シエルの父親・ヴィンセントに成り代わった物語 作:アルトリア・ブラック(Main)
ファントムハイヴ家襲撃事件
ファントムハイヴ家が火に飲み込まれた訃報はミッドフォード家やマダムレッドにも届いた。
そして、ファントムハイヴ家唯一の生存者は…
「…姉さん、身体が冷えるからあんまり外にいちゃダメよ…」
マダムレッドは墓前の前に座り込む姉のレイチェル・ファントムハイヴにコートをかける。
「……シエルもあの子も居なくなって、[[rb:ヴィンセント> あの人]]も…全員、私の…前から…」
放心状態のレイチェル。
「…姉さん」
マダムレッドがレイチェルに抱きつく
目の前には息子兄弟、そして、ヴィンセント・ファントムハイヴの墓があった。
炎に包まれたせいで全ての遺体は焼け焦げてしまった。
子供の遺体が見つからなかったことから生存も見込めたが、ヴィンセントの遺体は見当たらなかった。
ヴィンセントに似た体型の人間が多くいたことから生存も見込めると思ったが…
(…明らかにあの人の血の量が多かった…)
レイチェルが隠れていたタンスから伸びるように点々と血があり、ヴィンセントが倒れていたであろうところに血溜まりがあった。
致死量の血が…
一夜で家族全員を亡くしてしまったレイチェルの憔悴ぶりを見るにマダムレッドは何としてもそばにいなければ、と思っていた。
そして、その数週間後…
「シエル!!」
マダムレッドの元にシエルが戻って来たという報告がきてマダムレッドは急いでファントムハイヴ家に向かう。
そこには…
「シエル…!シエル…」
抱きついて泣くレイチェルがいた。
それを見たマダムレッドも泣きそうになり二人に抱きつく。
「良かった、あなただけでも無事で…!」
あの人…ヴィンセント・ファントムハイヴは助からなくても、シエルだけは帰ってきた。
それだけで嬉しかった。
[newpage]
「……うん…?」
ヴィンセントは目を開けると…
(中身は男主)
(…どこだろ…ここ…)
目がボヤけて見えないが、取り敢えずフッカフカなベットの上にいるのは分かる。
(…あ、身体ビクともしない…)
ヴィンセントは動こうにも鉛のように重い身体は動かなかった。
「……動けない」
そう言って腕を動かそうとすると…
「お目覚めになりましたか?」
ヌッと上に顔が出てくる
「!?」
ビックリして身体が動いたらとんでもない激痛が走る
「イッ!?」
ビックリして声を発すると人物は慌てて
「驚かせてしまって申し訳ございません!驚かせるつもりはなかったのですが…!」
慌てながら側に座る人物を見て…
(えっ?!ブラバット!?『青の教団編』に出てくるブラバット!?)
ブラバットが側にいると言うことは…
「これからこの現状についてご説明しますのでご安心ください。ヴィンセント様」
原作通りの笑顔を見せてくる
(…これってまさか…)
原作破壊した?!
破壊しちゃった?!
そう焦る男主をよそにブラバットは説明して行く。
その説明はもはや、謎を呼んだ(前世で男主がすっごい気になった話)ことをまんま話し始めた。
「アンダーテーカー殿の提案によりこれからヴィンセント様を主軸とする【スフィア・ミュージックホール】を作り上げました」
(マジで…?ホントマジで?)
すっごいビックリして何も言えない。
「実際の目的はシリウス様…ヴィンセント様のことは外部に漏らしても問題ないように『シリウス様』とお呼びします。ヴィンセント様の輸血のために人を集めるようなものなのです」
(…輸血、俺嫌いなんだよなぁ…)
ヴィンセントの中身は注射とかそういう類のは大嫌いである。
肩から血が噴き出そうが、足から血が出ようが、ちょこっと痛みの方が嫌いである。
「…輸血、そんなの必要なのかい?」
思わず質問する。
アレは圧倒的に血を失ってた真シエルだから必要であっただけで、自分には必要ない気がした。
…動けないけど
「ヴィンセント様は襲撃事件の日以来、血を失っておられます。失血死してもおかしくないほどに…」
ブラバットが悲しそうな目をする。
(えっ?!マジでそんなに血失ってんの?見えないからわかんないけど)
手が老人みたいになってんのかな?
