魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第六話 わかりあえない気持ちなの?

 完敗だった。

 

 あの日の戦い。

 

 フェイトの速さ。

 

 強さ。

 

 そして、最後まで届かなかった言葉。

 

 なのはは、ずっとそのことを考えていた。

 

「なのはー?」

 

「……へ?」

 

 教室。

 

 アリサの声で、なのはは我に返った。

 

「聞いてんの?」

 

「あ、ご、ごめん……」

 

 またぼんやりしていた。

 

 最近ずっとそうだ。

 

 アリサが眉をひそめる。

 

「アンタ最近ずっと変よ」

 

「……」

 

「何かあるなら言いなさいよ」

 

「えっと……」

 

 言えない。

 

 魔法のことも。

 

 ジュエルシードのことも。

 

 フェイトのことも。

 

 なのはが言葉を濁した瞬間。

 

 アリサが机を叩いた。

 

「またそれ!?」

 

 教室が静まり返る。

 

「ご、ごめん……」

 

「謝ってほしいわけじゃない!」

 

 アリサは立ち上がる。

 

「なのはのバカ!」

 

 そのまま教室を出て行ってしまった。

 

「アリサちゃん!」

 

 すずかが慌てて追い掛ける。

 

 残されたなのはは、小さく俯いた。

 

 廊下。

 

 すずかがアリサへ追いつく。

 

「アリサちゃん、あんまり怒っちゃ……」

 

「怒るわよ!」

 

 アリサは振り返る。

 

「だって、絶対困ってるじゃない!」

 

「……うん」

 

「なのに、何も言ってくれない!」

 

 悔しそうだった。

 

「どんな小さいことでもいいから、力になりたいのよ」

 

 声が少し震える。

 

「何も出来なくても、一緒に悩むくらいしたいじゃない……」

 

 すずかは、そんなアリサを見て微笑んだ。

 

「私も同じだよ」

 

「すずか……」

 

 二人は、ふと昔を思い出す。

 

 まだ三人が出会う前。

 

 アリサは、わがままで自信家だった。

 

 そして。

 

 少し意地悪だった。

 

 すずかは気弱で、大切なヘアバンドを取られても何も言えなかった。

 

 そんな二人の間へ。

 

 小さな女の子が割って入った。

 

 高町なのは。

 

 あの時。

 

 なのはは、アリサの頬を叩いた。

 

『痛い?』

 

 真っ直ぐな瞳。

 

『でも、大切なものを取られちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ』

 

 それが。

 

 三人の始まりだった。

 

「……懐かしいね」

 

 すずかが小さく笑う。

 

 アリサは、ふいっと顔を逸らした。

 

「……だから余計腹立つのよ」

 

「え?」

 

「親友が困ってるのに、何も出来ない自分に」

 

 すずかは、優しく目を細める。

 

「なのはちゃん、きっと戻ってくるよ」

 

「……待つわよ」

 

 アリサは小さく呟いた。

 

「いつものなのはに戻るまで」

 

 放課後。

 

「じゃ、バイオリンあるから」

 

「うん」

 

 並んで帰っていく二人。

 

 なのはは、その背中を見送る。

 

 アリサは最後まで目を合わせてくれなかった。

 

 すずかは、精一杯笑ってくれていた。

 

 でも。

 

 その優しさが、逆に胸へ刺さる。

 

「……さみしいな」

 

 小さな呟き。

 

 夕暮れの風が吹き抜けた。

 

 自宅。

 

「たいやきだよ、ユーノくん」

 

『ありがとうございます』

 

 二人で半分こ。

 

 少しだけ、気持ちが落ち着く。

 

 だが。

 

『探索、行きますか?』

 

「……うん」

 

 なのはは立ち上がった。

 

 一方。

 

 フェイト達の部屋。

 

 アルフはドッグフードを美味しそうに食べ終えると、フェイトの様子を見に行った。

 

「フェイトー?」

 

 部屋の中。

 

 フェイトはベッドへ横になっていた。

 

 用意された食事には、ほとんど手を付けていない。

 

「また食べてないのかい」

 

「……大丈夫」

 

 フェイトは小さく笑う。

 

「私、強いから」

 

 その笑顔が、無理をしていることくらい、アルフには分かっていた。

 

「母さんを待たせたくないの」

 

 フェイトは静かに立ち上がる。

 

