魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第八話 それは大いなる危機なの?

 激突寸前だった。

 

 なのはとフェイト。

 

 二人の魔力がぶつかり合おうとした、その瞬間。

 

 ガキィン――!!

 

 レイジングハートとバルディッシュが、強引に押さえ込まれる。

 

「!?」

 

「っ……!」

 

 二人の間へ割って入っていたのは、黒髪の少年だった。

 

 冷静な瞳。

 

 無駄のない動き。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」

 

 静かな声。

 

 その言葉に。

 

『管理局!?』

 

『時空管理局!?』

 

 ユーノとアルフが同時に反応した。

 

 クロノは二人を見回す。

 

「戦闘行為を停止しろ。武装解除を要求する」

 

 だが。

 

「そんなの聞くわけないだろ!」

 

 アルフが牙を剥く。

 

 次の瞬間。

 

 爆発。

 

 大量の土煙が巻き起こる。

 

「アルフ!」

 

 フェイトが飛び出す。

 

 狙いはジュエルシード。

 

 だが。

 

 クロノは即座に片手を向けた。

 

「遅い」

 

 魔法陣展開。

 

 射撃魔法。

 

 蒼白い閃光が一直線に走る。

 

「っぁ!!」

 

 直撃。

 

 フェイトが空中で弾き飛ばされた。

 

「フェイト!!」

 

 アルフが飛び込み、かろうじて抱き止める。

 

 フェイトの意識が揺らぐ。

 

 クロノはさらに第二撃を構えた。

 

 だが。

 

「やめて!!」

 

 なのはが間へ飛び込む。

 

 クロノの前へ立ち塞がる。

 

「……」

 

 一瞬の隙。

 

 その間に、アルフはフェイトを抱え転移した。

 

 金色の光が夜へ消える。

 

 静寂。

 

 残されたジュエルシードは、クロノが回収した。

 

 戦闘終了後。

 

 なのは、さくら、ユーノの三人は、事情聴取のため時空管理局艦船アースラへ招かれていた。

 

「すご……」

 

 なのはは艦内を見回す。

 

 近未来的な通路。

 

 見たこともない機械。

 

 完全に別世界だった。

 

『時空管理局は』

 

 ユーノが説明する。

 

『いくつも存在する並行世界、その間を管理している組織なんです』

 

「へー……」

 

 なのはの顔は完全に理解不能だった。

 

「つまり?」

 

『……えっと、すごく偉い組織です』

 

「なるほど!」

 

 理解したような返事。

 

 だが絶対理解していない。

 

 さくらが横で苦笑した。

 

 クロノが足を止める。

 

「ここだ」

 

 応接室。

 

 なのはは扉を開けて固まった。

 

「……和室?」

 

 畳。

 

 毛氈。

 

 鹿威し。

 

 抹茶。

 

 羊羹。

 

 宇宙船の中とは思えない空間だった。

 

「ようこそ」

 

 微笑む女性。

 

 アースラ艦長、リンディ・ハラオウン。

 

 クロノの母親だった。

 

 席へ座るなのは達。

 

 その後。

 

 これまでの経緯説明が始まった。

 

 そして。

 

 リンディとクロノから、ロストロギアについての説明が行われる。

 

「ロストロギアとは」

 

 リンディが静かに語る。

 

「進化しすぎた文明が遺した危険な遺産です」

 

 使い方次第では。

 

 世界どころか次元空間すら滅ぼす。

 

 ジュエルシードもその一つ。

 

「次元干渉型エネルギー結晶体」

 

 複数同時発動。

 

 それによって発生するのが、次元震。

 

 さらに最悪の場合。

 

 並行世界を巻き込む災害――次元断層。

 

 なのはとフェイトが激突した時の閃光。

 

 あれが次元震だった。

 

「えぇっ!?」

 

 なのはが青ざめる。

 

「たった一つのジュエルシード、その何万分の一の暴走でも、あれだけの被害が出ます」

 

 リンディは真剣な表情で続けた。

 

「悪意ある者が使えば、大惨事になりかねません」

 

