魔法少女リリカルなのは ~~   作:ぬっく~

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第九話 決戦は海の上でなの

 時空管理局艦船アースラ。

 

 なのはとさくら、そしてユーノは、臨時局員として艦内で生活を送ることになっていた。

 

 学校はしばらくお休み。

 

 教室では。

 

「なのはとさくらのノート、あたしがまとめるわよ」

 

 アリサが真っ先に立候補していた。

 

 少しぶっきらぼうな言い方。

 

 けれど。

 

 その言葉に込められた優しさは、すずかにはよく分かっていた。

 

「アリサちゃん、優しいね」

 

「べ、別に!」

 

 顔を背けるアリサ。

 

 すずかは小さく笑いながら、窓の外を見る。

 

「なのはちゃんとさくらちゃん……大丈夫かな」

 

 心配そうな呟きは、静かに教室へ溶けていった。

 

 一方。

 

 アースラでは、管理局の強力なバックアップによりジュエルシード回収が順調に進んでいた。

 

 ユーノの体調と魔力もすっかり回復。

 

 本来の人間形態で、なのはのサポートを行っている。

 

 対するフェイトたちは、管理局の追跡をかわしながらジュエルシードを回収していた。

 

 十日間。

 

 なのは達が三つ。

 

 フェイト達が二つ。

 

 残り六つ。

 

「反応が薄いわね……」

 

 エイミィがモニターを睨む。

 

「海中に沈んでる可能性が高いかも」

 

 ブリッジ内に緊張が走る。

 

 その頃。

 

 アースラ食堂。

 

 なのはとユーノは、おやつを食べながら話していた。

 

「ユーノくんって、家族いるの?」

 

『僕には両親はいません』

 

 ユーノは少し懐かしそうに笑う。

 

『でも、部族のみんなに育ててもらいました』

 

「そっかぁ」

 

 なのはは頷いた。

 

「わたしもね、ちょっと似てるかも」

 

『え?』

 

「お父さんが大怪我して入院してた時期があってね」

 

 家族は忙しかった。

 

 広い家。

 

 静かな廊下。

 

 一人きりの時間。

 

 だけど。

 

「だから、ひとりぼっちは結構平気」

 

 なのはは微笑む。

 

「いつも、お姉ちゃんが居たから」

 

 その笑顔は、とても優しかった。

 

『さくらさん、ですか』

 

「うん!」

 

 なのはは嬉しそうに頷く。

 

「ジュエルシードが全部終わったら、もっと色んな話しようね」

 

『はい』

 

 笑い合う二人。

 

 だが同時に。

 

 問題が終われば。

 

 それは別れの時でもある。

 

 そんな予感が、胸をかすめていた。

 

 その瞬間。

 

 艦内アラートが鳴り響く。

 

『大規模魔力反応!!』

 

 ブリッジが騒然となる。

 

 モニターに映るのは海上。

 

 そこに巨大な金色の魔法陣が展開されていた。

 

「フェイト……!」

 

 なのはが息を呑む。

 

 フェイトは海中のジュエルシードを強制発動させ、一気に封印しようとしていた。

 

 次々と光り始める海。

 

 六つ。

 

 すべて同時発動。

 

 荒れ狂う巨大な魔力流。

 

 アルフが叫ぶ。

 

「無茶だフェイト!!」

 

 暴走するジュエルシード。

 

 それを避けながら封印。

 

 しかも六つ同時。

 

 ほとんど不可能。

 

 だが。

 

 フェイトは止まらない。

 

「やる……!」

 

 膨大な魔力が放出される。

 

 アースラブリッジ。

 

「わたしも行きます!」

 

 なのはが叫ぶ。

 

 しかし。

 

「駄目だ」

 

 クロノが即答した。

 

「今行けば君まで巻き込まれる」

 

 リンディも静かに告げる。

 

「残酷に見えるかもしれないけど、これが現実です」

 

 放っておけばフェイトは自滅する。

 

 もし生き残っても、消耗したところを確保する。

 

 合理的。

 

 正しい判断。

 

 だからこそ。

 

 なのはは俯いてしまう。

 

 その時。

 

 ぽん、と肩へ手が置かれた。

 

 さくらだった。

 

「行って」

 

「え……?」

 

「なのは、行きたいんでしょ」

 

 なのはは迷う。

 

「でも……ユーノくんの目的はジュエルシード回収で……」

 

「フェイトちゃんと話したいなんて、わたしの都合だから……」

 

 すると。

 

 ユーノが優しく笑った。

 

『僕は、なのはが困ってるなら力になりたい』

 

 真っ直ぐな瞳。

 

『なのはが、僕にそうしてくれたみたいに』

 

