シエルの父親・ヴィンセントに成り代わった物語 作:アルトリア・ブラック(Main)
スフィア・ミュージックホール
シエルは単独でスフィア・ミュージックホールに潜入し【シリウス】の加護を受けていると言われて集会に出ることになった。
一方…
(…調子悪くなって来た…)
前よりだいぶ楽(車椅子に自分で行ける)になったが、体調がすこぶる悪いときと良いときがマチマチだった。
すこぶる悪いときはベットから起き上がれないくらい弱ってる
そうこうしてる内にいつのまにかシエルがスフィア・ミュージックホールに潜入していたらしい。
つまり、この場所からも離れることが近づいているということ
そして、問題は…
(復活した後のことなんだよな…)
過去の記憶で女王に復讐すると葬儀屋に言ってしまっている。
シエルの消えない復讐心、セバスチャンの執着…
難点はかなりある。
だが、原作とは違った部分は沢山ある。
まず、[[rb:ヴィンセント> 自分]]が生きてる、レイチェルも生きてる
唯一の問題は真シエルが亡くなってしまったこと
(…ハッピーエンド迎えるのに不必要なのは、やっぱりセバスチャンなんだよな…)
シエルはセバスチャンに依存している
五年前の襲撃事件から頼れるものはセバスチャンしかいないと思っている。
(シエルへの説得と女王への攻撃なんて上手く行く気がしないんだけどな…)
まず、ヴィンセントが帰るには女王を消さなければならない。
でも、消すには死神に女王は【世界に有益な人間】であるという事を認めさせないことが必要だ。
(…どうしたらいいもんかな…)
黒執事ってかなり生き残りにくいんだよ…
しばらく悩んでいると…
「シリウス様〜服お召し替えしましょう」
ブラバットが部屋に入って来る。
シエルは血を抜かれていたというのに気づき、サリヴァンの元に行った後に【スフィア・ミュージックホール】が秘密裏に輸血を行なっているのではないかということを探ることにした。
そして、帰りの道中
ニナが歩いてるのが見えたので馬車に乗せて話を聞く事にした。
「お星様に会ったことがあるのか?!」
「いーえ、直接は会ってないわ、寸法とか測るのにもブラバットさんが測りに行ってしまうから直接は測れないのよ」
「仕立て屋さんであるニナさんが測れないとは、本当に部外者は立ち入り禁止という事ですね…」
「サイズくらいなら分かるけれどね」
「大体のサイズは?」
シエルからの質問にニナは…
「そうね…大体共通なのは全員、大人のサイズって事ね」
「…大人」
セバスチャンがメモを取りながら話す
「ベガは女性サイズ、あとはみんな男性サイズかしら」
「他に普通と違った点は?」
「…そうね…ポラリスは細身だと思うわ、カノープスは通常サイズ、シリウスは…」
「シリウスは?」
「…シリウスのサイズ、以前に測った事がある気がするのよね…サイズが貴族のような気がして…」
うーんと悩むニナ
「服は大体同じデザインですか?」
「ポラリスとカノープスはお洒落だけどそんな強調してなかったわ、ベガは可愛らしい衣装、シリウスはそうね…灰色が基調の貴族服って感じだったわよ」
「…シリウスは貴族、ということになりますかね」
「…断定するのはまだ早い、単に貴族服を好む労働階級かもしれないしな」
「シリウス様お似合いですよ!」
ブラバットが微笑んで言って来る。
「……」
貴族服なのだろうけど、お洒落すぎて恥ずかしいわ普通に
「S4がお洒落な服を着るのならお星様方も綺麗な服を着るべきなんですよ」
着ている服は灰色を基調としているが、服に散りばめられているのがお洒落すぎている。
「目立ちすぎないかな?」
と言うと…
「大丈夫ですよ、ある程度お洒落な方が【お星様方】と言われるくらい高貴な方と思われて」
