シエルの父親・ヴィンセントに成り代わった物語   作:アルトリア・ブラック(Main)

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第3話

カンパニア号事件

 

「一週間の旅、付き合ってくれるの?!シエル!」

 

嬉しそうにするリジー

 

「ああ、休暇くらいな」

 

夜な夜な死体がカンパニア号に運ばれていたことを女王から聞いたシエルは女王の番犬の仕事を隠して船に乗車することにした。

 

船に乗ってしばらくすると…

 

「君も休暇?ホントに?」

 

「貴殿は…グレイ伯爵、ヒップス卿」

 

「お久しぶりです。ミッドフォード公爵夫妻」

チャールズが二人に挨拶すると二人が頷く。

 

「楽しい[[rb:後悔 > 航海]]になるといいね、お互い」

 

 

 

一方…

 

「…カンパニア号か…」

ヴィンセントは相変わらず部屋で横になっていた。

 

ある程度は動けるようになったけれど、ドクターストップかけられて大きくは動かない方がいいという報告は受けた。

 

やっとトイレに一人で行けるよ…(泣)

 

シエルが、あの子がその船に乗車するなんて…

 

葬儀屋が人体蘇生術の実験をしにカンパニア号に行った。

 

殺し合わせてどちらがどの程度生き残るかを実験する。

 

それが、葬儀屋の目的だった

 

(シエルにはセバスチャンがいるし、カンパニア号事件くらいは平気かな)

 

セバスチャンがボロボロになる事件である。

 

悪魔がボロボロになるなんて気になるから見てみたいのだけれど…

 

(動くな言われてるしね…)

 

来て早々分かったが、シリウス以外の星が誰なのか

 

双子の女の子は葬儀屋に言われてやっと誰か分かった。

 

(だって…15歳の時だったからな…)

 

四つ星の部屋の人物はちょくちょく部屋にやって来た。

 

ファントムハイヴ家の執事で悪魔みたいな身体能力を誇っていた。

 

しかも、気配が間近まで来られないと分からないし

 

(最初何回ビックリしたか…)

 

その度に傷が開くのでかなり痛かった記憶がある。

 

[newpage]

 

「…シリウス様、お部屋を移動しましょう。聖歌隊の歌も聞こえますし」

 

そう言ってポラリス(以降はこの呼び方にしよう)がフカフカ車椅子に乗せてくれる。

 

「ありがとう」

と言うと執事・ポラリスは笑顔で

 

「当たり前のことです」

と言って車椅子を押して集会場に面した部屋に向かう。

 

「そういえば、ポラリス」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

「君は輸血必要ないのかい?俺と違って一からやらないといけないってアンダーテーカーから聞いたんだけど」

 

ポラリスは死んでいた人間だ

 

未来への願望を繋ぎ合わせて生き返った人間だった。

 

「大丈夫ですよ、私の血は集めやすすぎて問題はないんです。シリウス様やカノープスに比べて」

 

「そう?でも無理だと思ったら遠慮しなくていいんだよ?伯爵も執事がいないと始まらないんだから」

 

「ありがたいお言葉、身に染みます」

 

(…ヴィンセントさんの周り、ヴィンセント個人を心酔する人多すぎて怖いんだけど…)

 

ぶっちゃけてケルヴィン男爵やらマダムレッドやらの人生を狂わせてしまっている。

 

だが、それら人物は全然ヴィンセントのせいにしないので逆にそれが怖い

 

車椅子を押され部屋に着くと…

 

『〜♪♪〜!』

聖歌隊の歌が聞こえてくる。

 

なんか、歌の内容がまた恥ずかしい

 

『蒼き星の一等星』とかいろいろ歌っててさ…

 

「ポラリス」

と呼ぶと正面に跪かれる

 

「はい」

ポラリスの改まった姿勢が逆に恥ずかしくなる。

 

「(真)シエルのこと気になるんだけれど、シエルのことどうなったんだい?」

 

葬儀屋が事前にあのミサの場から遺体を持ち帰っていると原作ではそうだった。

 

「…残念ながら、ミサの場で燃えてしまったようです。葬儀屋が行った時にはすでに…」

 

原作やっぱり破壊しちゃってたか…

 

(どうなるんだろ…26巻の時のあのシーン)

 

真シエルが坊ちゃんの前に現れて『僕はシエル・ファントムハイヴだ』というシーン。

 

アレ俺バージョンになるの?

