魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第21話 帰還

夜の病院上空。

 

黒い暴風のようだった管理人格の魔力が、突然揺らいだ。

 

「……止まった?」

 

フェイトが空中で体勢を立て直す。

 

雷の炎がまだ全身を覆っているが、その中に困惑が混じる。

 

クロノが即座に魔力解析を走らせる。

 

「内部制御系が……再構築されている」

 

なのはが息を呑む。

 

「じゃあ……成功したの?」

 

その瞬間。

 

空間が“割れた”。

 

黒い魔力の中心に、一本の光の裂け目が走る。

 

オレンジ色。

 

大空の炎。

 

そして――

 

「……っ!」

 

そこから、はやてとさくらが同時に現れた。

 

空中へ、ふわりと。

 

重力を無視したように、静かに落ちてくる。

 

「はやて!」

 

シグナムの声が響く。

 

次の瞬間、守護騎士たちの姿が再構成されるように戻ってくる。

 

赤・緑・銀・蒼。

 

四つの光が、はやての周囲へ集まった。

 

「主!!」

 

ヴィータが泣きそうな声で叫ぶ。

 

はやては、ゆっくりと目を開ける。

 

「……みんな」

 

その声は、もう機械的なものではなかった。

 

ただの、少女の声だった。

 

だが。

 

完全に終わったわけではない。

 

空間の奥で、まだ黒い魔力が蠢いている。

 

クロノが鋭く言う。

 

「まだだ。完全に分離しきっていない」

 

さくらも空を見上げたまま呟く。

 

「リンフォースは残ってる」

 

その言葉に、空気が引き締まる。

 

空間の裂け目の奥。

 

赤い瞳が、こちらを見ていた。

 

だが先ほどまでの暴力的な圧はない。

 

ただ“見ている”。

 

管理人格――リンフォース。

 

なのはが一歩前へ出る。

 

「まだ……戦うの?」

 

その問いに。

 

リンフォースは、ほんの僅かに揺れた。

 

そして。

 

低く、か細い声。

 

『……収集……終了』

 

沈黙。

 

クロノが息を呑む。

 

「終わり……?」

 

さくらは小さく息を吐いた。

 

「暴走モードはね」

 

「でも存在そのものは残る」

 

フェイトが問いかける。

 

「それって……危険じゃないの?」

 

さくらは首を振る。

 

「もう“敵”じゃない」

 

「ただの記録装置よ」

 

その言葉と同時に。

 

空間の裂け目が、ゆっくりと閉じていく。

 

赤い瞳が最後に、はやてを見た。

 

そこにあったのは――

 

敵意ではなく。

 

静かな、観測。

 

そして。

 

ほんの僅かな“安堵”だった。

 

裂け目が消える。

 

夜空が戻る。

 

沈黙。

 

数秒後。

 

なのはが力を抜くように息を吐いた。

 

「……終わったんだよね」

 

フェイトもゆっくり頷く。

 

クロノは警戒を解かずに空を見ていたが、やがて魔力を解除した。

 

そして。

 

はやてが、膝をつく。

 

「……っ」

 

シグナムがすぐ支える。

 

「主!」

 

はやては弱々しく笑う。

 

「ごめんな……心配かけてもうて」

 

ヴィータが涙を拭う。

 

「バカ……ほんとバカ主……」

 

シャマルも静かに泣いていた。

 

ザフィーラはただ、そっと頭を下げる。

 

その光景を見ながら。

 

さくらは小さく笑った。

 

「終わったわね」

 

なのはが振り向く。

 

「さくらお姉ちゃん……ありがとう」

 

フェイトも静かに頭を下げる。

 

「助けてくれて、ありがとう」

 

さくらは少しだけ視線を逸らす。

 

「別に」

 

短く言ってから。

 

一拍置いて。

 

「まだ、片付けは残ってるけどね」

 

空には、完全に静寂が戻っていた。

 

だが。

 

誰も気づいていない。

 

遠く。

 

消えたはずの“記録”の奥で。

 

リインフォースは、まだ静かに世界を見ていた。

 

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