魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第7話 騎士と主

夜。

 

八神家。

 

夕食の匂いが、部屋の中へ広がっていた。

 

「はやてちゃん、スープできたよー!」

 

シャマルがキッチンから声を上げる。

 

「おおきにー!」

 

車椅子へ座ったはやてが笑顔で返した。

 

その隣では、ヴィータが待ちきれない様子でテーブルを叩いている。

 

「まだかー?」

 

「ヴィータ、行儀が悪いぞ」

 

シグナムが呆れたように言う。

 

ザフィーラは静かに床へ伏せていた。

 

傍から見れば、普通の家族。

 

だが、その実態は違う。

 

闇の書。

 

蒐集。

 

戦い。

 

彼らは、静かに終わりへ向かって進んでいた。

 

---

 

夕食後。

 

はやては窓際で、静かに夜空を眺めていた。

 

車椅子の上。

 

足には感覚がない。

 

けれど、今はもう慣れてしまっている。

 

その時だった。

 

「どうした、はやて」

 

シグナムが近づいてくる。

 

その右手には、赤い宝石を宿した嵐のマーレリングが静かに輝いていた。

 

はやては少し笑う。

 

「んー、ちょっと考え事」

 

「……あの子のことや」

 

“あの子”。

 

その言葉だけで、シグナムには分かった。

 

高町さくら。

 

図書館で出会った少女。

 

はやてが届かなかった本を、何気なく取ってくれた少女。

 

そして――。

 

『随分と嫌な呪いを抱えているのね……』

 

その言葉を、シグナムは忘れていなかった。

 

ヴィータもまた、ソファから顔を上げる。

 

右手には、紫の宝石を宿した雲のマーレリング。

 

「あいつ、最初から気付いてやがったよな」

 

闇の書の侵食。

 

誰にも分からなかった異変。

 

それを、さくらは一目ではやての足から見抜いた。

 

普通ではない。

 

だからこそ、警戒した。

 

だが。

 

シグナムは静かに言う。

 

「……敵意はなかった」

 

「むしろ、あれは」

 

「助けようとしていた目だった」

 

シャマルも小さく頷く。

 

右手の晴のマーレリングが、柔らかな光を反射する。

 

「ええ……」

 

「だから、リングも渡してくれたんでしょうね」

 

はやては、自分の指にはめられた大空のマーレリングを見つめる。

 

羽の装飾を持つ、特別なリング。

 

淡く輝く宝石。

 

その力は、今も確かにはやてを支えていた。

 

「あの子、不思議な子やなぁ」

 

「敵みたいな立場なのに、助けてくれる」

 

ヴィータが鼻を鳴らす。

 

「よく分かんねー奴だよな」

 

だが。

 

その表情は悪くない。

 

実際、リングの力は大きかった。

 

特に、はやてへの影響。

 

以前よりも侵食の進行が明らかに遅くなっていた。

 

シグナムは静かに拳を握る。

 

「……大空の調和」

 

「闇の書の侵食を抑えているのだろう」

 

シャマルも真剣な顔になる。

 

「完全ではありません」

 

「ですが、確実に効果はあります」

 

それだけでも奇跡だった。

 

今まで、どんな手段でも止まらなかった侵食。

 

それを抑えている。

 

はやては、小さくリングを撫でる。

 

「さくらちゃん、なんでここまでしてくれるんやろ」

 

その問いに、誰も答えられなかった。

 

ただ、一つだけ分かる。

 

彼女は、自分たちを利用している訳ではない。

 

むしろ――。

 

助けようとしている。

 

ヴィータが小さく呟く。

 

「……でもよ」

 

「このままって訳にもいかねぇ」

 

空気が少し変わる。

 

蒐集は続いている。

 

闇の書が完成しなければ、はやては救えない。

 

そのためには、リンカーコアの蒐集が必要だった。

 

シグナムは静かに立ち上がる。

 

「次の蒐集対象は決まっている」

 

フェイト・テスタロッサ。

 

そして――。

 

高町なのは。

 

ヴィータが不敵に笑う。

 

「今度は、ちゃんと勝ち切ってやる」

 

その時。

 

はやてが少し困ったように笑った。

 

「……ほどほどにな?」

 

「なのはちゃんら、悪い子やないんやし」

 

ヴィータは視線を逸らす。

 

「わ、分かってるって!」

 

その反応に、はやては小さく笑った。

 

だが。

 

その笑顔の裏で。

 

胸の奥に、不安が残っていた。

 

この戦いの先に、本当に救いはあるのか。

 

その答えを、まだ誰も知らない。

 

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