魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第七話 三人目の魔法使いなの?

 激突。

 

 レイジングハートとバルディッシュ。

 

 二つのデバイスがジュエルシードへ同時に触れた瞬間――。

 

 凄まじい閃光が弾けた。

 

「きゃあっ!?」

 

「っ……!」

 

 なのはとフェイトの身体が吹き飛ばされる。

 

 空間全体を揺らす衝撃。

 

 レイジングハートの表面へ亀裂が走り、バルディッシュにも深い損傷が刻まれる。

 

『Damage confirmed.』

 

『System error.』

 

 ジュエルシードはなお、不気味な鼓動を続けていた。

 

 脈打つたびに、周囲の空間が歪む。

 

 それを見たさくらの表情が、初めて険しくなる。

 

「……まずい」

 

 さくらはポケットからリングを取り出した。

 

 紫色の宝石。

 

 雲のリング。

 

 さらに、雲の紋章が刻まれた匣を取り出す。

 

 薬指へリングを装着。

 

 宝石部から、紫色の死ぬ気の炎が灯る。

 

 その炎を匣へ注ぎ込む。

 

「開匣」

 

 ガコン――。

 

 匣が開き、飛び出したのは。

 

 紫色の炎を纏うハリネズミ。

 

 雲ハリネズミだった。

 

「囲め」

 

 ハリネズミが一気に増殖する。

 

 一体が二体。

 

 二体が四体。

 

 さらに八体。

 

 雲属性の特性――増殖。

 

 無数のハリネズミが球状の壁を形成し、ジュエルシードを包み込む。

 

 だが。

 

 次の瞬間。

 

 ジュエルシードから放たれた波動が空間を震わせた。

 

 バギィッ!!

 

 球体が内側から弾け飛ぶ。

 

「……っ!」

 

 さくらが眉をひそめる。

 

「予想以上……」

 

 一方。

 

 フェイトは損傷したバルディッシュを待機状態へ戻していた。

 

『Master, dangerous.』

 

「大丈夫」

 

 フェイトは前へ出る。

 

「フェイト!?」

 

 アルフが叫ぶ。

 

 だが。

 

 フェイトは素手のまま、ジュエルシードへ手を伸ばした。

 

 封印術式展開。

 

 眩い金色の魔力が、直接ジュエルシードを押さえ込む。

 

「くっ……!」

 

 激しい魔力反発。

 

 フェイトの手のひらが裂ける。

 

 血が飛ぶ。

 

「やめろフェイト!!」

 

 アルフの叫び。

 

 それでも。

 

 フェイトは止まらない。

 

「封印……!」

 

 膨大な魔力消費。

 

 意識が削られていく。

 

 そして。

 

 ついに。

 

 ジュエルシードが静かに光を失った。

 

 封印成功。

 

 だが。

 

「フェイト!!」

 

 そのままフェイトの身体が崩れ落ちる。

 

 アルフが慌てて抱き留めた。

 

 フェイトの両手は傷だらけだった。

 

 アルフは怒りの視線をなのは達へ向ける。

 

「……覚えときな」

 

 低い声。

 

 そのまま転移魔法で去っていった。

 

 その夜。

 

 高町家。

 

 机の上に置かれたレイジングハートを見つめながら、ユーノは考え込んでいた。

 

『あの衝撃……』

 

 ジュエルシードそのものが引き起こした異常反応。

 

 危険性は、想定以上かもしれない。

 

 なのはは、そっとレイジングハートへ触れる。

 

「ごめんね……」

 

 傷付いたデバイス。

 

 自分を守ってくれた、大切な杖。

 

『No problem.』

 

 小さな機械音声。

 

 なのはは少しだけ微笑んだ。

 

 一方。

 

 フェイト達の部屋。

 

 アルフがフェイトの治療をしていた。

 

「ったく……無茶しすぎなんだよ」

 

「ごめんね」

 

 フェイトは苦笑する。

 

「明日は母さんに報告へ戻る日だから、早く治さないと」

 

 その言葉に。

 

 アルフの顔が曇る。

 

 プレシア。

 

 フェイトの母。

 

 アルフは、どうしてもあの女性を好きになれなかった。

 

 そんなアルフを見て、フェイトは優しく笑う。

 

「今回は四つも集められたから、大丈夫だよ」

 

「……」

 

 アルフは無理矢理笑顔を作った。

 

「そ、そうだよな!」

 

 フェイトは静かに目を閉じる。

 

「母さん……」

 

 その声は、とても小さかった。

 

 翌朝。

 

 高町家道場。

 

 早朝ジョギングを終えた美由希が戻ると、そこにはなのはがいた。

 

「なのは?」

 

 道場の隅。

 

 なのはは座り込み、稽古風景をぼんやり見ていた。

 

『なのは』

 

 ユーノから念話。

 

『昨日のこと、まだ考えてるんですか?』

 

「……うん」

 