これから行くのは貴族階級の人間、主にお布施(資金援助)してくれている人間達への晩餐会のようなものだった。
「顔はどうするんだい?見られたらファントムハイヴ家の人間だって言われかねないし」
自分で言うのもなんだが、ヴィンセント・ファントムハイヴは裏社会のみならず、表社会にもかなり顔が知られてしまっている。
「大丈夫ですよ、それなら」
セバスチャンはニナと共に【スフィア・ミュージックホール】に入りいろいろ探ることにしたが、『お星様方』はおらず
あるのは輸血作業をする場所だけだった。
(…シリウスは貴重だと言われていましたが、ここまで他の星と差があるとは…)
血液サンプルを懐にしまい奥に行くと…
「…鍵がかかってますね…」
四つの星の部屋には鍵がかかっていたが、セバスチャンは簡単に開けると…
「……」
どの部屋にも誰もいなかった。
(そう簡単には会わせてくれませんか…)
シリウスの部屋で考えていると…
「…?これは…」
セバスチャンは机の上にあったネックレスを見る
(…これは確か、レイチェル様が持っていた…)
レイチェルが大切にしていたネックレス。
確か、シエルからプレゼントされていたはずだった。
(…肌身離さず持っていたネックレスが机の上にあるということは…)
忘れているか、また戻ってくるかのどちらかしかない。
(例え後者だとしても、待ち構えているのは得策ではありませんね…坊ちゃんへの報告もありますし…)
ドアノブを元に戻したあと、ニナとは合流せずに裏門から出る
(……宗教にのめり込んだ人間に目を覚まさせるのは簡単な事じゃありませんからね…熱意を助長させてしまいますし…)
セバスチャンは屋敷に戻る前にサリヴァンの屋敷に向かう事にした。
(…早く帰りますか)
嫌な予感がした
[newpage]
[chapter:綺麗なモノにはトゲがある]
ヴィンセント達は【スフィア・ミュージックホール】から離れた屋敷で晩餐会が行われていた。
(フード被るって、あんまりよろしくはないよね…貴族社会だと)
宗教団体とさして変わりない【スフィア・ミュージックホール】だからフード被って参加しても問題なかった。
フードまでお洒落だけど
後ろに同じくフードを被った【ポラリス】が立ち長いテーブルのお誕生日席(なんて席か分からなかった…)ヴィンセントの右横にはブラバット
ヴィンセントの左横には綺麗な衣装を着た【ベガ】の女性二人
ブラバットの隣には【カノープス】がいた。
「いやはや【お星様方】にお会いできるなんて嬉しい限りです」
中年太りのヒゲを生やしている男性がワインを持って出迎えてきた。
「お布施してくださってるし、お星様方も会いたいと言われておりましたからね」
ブラバットの笑顔
ホント、嘘でも笑顔が本当に良いよ
会いたいとは言ってはいないが、宗教の心理上、教祖や見えないお上が目の前に現れてくれたら嬉しくなるのが人間の心理。
まして、熱狂的な信仰者なら
「……」
他の星の名前を持つ人間を見ると無言で貴族達を見ていた。
ヴィンセント以外は死人で『未来への願望』があるからシネマティックレコードを繋ぎ合わせて生き返った人間だ。
「いえいえ、お布施をするくらいで寿命が伸びるのです。ありがたい限りですよ」
傲慢な態度で笑う貴族
ブラバットも笑うが、目が笑ってない
それからもつまらない世間話が交差するが、ヴィンセントはいろいろ気になっていたことがあった。
「…イギリス政府の動きはどのような感じなのですか?」
ヴィンセントが口を開くと貴族達はこちらを見てくる
その目には心酔の色も見えてまた怖い
「イギリス政府も調査を始めているそうです。ですが、私達も怪しまれないようにしておりますので」
と笑っていたが、ヴィンセントには後の事が分かりきっていた。