 

[newpage]

 

今後のことでいろいろ原作のことで不安を覚えていると…

 

「シリウス様、お部屋に戻りましょう。輸血の時間に近づいてますから」

 

ポラリスが立ち上がって車椅子を押し始める。

 

「もうそんな時間なのかい?」

 

「はい、夕方です」

気づけば聖歌隊の歌も終わっていた。

 

「…シリウス様の血のストックが後一つしかないので…どうにかしなければなりませんね…」

 

ポラリスが独り言をつぶやく

 

「ドクターストップかけられたけど、これ後遺症とかになる気がするんだけど、ならないのかい?」

 

座った状態だと自分の体が壊死したようになってて、切断モノに見えて来て仕方ないのである。

 

「はい、輸血の血は拒絶反応が起こらないように厳重に管理されています。未来の科学のように衛星状態はご心配なく、後遺症などは一切ありません」

 

「そう、良かった」

後遺症残るタイプが一番嫌なのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、カンパニア号では葬儀屋が目を見せ正体を現した。

 

「お前が人体蘇生術の首謀者だったのか!アンダーテーカー!!」

 

シエルの厳しい声と共に

 

「何のためにこんなことをする!」

 

「そうだね…初めは人への好奇心だった」

 

そして、女王のせいで命を奪われてしまった【クローディア達】のために

 

完璧な人体蘇生術のために死体を大量に利用した。

 

女王や死神派遣協会に一泡吹かせるために…

 

『俺の敵が女王や、死神組織全体だと言ったらアンダーテーカーは馬鹿にする?』

 

母を、クローディアを失った時、ヴィンセントは葬儀屋にそう言って来た。

 

『俺の母はゲームに負けた…だけど、女王も結構追い詰められてたはずだ、必ず女王と死神派遣協会に一泡噴かせたい』

 

【この世に有益な存在】としてヴィクトリア女王が認められていても、人間は必ず死ぬ。

 

なら、女王への引導をヴィンセント自身が引く

 

それが、ヴィンセントの…

 

ヴィンセントと先代のファントムハイヴ家の願望だった。

 

「……人の魂なんて、自分のものにできるわけないのにね」

 

ヴィクトリア女王の魂を自分のものにしている死神派遣協会の何者か…

 

 

 

ヴィンセントは自室に戻った後、ちょっと動いただけでかなり疲れて居眠りを始めた。

 

その間に気づいたら輸血の作業も終わっていた。

 

「…もう寝たのかい?ヴィンズ」

 

寝ているヴィンセントの元にやってきたのはカンパニア号を沈めた後の葬儀屋だった。

 

生きてるのか確認したくなり、脈を測っていると…

 

「……?アンダーテーカー…?帰って来てたのかい?」

 

寝ぼけながらもヴィンセントが起き上がろうとしたので…

 

「…いろいろあったけど、ヴィンズが眠そうだから明日にするよ」

 

と言うと…

 

「……そうして貰えると、ありがたいな…」

内心、子供扱いされてふてくされているのもあった。

 

「おやすみ、ヴィンズ」

 

「……」

 

 

 

 

 

眠った後に見た夢は学生時代の夢だった。

 

母・クローディアが亡くなった後に学校に入っていたヴィンセント

 

なので、学生時代を楽しむというよりは未来のファントムハイヴ家のことを考えて生活していた。

 

誰が将来、ファントムハイヴに、自分に利があるのか

 

それと成績のみ考えていた。

 

寮が違ったディーデリヒを寮弟にしたのも、彼が将来有望だと思っていたからだ。

 

寮違いで選んだからかなり物議をかもしたけれど、そんなことよりもファントムハイヴ家のことだった。

 

そして…

 

ファントムハイヴ家代々当主を若くして殺している女王への仕返しとして

 

例え自分が長生きしなくても、女王を道連れに出来るなら本望と思っていた。

 

女王が自分に向ける見覚えのない殺意

 

その殺意は自分を通り過ぎている

 

それはおそらく…

 

 

 

「…女王を花で例えるなら何か?」

 

ファントムハイヴ家の別荘にて、ディーデリヒにそんな質問を投げかける。

 

「…なんだよ、急に…」

ディーデリヒが嫌そうな顔をするが、ヴィンセント持ち前の笑顔で

 

「まあいいから」

と微笑みながら言うと

 

「…【アベリア】じゃねぇか?綺麗な花だし、一つだけで咲いてないからよ」

 

「つまり、ディーデリヒは女王の周りには執事も仲間もいっぱいいると思ってるんだ、ちなみに、その花の花言葉は『強運』『謙虚』だよ」

 