 さくらも頷く。

 

「あなたのしたいように行きなさい」

 

 なのはの瞳が揺れる。

 

「……うん!」

 

 決意。

 

 クロノが気付く。

 

「待て!」

 

 だが。

 

 その前へ、さくらが立った。

 

「通さないよ」

 

「君っ……!」

 

 クロノが動こうとした瞬間。

 

 ユーノが転送魔法を発動。

 

 なのはの身体が光に包まれる。

 

「行ってきます!!」

 

 そして。

 

 海上結界内へ転送された。

 

 空中。

 

「レイジングハート!」

 

『Stand by ready.』

 

 バリアジャケット着装。

 

 桜色の光が弾ける。

 

 フェイトが驚く。

 

「なのは……!?」

 

 アルフが牙を剥いた。

 

「ジュエルシードを奪いに――!」

 

『待ってください!』

 

 転送されてきたユーノが止める。

 

 なのははフェイトを見る。

 

 苦しそうな顔。

 

 一人で全部背負おうとしている顔。

 

 なのはは、少しだけ分かってしまった。

 

 ひとりぼっちの苦しさを。

 

 だから。

 

 自分が、一番してほしかったことをする。

 

 なのははフェイトへ手を伸ばした。

 

「手伝って!」

 

「え……?」

 

「一緒にジュエルシード止めよう!」

 

 暖かな魔力。

 

 なのはの魔力がフェイトへ流れ込む。

 

「……っ」

 

 フェイトの身体から力が抜けていく。

 

 苦しさが和らぐ。

 

「なんで……」

 

 フェイトが呟く。

 

 なのはは笑った。

 

「ふたりできっちり、はんぶんこ!」

 

 その言葉に。

 

 フェイトの瞳が大きく揺れる。

 

「せーので、一気に封印するよ!」

 

 なのはは上空へ飛翔する。

 

 フェイトは呆然と見上げた。

 

 その手の中で。

 

 バルディッシュが変形する。

 

 シーリングフォーム。

 

 まるで。

 

『今は協力するべきです』

 

 そう伝えるように。

 

 フェイトは、なのはを見る。

 

 ユーノとアルフ。

 

 二人も、暴走を必死で押さえていた。

 

 そして。

 

 なのはが笑う。

 

 あまりにも真っ直ぐで。

 

 暖かい笑顔だった。

 

 フェイトは静かに目を閉じる。

 

「……うん」

 

 決意。

 

「せーの!!」

 

 桜色。

 

 金色。

 

 二つの巨大魔法陣が同時展開される。

 

「ディバインバスター・フルパワー!!」

 

「サンダーレイジ!!」

 

 轟音。

 

 巨大な魔力爆発。

 

 海面が裂ける。

 

 そして。

 

 六つのジュエルシードが、一斉に封印された。

 

 静かになった海。

 

 浮かび上がるジュエルシードの光。

 

 それを見つめながら、なのはは思う。

 

 ひとりぼっちで寂しかった時。

 

 一番ほしかったもの。

 

 同情じゃない。

 

 優しさだけでもない。

 

 誰かと、気持ちを分け合えること。

 

 悲しさも。

 

 寂しさも。

 

 はんぶんこ出来ること。

 

 そして。

 

 なのはは気付く。

 

 自分は。

 

 フェイトと、それを分け合いたいんだと。

 

 なのはは真っ直ぐフェイトを見る。

 

「友達になりたいんだ」

 

 その瞬間。

 

 轟音。

 

 空から紫電が走った。

 

「っ!?」

 

 プレシアの次元魔法。

 

 雷光が海上へ降り注ぐ。

 

「きゃあああっ!!」

 

 フェイトへ直撃。

 

「フェイトちゃん!!」

 

 助けようとしたなのはも吹き飛ばされる。

 

 落下するフェイト。

 

 アルフが飛び込み抱き留めた。

 

 そのまま六つのジュエルシードへ手を伸ばす。

 

 だが。

 

「させるか!」

 

 転送されてきたクロノが割り込む。

 

 アルフが怒りの拳で吹き飛ばす。

 

 しかし。

 

 クロノはとっさに半分――三つを確保していた。

 

「っ……!」

 

 アルフの顔が歪む。

 

 怒り。

 

 悔しさ。

 

 悲しさ。

 

「フェイトを……これ以上……!!」

 

 叫び。

 

 転移。

 

 金色の光が消える。

 

 管理局が追跡を開始しようとするが。

 

 プレシアの雷撃で機器が停止していた。

 

 海上へ静寂が戻る。

 

 ただ。

 

 巻き上げられた海水だけが。

 

 雨のように降り続いていた。

 

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