切り裂きジャック事件
ファントムハイヴ伯爵家はシエル・ファントムハイヴが継ぐことになった。
「切り裂きジャック事件の遺体の情報を教えてくれ」
葬儀屋の元に現れたのはヴィンセントの子・シエルだった。
『あの子達のことバカにして、アンダーテーカーでも怒るよ』
ヴィンセントの声が聞こえてくる。
彼はかろうじて生きていた。
生きてるのですら不思議なくらい
圧倒的に血が足らなかったから【スフィア・ミュージックホール】に預けて来た。
あそこならブラバットが輸血をやってくれるだろう。
他にも、救いたい人間はいる。
あの子だけでも救えて良かった
「足りない?」
悪魔君が問いかけてくる
(害獣風情が執事なんて真似事してるなんて不思議だねえ…隣にいる赤い女性の執事は死神かな?"近年"はそういうのが多いなぁ)
「足りないんだよ、子宮が」
切り裂きジャック事件のことをあらかた話した後、シエル達は去って行った
「あ〜あ、面白かったな執事君の笑いは」
葬儀屋は棺桶を閉じ、店を閉めると
「さてと、小生も仕事終わったから帰るか〜、ヴィンズに今日あったこと言わないとねぇ〜」
シエルは馬車に乗って帰ると
「おかえりなさい、シエル」
「ただいま帰りました。お母様」
レイチェルが出迎えてくる。
微笑みかけてくる母の目は復讐を忘れさせようとしてくるが、シエルには自分のために復讐するという目的があった。
「セバスチャン、寝る前に話したいことがある」
「はい、分かりました」
二人が部屋に入って行くのをレイチェルは見送り
(…あなたの若い頃も、こんな感じだったのかしら…)
ヴィンセントと結婚した時は双方ともかなり若い時だった。
ヴィンセントの仕事の内容も良くは知らなかった。
ただ、裏社会のことをある程度聞かされた。
支障ならない所までだが
「……ーー」
愛するもう一人の息子の名前を呼ぶ
【シエル】として帰って来たあの子は必死にシエルになろうとしていた。
それが、痛ましくどうして良いのか分からなかった。
だけど、あの子がシエルとなろうとしているのなら応援するしかなかった。
[newpage]
[[rb:シエル > あの子]]は帰って来たのにどうして[[rb:ヴィンセント> あの人]]は帰って来ないの?
なんで[[rb:ヴィンセント> あの人]]と結ばれたのは私じゃないの?
[[rb:ヴィンセント> 愛する人]]と姉さんの子…
私の欲しいものは全部手元から無くなるのに…
『アンには【赤】が良く似合う。死に燃えるリコリスの色』
[[rb:ヴィンセント> あなた]]はそう言ったのに、貴方が選んだのは姉さんだった。
私は、私なりに幸せを得ようとしたのに、私の嫌いな【赤い色】は貴方も奪った。
どうして、なんで…貴方は私を選んでくれなかったの?
今度は、何も奪わせない…!
何も失わない!!
「何も譲らないわ!!」
シエルの首を絞め、殺そうとした。
だが、マダムレッドはシエルに手を下すことが出来なかった。
「姉さんと[[rb:ヴィンセント> 貴方]]の子…大切な二人の…」
「何してんの?そのガキ殺らないとアンタがやられんのよ!?」
「無理…私には、殺さない…」
ナイフを落とし泣く
「ハァ!?散々人を殺しておいて人を殺せないの?!」
グレルから責められるが、マダムレッドにはシエルを殺せなかった。
「ガッカリよ!!ただの女に戻ったアンタに用はないワ!!」
切り裂きジャック事件は無事に解決した。
犯人の死と共に…
シエルは女王に犯人を始末したと報告して、最後に殺害された女性の墓参りにきていた。
「執事君と伯爵ならいつでも待ってるよー」
葬儀屋は手を振り去って行く。
([[rb:シエル> 伯爵]]がどういう結末を辿るか、小生は実に見ものだよ、君もそう思わないかい?ファントムハイヴ伯爵)
ヴィンセントは寝る時間が多くなった。
子供と言われたら心外だが、血液が足りないと意識が遠くなるというかなんというか
貧血気味になる。
睡眠時にいろんな夢を見た。
ファントムハイヴ家の伯爵として勤めていた時代のことを…
ヴィンセントは自分に利がある人間以外は記憶出来ないというか、そういうところがあった。
正直言って、記憶にあるのもあやふやである。学生時代の記憶はほとんど皆無である
覚えているのはディーデリヒとくだらない遊びをしたことくらいだ。
後は母であるクローディア・ファントムハイヴの事と父のことだった。
クローディア・ファントムハイヴとの記憶はあやふやだった。
15歳くらいの時に母を失った。
その後、アンダーテーカーに守られるように裏社会に進出した。
容赦なく、表社会に害がある人間は殺害して行った。
(…ヴィンセントの記憶ってホントおっかないわ)
睡眠時にいろいろ整理していたら恐ろしやヴィンセント
恐ろしやファントムハイヴ家
「……」
ヴィンセントは目が覚め天井を見る
生きてる内には(前の人生)ではありえないくらいかなり寝ていた。
(外の様子が一切分からないな…)
起き上がろうとしたが、身体が重いままだった。
以前の【鉛感覚】にしてみればだいぶまともな重さだけれど
隣の部屋は確か、原作では【カノープス】だった。
その隣はなんだっけ?三つ星の双子の女の子…
「シリウス様〜」
「?」
取り付けられている電話口から声が聞こえて来る。
どの部屋からかは分からないが、聞いたことのある声だったが、思い出せない
(ヴィンセントの記憶が悪いのか、あるいは自分の物忘れなのか分かんないな…)
「シリウス様、体調の方大丈夫?」
という声が聞こえてくる。
タメ語な人初めてだ
なんか、新鮮な気分。
「…身体が重いままだけれどね」
と言うと
『それは大変です。急ぎでブラバットを呼んで来ます!』
敬語を使うから四つ星の部屋の人物かな…
この声については本当に聞き覚えがない。
しばらくすると…
「シリウス様、少し気分を変えましょう」
ブラバットが笑顔でやってくる。
フカフカ車椅子へ移動〜
まだ40代にも行ってないのに介護されるなんて…
移動しながら車椅子を押すブラバットの方を見ると
「ブラバット」
言葉の方は流暢に喋れる。
今のところは
「はい、なんでしょうか?」
ブラバットの見たことないくらい自然な笑顔
「何処かで会った事あったかな?俺いろいろ物忘れが多くてね」
自分に利がある人物以外はことごとく覚えていられないヴィンセントの記憶力。
ブラバットは微笑むと
「はい、以前にお会いしました。直接ではありませんが、なので覚えていらっしゃらないのも無理はありませんよ」
直接会ったことはないのに、こんだけ手助けしてくれるの?
