感覚のないTSクローンはデスゲームの才能があったみたいです。   作:ねこスマ

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痛がる演技は得意です

 

 

「グァァァァァァァァッ」

「次は左手の爪全部いくぞぉ」

 

 とある港にある倉庫で闇金業者達から一人の男性が拷問をされていた。

 拷問を受けている男性の名は『六道希望(りくみちホープ)

 

 六道は全裸で椅子に縛り付けられ様々な拷問を半日以上受けていた。

 その実、痛みは一切感じておらず演技を熱演していた。

 

「闇金だからって借金踏み倒せると思うなよ?弁護士に相談して違法だから金を返さなくていいなんて虫の良い話はねぇよ」

 

 六道の借金は1200万、毎月の利息で120万を払わなければいけない。

 

「ハァハァ……」

「安心しろ客を殺す馬鹿な業者はいねぇが、パンクした奴はもう客じゃねぇ」

 

 バキッ

 

 ペンチで乱雑に爪を剥がされ指先は赤黒く変色し、血が滴る。

 

「ッッ!!」

 

 息遣いが弱まり、体の限界が近そうなのを見計らって闇金業者は六道の髪を引っ張り、虚ろな目(演技)に問いかけた。

 

「お前に最後のチャンスをやる、中国で全身の臓器を売るか、富豪のパーティーに参加するかだ」

「……パーティー?」

「余興のデスゲームだ、毎回派手にやってるそうでなぁ、一人招待するだけで一千万俺らに入ってくる、残りの返済は勝って賞金で返済すればいい」

「……パーティーに招待してくれ」

「OKあとはGMの仕事だ、生き残れるのを願ってるよ」

 

 闇金業者達が倉庫から去ったあと、スーツの上からロングコートを着た、三十代くらいの女性が無表情で六道の前に立った。

 

「説明は一度だけ、質問も一回まで、わかったか?」

「はい」

 

 女は六道に一枚の紙を太ももの上に置いた、紙が血を吸って見えにくくなるが、今更そんなこと両者は気にしない。紙には白い服を着た十代の少女の眠っている顔が映し出されていた。

 

「検体No.543、クローン体に脳移植を行い今の肉体を捨ててもらう、理由はデスゲームを華やかにするため。不健康な浮浪者たちが戯れあっても見苦しいだけだからな」

「脳移植……成功率は?」

「質問は以後受け付けない。成功率は20%」

「わかりました…」

「デスゲームを勝ち残ると賞金が発生し、ゲーム内容や賞金は都度変化する。生き残り人数に賞金は分配されるため、一人で勝ち上がった方が賞金は大きい」

「………」

「詳しい賞金の使い道は生き残った者に説明があるが、デスゲームから解放されるには一億必要だ、口を開けろ」

 

 女はポケットから錠剤を取り出し、六道の口の中に放り込んだ。

 

「脳移植に失敗しても新鮮な臓器は売られ、金は闇金の懐に入る。生きたいなら今のうちに祈るんだな」

 

 錠剤を飲みこんだ六道の意識は深い闇に飲み込まれていった。

 

・・・

 

 (いやぁー、今の時代に拷問って本当にあるんだね)

 

 友達の借金の保証人になって飛ばれたり、シングルマザーの母親が癌の治療でお金が必要になったりと、フリーターには払えない額のお金が同時に必要になり、金融も何百万と借りれるわけもなく、闇金に手を出したら首が回らなくなってしまった。

 

 母親が亡くなった後、インドにバックレようと準備していたらそれが闇金にバレて捕縛、なにやら20%しか生きられない手術をされるみたいだが、逆に言えば20%で詰みの状況を回避出来るなら分のいい賭けであった。

 

「知らない天井……手術は成功したのか」

 

 周りは殺風景な刑務所の独房のようで、ベッドとトイレしかない。そして声や身体が少女の物になっており、自分の姿を確認してみたかったが、鏡は部屋になかった。

 

「デスゲームねぇ」

 

 顔の横から垂れる、艶のある深紫色の髪を綺麗な細い指先でクルクルと巻きつける。拷問で受けた傷がすっかり無くなったのはいいが、男が少女になるというのはソワソワして落ち着かない。

 

 それから一ヶ月間。食っては寝てを繰り返し身体の変化に慣れてきた頃、健康診断を受けた後にデスゲームが開始した。

 

 

「始まったのか?」

「うおっ、びっくりした」

「おほほ、金持ちは狂っとるのぉ!」

「料理…」

 

