魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第六話 衝突の終着点

森には、戦いの痕跡だけが残っていた。

 

折れた枝、えぐれた地面、歪んだ空気。

 

なのはは膝をつき、荒い呼吸を繰り返している。

 

「はぁ……っ、はぁ……」

 

レイジングハートを握る手が震えていた。

 

『Warning』

 

ユーノが叫ぶ。

 

「なのは、もう無理だ!」

 

「でも……まだ……!」

 

その視線の先。

 

金色の少女――フェイトは、ただ静かに立っていた。

 

乱れはない。

 

呼吸も揺らがない。

 

「……終わり」

 

短い声。

 

次の瞬間、雷光が収束する。

 

ドンッ!!

 

「きゃあっ!」

 

なのはのバリアが砕ける。

 

衝撃が体を貫き、空中へと弾き飛ばされた。

 

「なのは!」

 

ユーノの叫びが森に響く。

 

フェイトは追撃しない。

 

ただ、空中へ吹き飛んだなのはを見上げている。

 

 

その少し離れた場所。

 

森の外縁。

 

高町さくらは、その戦いを“ずっと見ていた”。

 

最初から。

 

ずっと。

 

「……やっぱり、ここまで来たか」

 

小さく呟く。

 

さくらは踏み込まない。

 

踏み込めない。

 

なのはの物語に、自分が入るべきではないと理解している。

 

それは“守る側”としての距離だった。

 

「まだ……大丈夫」

 

自分に言い聞かせるように。

 

だが――

 

その瞬間だった。

 

空気が変わる。

 

なのはの身体が、森の空へと落ちていく。

 

バリアは崩壊。

 

制御は効かない。

 

「っ……!」

 

さくらの足が、一歩だけ動いた。

 

理性が止める。

 

“入るな”

 

そう言っている。

 

これはなのはの戦いだ、と。

 

だが――

 

なのはの小さな身体が、木々の間へと落ちていくのが見えた瞬間。

 

迷いは切れた。

 

「……っ」

 

さくらは走った。

 

森へ飛び込む。

 

一瞬で距離を詰める。

 

空中。

 

落下するなのは。

 

その軌道を読む。

 

「間に合え……!」

 

腕を伸ばす。

 

風を切る音。

 

そして――

 

「っ、なのは!」

 

衝撃。

 

落ちてきたなのはの身体を、さくらがしっかりと抱き止めた。

 

地面すれすれで支える形。

 

二人はそのまま、木々の間に着地する。

 

「……っ、はぁ……」

 

さくらが息を吐く。

 

腕の中のなのはは意識が朦朧としている。

 

「さ……くら……ちゃん……?」

 

「喋らない」

 

短く言う。

 

なのはの身体を確認し、深刻な損傷がないことを確かめる。

 

少しだけ、表情が緩む。

 

「……無茶しすぎ」

 

その言葉は、怒りではなかった。

 

完全な安堵でもない。

 

それでも、確かに“守れた”という実感がそこにあった。

 

森の奥では、金色の魔力がまだ残っている。

 

フェイトは動かない。

 

ただ一瞬だけ、さくらの方へ視線を向けていた。

 

しかし干渉はしない。

 

静かに、空へと消えていく。

 

戦いは終わった。

 

だが、物語はまだ始まったばかりだった。

 

さくらは腕の中のなのはを見下ろす。

 

「……もう、戻れないかもしれないね」

 

それは誰にも届かない独り言だった。

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