感覚のないTSクローンはデスゲームの才能があったみたいです。   作:ねこスマ

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一位

 

 

「契約内容はあなたがやってきた犯行の全てを嘘偽りなく教える、椅子に縛りつけられたまま時間切れで頭が飛ぶのは嫌ですよね?」

 

ぺっ

 

「今までお前は何人殺してきた?」

 

 僕の問いかけに唾を吐き捨て、返答する緑髪。

 

「10人以上は」

「なかなかやるなぁッ!!」

「?」

「お前は関係ない人を殺したぁーって、人殺しが人殺しに説教でもするつもりか?」

「説教…」

「ポイント集めに殺した、ただそれだけ、ていうか全員そうして来ただろ」

 

 縛りつけられた椅子から全員を見渡して鼻で笑う緑髪。

 

「では3階の爆破の件もあなたですか?」

「それは妹、これ以上は教えてやらねぇ〜」

「ッ!!」

「ホープさん」

 

 あの女性はブラックジャックだと信じていた。コイツが伝えた嘘なら、家族を道具にしたことになる……

 

 グッ

 

 緑髪の顔を殴ろうとした腕を雨さんに引き止められた。

 

「この人の契約は『誰にも危害を与えず、速やかにペアで地下のゲームを遂行する』でいいでしょう」

「それだとコイツは真相を話しませんよ!」

 

 僕の問いに雨さんは頭を横に振る。

 

「反感を買って自殺されたら、レイさんが路頭に迷います」

「お、俺ッ!?」

「それに真相を知ったところで、契約違反の殺しなら大した内容でもないです」

「……わかりました」

「そこのピンクはよく分かってんじゃん、人殺しが正義面すんな気持ち悪りぃ」

「……………」

 

(僕が気持ち悪い?美智子さんは誰も見捨てないで二人救ってみせた、僕は美智子さんみたいになれたらって、少しずつ他人のことを考えてあげようと思っているのに。もちろん僕の命が一番大事だ、その次くらいには他人の命に手を差し伸べてもいい。それは気持ち悪いことなのか?気持ち悪くて何かダメなのか?デスゲームで他人を気にかける僕はずっと人間らしいはずなのに、それにコイツみたいに家族を道具のように扱わない、僕を裏切った家族はもっと残虐に凄惨に惨たらしく死ぬべだ、道具扱いして簡単に終わらせるなんて、殴りたくなるほど勿体無い)

 

 

・・・

 

「交渉お疲れさまでした」

「いえ、一階にいなかったので焦りましたよ」

 

 僕と雨さんが最後のペアとなり、地下への入り口に立った。他の人達は先に地下へ行っており旅館内は静寂だ。

 

「雨さん、組織の「AA」とポーカーって関係あります…?」

「今回は本当に偶然です、でも前に言いませんでした?しょうもないゲームもあるって」

「まぁそのおかげで僕も強い手配で行けるのでいいんですが」

「今回のイベント、本当は全員気楽に挑んで良かった気がするんです」

「というと?」

「わざわざプレイヤー間の殺害を禁止にしたんです、多くのプレイヤーを地下へ行かせたかったはず」

「じゃあ暴力禁止にすれば良かったじゃないですか」

「ある程度余地を残さないと、人が壁を作って地下に通さないとか可能になっちゃいますし」

「それにしてもペナルティが重すぎなんですよね…」

 

 僕と雨さんは同時にパネルに時計をかざして、地下の扉を開けた。

 横幅のある階段を降りていくと、広々とした部屋に辿り着き、四方八方にドアが設置してあった。

 

 そして真ん中にある筒状の部屋には『案内』という看板が掲げてある。その部屋に入ると、二つあるモニターに一人ずつ高そうな黒椅子に男女が座っていた。

 

 顔の上半分を隠す仮面を付けた男女。

 一人は赤いタキシード姿の壮年男性、もう一人は白髪の女性で白の振袖を着ている。

 

「あぁ!!やっと来ましたね!!本物ですよ!」

「はい」

「映像でしか感じられなかった彼女達が、すぐそこにッ!!」

「約束通り先に決めてよろしいですか?」

「えぇ、えぇ勿論です!参加出来るだけの金額を支援して頂いたんです、感謝しかありませんよ!!」

「では、右の方26番の部屋に来てください」

「私は彼女という訳ですね!!25番へお越しくださいッ!!」

 

