アースラ。
ブリーフィングルーム。
大型モニターには、今回の戦闘データが映し出されていた。
なのはとフェイト。
そして、シグナムとヴィータ。
四人の戦闘記録。
クロノは腕を組みながら、険しい顔をしていた。
「戦闘能力が上がっている……」
特に問題なのは、守護騎士たちの強化だった。
カートリッジシステム。
そして――。
マーレリング。
リンディも静かに映像を見る。
シグナムの赤い炎。
ヴィータの増殖する鉄球。
どちらも、通常のベルカ式では説明がつかない。
エイミィが端末を操作しながら口を開く。
「やっぱり、あのリングの影響が大きいと思う」
「解析しても、既存の魔法体系と一致しないんだよね」
クロノが小さく息を吐く。
「問題は、高町さくらの真意だ」
静寂。
ブリーフィングルームの空気が重くなる。
なのはが静かに俯いた。
フェイトもまた、難しい表情を浮かべる。
リンディが静かに言う。
「守護騎士たちへリングを渡しながら、なのはさんやフェイトさんにも力を与えている……」
「その行動に、一貫した敵意は感じません」
「ですが――」
クロノが続ける。
「管理局の妨害をしているのも事実だ」
今回の戦闘でもそうだった。
さくらは結界の外でクロノたちを足止めし、なのはとフェイトだけを戦場へ向かわせた。
敵対行動。
だが、殺意はない。
むしろ、意図的に戦場を限定しているようにすら見える。
エイミィが困ったように頭を掻く。
「もう何がしたいのか全然分かんないよ……」
なのはは小さく呟いた。
「お姉ちゃん……」
フェイトも静かに言う。
「私、“黒狐”を渡された時に聞いたの」
「どうして私にこんな力をくれるのかって」
クロノが視線を向ける。
フェイトは小さく首を振った。
「でも、答えてくれなかった」
「ただ、“必要になる”って……」
誰にも分からない。
さくらが何を考えているのか。
なぜ守護騎士たちへリングを渡したのか。
なぜ管理局を妨害するのか。
そして、なぜなのはたちへも力を与えるのか。
その真意は、誰にも見えていなかった。
リンディが静かに目を閉じる。
「少なくとも、今は警戒を続けるしかありませんね……」
その時だった。
『――みんな、聞こえる!?』
突然、通信モニターへユーノの顔が映し出された。
少し興奮した様子だった。
クロノが振り返る。
「ユーノ?」
『無限図書館で調べてたんだ!』
『そしたら、今回の事件に似た記録を見つけた!』
その言葉に、全員の空気が変わる。
ユーノは急いでデータを転送する。
モニターへ、古い資料が映し出された。
一冊の古文書。
そこへ記されていた名称を見て――。
クロノの目が見開かれた。
「……闇の書」
なのはが呟く。
「闇の……書?」
ユーノが通信越しに説明する。
『正式名称、“闇の書事件”』
『古代ベルカ時代に存在したロストロギアだよ』
『蒐集したリンカーコアを利用して成長する危険な魔導書なんだ』
フェイトの表情が強張る。
「蒐集……」
今、守護騎士たちが行っている行為。
全て繋がる。
ユーノはさらに続けた。
『しかも、この記録に出てくる特徴が一致してる』
『ベルカ式騎士』
『リンカーコア蒐集』
『そして、主を守る四人の守護騎士』
クロノが低く呟く。
「間違いない……」
「奴らは、“闇の書の守護騎士”だ」
部屋へ緊張が走る。
だが。
なのはだけは、静かに拳を握っていた。
はやての笑顔が浮かぶ。
ヴィータの不器用な優しさ。
シグナムの騎士としての誇り。
本当に。
あの人たちが、ただの悪なのか。
なのはには、どうしてもそう思えなかった。