 なのはは小さく答える。

 

「フェイトちゃんのこと、気になるの」

 

『え?』

 

「強いのに、なんだかすごく危うくて……」

 

 あの瞳。

 

 優しさ。

 

 そして悲しみ。

 

「どうしてジュエルシードを集めてるのか、知りたい」

 

 なのはは真っ直ぐ前を見る。

 

「ちゃんと、お話したい」

 

 一方。

 

 フェイトとアルフは、手土産のお菓子を持って転移していた。

 

 向かう先は――母のもと。

 

 その頃。

 

 次元空間。

 

 巨大な艦船が航行していた。

 

 時空管理局巡航艦アースラ。

 

 ブリッジ内では、先日の異常反応データが表示されている。

 

「現地到着まであと少しです」

 

「急いでくれ」

 

 艦長が静かに頷く。

 

 なのはとフェイト。

 

 二人の衝突。

 

 そして、あの異常閃光。

 

 管理局は、事態究明へ動き始めていた。

 

 その頃。

 

 時の庭園。

 

 バシィッ!!

 

 鞭の音が響く。

 

「っぁ……!!」

 

 フェイトの悲鳴。

 

 プレシア・テスタロッサ。

 

 フェイトの母が、冷たい目で娘を見下ろしていた。

 

「こんなに待たせておいて、たった四つ?」

 

 冷酷な声。

 

「笑顔で迎えてもらえると思ったの?」

 

 再び鞭が振るわれる。

 

 フェイトの身体へ赤い傷が増える。

 

「邪魔するものがあるなら潰しなさい」

 

 プレシアは吐き捨てる。

 

「どんなことをしても」

 

 そのまま去っていく。

 

 床へ倒れ込むフェイト。

 

 アルフが駆け寄った。

 

「フェイト!」

 

「大丈夫……」

 

「どこがだよ!!」

 

 アルフは怒る。

 

「なんであんな奴――!」

 

「アルフ」

 

 フェイトは微笑む。

 

「母さんは、私のために叱ってくれてるの」

 

「違う!!」

 

 アルフが叫ぶ。

 

 だが。

 

 フェイトは静かに言った。

 

「ずっと不幸で、悲しかった母さんだから……」

 

 傷だらけの身体。

 

 それでも笑う。

 

「喜ばせてあげたいの」

 

 アルフは何も言えなくなる。

 

 フェイトは立ち上がった。

 

「行こう」

 

 強い瞳。

 

「今度は、失敗しないように」

 

 昼。

 

 学校。

 

 なのはとすずかは談笑していた。

 

 だが。

 

 アリサはまだ距離を置いている。

 

 なのはは少しだけ寂しそうに笑った。

 

 夕暮れ。

 

 ビル屋上。

 

 フェイトは修復されたバルディッシュへ声を掛ける。

 

「ありがとう、バルディッシュ」

 

『Yes, sir.』

 

 ジュエルシード反応。

 

 フェイトが飛び出す。

 

 一方。

 

 なのはもユーノから修復されたレイジングハートを受け取っていた。

 

「また一緒に頑張ってくれる?」

 

『All right, my master.』

 

 なのはは笑う。

 

「うん!」

 

 発動したジュエルシードは、巨大樹木を取り込み暴走していた。

 

 無数の根が周囲へ襲い掛かる。

 

「フォトンランサー!」

 

 フェイトの魔法。

 

 だが。

 

 バリアで弾かれる。

 

「なっ!?」

 

 アルフが驚く。

 

 その時。

 

「ディバインシューター!」

 

 なのは到着。

 

 二人は自然と連携していた。

 

 フェイトが地上からアークセイバーで根を切断。

 

 その隙になのはが上空へ。

 

「ディバイン――バスター!!」

 

 桜色の砲撃。

 

 さらに。

 

「サンダースマッシャー!」

 

 金色の雷撃。

 

 二つの砲撃が重なり、ジュエルシードを完全封印した。

 

 静寂。

 

 だが。

 

 次は奪い合いだった。

 

 なのはがフェイトを見る。

 

「わたし、戦う」

 

「……」

 

「でも、話したいだけなの」

 

 真っ直ぐな瞳。

 

「もしわたしが勝って、甘ったれた子じゃないって分かったら」

 

 一歩前へ。

 

「その時は、話を聞いて」

 

 フェイトは無言。

 

 だが。

 

 再び武器を構える。

 

 戦闘開始――。

 

 その瞬間。

 

 ガキィン!!

 

「っ!?」

 

「!?」

 

 二人のデバイスが、同時に何かへ止められた。

 

 その中央。

 

 黒髪の少年が立っていた。

 

 鋭い瞳。

 

 落ち着いた雰囲気。

 

「時空管理局執務官」

 

 少年は静かに名乗る。

 

「クロノ・ハラオウンだ」

 

 そして。

 

 二人を見回した。

 

「詳しい事情を聞かせてもらおうか?」

 

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