森はすでに戦場だった。
焦げた大地、裂けた木々、空気そのものが震えている。
その中心で、さくらとフェイトは向かい合っていた。
倒れたなのははまだ動かない。
「ジュエルシードは渡さない」
さくらの声は静かだった。
フェイトは一切迷わない。
「回収するだけ」
雷光。
ドンッ!!
開幕と同時にフェイトの砲撃が森を薙ぐ。
さくらは横へ跳ぶ。
直後、地面が爆ぜる。
着地と同時に右手のリングに藍色の“炎”が灯る。
霧が一気に広がる。
そして森の中に桃色の魔法陣が複数出現する。
ユーノは息を呑む。
「増えてる……!?空間に直接展開してるのか!?」
フェイトも視線を鋭くする。
「座標固定……いや、揺らしている?」
霧フクロウが空を舞う。
キィィィン……
その羽ばたきと同時に、魔法陣の配置が微妙に変わる。
フェイトは即座に連続射撃。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
雷撃が空間を裂く。
だが一発が“空白”を通過する。
ズレている。
さくらはその一瞬を見逃さない。
「そこ」
踏み込み。
霧の中からレイジングハートの形をした杖が具現化される。
ドンッ!!
砲撃。
フェイトは防御魔法を展開。
バリアが軋む。
「くっ……!」
直撃は防いだが、後方へ押される。
ユーノは焦る。
「火力負けしてない……!」
フェイトは一瞬で体勢を立て直す。
雷を足場にするように跳躍。
空中からの連撃。
ドンッ! ドンッ!!
さくらは霧を滑るように移動して回避。
だが完全回避ではない。
袖が焼ける。
「……速い」
さくらは短く呟く。
そして地面に手をつく。
霧フクロウが鳴く。
キィィィン……
その瞬間、フェイトの着地位置が一瞬だけ“ずれる”。
足場が狂う。
「っ!?」
その一瞬の隙に、さくらが踏み込む。
近接戦。
杖が振られる。
ドンッ!!
魔力衝突。
火花が散る。
フェイトは即座に蹴りで距離を取る。
空中へ退避しながら再び砲撃構築。
「終わらせる」
雷光が集束する。
最大出力。
ドンッ!!!
巨大雷撃。
直線破壊。
森ごと消し飛ばす一撃。
さくらは動かない。
霧が一気に収束する。
桃色の魔法陣が一点に重なる。
キィィィン……
霧フクロウが鳴く。
その瞬間、雷撃の“中心軸”がわずかに逸れる。
フェイトの目が見開かれる。
「……ズレた!?」
雷はさくらの横を通過し、地面を抉る。
さくらはその“空白”へ砲撃を撃ち込む。
ドンッ!!
直撃。
フェイトの身体が大きく弾かれる。
地面を削りながら後退。
「……っ!」
すぐに起き上がろうとするが膝が落ちる。
まだ戦える。
だが、視界がわずかに狂っている。
距離が正しく見えない。
ユーノは息を呑む。
「空間干渉の精度が上がってる……!」
フェイトは短く判断する。
「……撤退する」
雷光と共に姿が消える。
戦場に静寂。
桃色の魔法陣がゆっくり消えていく。
霧フクロウが一度だけ空を舞う。
そして――
キィン……
空間に吸い込まれるように収束し、匣の中へ戻る。
カチリ。
さくらは匣を閉じる。
戦場が完全に沈黙する。
そして倒れたなのはの元へ歩く。
「大丈夫」
そっと手を伸ばす。
その指が触れた瞬間、なのはのまぶたがわずかに動いた。
「……お姉ちゃん……?」
霧は完全に晴れていく。