魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第5話 新たなる力

アースラ――医務室。

 

なのははベッドへ腰掛けながら、小さく息を吐いた。

 

「うぅ……」

 

身体中が痛い。

 

ヴィータの一撃。

 

そして最後の無理な魔力放出。

 

バリアジャケット越しでも、かなりの負担が掛かっていた。

 

隣ではフェイトも腕へ包帯を巻かれている。

 

シグナムとの高速戦闘。

 

嵐の炎を纏った斬撃は、フェイトの想像以上に重かった。

 

「二人とも、しばらくは安静よ」

 

リンディが優しく言う。

 

だが、その表情はいつもより真剣だった。

 

「今回の相手は、かなり危険です」

 

クロノも腕を組みながら頷く。

 

「特に、あのカートリッジシステム」

 

なのはが顔を上げる。

 

「あの弾みたいなの?」

 

「うん」

 

エイミィがモニターを操作する。

 

画面へ、戦闘記録映像が表示された。

 

ヴィータのグラーフアイゼン。

 

シグナムのレヴァンティン。

 

その両方へ装填される薬莢型パーツ。

 

《Explosion》

 

その瞬間、爆発的に上昇する魔力出力。

 

エイミィが説明を続ける。

 

「簡単に言えば、魔力を瞬間的に爆発増幅させるシステムだね」

 

「普通の魔導師じゃ制御できないくらい危険だけど……あの人たちは完全に使いこなしてる」

 

クロノが映像を止める。

 

そこには、嵐の炎を纏ったシグナムの斬撃が映っていた。

 

「炎との相性も異常に高い」

 

「今のままでは、なのはたちじゃ押し切られる可能性が高い」

 

その言葉に、なのはは悔しそうに俯く。

 

砕けたリング。

 

圧倒的だったヴィータ。

 

なのはは、何も言い返せなかった。

 

フェイトも静かに拳を握る。

 

「……強くならないと」

 

その呟きに、リンディは小さく頷いた。

 

「だから、こちらも対抗策を用意します」

 

エイミィが新たなウィンドウを開く。

 

そこには、レイジングハートとバルディッシュの内部構造図が映し出されていた。

 

「実は、アースラでも試験的に似たシステムを研究してたんだ」

 

「まだ未完成だったけど、今回の戦闘データで一気に調整が進みそう」

 

なのはが目を輝かせる。

 

「じゃあ……!」

 

「うん」

 

エイミィが笑った。

 

「レイジングハートとバルディッシュに、カートリッジシステムを搭載するよ!」

 

フェイトの目も真剣になる。

 

「強化……」

 

クロノが静かに言う。

 

「守護騎士たちは、近接戦闘能力も高い上に、炎とカートリッジを併用している」

 

「こちらも、戦力を底上げしなければ勝負にならない」

 

なのはは、膝の上に置かれた砕けたリングを見る。

 

赤い宝石は粉々だった。

 

「……ごめんね」

 

小さな呟き。

 

大事に使っていた嵐のリング。

 

それを壊してしまった。

 

フェイトがそっと声を掛ける。

 

「なのは」

 

「次は、一緒に勝とう」

 

なのはは少しだけ驚き――。

 

そして笑った。

 

「うん!」

 

その時。

 

医務室の扉が開く。

 

技術班スタッフが、慎重に二つのデバイスを運び込んできた。

 

損傷したレイジングハート。

 

そして、バルディッシュ。

 

表面には激しい傷が刻まれている。

 

エイミィが腕を組む。

 

「かなりギリギリだったねぇ……」

 

「でも、大丈夫」

 

「ちゃんとパワーアップして戻してあげるから」

 

なのはとフェイトは頷いた。

 

新たな力。

 

新たな戦い。

 

守護騎士たちとの戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

---

 

その日の夜。

 

高町家。

 

いつも通りの夕食。

 

いつも通りの会話。

 

だが――。

 

なのはの胸の中には、重たいものが残っていた。

 

食事を終えた後。

 

なのはは、さくらの部屋の前へ立っていた。

 

コンコン。

 

軽くノックする。

 

「……入っていい?」

 

「どうぞ」

 

静かな声。

 

なのはは扉を開けた。

 

部屋の中では、さくらが机へ向かって本を読んでいた。

 

いつも通り。

 

本当に、いつも通りだった。

 

まるで数時間前まで敵と一緒にいた人には見えない。

 

なのはは、ぎゅっと拳を握る。

 

「……お姉ちゃん」

 

「うん?」

 

さくらは本を閉じ、なのはへ視線を向けた。

 

なのはは真っ直ぐ見返す。

 

「なんで、守護騎士にマーレリングを渡したの?」

 

部屋の空気が静まる。

 

さくらは少しだけ目を細めた。

 

「それを聞きに来たんだ」

 

「当たり前だよ!」

 

なのはが声を上げる。

 

「だって、お姉ちゃんが渡したリングで、みんな傷ついてるんだよ!?」

 

「フェイトちゃんだって……わたしだって……!」

 

砕けたリング。

 

ヴィータの猛攻。

 

シグナムの斬撃。

 

その全てが頭をよぎる。

 

なのはは唇を噛んだ。

 

「どうして……」

 

「どうして敵に力を貸すの……?」

 

静かな沈黙。

 

さくらは、すぐには答えなかった。

 

やがて、小さく息を吐く。

 

「……敵、か」

 

その言葉は、どこか考え込むようだった。

 

なのははさらに踏み込む。

 

「お姉ちゃんは、あの人たちの味方なの?」

 

問い。

 

真っ直ぐな瞳。

 

だが、さくらは否定もしなければ肯定もしなかった。

 

代わりに、なのはへ問い返す。

 

「なのはは、あの人たちが悪人に見えた?」

 

「え……?」

 

予想外の返答だった。

 

なのはは言葉に詰まる。

 

ヴィータは乱暴だった。

 

シグナムも容赦なかった。

 

でも――。

 

「……違う」

 

自然と、その答えが出た。

 

少なくとも。

 

誰かを傷つけて喜ぶような人たちには見えなかった。

 

さくらは小さく頷く。

 

「なら、今はそれで十分」

 

「でも!」

 

なのはが食い下がる。

 

「理由、教えてくれてもいいじゃん!」

 

その言葉に、さくらは静かになのはを見る。

 

そして。

 

「まだ言えない」

 

「っ……!」

 

なのはの表情が悔しそうに歪む。

 

「どうして!」

 

「言ったら、なのはは止めに行くから」

 

即答だった。

 

なのはは目を見開く。

 

さくらは静かな声で続ける。

 

「今のなのはじゃ、まだ無理」

 

「ヴィータにも勝てなかった」

 

その言葉が胸へ刺さる。

 

なのはは俯いた。

 

反論できない。

 

実際、負けた。

 

リングも壊した。

 

守られてばかりだった。

 

さくらは立ち上がる。

 

そして、なのはの前へ歩いてくる。

 

「悔しい?」

 

なのはは小さく頷く。

 

「……うん」

 

「なら、強くなりなさい」

 

静かな声。

 

だけど、その言葉には強い意志があった。

 

「力がないと、守りたいものも守れない」

 

なのはは顔を上げる。

 

その瞳を、さくらは真っ直ぐ見返した。

 

「だから、次は負けないくらい強くなればいい」

 

なのはは少しだけ黙り込み――。

 

やがて、小さく頷いた。

 

「……うん」

 

その返事を聞くと、さくらは再び机へ戻る。

 

まるで話は終わりだと言うように。

 

なのはは、そんな姉の背中を見つめる。

 

近いはずなのに。

 

今は、とても遠く感じた。

 

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