 僕と雨さんが案内室を出た瞬間、時計のタイマーが「2:00」を指した。

 

「ゲームの観客が対戦相手のようですね」

「参加型みたいな感じですか」

「お互い勝ってまたお会いしましょう、C級で次は敵同士かもしれませんが」

「僕もうC級には参加出来ないんですよね」

「?」

「ではまた」

「・・・はい、それでは」

 

 僕と雨さんはそこで別れて、26番の部屋の認証を行い入室した。

 

 内装はシックな美術館のような内装、テーブルにディーラーらしき人物が待機しており、対面にはさきほど映像に映っていた仮面の女性が座っている。テーブルの真ん中は透明な板で仕切られており、向かう側にいる人物には手が出せないようになっていた。

 

「はじめまして、どうぞお座りになって」

「はい」

 

 席に着いたのを確認すると、ディーラーが口頭で説明を始めた。

 

『両者、ポーカーを行なって頂きます。1BB=10000P スモールブラインド10BB、ビッグブラインド20BBお支払いください。初期スタックとして両者に100BBを配布、ゲームは5回戦まで。終了時、所持BBが多い方が勝者となります』

 

 雨さんの言ったとおりゲームはポーカー、それもプレイヤーどころか観客(ゲスト)が対戦相手だなんて。

 

『特別ルールとして両者任意のタイミングで一度だけ手札を変更可能です、プレイヤーは手札は登録した二人組のペアの柄と数字、お客様はマネーゲームで購入頂いた札、テーブル下のボタンを押すと次のハンドで配布されます。またチップの差でゲームが行われない自体を避けるため、プリフロップでフォールドする行為を「オープンフォールド」とし、この行為は2度までとします』

 

(少しややこしいが、このルールなら相手が強くても心理戦が通用するはず)

 

『プレイヤーが勝利した場合、獲得BBをポイントに変換、特別報酬として【水の遊園地(ウォーターパーク)】のチケットが配れらます』

 

(ウォーターパーク?)

 

『そしてお客様がプレイヤーのチップ量50BB以下の状態で勝利した場合、プレイヤーの権利全てが譲渡されます』

 

(50BBより下で負けたら金持ちの玩具。ただ血を流し殺し合うよりずっと良いはずだが)

 

「敗北した方もなかなか大変そうでしたよ」

「あなたもそうするんですか?」

「いいえ、貴女と戯れにきました」

 

 物静かな印象を受ける目の前の女性、純白の絹のような髪が異質に見える。

 

「そちらのマネーゲームって何されたんですか?」

「オークションです、「A」は一枚5億円で取引されていました」

「そんなことに大金を支払うって暇人が多そうですね」

「真面目で優秀な方が大半です、中にはそういった趣の方もいますが」

「そうですか」

 

『それではゲームの方を開始します』

 

 ポーカーは中長期のアベレージで利益を出すゲーム。初心者でも短期戦なら運だけで格上に勝ってもおかしくない。それにこちらは「AA」が一度だけ使える。

 

(どこで「AA」を使うかが鍵になる)

 

 初手でいきなり「AA」を使うのは悪手だ、駆け引きもなく相手にフォールドされたら無駄になるだけ。

 

「1回戦」

 

ササッ

 

「♤2」「♤J」

 

 SB、最初に配られたカード。

 ハンドは弱いが短期戦のため、参加するハンドレンジはかなり広げるべき。

 

(フラッシュ、そしてハイカードとして最低限のJは抑えている)

 

 ただフロップ見て動きを判断したいハンド、リンプ参加はこちらのフォールド回数を減らす可能性があるため使うことは無い。

 

(いや、これでは相手と対等に戦ってしまっている)

 

 プリフロップのレイズに対してフォールドできるのは2回まで、そしてプレミアムハンドに入れ替えることが出来るのが1回。つまり3ハンドは自由の利いた選択肢を取れるということ、選択肢は温存して最後の保険にしたくなるが、相手に動きが読まれやすくなってしまう。

 

「オールイン」

 

 だったらここでブラフオールイン、相手も初手にハンド変更は使ってこないはず。相手のフォールド権をここで一回消費させる、そして次は本命の「AA」にハンドを変更すれば、次にフォールドされても相手のフォールド権が無くなり、こっちは2回フォールド出来る状況を作りだせる。

