魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第20話 管理者権限

闇が、砕け始めていた。

 

はやての叫びと同時に。

 

果ての無い黒い世界へ、無数の亀裂が走る。

 

大空の炎。

 

オレンジ色の光が、闇を押し返していく。

 

『……否定』

 

機械的な声。

 

世界そのものが唸った。

 

闇が蠢く。

 

拒絶するように。

 

暴走するように。

 

管理人格が、はやてを再び呑み込もうとしていた。

 

だが。

 

はやての右手。

 

大空のマーレリングが、強く輝いている。

 

炎はもう、消えそうな光ではなかった。

 

確かな意志。

 

生きたいという願い。

 

その想いに応えるように、大空の炎が燃え上がる。

 

さくらは、はやての手を掴んだ。

 

「立ちなさい」

 

はやては涙を拭う。

 

震える足。

 

だが。

 

ゆっくりと立ち上がった。

 

その瞬間。

 

闇が激しく荒れ狂う。

 

『……排除』

 

黒い奔流。

 

嵐の炎。

 

雲の炎。

 

雨の炎。

 

大空の炎。

 

複数の炎が混ざり合い、二人へ襲い掛かった。

 

さくらが霧の炎を展開する。

 

紫色の炎。

 

幻想を構築する力。

 

空間へ壁を生み出し、闇を押し止める。

 

だが。

 

限界が近い。

 

「急いで!」

 

さくらが叫ぶ。

 

「管理者権限を奪い返せ!!」

 

はやてが顔を上げる。

 

闇の中心。

 

そこには、一冊の巨大な黒い書が浮かんでいた。

 

闇の書。

 

その本体。

 

無数の鎖が絡み付き、脈動している。

 

『……収集、継続』

 

『対象世界、侵食開始』

 

無機質な声。

 

だが。

 

今のはやては、もう俯かなかった。

 

涙を拭い。

 

真っ直ぐ前を見る。

 

そして。

 

一歩、踏み出した。

 

その瞬間。

 

現実世界。

 

病院上空。

 

管理人格の身体が、突如停止した。

 

なのはが目を見開く。

 

「止まった!?」

 

フェイトも驚く。

 

「内部で何か起きてる……!」

 

クロノが即座に魔力探査を行う。

 

「管理領域の魔力変動……!」

 

「制御権が揺れている!」

 

だが。

 

次の瞬間。

 

管理人格が咆哮した。

 

『――――ッ!!』

 

黒い魔力が爆発する。

 

空間が軋む。

 

なのはたちが吹き飛ばされる。

 

「きゃあっ!」

 

「くっ……!」

 

フェイトが体勢を立て直す。

 

クロノが叫ぶ。

 

「暴走が加速している!」

 

管理人格が抵抗している。

 

内部からの制御奪還を、全力で拒絶していた。

 

そして。

 

黒い魔法陣が空を埋め尽くす。

 

無数。

 

数え切れないほどの術式。

 

そこへ灯るのは――嵐の炎。

 

なのはが息を呑む。

 

「まずい……!」

 

全砲門。

 

一斉展開。

 

空間そのものが崩壊しかける。

 

クロノが叫ぶ。

 

「防御に集中しろ!!」

 

フェイトが雷の炎を展開。

 

なのはも防御魔法を重ねる。

 

だが。

 

圧倒的過ぎる。

 

その時だった。

 

内部世界。

 

はやてが、闇の書へ手を伸ばす。

 

黒い鎖が絡み付く。

 

侵食。

 

拒絶。

 

激痛。

 

それでも、はやては止まらない。

 

「私は――!」

 

闇が唸る。

 

管理人格が拒絶する。

 

だが。

 

はやては叫んだ。

 

「この子たちの主や!!」

 

その瞬間。

 

大空の炎が爆発した。

 

オレンジ色の炎。

 

調和の炎。

 

闇へ触れた瞬間。

 

黒い侵食が止まる。

 

そして。

 

はやての周囲へ、四つの光が現れた。

 

赤。

 

緑。

 

銀。

 

蒼。

 

守護騎士たちの色。

 

消滅したはずの家族たちの残滓。

 

はやての瞳が揺れる。

 

『主』

 

声が響く。

 

シグナム。

 

ヴィータ。

 

シャマル。

 

ザフィーラ。

 

はやてが涙を流す。

 

「みんな……!」

 

その瞬間。

 

闇の書が激しく震えた。

 

管理人格が絶叫する。

 

『……否定!!』

 

『拒絶!!』

 

『収集、継続!!』

 

だが。

 

はやては、もう迷わない。

 

右手を伸ばし。

 

闇の書へ、触れた。

 

そして――

 

「管理者権限、起動」

 

世界が、止まった。

 

次の瞬間。

 

黒かった闇の書へ、オレンジ色の光が走る。

 

侵食されていた術式。

 

暴走していた制御機構。

 

それら全てへ、大空の炎が広がっていく。

 

はやては静かに、闇の書を抱き締めた。

 

「もう独りで泣かんでええ」

 

優しい声だった。

 

「ずっと苦しかったんやな……」

 

闇が、揺れる。

 

無機質だった世界が、初めて感情を持ったように震えた。

 

はやては涙を浮かべながら、微笑む。

 

「あなたの名前は――夜天の書」

 

光が走る。

 

黒い書の表紙へ、金色の紋章が浮かび上がる。

 

さらに。

 

はやては、もう一つの存在へ視線を向けた。

 

闇の奥。

 

赤い瞳でこちらを見つめる、管理人格。

 

「そして、あなたは――リンフォース」

 

その瞬間。

 

赤い瞳が、大きく揺れた。

 

初めて。

 

その瞳へ、“感情”が宿る。

 

そして。

 

はやては、右手を強く握り締めた。

 

「帰ろう」

 

大空の炎が爆発的に燃え上がる。

 

闇を切り裂き。

 

出口への光が開かれる。

 

さくらが笑った。

 

「やっと終わりね」

 

その瞬間。

 

二人は、闇の世界から脱出した。

 

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