魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

34 / 34
第Ⅷ話 願い、ふたりで

## 第Ⅷ話 願い、ふたりで

 

ホテル・アグスタでの戦闘終了後。

 

機動六課の医務室には重い空気が流れていた。

 

ティアナは俯いたまま、黙って座っている。

 

あの時。

 

自分の判断ミス。

 

焦り。

 

そして無理な突撃。

 

結果として、スバルたちを危険に晒した。

 

なのはは静かにティアナの前へ立つ。

 

怒鳴るわけではない。

 

責めるわけでもない。

 

だが、その声は真っ直ぐだった。

 

「ティアナ」

 

「……はい」

 

「ティアナは、一人で戦ってる訳じゃないんだよ」

 

ティアナの肩が小さく震える。

 

なのはは続ける。

 

「センターガードはね、前も後ろも左右も全部味方なの」

 

スターズ分隊。

 

その中心。

 

それがティアナの立ち位置。

 

仲間を支え。

 

仲間に支えられる。

 

それが本来の戦い方だった。

 

「今回のミスがどういう意味だったのか、ちゃんと考えて」

 

なのはの瞳は優しい。

 

だが、厳しい。

 

「そして、同じ失敗を二度と繰り返さないで」

 

ティアナは唇を噛み、深く頭を下げた。

 

「……はい」

 

「約束できますか?」

 

少しだけ間が空く。

 

そして。

 

「……約束します」

 

その答えを聞き、なのはは静かに頷いた。

 

六課へ戻った後。

 

ヴィータは腕を組みながら、なのはたちへ問いかける。

 

「で? あいつ、なんであそこまで無茶する」

 

なのはとフェイトは顔を見合わせる。

 

答えたのはフェイトだった。

 

「ティアナのお兄さん……ティーダさんのこと、知ってる?」

 

ティーダ・ランスター。

 

管理局の魔導師。

 

優秀な執務官候補だった。

 

だが、任務中の事故で殉職した。

 

そして。

 

その任務には“失敗”の記録が残った。

 

「ティアナは、兄さんの誇りを守りたいんだよ」

 

フェイトは静かに言う。

 

「兄さんが叶えられなかった夢……執務官になるために」

 

ヴィータは難しい顔で息を吐いた。

 

「……真面目すぎんだよ、あいつ」

 

その頃。

 

訓練場では、ティアナが一人で射撃訓練を続けていた。

 

何度も。

 

何度も。

 

魔力切れ寸前まで。

 

そこへヴァイスがやって来る。

 

「おいおい、無茶しすぎだろ」

 

「……」

 

「休めって」

 

「まだ足りません」

 

ヴァイスは眉をひそめた。

 

「焦って強くなれるほど、魔導師って単純じゃねぇぞ」

 

だが、ティアナは止まらない。

 

クロスミラージュを構え続ける。

 

その背中には、焦燥しかなかった。

 

そんなティアナの前へ、スバルが現れる。

 

「ティア」

 

「……何?」

 

スバルは笑った。

 

「一緒にやろう」

 

「え?」

 

「ティア一人じゃないんだから」

 

真っ直ぐな笑顔。

 

ティアナは少しだけ目を逸らす。

 

だが。

 

その言葉は、確かに嬉しかった。

 

それから。

 

二人は秘密訓練を始めた。

 

通常訓練を終えた後。

 

夜遅くまで残って。

 

新しいコンビネーション。

 

連携。

 

技数の増加。

 

スバルの突撃に合わせた高速幻惑射撃。

 

クロスファイア。

 

そして。

 

新たな連携技。

 

何度失敗しても、二人は立ち上がった。

 

「もう一回!」

 

「うん!」

 

そんな二人を、なのはは遠くから静かに見守っていた。

 

そして迎えた。

 

模擬戦当日。

 

訓練フィールド。

 

対戦相手は―――高町さくら。

 

「本気で来なさい」

 

黒いコートを翻しながら、さくらが立つ。

 

対するスターズ隊。

 

スバルとティアナ。

 

「行くよ、ティア!」

 

「ええ!」

 

二人が同時に駆ける。

 

スバルの高速接近。

 

ティアナの幻惑魔法。

 

視界攪乱。

 

クロスレンジ射撃。

 

訓練してきたコンビネーションが次々決まる。

 

「ほう」

 

さくらが小さく感心する。

 

以前より遥かに連携が洗練されていた。

 

スバルが死角から飛び込む。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

拳撃。

 

だが。

 

さくらの姿が霧のように掻き消えた。

 

「幻!?」

 

ティアナが叫ぶ。

 

その瞬間。

 

背後。

 

「反応が遅い」

 

「っ!?」

 

さくらの蹴りを、スバルがギリギリで防御する。

 

衝撃。

 

吹き飛ばされるスバル。

 

だが。

 

「今!」

 

