空を、二つの光が駆ける。
桃色の光。
金色の雷光。
なのはとフェイトは、高速飛行で現場へ向かっていた。
「反応、もう近い!」
フェイトが前方を見る。
なのはも魔力探査を広げた。
そして――。
感じる。
荒々しい魔力。
赤熱するような炎。
「いた!」
二人が飛び込んだ先。
そこには、倒れた魔導師。
そして、その前へ立つヴィータの姿があった。
「……ちっ」
ヴィータが舌打ちする。
「また来やがったか」
グラーフアイゼンを肩へ担ぐ。
右手では、雲のマーレリングが輝いていた。
紫色の炎が、周囲へ散る。
なのはは即座に倒れている魔導師の前へ降り立つ。
「大丈夫ですか!?」
「う……」
まだ息はある。
だが、リンカーコアへの損傷は深刻だった。
フェイトが静かに前へ出る。
「ヴィータ」
「あ?」
「もうやめて」
真っ直ぐな声。
だが、ヴィータは鼻で笑った。
「やめられる訳ねぇだろ」
「こっちにも事情がある」
その瞬間。
上空から炎が走る。
「っ!」
フェイトが即座に回避。
紅蓮の斬撃が夜空を裂いた。
シグナム。
レヴァンティンを肩へ担ぎながら降下してくる。
右手では、赤い嵐のマーレリングが輝いていた。
「来るぞ、ヴィータ」
「ああ!」
瞬間。
二人の姿が消えた。
速い。
なのはが反応した時には、ヴィータが目の前へ迫っていた。
「おらぁ!!」
グラーフアイゼンが振り下ろされる。
なのははレイジングハートで受け止める。
激突。
轟音。
「くっ……!」
重い。
以前よりも、さらに。
ヴィータが笑う。
「カートリッジ積んだくらいで追いつけると思うなよ!」
《Explosion》
グラーフアイゼンへ薬莢が装填される。
次の瞬間。
衝撃が爆発した。
「きゃあっ!!」
なのはが吹き飛ばされる。
だが。
空中で体勢を立て直す。
「レイジングハート!」
《Cartridge Load》
カシュンッ!!
薬莢が装填される。
桃色の魔力が爆発的に膨れ上がった。
ヴィータが目を見開く。
「っ!?」
なのはが一直線に突っ込む。
「はああああっ!!」
激突。
今度は押し返した。
ヴィータが笑う。
「いいじゃねぇか!」
その頃。
上空では、フェイトとシグナムが高速戦闘を繰り広げていた。
剣撃。
雷光。
火花。
一瞬で数十の斬撃が交差する。
「ハァッ!!」
フェイトの鎌が振り抜かれる。
だが、シグナムは最小動作で回避。
即座に反撃。
「紫電一閃」
紅い斬撃。
フェイトがギリギリで防ぐ。
重い。
以前よりも明らかに。
その理由は分かっていた。
嵐の炎。
そして――。
《Explosion》
レヴァンティンへカートリッジ装填。
爆発的に上がる斬撃速度。
フェイトの瞳が鋭くなる。
「バルディッシュ!」
《Cartridge Load》
金色の雷光が炸裂した。
フェイトが一気に加速。
シグナムの横を駆け抜ける。
「っ!」
シグナムが振り返る。
その瞬間。
フェイトの蹴りが直撃した。
轟音。
シグナムが吹き飛ぶ。
「なるほど……」
空中で体勢を立て直しながら、シグナムが呟く。
「確かに強くなっている」
フェイトは静かに構える。
「今度は、負けない」
その言葉に。
シグナムは、わずかに笑った。
「ならば――試してみろ」
嵐の炎が爆ぜる。
戦場が、さらに熱を帯びていく。
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一方。
現場へ向かっていたクロノたちは、突如足を止めていた。
「……これは」
クロノの目が鋭くなる。
周囲一帯。
白い霧が広がっていた。
視界が効かない。
魔力探査も乱される。
そして。
霧の中から、一人の少女が姿を現す。
「ここから先は通さない」
高町さくら。
霧のマーレリングが、静かに輝いていた。
リンディが静かに目を細める。
「やはり、あなたが……」
クロノが即座にデュランダルを構える。
「どけ」
「断る」
即答だった。
さくらは静かに続ける。
「なのはとフェイトだけで十分」
「これ以上の増援はいらない」
クロノの眉が寄る。
「正気か?」
「今、何人もの魔導師が被害を受けているんだぞ!」
「知ってる」
「なら!」
その瞬間。
霧が爆発的に広がった。
「っ!?」
クロノが即座に防御を展開する。
だが、次の瞬間には。
さくらの姿が消えていた。
「後ろ」
「!?」
クロノが振り返る。
だが、その時には既に。
首筋へ、さくらの指先が添えられていた。
冷たい。
圧倒的な技量差。
クロノの額へ汗が流れる。
「私は、あの子たちを信じてる」
静かな声。
「だから、邪魔はさせない」
リンディが静かに前へ出る。
「さくらさん」
「あなたは、あの子たちを守ろうとしているのですか?」
その問いに。
さくらは少しだけ目を閉じた。
そして。
「……さぁね」
曖昧な返答。
だが、その表情はどこか優しかった。
クロノが悔しそうに拳を握る。
今ここで戦えば、時間を取られる。
その間にも、なのはたちの戦闘は進む。
それを理解していた。
さくらは霧の中へ後退する。
「今夜は、あなたたちの出番じゃない」
その言葉を最後に――。
霧が完全に周囲を覆い尽くした。