 何も見えない真っ暗な部屋の中央だけがスポットライトで照らされており、白いテーブルの上には一杯のグラスの水と、4枚の厚切りされた肉料理が用意されていた。その周りに四人の腰まで伸ばした深紫色の髪と、白い瞳を持つ同じ外見の少女達が、長い椅子に足全体を鎖で動けないように固定されている。

 

「不気味だな、趣味が悪い」

「これってデスゲームじゃ!!」

「全員同じ姿とは笑えるのぉ、ワシはこんなにめんこい顔じゃったか」

「あの!私作戦があるんですけど!」

 

 作戦があると、一人手を挙げた者に視線が集まった。

 

「賞金よりも全員ゲームを生き残れる形で協力し合いませんか?まだ私達は手術したばかりですし、争うのはゲームに慣れてきてからでいいと思うんです」

「ゲームの内容が分からないと判断できないだろ、俺もできればその方針で行きたいがな」

「俺は賛成です!殺し合いなんてしたくない」

「青いのぉ、そんなシケタ勝負が道楽にはならんじゃろ」

 

 『はぁーいお待たせ!』『ゲームの説明をはじめるよぉ』

 

 ぱぁんっ

 

 クラッカーの音が鳴ると、暗闇からおかっぱ頭の二人の幼い女の子が出てきた。サーカスの道化の格好をしており、二人は仲良く手を繋いでいる。

 

「よぉく聞いてねぇー、あのお肉三枚の中に致死量の毒が入っていまぁす」

「だけど一枚だけは毒なしの普通のお肉だよ!お皿のお肉を一人一枚ずつ、順番に一口食べればゲームクリア!簡単だねー」

「あと!どのゲームも生存者が一人になったら、ゲーム内容に関わらずにクリア扱いになるからこれも覚えておいてね」

「「アハハハハ」」

 

 双子らしき少女達はクルクルと回りプレイヤーたちにお辞儀をした。

 

「では、ゲームスタート!」

 

……

 

 

「これってただの運じゃないですか、私運なんかで死にたくないですよ……」

「しかも性格が悪い運ゲーな。最初で毒なしの当たりを引いたら、残り三人は死ぬと分かっていて毒あり肉を食わなきゃいけねぇ」

「これ順番に一人ずつって制限があるから、絶対に一人しか生き残れないのでは…?」

「変に殺し合うよりはマシかのぉ、若造達よ、ワシの順番はいつでも良いぞぉ」

 

 四人はしばらくの間沈黙した。それはゲームの抜け道を探し、1%でも高く生き残るために考えを巡らせる。

 

「オッサンは順番を気にしないのか?」

「おいぼれが策を練っても若い者にはどうせ敵わん、どっしり構えてなんぼじゃ」 

「どうやっても四分の一という確率は変わらない…」

「もし毒抜きを前者に食べられても、後続は毒を絶対に食べことになるが、全員分かっているな?毒を食べないとゲームが終わらねぇ」

「そうですね、それは全員絶対に毒でも食べると誓いましょう」

「だよね…」

「その時は潔く死んでやるわい」

 

「順番はどうしましょう、ジャンケンとかにしますか?」

「そうだな」

「俺もそれでいいです」

「ワシもいいぞ」

 

 ジャンケンを行い順番は

 『一人称私』→『ガサツな男性』→『老人口調』→『ふつうの男性』

 となった。

 

「あの、一番右端のお肉を取って欲しいんですけど」

 

 そう告げると、顔を面で隠したタキシード男性が肉を皿に移し、グラスと一緒に手の届く範囲に置いた。

 

「肉は順番に口にするでしたよね。最後に皆さんに質問いいですか?」

 

 三人は頷く。

 

「食事は大体決まった時間に三回でしたよね?体重は47キロ」

「管理生活をさせられていたんだ、全員同じくらいだろ」

「私、無痛症というか体の感覚が疎いんですよ、痛みはもちろん空腹や喉の渇きもほとんど感じない」

「小娘、何が言いたいのだ?」

「僕、男なんですが、まぁ若干馬鹿な女を装ってました、すみません」

「あのー、怖いなら順番変える?」

 

「あなた達の順番は周ってきません、僕は食事中をずっと続けます」

「……は?」

「グラス一杯に水があるので、その分僕が耐久戦で有利というわけです」

「「「………」」」

 

 そこから先は地獄だ。

 椅子に拘束されたまま糞尿を垂れ流し、罵声を浴びせ、肉を食わせろと懇願し、声を張り上げ無駄に体力を消費する三人。僕を寝かせないように声や音を出し続けるなど連携を見せるが三日目には、全員大人しくなっていた。

 

 そうして六道希望は、9日目にくたばった爺さんを最期にゲームに初勝利したのだった。

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