。
今日、この場所では大規模な骨董品オークションが行われていた。
会場に集まる各世界の富豪、研究者、蒐集家。
そして、その中には当然、“危険なロストロギア”が紛れ込む可能性もある。
そのため。
機動六課は総員出動となっていた。
「警備エリア再確認。スターズは北棟、ライトニングは搬入口側を担当」
シャマルの指示が通信に響く。
ティアナは小さく返答する。
「スターズ2、了解」
だが、その表情はどこか硬かった。
ホテルのロビー。
警戒を続けながら、ティアナは周囲を見る。
なのは。
フェイト。
はやて。
さらにヴォルケンリッター。
全員が、圧倒的だった。
Sランク魔導師。
実戦経験。
才能。
力。
そして。
スバル、エリオ、キャロ。
新人組ですら、それぞれ特別な才能を持っている。
スバルの近接戦闘能力。
エリオの高速機動。
キャロの召喚魔法。
それに比べて、自分はどうだ。
ティアナは奥歯を噛む。
(私は……平凡だ)
射撃も。
魔力量も。
特別じゃない。
そんな時。
少し離れた場所で、なのはとさくらが話している姿が目に入った。
白い制服姿のなのは。
黒いコートを羽織ったさくら。
同じ顔。
だが、まるで違う存在感。
ティアナはふと思う。
(さくらさんは、なのは隊長をどう思ってるんだろう)
優秀な妹。
空のエース。
誰からも尊敬される魔導師。
対して、姉のさくらは魔法が使えない。
だからこそ。
それを覆すために、リングや匣兵器が生まれたのではないか。
そんな考えが浮かんだ、その時。
『警報! ガジェット反応多数!』
館内にアラートが響く。
「来たか」
シグナムが剣を抜く。
ヴィータが笑う。
「久々に暴れられそうだな!」
ザフィーラは静かに頷いた。
即座に出動するヴォルケンリッター。
空を舞うシグナム。
鉄槌を振るうヴィータ。
巨大な魔力弾を放つザフィーラ。
圧倒的。
まさに歴戦。
ガジェットを次々撃破していく。
それを見ながら、ティアナは拳を握る。
(違う……)
(私はこんな所で止まりたくない……!)
その頃。
ホテル地下。
薄暗い空間で、男が愉快そうに笑っていた。
白衣。
眼鏡。
狂気を孕んだ笑顔。
ジェイル・スカリエッティ。
「さてさて」
彼はモニターを見つめながら言う。
「頼み事をしてもよろしいかな?」
その背後。
長身の騎士―――ゼスト・グランガイツ。
そして。
紫髪の少女―――ルーテシア。
スカリエッティは楽しげに続けた。
「オークション会場に運ばれた“品物”を回収してきてほしい」
ルーテシアが無表情に問い返す。
「壊してもいい?」
「程々に頼むよ」
スカリエッティは笑う。
「機動六課の反応も見たいからね」
直後。
地面が揺れた。
巨大召喚魔法。
ルーテシアの使役する召喚獣が、ホテル周辺へ出現する。
「なっ……!?」
スバルが驚く。
さらに。
地面そのものが動き出した。
ルーテシアの特殊技能。
地脈操作。
建物が歪み、足場が崩れる。
フォワード陣は一気に分断された。
「キャロ!」
「エリオ!」
混乱する戦場。
シャマルの声が響く。
『無理をしないで! 副隊長たちの合流を待って!』
だが。
ティアナは歯を食いしばる。
まただ。
また、“待て”だ。
守られる側。
助けられる側。
そんなのは嫌だった。
「ティア?」
スバルが不安そうに見る。
ティアナはクロスミラージュを構えた。
「やるわよ」
「え?」
「私たちで止める!」
ティアナの脳内で、何度もシミュレーションが回る。
スバルの突撃。
自分の幻惑射撃。
タイミング。
角度。
一撃必殺。
訓練し続けたコンビネーション。
それなら勝てる。
そう信じた。
「行くわよ、スバル!」
「う、うん!」
スターズ隊が駆ける。
ティアナの幻影魔法。
スバルの高速突撃。
完璧―――だったはずだった。
だが。
「っ!?」
敵の反応が、想定以上に速い。
召喚獣の一撃。
スバルが弾き飛ばされる。
「スバル!!」
さらに。
ティアナの射線を、別のガジェットが遮った。
コンビネーションが崩れる。
一瞬の隙。
その瞬間。
轟音。
巨大な衝撃がティアナを襲った―――。