「女王らしいじゃねぇか、で?お前は?」

ディーデリヒは近くにあったお菓子を食べると

 

「そうだね【オニユリ】かな」

 

「…はぁ?なんであんな不気味な花なんだよ?まさか、裏社会で例えてんのか?」

 

「そのまんまの意味だよ」

 

「その花言葉くらい知ってるぜ『純潔』『富と誇り』だろ?」

 

「珍しいじゃないか、ディーデリヒが花言葉知ってるなんて」

 

「馬鹿にしたろ!今!」

 

怒るが、笑顔でかわすと

 

「旦那様、お仕事が入りました」

 

タナカが部屋に入ってくる。

 

「分かったよ、じゃあ、今度のウィンザーの件についてはまた話そうか」

 

「たくっ!わぁーたよ!始末つけとくからな!」

 

ディーデリヒが地団駄踏むように去って行く

 

(…例え、臭かったかな【オニユリ】の花言葉はその二つの他に『嫌悪』って意味もあるんだけどね)

 

ヴィンセントの記憶を見れば、女王を嫌いになる理由は十分にあった。

 

しかし、今は女王の番犬だ

 

好き嫌い言ってはいられない。

 

自分の命運がかかっているのだから

 

 

 

「アンダーテーカー?」

 

ことが済んだ後、ディーデリヒにアンダーテーカーのことについて聞くと…

 

「ああ、アイツなら来たぞ」

 

「「!!」」

 

「何をしに?!」

 

ある程度事情を話した後…

 

「…そういえば、せがれの執事はまるで人外みたいな執事だな」

 

ディーデリヒの言葉に焦るシエルと冷静なセバスチャン

 

セバスチャンは微笑むと

 

「よく言われますが、ファントムハイヴ家の執事たる者これくらいは訓練しております」

 

ディーデリヒは菓子を頬張ると

 

「アンダーテーカーで思い出したぜ、(シエルの)親父はよく葬儀屋に相談しに行っては事件が片付いてたな」

 

(死神ですしね)

 

セバスチャンとシエルが小さい声で話す。

 

「どうにも引っかかるんだよな」

 

「?何がだ?」

 

「5年前のファントムハイヴが襲撃された事件、ヴィンセントの奴の死体は無かったんだろ?」

 

「…ああ」

 

「そのクセ、英国は簡単に奴の死を認めた、調子良すぎねえか?」

 

その言葉に無言になるシエル。

 

その話題はかなり危なっかしい問題だったからだ

 

「そうですね…仮にも女王の番犬として勤めていたのですから、襲撃者を調べ上げて探るのが通常でしょうね、疑い深い女王陛下のことですから」

 

セバスチャンが代わりに推理する。

 

「こんなことせがれの前で言うことじゃねぇかもしれねぇが、せがれも注意しろよ、例え【女王の番犬】でもやっては行けない暗黙のルールってのがあるからな」

 

「…分かっている」

 

シエルは立ち上がると

 

「…今回の事件は助けてくれて礼を言っておく、今後もこっちに用がある時は連絡を入れるから」

 

ドアの前に立ち、去ろうとすると

 

「忘れてた、おいせがれ」

 

「なんだ」

振り向くと

 

「アンダーテーカーの奴が、立ち去る前に『あの子は生きてるからね』とか言ってたぞ」

 

「?『あの子』?」

 

「さっぱりわからなかったから忘れてたが、検討つくか?」

 

「…いや、検討はつかない」

 

 

 

 

リジーは義母・レイチェルを明るくさせたいと思い、兄の紹介で来た【スフィア・ミュージックホール】に行くことにした。

 

「こんな明るくて人が多いのに無料なんて珍しいわね…」

 

レイチェルがそう言うとリジーも頷き

 

「お兄様と一緒に来た時に思いました。労働階級の人も貴族階級の人も関係なく過ごせる場所と言ってて、とっても魅力ある場所だって」

 

レイチェルは辺りを見渡していると…

 

「あの人は?」

レイチェルの見ている方に気づいたポーラが

 

「確か、占い師のブラバットさんでしたよ」

 

「…占い師の?」

 

「はい、よく当たることで有名らしいです」

 

「お義母様!占いして貰いましょう!きっと良いことあると思うから!」

 

リジーに引っ張られるようにして行くと…

 

「…貴女は」

レイチェルに気づいたブラバットが見て来る。

 

「?」

首を傾げる二人

 