「行こう、アルフ」

 

 金色の光が、夜へ溶けていった。

 

 町中。

 

 なのはとユーノは探索を続けていた。

 

『こちらは反応なしです』

 

「そっか……」

 

 一度別れ、なのはは家へ戻る。

 

 ふと。

 

 携帯電話を見る。

 

「……あ」

 

 いつもなら。

 

 この時間には、アリサとすずかからメールが来ている。

 

 でも。

 

 今日は何もない。

 

 胸が、少しだけ締め付けられる。

 

「……」

 

 なのはは走り出した。

 

 その瞬間。

 

 周囲へ巨大な魔力流が発生する。

 

『ジュエルシード!?』

 

 フェイトとアルフ。

 

 二人が、強制発動を仕掛けたのだった。

 

 結界展開。

 

 ユーノが即座に周囲を隔離する。

 

 なのはは戦闘態勢を取る。

 

 そして。

 

 遠くのビル屋上。

 

 さくらが静かに見下ろしていた。

 

「……また始まった」

 

 暴走するジュエルシード。

 

 だが。

 

 その瞬間。

 

 桜色と金色、二つの魔法陣が同時に展開された。

 

「封印!」

 

「Sealing.」

 

 同時発動。

 

 暴走は一瞬で停止する。

 

 静まり返る空間。

 

 なのはは、ふと空を見上げた。

 

 アリサ達とのことを思い出す。

 

 最初は、わかりあえなかった。

 

 でも。

 

 ちゃんと話したから、今がある。

 

 今日、アリサを怒らせたのも。

 

 結局、自分が伝えなかったからだ。

 

 その時。

 

 フェイトとアルフが現れる。

 

 なのはは、フェイトを見る。

 

 そして。

 

「わたし、高町なのは」

 

 静かに自己紹介した。

 

 フェイトは答えない。

 

 ただ。

 

 光鎌を静かに振る。

 

 なのはは、その瞳を見る。

 

 綺麗なのに。

 

 どこまでも暗い。

 

「……どうして、そんな淋しい目をしてるの?」

 

 フェイトの眉が、僅かに動いた。

 

 一方。

 

 バイオリン教室帰りの車内。

 

 すずかが携帯を開く。

 

「メール、送ってもいいかな」

 

 アリサが少しだけ視線を逸らす。

 

 心が揺れている。

 

 けれど。

 

「……勝手にしなさい」

 

 ぶっきらぼうな返事。

 

 すずかは微笑み、メールを打つ。

 

『アリサちゃん、そんなに怒ってないよ』

 

『心配しなくて大丈夫』

 

『私たちは、いつでもなのはちゃんの味方だからね』

 

 送信。

 

 その頃。

 

 市街地のビル群では、激しい空中戦が始まっていた。

 

「ディバインシューター!」

 

 桜色の魔力弾。

 

 フェイトが高速機動で回避する。

 

「フラッシュムーブ!」

 

 なのはも高速移動で追従。

 

 互角。

 

 以前より、確実に戦えている。

 

 至近距離。

 

 二人の視線が交差する。

 

「フェイトちゃん!」

 

「……」

 

「言葉だけじゃ変わらないって言ってたけど!」

 

 魔力光が交差する。

 

「話さないと、伝わらないこともあるよ!」

 

 なのはは叫ぶ。

 

「わたしは、誰かが傷付くの嫌だからジュエルシード集めてる!」

 

 フェイトの瞳が揺れた。

 

 一瞬。

 

 何かを言いかける。

 

 だが。

 

「フェイト!」

 

 アルフが叫ぶ。

 

「最優先はジュエルシードだ!」

 

「……っ」

 

 フェイトは唇を噛む。

 

 そのままジュエルシードへ飛ぶ。

 

「待って!」

 

 なのはも追う。

 

 そして。

 

 二人の杖が、同時にジュエルシードへ触れた。

 

 瞬間。

 

 バキッ――!!

 

「え……?」

 

 レイジングハート。

 

 そしてバルディッシュ。

 

 両方へ亀裂が走る。

 

『Damage.』

 

『System error.』

 

 まばゆい閃光。

 

 轟音。

 

 爆発的な魔力が、結界内を飲み込んでいく。

 

「なのはっ!!」

 

 遠くで。

 

 さくらが、初めて焦った声を上げた。

 

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