魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第四話 静かな波紋

放課後。

海鳴市の空は、柔らかな夕焼けに染まり始めていた。

 

「なのは、またぼーっとしてたでしょ」

 

アリサが呆れたように言う。

 

「そ、そんなことないよ!」

 

慌てて否定するが、説得力はない。

すずかは苦笑しながら見守っていた。

 

「最近ちょっと疲れてるのかな?」

 

「う、うん……ちょっとね」

 

なのはは曖昧に笑った。

――魔法。

――ジュエルシード。

その言葉はまだ誰にも言えていない。

 

 

 

 

その頃。

同じ学校の廊下。

高町さくらは、静かに窓の外を見ていた。

同い年の少女。

なのはの姉ではあるが、同じ教室にいる存在。

 

「……また、始まってる」

 

誰にも聞こえない声で呟く。

その視線の先には、夕空。

だが彼女が見ているのは空ではなかった。

その“向こう側”だ。

 

「……なのは」

 

小さく名前を落とす。

その声には、妹を気遣う姉の響きと、それ以上の重さが混ざっていた。

 

 

 

 

放課後の帰り道。

なのはは一人で丘の方向を気にしていた。

 

「今日も……出るのかな」

 

胸元のレイジングハートは、まだ沈黙している。

 

『Stand by ready』

 

その短い声が、少しだけ心を落ち着かせる。

その時。

 

「なのは」

 

後ろから声。

振り向くと、さくらが立っていた。

同じ制服。

同じ学校。

同じ帰り道。

だが、どこか雰囲気が違う。

 

「お姉ちゃん……」

 

「帰り、寄り道する?」

 

何気ない言葉。

だが、なのはは少し戸惑った。

 

「今日はちょっと……用事が」

 

「また“用事”」

 

さくらは小さくため息をつく。

それ以上は追及しない。

ただ、少しだけなのはを見つめた。

 

「無理しないで」

 

その一言だけは、妙に重く響いた。

 

「……うん」

 

なのはは小さく頷く。

さくらはそれ以上何も言わず、歩き出す。

同じ方向。

だが途中で、自然に分かれる。

まるで、見えない境界線があるかのように。

 

 

 

 

その夜。

丘。

ユーノと合流したなのはは、緊張した面持ちで立っていた。

 

「この辺りで反応があるはずなんだ」

 

ユーノの声は静かだが、警戒は強い。

 

「うん……」

 

なのはは小さく頷く。

風が止まる。

空気が変わる。

 

「……来る」

 

その瞬間。

地面が軋んだ。

 

ゴゴゴゴ……

 

黒い光。

 

地面から“歪んだ影”が立ち上がる。

獣のような形。

だが明確な意思はない。

ただ暴走する願いの残滓。

 

「ジュエルシードの暴走体……!」

 

ユーノが叫ぶ。

なのはは息を飲む。

怖い。

でも――。

 

「わたしが止める……!」

 

レイジングハートを握る。

 

『Sealing mode set up』

 

光が集まり、杖へと変わる。

その時だった。

丘の外れ。

少し離れた場所で。

さくらはその光景を“見ていた”。

ただし、隠れてではない。

偶然そこにいた、という形。

彼女は目を細める。

 

「……やっぱり」

 

小さく呟く。

だがその声は、驚きではない。

“確認”だった。

そして。

なのはが一歩踏み出した瞬間。

暴走体が動き出す。

戦いが、始まる。

まだ誰も知らない。

この戦いが“始まりの一つ”に過ぎないことを。

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