ブラバットは周囲にいた人を少し退かせると…

 

「はい、次いいよ」

と言ってレイチェルに椅子を指差す。

 

「…じゃあ…」

そう言ってコップの中に血を垂らすと

 

「!貴女は『ベガ』だ、やっぱりね」

 

周囲もどっと明るくなる

 

「?そうなんですか?」

 

ブラバットはレイチェルを見ると笑顔で

 

「とても明るく優しい性格の持ち主が多いんだ、でも、今の貴女には何が大きな悩みがある」

 

「!」

レイチェルはハッとなる

 

「愛する息子の心配…いや愛する主人のことかな?」

 

「…レイチェルお義母様?」

 

不安そうにレイチェルを見るリジー

 

「その愛する主人がどこかで生きてるのではと思って仕方ない、だけど、周りは死んでしまってると思って捜査しない、そのことにかなり不安がある」

 

「……」

レイチェルは不安そうな表情をする。

 

「その不安はね…」

ブラバットはレイチェルに耳打ちすると…

 

「!!」

驚くレイチェルと同時に瞳に光が現れる

 

それから、レイチェルは【スフィア・ミュージックホール】に入り浸るようになった

 

 

 

「…お母様がもう四日も帰って来ていない、そして、リジーの話だとお母様は【スフィア・ミュージックホール】に行ったまま帰って来なくなった」

 

女王の番犬として女王から依頼された所と母が消えた場所は同じだった。

 

「かなりの信仰者が多く、星の加護を受ける人間にはかなりの待遇があるとか、そこに労働階級も貴族階級も関係なく、貴族階級の人間も入り浸っているとか」

 

「…これは調査する必要があるな…」

 

「そうですね、レイチェル様が居なくなった原因もそこにあるかもしれませんし」

セバスチャンが頷く

 

 

 

 

 

 

「……」

一方、レイチェルは綺麗な服に身を包みブレスレットを握り締める。

 

「ここの部屋です」

ブラバットに案内されて奥の部屋に入る。

 

バタンと扉が閉まり、レイチェルはベットに歩み寄る

 

「…ごめんなさい。私じゃ、貴方は…」

 

レイチェルの前には死んだように血の気が失せているヴィンセントが寝ていた。

 

「…どうしたら…あの子に、頼ったら…」

 

愛する夫ーヴィンセントーと同じシリウスの加護を受ける息子なら…シエルなら…

 

頼ってしまったら…

 

「…もう、離れたくない…失いたくない…」

 

愛する夫を失うのも、愛する息子を失うのも

 

これ以上、何も失いたくない

 

夫がこんな目に遭ったのが、誰のせいか分かってしまえば…

 

「…許さないっ…」

 

レイチェルはもう我も忘れていた。

 

憎しみに落ちそうになったとき…

 

「……レイチェル?」

 

「!!」

夫の声が聞こえてくる

 

その声に顔を上げると

 

「…泣いてるのかい?」

 

手がレイチェルの頬に触れる。

 

「…なんでもないわ…貴方が、生きててくれたことが嬉しいの…」




主人公
ヴィンセントとして成り代わっちゃった高校生。
【黒執事】の知識+ヴィンセントの記憶保持。
大怪我よりも注射とか小さい痛みが苦手な主人公。
ハッピーエンド目指して頑張り中。
ヴィンセントの誘惑属性に苦戦中

ファントムハイヴ襲撃事件でかなり大怪我を負って死にかけたけど、葬儀屋に救われて【スフィア・ミュージックホール】つまりは青の教団に匿われる。
しかも【シリウス】扱いされてちょっと困ってる。
死にかけてるので車椅子生活

レイチェル
原作と違って主人公の咄嗟の判断で命拾いした。
以降はシエルの元で生活するが、妹が殺人犯、シエルが終始命が狙われることに憔悴しきってる。
ヴィンセントへの愛は本物

ポラリス
青の教団編に出て来る【ポラリス】の部屋の住人。
執事っぽかったので執事として登場させました。
ヴィンセントは覚えがないので、先代の執事。かなり若い
気配が無く、真横に来られても分からない(正確に言えば殺気を出しても分からない)
ヴィンセントの前以外はフードをかぶっている。

ブラバット
青の教団編の登場人物。
原作と違ってヴィンセントのことを心酔している。
過去にヴィンセントに救われた経緯がある。
頭脳明晰な持ち主。
セバスチャンを人外と見抜く(多分、悪魔だと見抜いてる設定)
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