 だから。

 

「今後、ジュエルシード回収は時空管理局が全権を持って行います」

 

 静かな宣言。

 

 クロノが言葉を続ける。

 

「君達は元の生活へ戻るべきだ」

 

 なのはとユーノは黙り込む。

 

 反論は出来ない。

 

 でも。

 

 納得も出来なかった。

 

 その空気を察し、リンディが優しく微笑む。

 

「今日はここまでにしましょう」

 

「一晩考えて、また明日お話しましょうね」

 

 夕暮れ。

 

 公園。

 

 ベンチへ座るなのはとユーノ。

 

「ユーノくんって、同い年くらい?」

 

『たぶん』

 

 ユーノが苦笑する。

 

『隠してたみたいになって、ごめんなさい』

 

「ううん」

 

 なのはは笑う。

 

「びっくりしただけだよ」

 

 すると。

 

 ユーノは人間形態から、再びフェレットへ戻った。

 

『普段はこっちの方が便利なので』

 

 肩へ飛び乗る。

 

 なのはが少し笑う。

 

「なんか、そっちの方が落ち着くかも」

 

『それ複雑です』

 

 二人は顔を見合わせ、小さく笑った。

 

「ご飯食べて、それから考えよう」

 

『はい』

 

 一方。

 

 フェイトはクロノの攻撃による傷へ苦しんでいた。

 

 アルフは、そんな姿を見ていられなかった。

 

「もうやめようよ!」

 

 叫ぶ。

 

「ジュエルシードなんか放り出して逃げよう!」

 

「アルフ……」

 

「なんであんな奴の言うこと聞くんだよ!!」

 

 涙声だった。

 

「フェイトの悲しみは、あたしの悲しみなんだよ……!」

 

 フェイトは優しく微笑む。

 

「ありがとう」

 

「違う!!」

 

 アルフが崩れる。

 

「あたしは、フェイトに笑っててほしいだけなんだ……」

 

 泣き崩れるアルフ。

 

 フェイトはその頭を撫でた。

 

「母さんのためだけじゃない」

 

 静かな声。

 

「きっと、自分のためにも……途中で投げ出せないの」

 

 アルフは何も言えなくなる。

 

 一方。

 

 アースラ。

 

 ユーノはリンディ達へ協力を申し出ていた。

 

『なのはの魔力は強力です』

 

『きっと役に立ちます』

 

 リンディは少し驚いた顔をする。

 

 一方的な感情論ではない。

 

 ちゃんと考えた上での提案。

 

「いいでしょう」

 

 リンディは頷く。

 

「ただし条件があります」

 

 管理局の指示へ従うこと。

 

 そして。

 

 一時的に管理局預かりとなること。

 

 ユーノは真剣に頭を下げた。

 

 夜。

 

 高町家。

 

 なのはは桃子へ話をしていた。

 

 魔法のことは言えない。

 

 でも。

 

 言える範囲で、全部話した。

 

「大切な友達と始めたことなの」

 

 なのはは真っ直ぐ母を見る。

 

「最後までやり遂げたい」

 

 少し家を空けること。

 

 危険もあること。

 

 全部伝えた。

 

 桃子は静かになのはを見る。

 

 そして。

 

 優しく笑った。

 

「後悔しないようにね」

 

「お母さん……」

 

「いってらっしゃい」

 

 なのはの目が少し潤む。

 

「うん!」

 

 簡単な旅支度。

 

 レイジングハートを手に取る。

 

 ユーノが肩へ飛び乗った。

 

『準備はいいですか?』

 

「うん!」

 

 なのはは夜の街へ駆け出した。

 

 一方。

 

 フェイトも傷を抱えたまま探索へ向かっていた。

 

 そして。

 

 時の庭園。

 

 プレシア・テスタロッサは暗い玉座で待ち続けていた。

 

「早くなさい、フェイト……」

 

 虚ろな瞳。

 

「アルハザードが待っているの……」

 

 狂気にも似た執念。

 

「私達の救いの地が……」

 

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