魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第8話 蒐集者たち

夜の街。

 

人気のない工業地区。

 

そこでは、一人の魔導師が膝をついていた。

 

「が……ぁ……」

 

呼吸が苦しい。

 

体から力が抜けていく。

 

目の前には、赤髪の少女。

 

ヴィータ。

 

グラーフアイゼンを肩へ担ぎながら、無言で見下ろしている。

 

「リンカーコア蒐集、完了」

 

機械音声。

 

同時に、魔導師の体から光が抜けていく。

 

「あ……あぁ……」

 

完全には奪われていない。

 

だが、それでも深刻だった。

 

立ち上がることすら出来ない。

 

ヴィータは小さく舌打ちする。

 

「ちっ……量が少ねぇな」

 

その時。

 

「ヴィータ、離脱するぞ」

 

シグナムが現れる。

 

その右手には、赤い宝石を宿した嵐のマーレリング。

 

周囲には、嵐の炎が微かに揺らめいていた。

 

ヴィータもまた、雲のマーレリングを輝かせる。

 

「もうかよ?」

 

「管理局の反応が近い」

 

短い返答。

 

ヴィータは不満そうに鼻を鳴らし――。

 

二人は夜の闇へ消えていった。

 

残されたのは、倒れ伏す魔導師だけだった。

 

---

 

アースラ。

 

医務室モニターには、被害報告が次々と映し出されていた。

 

「被害者、また増えてる……」

 

エイミィが険しい顔をする。

 

クロノも表情を曇らせた。

 

「リンカーコアへの損傷が深刻だ」

 

「症状の重い者は、魔導能力そのものを失っている」

 

リンディも静かに目を閉じる。

 

魔導師として生きられなくなる。

 

それは、この世界では人生を奪われるに等しかった。

 

なのははモニターを見つめながら、拳を握る。

 

「こんなの……」

 

フェイトもまた、悔しそうに唇を噛む。

 

「どうして、ここまで……」

 

だが。

 

その時。

 

《Master》

 

機械音声。

 

なのはとフェイトが同時に振り返る。

 

そこには――。

 

整備を終えたレイジングハートとバルディッシュがあった。

 

エイミィが笑う。

 

「お待たせ!」

 

「二人のデバイス、改修完了だよ!」

 

なのはの顔が明るくなる。

 

「レイジングハート!」

 

《Stand by ready》

 

赤い宝玉が輝く。

 

以前よりも、内部出力が安定している。

 

フェイトもバルディッシュを受け取る。

 

《Yes, sir》

 

低い電子音。

 

そのグリップ部分には、新たな機構が追加されていた。

 

クロノが説明する。

 

「カートリッジシステム」

 

「守護騎士たちの戦闘データを参考に、急遽搭載した」

 

なのはが目を輝かせる。

 

「これが……」

 

エイミィが頷く。

 

「瞬間的に魔力出力を跳ね上げるシステム」

 

「ただし、使い過ぎるとデバイスにも身体にも負担が来るから注意ね」

 

フェイトは静かにバルディッシュを見る。

 

その時。

 

ふと、ポケットの中の黒い匣へ触れた。

 

バッテリー匣。

 

“黒狐”。

 

まだ試してはいない。

 

だが、確かな力を感じる。

 

なのはもまた、新しい嵐のリングを見つめる。

 

以前壊した物とは違う。

 

もっと強い力。

 

今度こそ。

 

負けたくない。

 

その時だった。

 

警報が鳴り響く。

 

《Alert》

 

エイミィが即座にモニターを開く。

 

「魔力反応!」

 

「市街地A-17区画!」

 

映し出されるのは、二つの反応。

 

クロノの目が鋭くなる。

 

「またか……!」

 

リンディが即座に指示を飛ばす。

 

「なのはさん、フェイトさん!」

 

「はい!」

 

「現場へ急行してください!」

 

なのはとフェイトは同時に頷いた。

 

「レイジングハート!」

 

《Set up》

 

「バルディッシュ!」

 

《Get set》

 

光が弾ける。

 

新たなバリアジャケット。

 

そして。

 

腰部には、新設されたカートリッジホルダー。

 

なのはは真っ直ぐ前を見る。

 

「今度は――」

 

フェイトも静かに呟く。

 

「止める」

 

二人は、光となってアースラから飛び出した。

 

その先で待つのは――。

 

蒐集者たちとの、再戦だった。

 

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