感覚のないTSクローンはデスゲームの才能があったみたいです。 作:ねこスマ
20分程で騒動は収まり、一階エンランスには6人が残った。
大多数が地下に入り、上階は数名が殴り合い治安が悪く行きたくない状況だ。
そして大多数がペアを組んだ条件は、数字と所持ポイントがなるべく近い者同士。「平等」それが何よりも重視されていた。
「♢A」
「♧3」
「♡5」
「♤4」
「♤2」
「♢2」
この6人はまばらにソファと椅子に腰をかけて、お互いの様子を伺っている。
(場を牽引する必要がある、あえて弱みを見せる必要はない)
「あのさぁ、俺たち大富豪だったら強くない?」
「3は一番弱いでしょ」
「♧3」レイに「♢2」の人がツッコミを入れると、「♤2」の人に視線を向けた。
「もう2同士で行く?」
「そうだね、みんな行っちゃったし」
こうしてまた二人地下に行き、残り4人となった。
ブラウン髪をハーフアップにした「♡5」の人物は、両手を握りオドオドした態度で口を開いた。
「また人数が減っちゃいましたぁぁ」
「正直適当な余り物では、地下に行きたくないのが本音ですが」
「♤4」の人物が眉を上げてこちらを睨みつける。
「は?「A」なんて弱役のこっちから願い下げだ、ブラックジャックだったら最悪だと全員思ってるぞ」
「その情報源の人物が頭を飛ばして死んだんです、ブラックジャックという線は疑うべきでは?」
「ハッ…どんなゲームにしろアンタは大体強い役だろ」
「あの!喧嘩は辞めませんか?」
「そうだそうだ!「♧3」で一文無しの俺が惨めに感じるからさ……」
パンパン‼︎
乾いた破裂音が上から二回響いた。
「この音ってあの時と同じだよな!!」
「ヒッ……!」
「嘘だろ!また誰か死んだのかッ!?」
「二人死にましたね」
音が単発ではない、また複数人が同時に死んだとなると「契約」
腕っぷしが強い人物が脅しかけたのだろう。
「野蛮な人が上にいるみたいです」
「こ…こっちに降りてきますよね!?」
「♡5」が怯えて取り乱すが、気にせず声を上げた。
「まだペアは決まらなそうなので、とりあえず隠れましょう」
「そ、そうですね!ここは地下に行く時に通るので」
「♡5」がウンウンと唸っていると、レイはソファから立ち上がって背伸びした。
「他にあと何人残ってるんだろうなぁー」
「「♡5」の人、俺と組もう、流石に人が死にすぎだ。あまりここに長居したくない」
「ごめんなさい、私まだちゃんと考えたくて…」
「「♤4」はアンタと近いし悪くないだろ!」
「まだ良い人が残っているかもしれないじゃないですか…」
レイはそのやり取りを見て鼻で笑った。
「ちなみに俺はどう?ポイントはないぜ」
「……まだ上階でパートナーを探した方がマシだな」
全員エレベーターに乗って6階に避難した、慎重に周囲を見渡すが他の人の気配はない。適当な客室に入って鍵をかけ、それぞれ離れて腰を下ろした。
「今単独で行動するのは危険ですね」
「それくらい見ればわかるだろ」
「具体的に言うと数という仲介者がいなくなり、過激派に暴力で部屋に監禁され、不利な契約を結ばれる可能性がある。最悪さっきの音の者のように殺される場合もあるでしょう」
「結局、殺しは沢山起こっちゃいましたね……」
「もうこの4人でクジで決めちゃってよくない?」
「クジで「3」と組みたくはないですね…」
「えぇ!悲しいこと言うなよぉッ!!俺と対戦ならめっちゃ有利だろ!?」
「そんなイージーゲームが今までありましたか?そもそもトランプの柄は完全ランダムで決まっているんです。運の要素に傾きすぎています」
「そんなこと言われたって俺にはわからんが?」
「♤4」はバッと立ち上がり、部屋から出ようとする。
「おいおい、どこに行くんだよ?」
「ここは腑抜けしかいない、ペアを外で探してくる」
「待ってください」
「♤4」の腕を握って動きを止める。
「0ポイントで契約を交わしましょう」
「何のためにだ?」
「保険です、もし外でペアが組めなかったらどうしますか?アナタはこちらに戻ってきますよね?」
「あぁ」
「でしたら過激派に脅されてこちらの情報を漏らす可能性もあります。なのでこちらと再び交流したいなら、全員の居場所、浴衣の柄、個人情報をここにいるメンバー以外に知られるのを禁止とします」
「チッ…わかったよ」
「ありがとうございます」
こうして「♤4」と契約を交わし、三人でしばらく部屋に待機していた。
「俺も外でパートナー探してこようかな」
「あの…喧嘩お強いんですか?」
「ん?全く、一番最初に騙されて顔を殴られて、足を怪我させられたね」
「お二人とも静かに……何か聞こえます」
誰かが廊下を凄い勢いで走っている。
ピーンポーンッ!ピーンポーンッ!
