魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

36 / 45
第3話 霧の介入

「くっ……!」

 

なのはは空中を高速で飛び回っていた。

 

背後から迫る無数の鉄球。

 

その全てが、紫色の炎を纏っている。

 

雲の炎。

 

増殖の特性。

 

撃ち落としても増える。

 

避けても増える。

 

空そのものが鉄球で埋め尽くされていく。

 

「ディバイン――!」

 

砲撃でまとめて吹き飛ばす。

 

だが。

 

爆炎の中から、さらに数を増やした鉄球が飛び出した。

 

「うそぉっ!?」

 

轟音。

 

なのはは防御魔法ごと吹き飛ばされる。

 

ビル壁面へ激突。

 

コンクリートが砕け散った。

 

「なのは!」

 

フェイトが叫ぶ。

 

だが、そこへシグナムが割り込む。

 

紅い炎を纏うレヴァンティン。

 

「余所見をするな」

 

斬撃。

 

フェイトは咄嗟に受け止める。

 

だが重い。

 

嵐の炎を纏った斬撃は、一撃一撃が暴風のような衝撃を伴っていた。

 

ガギィン!!

 

火花が散る。

 

フェイトは押し返される。

 

「っ……!」

 

その瞬間。

 

フェイトの視線が、シグナムの右手へ向く。

 

羽の装飾が施されたリング。

 

中央で赤い宝石が揺れている。

 

嵐のマーレリング。

 

フェイトの表情が変わる。

 

「そのリング……!」

 

シグナムは答えない。

 

フェイトはさらに声を上げた。

 

「どうしてあなたたちが持ってるの!?」

 

一瞬。

 

シグナムの目が細くなる。

 

だが返答はない。

 

代わりに、レヴァンティンへ嵐の炎を流し込む。

 

暴風。

 

赤い炎。

 

剣圧が一気に跳ね上がる。

 

「くっ……!」

 

フェイトが後退する。

 

---

 

一方。

 

なのはは瓦礫の中から立ち上がった。

 

バリアジャケットは傷だらけ。

 

呼吸も荒い。

 

それでもレイジングハートを握り直す。

 

「まだ……!」

 

右手の中指。

 

赤い宝石の中で、小さな炎が揺れていた。

 

だが。

 

ヴィータの猛攻は止まらない。

 

「終わりだ!!」

 

鉄球が放たれる。

 

増殖。

 

増殖。

 

増殖。

 

空が完全に埋め尽くされる。

 

逃げ場がない。

 

なのはは歯を食いしばった。

 

「お願い……!」

 

リングへ魔力を流し込む。

 

さらに。

 

無理矢理、嵐の炎を引き出した。

 

赤い炎が噴き上がる。

 

だが、その出力は明らかに異常だった。

 

「なのは! 無理だ!」

 

フェイトが叫ぶ。

 

しかし、なのはは止まらない。

 

「負けたく……ないっ!!」

 

レイジングハートへ、嵐の炎を強引に流し込む。

 

桃色の魔力と赤い炎が混ざり合う。

 

暴風。

 

魔力奔流。

 

周囲の空気が激しく荒れ狂う。

 

ヴィータが目を見開いた。

 

「なっ!?」

 

なのはは叫ぶ。

 

「ディィィバイン――バスター!!」

 

超高出力砲撃。

 

桃色と赤色が混ざった奔流が、正面の鉄球群を飲み込む。

 

爆発。

 

轟音。

 

増殖していた鉄球群が一気に吹き飛んだ。

 

だが、その直後。

 

――ピシッ。

 

小さな音。

 

なのはの指輪に亀裂が走る。

 

「……え?」

 

赤い宝石へ、次々とヒビが広がっていく。

 

無理な炎放出。

 

Cランクのリングでは耐えきれなかった。

 

そして。

 

パリンッ――。

 

嵐のリングが砕け散った。

 

「っ……!」

 

なのはの目が揺れる。

 

赤い炎が霧散していく。

 

ヴィータがニヤリと笑った。

 

「壊れたか」

 

なのはは息を呑む。

 

大事に使っていたリング。

 

お姉ちゃんから貰った力。

 

それが、砕けた。

 

その瞬間だった。

 

――カンッ。

 

乾いた音。

 

空中で、鉄球の動きが止まる。

 

「……え?」

 

ヴィータが目を見開く。

 

鉄球が。

 

止まっている。

 

いや――

 

霧に包まれていた。

 

白い霧。

 

戦場へ、ゆっくりと広がっていく。

 

「これは……」

 

フェイトが目を見開く。

 

知っている。

 

この霧を。

 

ヴィータが舌打ちする。

 

「チッ……!」

 

霧の中。

 

ゆっくりと、一人の少女が歩いてくる。

 

茶色の髪。

 

なのはによく似た顔立ち。

 

だが、その瞳には静かな冷たさが宿っている。

 

右手の中指には、羽を模した装飾を持つ霧のマーレリング。

 

中央の藍色の宝石が淡く輝いている。

 

さくらだった。

 

「派手にやってるね」

 

その声は静かだった。

 

だが戦場の空気が、一瞬で変わる。

 

シグナムの目が細くなる。

 

「貴様……」

 

さくらは止まった鉄球へ視線を向ける。

 

霧がそれらを包み込んでいく。

 

次の瞬間。

 

パキンッ。

 

全ての鉄球が内部から砕け散った。

 

ヴィータが驚く。

 

「なっ……!?」

 

さくらは淡々と言う。

 

「雲の増殖」

 

「面白い使い方」

 

その時。

 

なのはが立ち上がり、叫んだ。

 

「お姉ちゃん!」

 

なのはの視線は、ヴィータとシグナムのリングへ向いていた。

 

どちらも、羽の装飾を持つ特別なリング。

 

間違いない。

 

マーレリング。

 

「なんで……そのリングを持ってるの!?」

 

フェイトも睨む。

 

「マーレリングは、そんな簡単に手に入るものじゃない!」

 

空気が張り詰める。

 

シグナムは静かにレヴァンティンを構えた。

 

ヴィータも警戒を強める。

 

だが。

 

答えたのは、さくらだった。

 

「……私が渡したから」

 

一瞬。

 

全員の動きが止まる。

 

なのはの目が大きく開く。

 

「えっ……」

 

フェイトも息を呑む。

 

「さくら……?」

 

ヴィータがニヤリと笑う。

 

「そういうことだ」

 

だがシグナムは、さくらを静かに見据えていた。

 

警戒。

 

いや――確認。

 

敵なのか。

 

味方なのか。

 

その答えを測るように。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。