ティアナの魔力弾が炸裂。

 

さくらの周囲を封鎖する。

 

さらに。

 

幻影。

 

多重射撃。

 

スバルが再突撃。

 

「おおおおっ!!」

 

さくらの右手のリングから、紫色の炎―――雲の炎が灯る。

 

さらに、靄のように揺らめく霧の炎。

 

「開匣」

 

匣が開く。

 

飛び出したのは、紫色の炎を纏うハリネズミ。

 

雲の匣兵器。

 

ハリネズミは瞬く間に増殖を始める。

 

一体。

 

二体。

 

十体。

 

数え切れないほどに増えたハリネズミたちがフィールドを埋め尽くしていく。

 

「うそぉ!?」

 

スバルが声を上げる。

 

さらに。

 

霧の炎が戦場を覆った。

 

景色が歪む。

 

視界が狂う。

 

敵味方の位置感覚すら曖昧になる。

 

「ティア!」

 

「大丈夫、まだ見えてる!」

 

ティアナは歯を食いしばる。

 

クロスミラージュを構える。

 

(負けない……!)

 

(ここで止まったら、また同じだ!)

 

スバルがハリネズミの群れへ飛び込む。

 

ティアナが援護射撃。

 

増殖する雲の匣兵器。

 

霧による幻惑。

 

その猛攻の中。

 

スターズ隊は必死に食らいついていく。

 

そして。

 

霧の向こうで。

 

さくらがほんの少しだけ口元を上げた。

 

「……いい目になってきた」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

星輝の女帝(スターライト・エンプレス)(作者:アキ 3150)(原作:魔法少女リリカルなのは)

ー追加タグー▼ワンピース(覇気のみ)▼宇宙戦艦ヤマト(技術のみ)▼「」会話▼()思ったこと▼[]思念伝達▼『』スキル・魔法・必殺技・権能▼★今作における異世界と次元世界の違い▼次元世界=時空管理局の技術力で到達可能な世界(リリカルなのはに登場する次元世界)▼異世界=時空管理局が認識・到達不可能な世界(他作品の世界)▼──以下あらすじ▼ 海鳴市に住む少女─高町…


総合評価:45/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年05月07日(木) 00:04 小説情報

転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜(作者:だいたい大丈夫)(原作:るろうに剣心)

かつて京都を震撼させた「人斬り抜刀斎」と並び称された、新選組一番隊組長・沖田総司。▼労咳の運命を越え、彼女が手にしたのは平穏な明治の世と、亡き夫が残した一人息子・弥彦だった。▼しかし、その剣はまだ、錆びついてはいない。▼「たまには人を斬っておかないと、腕が鈍るでしょう?」▼昼は息子の教育に頭を悩ませる士族の未亡人。夜は月夜に紛れ、暗殺者として死体の山を築く。…


総合評価:3109/評価:6.78/連載:88話/更新日時:2026年06月07日(日) 22:37 小説情報

黒歌転生 死んだ姉は保健室にいる(作者:好きな性癖発表ドラゴン)(原作:ハイスクールD×D)

黒歌にTS転生した主人公は、原作の悲劇を知っていた。▼妹の白音を守るため、眷属の主を殺すところまでは原作通り。けれど彼女は、はぐれ悪魔として逃げ続けるのではなく、グレモリー家へ助けを求める道を選ぶ。▼魔王サーゼクスの監視下で保護され、リアスとぶつかり、朱乃の悲劇にも手を伸ばしながら、黒歌は少しずつ居場所を得ていく。だが、自分の存在が妹に危険を呼ぶと悟った彼女…


総合評価:236/評価:8.2/連載:8話/更新日時:2026年06月21日(日) 19:49 小説情報

魔法科高校の異端魔術師(作者:もやしになりたい)(原作:魔法科高校の劣等生)

死の間際、佐藤雄馬は他人を庇って命を落とした。▼その死は、本来あるはずのないものだった。▼神の手違いにより、『魔法科高校の劣等生』の世界へ転生した雄馬は、英霊たちとの縁を与えられ、新たな人生を歩み始める。▼そこで彼が触れたのは、魔法が技術として完成された世界と、英霊たちが語る神秘としての魔術だった。▼想子によって情報体へ干渉する“魔法”。▼魔術回路と魔力によ…


総合評価:2416/評価:7.15/連載:37話/更新日時:2026年05月14日(木) 16:46 小説情報

ダンまち世界に闇の福音に転生して人類を導くのは間違っているだろうか(作者:魔法少女(偽))(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

令和を生きたアニメやマンガが好きで多少の武道の心得がある社会人がトラ転して前世の武術やアニメの技術を教えたりして色々やらかしたり助けたりして超有名人になっていく▼※他作品のキャラや武器が登場したりします


総合評価:931/評価:7.12/連載:11話/更新日時:2026年06月30日(火) 23:25 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>