(…原作知ってるからな)
いずれあのスフィア・ミュージックホールも[[rb:警察 > ヤード]]が抑えてしまうだろう。
シエルが仕掛けて来ることは分かっていた。
対抗馬に成り得なくてもファントムハイヴ家がミュージックホールを作ってスフィア・ミュージックホールに負けないくらいの真新しさを目指す。
そうすれば、シリウスの人数がかなり減り大打撃を受ける
(…流石シエルだな…)
ゲームが得意な坊ちゃんは手強い
現在のファントムハイヴ家は女王の番犬
自分の時代と違って女王も味方だと思っているだろう。
(…次失敗したら危ないことになりそうだけど…)
シリウスの部屋に戻ると…
「ヴィンズ〜お帰り」
そう言って室内にいたのはアンダーテーカーだった。
「ただいま」
そう言ってコートを脱いでハンガーにかける。
「もう歩けるようになったの?」
葬儀屋からの質問に
「おかげでね」
シエルの血液やらバイオレットの血のおかげで復活を果たしたヴィンセント
「良かったね」
葬儀屋がさっきから嬉しそうにしていた
「このまま移動しようか、悪魔君のことだから時期に調べも付いちゃうだろうし」
前髪を掻き分けた葬儀屋は立ち上がる
「他の星の人はどうするんだい?かなりの人数で移動することになるけど」
「ベガの二人は先に行ってもらって、カノープスも先に行ったよ、ヴィンズにはポラリスと一緒に動いてもらう方が安心できるでしょ?」
「お気遣いありがとう」
【スフィア・ミュージックホール】が違法組織だったことを見抜いたシエルは警察に通報し、従業員などは取り押さえたが…
「メンバーとなる【お星様方】とブラバットの行方は不明。S4も消えたとなれば、壊滅させられた…とは言えませんね」
セバスチャンは紅茶を机に置く
「……」
シエルは無言で新聞を読んでいた。
「レイチェル様は相変わらず帰って来ず…強引に連れ戻してもまた戻ってしまうでしょうね」
母のレイチェルはアレから何も連絡は寄越さない。
日頃から『シエル』と言っていろいろ甘やかして来たあの母が
「…とりあえずS4を探すぞ、どうせ場末の所にいるだろうしな」
「かしこまりました」
シエルが廊下に出た後、アグニがやって来る
「間接的に王子を殺人事件に関与させたのですか?!こんなことお辞めください!」
アグニからの訴えにシエルは冷たく
「巻き込まれたくないなら国に帰ればいい。僕は残って欲しいとも言ってないし、そのつもりもない、帰りたいのなら帰っていい」
「王子はシエル様のことを…」
「頼んでない」
そう言ってスタスタと去って行く
「アグニさんは主思いの良い執事ですね」
一方、ドイツのディーデリヒの屋敷…
「旦那様!!」
執事の声と走って来る音が響く
「…なんだよ、急に」
「旦那様!大変です!」
「何が?」
ディーデリヒは執事の興奮がよくわからず首を傾げる。
「ゔ…ファントムハイヴ様が…」
「あ?またせがれが来たのか?たくっ…また『随分変わったね、ディーデリヒ』?!」
聞き覚えのある声にディーデリヒは顔を上げると、そこにいたのは…
「ヴィンセント?!」
死んだと思った男が立っていたことに驚愕するディーデリヒ
「なんだいその顔、お化けでも見た顔して」
笑いながら言うと
「お前ッ生きてたのかよ?!」
「殺さないでくれるかな?生きてるよちゃんと」
( ビザードルではないから)
「ディーデリヒ、立って話すのもなんだし、部屋通してくれないかな?」
「お、おう…」
「ヴィンセント、なんでこっちに来たんだよ、生きてたんならせがれの方に…」
「うーん、行けないからこっち来たんだよ、ディーデリヒならシエルのことも裏社会のこともね」
「行けない…?」
ディーデリヒは怪訝そうにヴィンセントを見る。