 

「………」

 

 さぁコール出来るか?なんなら最悪コールされてもいい。J以下のポケットペアなら気合いでJを引いてやる。相手がAハイor J以上のポケットペアを持っているなら死んでも構わない。

 

 チップを全て手で押し出し相手の反応を伺うと、相手はこちらの顔を見ながらカードをマックした。

 

『+30BB』

 

 次に下に配置している左手で、テーブルに取り付けられたボタンを押した。

 

「2回戦」

 

(よし、次はAA)

 

トントン

 

『チェック』

 

 相手は無言でテーブルを指先で二回叩く。

 

(ベットが欲しかったが)

 

 相手のベットサイズによってはオールインまで視野だったが、ここは大人しく…

 

 相手のスタックは70BB

 

(レイズ20BBはPOTが相手のチップより多くなって圧をかけ過ぎか…)

 

『10BBベット』

『フォールド』

 

 スナップフォールド、これで相手はプリフロップでのフォールド権を失った。そして僕はまだ二度フォールドすることが出来る。

 

『プレイヤー+30BB』

 

 ブラインドが高いから下ろすだけでもチップは増える、あとは残り3回のうちに一回良いハンドを引くだけ。

 

「先ほどのハンドが本命ですね」

「本命?」

「初めのハンドの時より肩の位置が高く、わたくしのチップを少し眺めていらしたので、バリューベットかと」

「運良く強い札を引いただけかもしれません」

「開幕の破滅的な目をした雑なオールイン、次はチェックに対して慎重なPOTの三分の一ベット、2ハンド目は2ベットに対して強気にレイズする予定がコール欲しさに妥協しましたね。二回連続でフォールドさせたいという意図が見えます」

「それが本当だとして、あなたはフォールドを使えないですよ」

「フォールドはPOTを諦める行為、使えなくても問題ないです。それより序盤に手札変更を使ってよかったのですか?」

「使っていないと言ったら?」

「貴女は私、私は貴方、心を壁で隔てる必要はありません」

「言葉遊びはいいです」

 

(意味深なことを発言して動揺を誘い、油断させるつもりか?)

 

「私は子供なんですよ、大人ぶっているだけで」

「………」

 

 この人との会話より、ゲームに集中しろ。

 

(別に作戦がバレたところで強い役を引いてくればいい、運と勢いで行ってしまえ)

 

「3回戦」

 

僕120BB、相手50BB、POT30BB。

 

(POTと釣り合ってるしオールインしてきてもおかしくないな)

 

「♢3」「♡6」

 

 一応ストレートがあるがブラフにすら回したくないゴミハンド。そもそもポーカーなんて高頻度に参加するゲームではないため、こういう展開は予想出来たがフロップすらまだ見れていない。

 

トントン

 

『チェック』

『15BBベット』

 

 相手からのハーフべットに対して僕はトランプを裏のまま投げる。ここは素直にフォールドでいい、弱いハンドで無理する場面ではない。

 

『フォールド』

 

僕「120BB」相手「80BB」

 

「4回戦」

 

「♧8」「♢K」

 

(悪くない、ここが勝負時!)

 

ニコッ

 

ぞわ……チラッ

 

 一瞬この女の人が笑ったように感じた。まさかここで手札を変更してきている?

 

(いやそんなわざとらしいことをこの局面で行うか?)

 

 どちらにせよこのハンドはフロップまで必ず見たい。

 

スッ

 

『5BBベット』

 

 たったの5BB、挑発しているのか?

 僕の3ベットに対して4ベットで咎めに来る可能性もある。

 それこそ僕のレイズにオールインが返ってきたら悶絶だ、相手の手札変更が8より上のポケットペアなら勝率は3割下回るだろう。

 

(さっきの笑顔といい何かキナ臭い、手札変更を考慮するべきか…)

 

「コール」

 

 僕は5BBを支払い、フロップへ進んだ。

 

「♡5」「♡6」「♢10」

 

『チェック』

 

(相手はチェック、ターンで♡が落ちて欲しくないくらい、僅かにKハイでPOTを取れる可能性もある)

 

『チェック』

 

「♡5」「♡6」「♢10」「♢Q」

 

 ターンに落ちたのは「♢Q」ハンドが全く絡まない。

 

『チェック』

 

