激突寸前だった。
なのはとフェイト。
二人の魔力がぶつかり合おうとした、その瞬間。
ガキィン――!!
レイジングハートとバルディッシュが、強引に押さえ込まれる。
「!?」
「っ……!」
二人の間へ割って入っていたのは、黒髪の少年だった。
冷静な瞳。
無駄のない動き。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」
静かな声。
その言葉に。
『管理局!?』
『時空管理局!?』
ユーノとアルフが同時に反応した。
クロノは二人を見回す。
「戦闘行為を停止しろ。武装解除を要求する」
だが。
「そんなの聞くわけないだろ!」
アルフが牙を剥く。
次の瞬間。
爆発。
大量の土煙が巻き起こる。
「アルフ!」
フェイトが飛び出す。
狙いはジュエルシード。
だが。
クロノは即座に片手を向けた。
「遅い」
魔法陣展開。
射撃魔法。
蒼白い閃光が一直線に走る。
「っぁ!!」
直撃。
フェイトが空中で弾き飛ばされた。
「フェイト!!」
アルフが飛び込み、かろうじて抱き止める。
フェイトの意識が揺らぐ。
クロノはさらに第二撃を構えた。
だが。
「やめて!!」
なのはが間へ飛び込む。
クロノの前へ立ち塞がる。
「……」
一瞬の隙。
その間に、アルフはフェイトを抱え転移した。
金色の光が夜へ消える。
静寂。
残されたジュエルシードは、クロノが回収した。
戦闘終了後。
なのは、さくら、ユーノの三人は、事情聴取のため時空管理局艦船アースラへ招かれていた。
「すご……」
なのはは艦内を見回す。
近未来的な通路。
見たこともない機械。
完全に別世界だった。
『時空管理局は』
ユーノが説明する。
『いくつも存在する並行世界、その間を管理している組織なんです』
「へー……」
なのはの顔は完全に理解不能だった。
「つまり?」
『……えっと、すごく偉い組織です』
「なるほど!」
理解したような返事。
だが絶対理解していない。
さくらが横で苦笑した。
クロノが足を止める。
「ここだ」
応接室。
なのはは扉を開けて固まった。
「……和室?」
畳。
毛氈。
鹿威し。
抹茶。
羊羹。
宇宙船の中とは思えない空間だった。
「ようこそ」
微笑む女性。
アースラ艦長、リンディ・ハラオウン。
クロノの母親だった。
席へ座るなのは達。
その後。
これまでの経緯説明が始まった。
そして。
リンディとクロノから、ロストロギアについての説明が行われる。
「ロストロギアとは」
リンディが静かに語る。
「進化しすぎた文明が遺した危険な遺産です」
使い方次第では。
世界どころか次元空間すら滅ぼす。
ジュエルシードもその一つ。
「次元干渉型エネルギー結晶体」
複数同時発動。
それによって発生するのが、次元震。
さらに最悪の場合。
並行世界を巻き込む災害――次元断層。
なのはとフェイトが激突した時の閃光。
あれが次元震だった。
「えぇっ!?」
なのはが青ざめる。
「たった一つのジュエルシード、その何万分の一の暴走でも、あれだけの被害が出ます」
リンディは真剣な表情で続けた。
「悪意ある者が使えば、大惨事になりかねません」
だから。
「今後、ジュエルシード回収は時空管理局が全権を持って行います」
静かな宣言。
クロノが言葉を続ける。
「君達は元の生活へ戻るべきだ」
なのはとユーノは黙り込む。
反論は出来ない。
でも。
納得も出来なかった。
その空気を察し、リンディが優しく微笑む。
「今日はここまでにしましょう」
「一晩考えて、また明日お話しましょうね」
夕暮れ。
公園。
ベンチへ座るなのはとユーノ。
「ユーノくんって、同い年くらい?」
『たぶん』
ユーノが苦笑する。
『隠してたみたいになって、ごめんなさい』
「ううん」
なのはは笑う。
「びっくりしただけだよ」
すると。
ユーノは人間形態から、再びフェレットへ戻った。
『普段はこっちの方が便利なので』
肩へ飛び乗る。
なのはが少し笑う。
「なんか、そっちの方が落ち着くかも」
『それ複雑です』
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「ご飯食べて、それから考えよう」
『はい』
一方。
フェイトはクロノの攻撃による傷へ苦しんでいた。
アルフは、そんな姿を見ていられなかった。
「もうやめようよ!」
叫ぶ。
「ジュエルシードなんか放り出して逃げよう!」
「アルフ……」
「なんであんな奴の言うこと聞くんだよ!!」
涙声だった。
「フェイトの悲しみは、あたしの悲しみなんだよ……!」
フェイトは優しく微笑む。
「ありがとう」
「違う!!」
アルフが崩れる。
「あたしは、フェイトに笑っててほしいだけなんだ……」
泣き崩れるアルフ。
フェイトはその頭を撫でた。
「母さんのためだけじゃない」
静かな声。
「きっと、自分のためにも……途中で投げ出せないの」
アルフは何も言えなくなる。
一方。
アースラ。
ユーノはリンディ達へ協力を申し出ていた。
『なのはの魔力は強力です』
『きっと役に立ちます』
リンディは少し驚いた顔をする。
一方的な感情論ではない。
ちゃんと考えた上での提案。
「いいでしょう」
リンディは頷く。
「ただし条件があります」
管理局の指示へ従うこと。
そして。
一時的に管理局預かりとなること。
ユーノは真剣に頭を下げた。
夜。
高町家。
なのはは桃子へ話をしていた。
魔法のことは言えない。
でも。
言える範囲で、全部話した。
「大切な友達と始めたことなの」
なのはは真っ直ぐ母を見る。
「最後までやり遂げたい」
少し家を空けること。
危険もあること。
全部伝えた。
桃子は静かになのはを見る。
そして。
優しく笑った。
「後悔しないようにね」
「お母さん……」
「いってらっしゃい」
なのはの目が少し潤む。
「うん!」
簡単な旅支度。
レイジングハートを手に取る。
ユーノが肩へ飛び乗った。
『準備はいいですか?』
「うん!」
なのはは夜の街へ駆け出した。
一方。
フェイトも傷を抱えたまま探索へ向かっていた。
そして。
時の庭園。
プレシア・テスタロッサは暗い玉座で待ち続けていた。
「早くなさい、フェイト……」
虚ろな瞳。
「アルハザードが待っているの……」
狂気にも似た執念。
「私達の救いの地が……」