魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第4話 守るための力

夜風が、静かに吹き抜ける。

 

戦場を覆っていた霧は、未だ消えていなかった。

 

白い霧の中心。

 

さくらは静かに立っている。

 

対する守護騎士たちも、すぐには動かなかった。

 

シグナムはレヴァンティンを構えたまま、さくらを見据える。

 

「なぜリングを渡した」

 

低い声。

 

警戒は解かれていない。

 

ヴィータもグラーフアイゼンを肩へ担ぎながら睨んでいる。

 

なのはは混乱したまま声を上げた。

 

「お姉ちゃん、それってどういうことなの!?」

 

フェイトも視線を向ける。

 

「マーレリングは、そんな簡単に渡せる物じゃない……!」

 

空気が張り詰める。

 

だが。

 

さくらは静かに目を閉じた。

 

「……今は言えない」

 

短い返答。

 

なのはが目を見開く。

 

「お姉ちゃん……!」

 

さくらは続ける。

 

「でも、少なくとも敵だから渡した訳じゃない」

 

その言葉に、シグナムの目がわずかに細くなる。

 

ヴィータは鼻を鳴らした。

 

「相変わらず説明不足な奴だな」

 

「必要ないから」

 

即答だった。

 

その時。

 

アースラから通信が入る。

 

《こちらアースラ! 全員戦闘を停止してください!》

 

クロノの声だった。

 

次元転移反応。

 

複数。

 

直後、空間に魔法陣が展開される。

 

アースラ執務官部隊。

 

クロノを先頭に、武装局員たちが現れた。

 

「動くな!」

 

一斉にデバイスが向けられる。

 

だが。

 

ヴィータはニヤリと笑った。

 

「遅ぇんだよ」

 

シグナムも静かにレヴァンティンを下ろす。

 

「今は退く」

 

クロノの目が鋭くなる。

 

「待て!」

 

だが、その瞬間。

 

守護騎士たちの周囲へ魔法陣が展開された。

 

転移魔法。

 

フェイトが前へ出る。

 

「逃がさない!」

 

雷光が走る。

 

しかし。

 

シグナムの嵐の炎が爆ぜた。

 

暴風。

 

赤い炎が空間を乱し、雷撃を弾き飛ばす。

 

「っ……!」

 

そして。

 

さくらもまた、静かに霧の中へ歩き出す。

 

なのはが思わず叫ぶ。

 

「お姉ちゃん!?」

 

さくらは振り返らない。

 

ただ一言だけ残した。

 

「帰ったら話す」

 

その直後。

 

霧が膨れ上がる。

 

視界が白く染まり――。

 

次の瞬間には、守護騎士たちと共に、さくらの姿も消えていた。

 

静寂。

 

崩れた廃墟だけが残される。

 

---

 

なのはは、その場へへたり込んだ。

 

「リング……」

 

砕けた嵐のリング。

 

赤い宝石の欠片が、地面へ散らばっている。

 

なのははそれをそっと拾い上げた。

 

「……壊れちゃった」

 

少しだけ、声が震えていた。

 

フェイトが隣へ降り立つ。

 

「なのは……」

 

その時。

 

転移魔法陣が再び展開された。

 

リンディ、クロノ、エイミィたちが合流する。

 

リンディは、なのはの傷だらけの姿を見ると、すぐ表情を険しくした。

 

「なのはさん! フェイトさん!」

 

「大丈夫!?」

 

なのはは小さく頷く。

 

「うん……なんとか」

 

クロノは周囲を見渡した。

 

破壊された建物。

 

残留魔力。

 

そして、未だ空気に残る“炎”の気配。

 

その中でも特に目立つのは――。

 

「……マーレリング」

 

クロノが低く呟く。

 

フェイトも険しい顔をしていた。

 

「間違いない……」

 

「シグナムたちは、死ぬ気の炎を使ってた」

 

リンディは静かに目を閉じる。

 

「しかも、さくらさんが関わっている……」

 

事態は予想以上に深刻だった。

 

なのはは、手の中の砕けたリングを見つめる。

 

そして、小さく呟いた。

 

「お姉ちゃん……なんで……」

 

その答えは、まだ誰にも分からなかった。

 

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