 また相手はチェック、こちらから打ってこいと言わんばかりに待っている。どちらにせよこのボードでブラフをする物語(ターゲット)がない。

 

 

「♡5」「♡6」「♢10」「♢Q」「♢2」

 

 落ちたのは「♢2」

 

 リバーで完成した♢のフラッシュのことは考えない、あとは相手の動き次第だが…

 

『20BBベット』

 

(またハーフベット、違和感のない普通の額…)

 

 スタックが少なすぎて一回の敗北が勝敗を決めると言っても過言ではないこのルール、ただ致命傷には程遠い。

 

(Kハイでコールは無防備過ぎる…流石にフォールドだろう)

 

 僕はハンドを公開して捨て、相手の仮面の顔を見つめたがマックされた。

 

「せめてあと5ハンドくらい欲しいですよね」

「それでしたらわたくしが必ず勝ちます」

「子供らしい自信です…」

 

「5回戦」

 

僕「95BB」相手「105BB」

 

(50BBさえ残せれば完全敗北はない)

 

 プリフロップでサイズの大きいレイズが返ってこなかったら、権利譲渡が行われない僕の実質的な勝利だ。

 どんなハンドでもフロップでフォールドしてゲームを終わらせればいい。

 

「♤A」「♧A」

 

(嘘だろ)

 

 ここで素の「AA」を引いた。

 最後の最後で勝利の女神が僕に微笑む。

 

(勝ってウォーターランドのチケットを貰う、何があるかは分からないけど)

 

 ここでの生活も少し慣れてきて、生きる指標も見つかったんだ。

 

(トレードに使った500万ポイント(50BB)返してもらいますか)

 

『10BBベット』

 

 僕はチップを投げた。

 

『コール』

 

「♡10」「♤8」「♧J」

 

 フロップはレインボーボード。若干ウェットで気持ち悪いが、フロップ時点はグッドハンド(勝っている)と思いたい。

 

(ここで降ろせるようにギリギリまで強く打つべき、相手にターンを見せたくない)

 

『30BBベット』

 

『コール』

 

「♡10」「♤8」「♧J」「♡4」

 

(よし!4は完全なラグ、相手に9を持たれてオープンエンドの可能性もあるがここまでは良い)

 

 「7」「Q」を一緒に持たれてストレートが完成しているなら完敗だ。フロップでレイズされていたらそのハンドを考察する余地もあるが、強めのベットにコールしたからには相手の札も相当に強い。

 

(トリップスもありえる…それにさっき降ろすつもりでベットしたんだ、これ以上は50BBを下回ってしまう)

 

『チェック』

『チェック』

 

「♡10」「♤8」「♧J」「♡4」「♢Q」

 

(最悪なカードが落ちてしまった…)

 

『チェック』

 

 相手がチェックしてくれたら一番はなしが早いのだが……

 

「オールイン」

 

 バリューでもブラフでも、相手の動きやすいボードだ。

 ポラライズされた状況で僕は相手の仮面から覗く青い瞳を凝視した。

 

(AKストレート、10、8、Jのトリップスもありえるが…)

 

 相手は9を持っていると主張している流れだ、もしスリーカードならQが落ちている時点で、僕のストレートをケアをしてベットサイズは下げても良い気がする。

 

(オールインかフォールドか)

 

 

「オールイン」

 

 

__僕はオールインを選択した、頭ではフォールドが正解だと分かっているのに

 

 僕のハンド「♤A」「♧A」をショーダウンすると

 相手は僕と同じ「♤A」「♧A」のハンドを見せた。

 

「……同じカード?」

「私が手札変更を使用したので、その山札に含まれないカードを使用出来たのです。これでは絶対にチョップ(引き分け)でしたね」

 

『100BB、100BBとなり両者引き分けとなります』

 

「は?」

 

僕  「SB95→85BB→100」

相手 「BB105→85BB→100」

 

 最後に偶然同じカードで引き分けになり、チップ量も同じで引き分け。

 そんなことがありえるのか?

 

「もしかしてコレを狙ってやったんですか?」

「それが知りたいなら、私の招待を受けてくれませんか」

「招待って…?」

「デスゲームです、私もプレイヤーなので」

「僕を招待する意味が…それにあなたがプレイヤーってどうして観客側に」

「わたくしミクロンと申します、それも全てお答えしますよ」

 

【アナタが私のゲームに参加してくれるなら】

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