「それで、ディーデリヒに頼みたいことあるんだけどいい?命がけとかそう言うのではないから安心して」
「……」
ヴィンセントを警戒しながら見たが…
「…で、その頼みってなんだ」
ヴィンセントは微笑むと
「ドイツの情報について知りたいんだ。人狼の森の話とかね」
「[[rb:グレル > あなた]]の相手をしてる場合ではないんですが…」
「もう〜セバスチャン相変わらず冷たいんだから♪」
「グレルチャンそれが噂のセバスチャン?」
グレルの後ろから現れたのは科捜科の死神・オセロだった。
周囲にある血を抜かれた死体の話に移ると
「外的要因によって文化が発達するんだよね、この輸血機械も"おそらくは"外的要因によって行われているんだよね〜」
「ちょっとオセロ!そうやって人間にペチャクチャと!!」
「いいじゃんもう、ほらコレが死亡予定者リスト、大体の人間が大幅に本来の寿命より早くに生きながらえてるの」
「…寿命が延びている、そんなことなどありえるのですか?」
「この輸血機械があればね、体内にあるドロドロとした血とサラサラな血を入れ替えれば不治の病は克服できる。その結果、[[rb:貴族たち > コイツら]]は生きながらえたというわけ、生きながらえたことになれば、この組織に永遠に資金援助してくれる友好パートナーだった訳だけど、用済みになって消された、ってのが筋書きかな?」
「それよりオセロ!!早く帰らないとまたウィルに殴られるワヨ!!セバスチャンともっと遊びたいけど!!」
「えー…分かったよ〜」
「では坊ちゃん、私たちも…」
「そうだな」
シエルが出口の方に向かおうとするのを見て…
「そういえば、お父さんは元気?」
「…は?」
シエルはオセロからの質問に首を傾げる
「坊ちゃんの父上は数年前に他界しましたが」
「え?そうなの?じゃあ死人に口なしか」
オセロがそう言いながら歩き去って行く
「いろいろありがとう、ディーデリヒ」
玄関に立ってディーデリヒに礼を言うと…
「…ヴィンセント」
「?なんだい?」
「…これからどうすんだ、ファントムハイヴ家にはせがれが…」
「伯爵位なんて無くてもやれることはあるからね、どうせなら身分制度も破壊しちゃおうか?堅苦しいって前からディーデリヒ言ってるじゃないか」
「茶化すな!」
ディーデリヒは怒鳴ると…
「女王が五年前の事件に関係してるにしてもしてないにしても!お前は常に命を狙われてるんだぞ!生きてるって分かったら絶対に…」
「そうだね、今度こそ死ぬだろうね」
「!」
「賭け事は最後まで生き残ったもん勝ち、俺には心強い味方がいるからね、もちろん…あの子にも」
「…せがれか?」
「そう、黒い執事、あれがいれば生き残れるとは思うけど、いずれは手放して貰わないとね」
「どういうことだ?!ヴィンセント」
「じゃあね、ディーデリヒ」
手を振って外に出る
「……よろしいのですか?ディーデリヒに事を話してしまわれて」
傘をさして来たのは【ポラリス】だった。
「ディーデリヒは問題ないよ、彼が一番信用出来るし」
二人は歩いて人通りが少ないところに行くと馬車に乗る
「一番心配なのはあの子のことだよ、女王の番犬として勤めているのはいいし、悪魔を執事として迎えていれば当面は生きていられる。当面の間はね…」
馬車はロンドンに向かって動き始めた。
「ロンドンに戻ったらブラバットと合流しようか」
「はい」
ポラリスはフードを外す
「今後は君に迷惑をかけてしまうけど良いかな?」
「迷惑など…私はファントムハイヴ家に代々仕える身…先代に貰った命、大切にせねばなりません。ゆえに…」
ポラリスはヴィンセントを見ると
「…相手が女王であろうと、ファントムハイヴ家は御守りせねばなりません。それが私の使命」
「そう…」