ドンドンドンドンドンドン‼︎
「うお!?なんだ」
「だ、誰でしょうか…」
「見てきます」
ドアスコープを覗くと「♤4」が頭から血を流し、必死にドアを叩いていた。
「……作戦が変わりました」
ガチャッ
鍵を開けた瞬間にドアノブが回り、転がり込むように「♤4」が部屋に入ってきた。
「ハァハァハァハァ……」
「おい、どうしたんだよ」
「誰かに襲われたんですか?」
レイと「♡5」もおそるおそる近付いてきた直後。
バァンッ!!
ビシャッ‼︎
鼓膜に響く、つんざく音が鳴ると血飛沫が部屋一帯を汚し、三人の浴衣も赤く染まった。
「お…おい……」
「キャアァァァァァァァァァァ‼︎」
「逃げ切ったと思って来たつもりが、しっかり後ろに付かれていたようですね」
ドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドン
ドンドンドンドンドンドン
一向にドアを叩く音は止まない
ドアスコープを覗いてみるとライムグリーンの髪が外に跳ねた目付きの悪い人物が、ドアスコープをニタリと覗き返していた。
「ドアを叩いている人を取り押さえましょう」
「一人しかいないのか?」
「わかりません」
「私!や、やりますよッ!!」
「恐らくさっき誰かを殺した犯人でしょう、覚悟はいいですか?」
「「………」」
ドアを叩く音が鳴り止んで、ドアスコープを確認した瞬間ドアを開けた。
「増援が来ました、行きましょう!」
「「?」」
「ホープさん、ありがとうございます!」
「いえ!僕もこいつには恨みがあるので!」
「しゃらくせえぇ!!なぁぁぁッ!!」
ドアを開けた先には「AA」メンバーの三人と一緒に、緑髪の体を押さえつけている深紫色の髪の人。顔を引っ掻かれようが、殴られようが一切の表情を変えずに淡々と抑え込んでいる。
「おぉホープじゃねぇかッ!俺も加勢するぜい!」
「よかったですねレイさん」
「ん?どうして俺の名前をアンタが知ってるんだ?」
「それより早く加勢しましょう、布で縛ります」
「お、おう?」
一人余りで死ぬように目星を付けていた人物「レイ」
『ホープさん、ここに知り合いはいますか?』
『どうしてそんなことを?』
『念のためです、ホープさんの名前で動ける人材が必要になるかもしれません』
(レイさんは、この緑髪の人と地下に行くことになるでしょう)
私は3階の爆発騒動直後にホープさんの元に向かい、速やかに契約を行った。
目的は端的に「A」の価値が重いから、三文字様はゲーム開始直後に「A」のトレードをポイントに糸目を付けずに取引された。
『出来る限り上の数字、同数字で二人組を作れ』
「AA」全員に伝えられた三文字様のお言葉。
(地下で行われるゲームはポーカー、それも相手は恐らく)
【『雨』10000000P→『ホープ』
地下に行く際に『雨』とペアを組む、浴衣の柄をお互い交換し『ホープ』は指定された人物と浴衣柄『A』の交渉を行う、交渉失敗のペナルティはなし』】
私のペアの相手はホープさんが一番好条件、お互い「AA」のポケットペアでゲームに挑む事ができる。周囲の混乱の観察、誘導、調整。手が離せない状況でホープさんに「A」持ちの人物の場所を伝えて代わりに交渉に行ってもらっていた。
それに「♡5」の新規会員も失うわけにはいかない。
【はるみ、『雨』と浴衣柄をトレード、その後は『雨』の指示に従う】
「♧2」だった彼女は泣きながら命乞いをして「AA」へ加入、私の浴衣の柄と交換した。
(「♧2」でも一千万ポイントがあれば交渉は可能、ホープさんの交渉が失敗しても「♢K」で「AK」を作れば良い、数が強い人の大体の位置は「AA」同士で共有している)
開幕すぐにホープさんがトレードをしたのを見ていた私は、優秀だと腕を買っている、それに他の会員に「♧2」なんて地雷を渡すわけにもいかなかった。
「契約内容はあなたがやってきた犯行の全てを嘘偽りなく教える、椅子に縛りつけられたまま時間切れで頭が飛ぶのは嫌ですよね?」
「♡A」のホープさんが椅子に縛り付けられて、身動きできなくなった「♢J」緑髪に怒りを込めた表情でそう言い放った。