「そうなのかい?ありがとう、ブラバット」
ブラバットは嬉しそうにし
「何かあればいつでも呼んでください。シリウス様」
サーカス団事件
「…シエルは女王からサーカスの事件を探っているのかい?」
久々に葬儀屋が部屋にやって来た。
(前髪掛け分けてるとかっこいいな…マジで)
男が惚れるくらいかっこいいアンダーテーカー。
上半身だけ起こした体勢で葬儀屋の話を聞いていた。
「ヒッヒッヒ、そうだよ〜主犯は確か、ケルヴィン男爵だったかな〜?ヴィンズは覚えてる?」
「ケルヴィン男爵…知り合いかな?うーん」
と言って全力で記憶の中を探す
(…原作のケルヴィン男爵は知ってるけど)
実際会って見た映像見たいじゃん
「…ああ、修道院を経営してる人物か」
頑張ってヴィンセントの記憶から探って出て来たのはそれだけだった。
「そうだよ〜確か、リトルファントムハイヴを二人とも連れて行った時の」
「確か、あの子も病み上がりなのに着いて行きたいとか言って連れて行ったかな?」
よく考えればあの時から成り代わってたんだったわ…
(単に俺の物忘れだった…)
社交界の場に行った時、いろんな人に挨拶されて困ってたんだっけ?
「お父様、アレ何?」
シエルが窓の外を指差していろいろ聞いて来たり
「…お父様…」
坊ちゃんが恥ずかしそうに隠れていたし、病み上がりだったから心配で見てたり…
大変だったな…
「ファントムハイヴ伯爵!」
バートン伯爵に呼ばれて振り向けば、そこにケルヴィン男爵がいたなぁ…
その時に頰赤られてちょっと気持ち悪かったけど、何故か顔には出なかった
「紹介しよう、ケルヴィン男爵だ」
「は、はじめまして///」
「初めまして」
握手した後、シエルに
「ほら、まずお前から挨拶しなさい」
「はい。初めましてケルヴィン男爵、シエルです」
息子が社交界慣れしてくれるように息子しか見て無かったんだ…
坊ちゃんが挨拶しようとしたが、恥ずかしそうに隠れたので…
「すいません、この子は人見知りで、身体が弱くあまり外に出さないものですから」
ケルヴィン男爵はシエルが、ファントムハイヴが来るということに嬉しそうにしながら舞台の用意をさせる。
(早く、[[rb:ヴィンセント> 悪の貴族]]に相応しい僕にならないと)
夜の社交界で出会った時の彼はとても美しく
美しいモノにはトゲがあった。
「なんだあの爺さん、知り合いか?」
「話しかけて来たってことはそうなんじゃない?多分」
「そんなこったろうと思ったぜ」
(特別な人間には特別な人間にしか触れられない)
触れたい…!
悪の貴族として名高い彼に…!!
「いやだぁぁああー!!!」
サーカス団事件は解決したということを女王に手紙で報告した後、シエルは列車に乗りワークハウスに向かっていた。
その道中も先代・ヴィンセントの周りに集まる異常者(ケルヴィン男爵など)を思い出していた。
(…そういえば先代はどのようにして裏社会を管理していたんだ…)
自分のように悪魔がいるわけでもないだろう。
かつてのマダムレッドのように死神でも雇っていたのか
それにしては周囲に死神らしいものはいなかった。
それくらい完璧にこなしていたのに…
何故…
「坊ちゃん、次がワークハウスですよ」
「分かった」
今は先代のことを考えている暇はない